著者
福永 隆之 武若 耕司 山口 明伸 審良 善和
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.21-31, 2018 (Released:2018-05-15)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本研究の目的は,鹿児島県各地に分布するシラスを混和材として利用したセメント系材料の耐塩害性能の評価である。その際,主に,試験前後の生成物の変化や各種塩化物イオン量に着目することにより,シラスを用いた供試体の塩化物イオンとの反応性および塩分浸透特性について明らかにすることを試みた。その結果,シラスを混和した供試体は,塩水浸漬環境下において,シラスの反応率が促進されることを確認した。加えて,塩化物イオン固定化率の上昇および見掛けの拡散係数が低下する結果を得た。これは,シラスを混和することにより,ポゾラン反応生成物が生成され,その水和物によって,内部組織の緻密化および塩化物イオンの固定が起きたためと考察した。また,シラス中の微粒分の含有割合が大きいほどシラスの反応率および耐塩害性能が高いことが示された。
著者
小松 怜史 田島 涼 細田 暁
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.33-40, 2018 (Released:2018-05-15)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究では,コンクリート床版上面の品質を表面吸水試験(SWAT)で評価する手法を検討した。水セメント比,空気量,セメント種類,養生条件の異なる供試体を製作し,SWATで品質評価を検討するコンクリート床版上面(仕上げ面から5mm程度)が十分乾燥していることを現場で判断する方法を検討した。その結果,市販の水分計(Kett社,HI-100)でカウント値が120(電気抵抗値:約2.6×104kΩ)を下回った時に,仕上げ面から5mm程度が十分乾燥していることが分かった。この条件で,SWAT計測開始から100秒間のコンクリートの累積吸水量を用いて,コンクリート床版上面の品質を評価することを提案した。この評価指標は仕上げ面の微細なひび割れによるコンクリートのスケーリング抵抗性の低下を検出することが可能であった。
著者
森 謙作 寺田 雅之 石井 一彦 本郷節之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.129, pp.11-16, 2004-12-20
参考文献数
9

電子価値を公平に交換可能なプロトコルをICカードへ実装し,プロトコルの実用性の検証を行った.実装にあたり,電子財布などの取引アプリケーションからの利用が容易であること,および電子価値の交換を電子商取引として実用的な速度で行えることを目的とした.また,ICカードのI/F設計において分散ICカード環境のためのフレームワークであるTENeTを利用することにより,ICカード間のメッセージのやり取りをアプリケーションから隠蔽し,ICカードとアプリケーションとのI/Fを簡素化することができた.実装の結果,プロトコルのコードサイズは約6KB,プロトコル処理時間は約1.8secであり,現在市販されているICカードを用いて,上記プロトコルを実用的な性能で実現可能であることを示した.This paper reports the result of our implementation of the fair exchange protocol for electronic rights on smartcards. In this implementation, we adopted TENeT, a framework which enables smartcards to directly communicate one another, to simplify the interface between smartcard and application programs. Our implementation built on current smartcards can exchange electronic rights in less than 1.8sec, which is practically sufficient for electronic rights trading markets.
著者
南雲 俊喜 甘利 治雄 三井 博隆 岡田 幹夫 廣瀬 通孝 石井 威望
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.59(1994-CG-069), pp.41-48, 1994-07-08

現在、立体音響システムを導入したVR環境について研究している。我々は現在までに、ソフトウェアの構造と挙動の状態等を3次元グラフィックスによって視覚的に表現して、VR環境をユーザーインタフェースとしたソフトウェア開発支援ツールSVSS (ftware Visualization Support Spa)を試作している。そこで今回、このSVSSに立体音響システムを導入した具体例を紹介し、VR環境における立体音響システムを提案する。また、我々はVR技術を電力設備の遠隔監視に適用する研究を行っており、この遠隔監視システムに立体音響システムを導入するための研究を紹介し、実映像と同時に実音源を立体音響として再現するシステムを提案する。
著者
加藤 慶太 根本 崇弥 庄司 雄哉 水本 哲弥
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.430, pp.35-39, 2015-01-29

磁気光学効果を用いた導波路型光アイソレータの温度依存性について検討する.導波路型光アイソレータの特性は,材料の屈折率及び磁気光学係数の温度依存性によって温度とともに変化する.今回,シリコン導波路型光アイソレータの温度依存性を測定し,これまで明らかにされていなかった磁気光学ガーネットCe:YIGの屈折率温度係数dn/dT=2.5×10^<-4>K^<-1>とファラデー係数の温度依存性dθ_F/dT=13deg/cm/Kを得た.また,これらの値を用いて,アイソレーション特性の温度依存性を低減したシリコン導波路型光アイソレータの設計を行った.一例として,シリコン導波路の断面形状550nm×220nmにおいて,非相反移相器長265μm,相反移相器長4.3μmとすることで,0〜70℃の温度変化に対してアイソレーション波長の移動量が0.081nmという良好な特性をもつアイソレータの設計を示す.
著者
山本 雅人 伊藤 毅志 桝井 文人 松原 仁
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.500-504, 2018-05-15

スポーツのカーリングを対象とした,ディジタルカーリングと戦術支援を行うためのカーリングAIの開発について解説を行う.カーリングAI「じりつくん」は,任意の局面に対して,そのエンド終了時の期待得点分布を予測することができ,それに基づいた勝率最大化となるプレイを出力することが可能である.平昌オリンピックでの試合を例にカーリングAIで分析した結果は多くの反響を呼び,カーリングAIが見積もる勝率などの情報は,観戦者の助けとなったり,試合における一進一退の攻防の魅力を伝えたりする有効な手段の1つとなりうることを示した.本稿では,特に「じりつくん」の概要と分析結果を中心に今後の方向性を含めて解説する.

