著者
丹藤 博文
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.10-22, 1998-03-10

最近の「教育改革」なるものの本質は、一部のエリート養成に主眼を置き弱者を切り捨てようとする点にある。定時制高校のように、システムの末端に位置する学校は容易につぶされようとしているのである。しかも、所謂「新自由主義教育論」の言説は、「自由」や「個性」あるいはまた「生きる力」などといった美名のもとに、教育の商品化・複線化・階層化を断行しようとしている点に特徴があるといってよい。授業では、メロスの愛と友情と信実の物語として流通する「走れメロス」をパロディ化し変形することによって、読みを二重化し、そこから深層の意味に迫ることを試みた。
著者
宇野 公一郎(1950-)
出版者
東京女子大学論集編集委員会
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.87-139, 0000

In this article I have translated and annotated the "Way of Enthronement (Inzira Y'Uubwimika)" from the esoteric royal ritual code (ubwiru) of Rwanda. Once enthroned, the Rwandan king was no longer a human being. This transformation was accomplished through two ritual processes. In the first process a prince became a king by receiving the regalia, taking oaths, and obtaining the public approval. In the second process the new king acquired the supreme power through his participation in the rituals to regenerate the kingdom. Throughout the "Way of Enthronement" was emphasized the military power of the new king to gain triumphs over the enemy kingdoms. This reflected the fact that Rwanda was incessantly at war during the eighteenth and the nineteenth centuries. It was also mainly from the military concerns that the interregnum was made shortest.本稿はルワンダの王朝秘典ubwieuから「即位の道」(Inzira Y'Uubwimika)に訳・注をつけた。ルワンダでは王は人間ではなく、即位式が人間を王に変えた。即位式は二つの儀礼過程から成る。一つは、先王からのレガリアの引継、宣誓、公衆への顔見せと承認によって一人の王子が王になる過程である。もう一つは、王国を甦らせる諸儀礼の主役を演じることを通じて新王が至高性を獲得していく過程である。「即位の道」で、終始一貫して強調されるのは王の軍事機能、敵国に勝つ能力である。これは18–19世紀のルワンダが恒常的な臨戦態勢をとっていたことと符合する。空位期を「乗り越えるべき難局」と見なし、手早く新王を即位させてしまうのも、軍事的配慮が大きく作用していたと思われる。この軍事の卓越にルワンダの即位式の一つの大きな特徴を見ることができるだろう。
著者
熊本 忠彦 伊藤 昭 海老名 毅
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.1114-1123, 1994-06-25
被引用文献数
16

筆者らは,自然言語を用いた対話によってユーザ(computer user)の計算機利用を支援する対話型ヘルプシステムの構築を行っている.ユーザは,通常は計算機上でタスク(task)を進めるが,何らかの障害/問題が生じたとき,ヘルプシステムに音声で支援を求めることができる.ヘルプシステムは,ユーザの音声発話を理解し,その時々の状況に合わせて適当な応答を生成する.ヘルプシステムにユーザ発話を理解させるためには,音声処理技術だけでなく,話し言葉の特性に対応した言語処理技術も要求される.我々は,ヘルプシステムの代わりに人間アドバイザが支援するという擬似的な「対話による支援」実験を行い,ユーザの音声発話を収録し,ユーザ発話データベース(書き起こしテキスト)を作成した.また,その書き起こし文を解析し,支援要請発話(アドバイザに支援を要請するための発話)の特徴を調べた.本論文では,その解析結果に基づいて,ユーザ発話意図の記述形式を定義し,発話文から発話意図を認識する手法(発話意図記述を生成する手法)を提案する.
著者
京