1 0 0 0 OA 翻草盲目

著者
腐脱散人
出版者
巻号頁・発行日
1780
著者
松隈 大亮 板橋 秀一 鵜野 伊津志 若松 伸司
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.173-178, 2012-07-10 (Released:2012-10-23)
参考文献数
12

神奈川県北西部に位置する丹沢山地ではブナの衰退が深刻な問題となっている。この一因としてO3が考えられているが、丹沢山地ではO3生成に関わる一次汚染物質であるNOXの排出源、排出量が少ない。このことから、東京湾岸などの都市部で排出された一次汚染物質が光化学反応を起こしながら局地風などの影響により丹沢山地に移流して来ると考えられる。そのため、2007年7、8月を対象期間とし、測定では把握しにくい大気汚染物質の三次元的な濃度分布や動態を見るために領域化学輸送モデルWRF/Chemを用いて再現を行った。また、モデルの気象場の再現結果を使用してFLEXPART-WRFで後方流跡線解析を行い、日中に丹沢山地でO3濃度を高くした気塊の移流経路を示した。その結果、日中に丹沢山地でO3濃度が高くなる場合は、陸風により東京湾岸などの都市部から排出された一次汚染物質が相模湾に流入した後、日中に光化学反応を起こしてO3濃度の高くなった気塊が海風の影響を受けて丹沢山地の南~東南東側から移流して来ていた。また、海風には関東地域を覆うような大規模な海風と小規模な相模湾からの海風が見られ、前者の場合には丹沢山地の南方から、後者の場合には丹沢山地の南東方向から移流する傾向が見られた。

1 0 0 0 OA 九部經解166卷

著者
明〓敬撰
出版者
〓千秋千石刊
巻号頁・発行日
vol.[4], 1619
著者
本宮 嘉弘 山内 春夫 増渕 一雄
雑誌
交通科学研究資料
巻号頁・発行日
vol.47, pp.138-141, 2006-05-31
参考文献数
1
著者
藤井 幸司
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.12, no.19, pp.129-141, 2005-05-20 (Released:2009-02-16)
参考文献数
8

大日山35号墳は和歌山県北部の紀ノ川下流域左岸に位置し,岩橋山塊上に展開する国特別史跡岩橋千塚古墳群内に所在する。古墳群内では,その規模・立地から盟主的古墳のうちの一基として従来から評価されてきた。古墳は,史跡指定地として保護される一方,関西大学作成の墳丘測量図・石室実測図と表採される埴輪片などの資料のみで充分な蓄積がなく,その実態は不明であった。和歌山県では,古墳群の保存と活用を目的として,平成15年度から特別史跡岩橋千塚古墳群保存修理事業を開始し,その事業の一環として大日山35号墳の発掘調査が実施された。その結果,内部主体や外表施設の構成,規模,形態などについて様々な成果を得ることができた。とりわけ,東西くびれ部に造出が付設されることが判明し,そのうち調査を実施した東造出では,円筒埴輪列により囲繞された範囲に,多数の埴輪や須恵器が樹立ないしは据付られていたことが判明した。平成16年度に行われた出土遺物整理により形象埴輪には家・蓋・大刀・人物・鳥・馬などが,須恵器には甕・高坏・器台などが存在することが判明した。このうち形象埴輪中には,滑空する姿態を表現した鳥形埴輪,鶴の可能性が高い嘴の長い鳥形埴輪,短冊形水平板を備える馬形埴輪の障泥,棟持柱をもつ家形埴輪寄棟部などが認められ,西日本ではその類例は著しく限られるだけでなく,滑空姿態の鳥形埴輪はこれまで出土例はない表現で,非常に珍しい埴輪と考えられる。墳丘は3段構成であることが調査により判明したが,それを墳丘3段築成とみなすのか,最下段を墳丘の付帯施設(「基壇」)とみなすのかは,結論をみていない。現段階では今後の調査に期待する点も多々あるが,今回は後者の意見について私論を展開した。岩橋千塚古墳群内の同時期の古墳や近年調査が進展している今城塚古墳との比較検討を通じて,私論の妥当性を主張し,そこから派生する問題についても一部言及した。大日山35号墳は,6世紀前半に築造された岩橋千塚古墳群内で最大の可能性がある前方後円墳であり,造出に樹立された埴輪群は西日本でも有数の質・量を兼ね備えるものである。今後,調査および出土遺物の整理が進展し,大日山35号墳の実態がより明らかになれば,より一層古墳における祭祀や地域史などの多数の研究に大きく寄与することが出来るであろう。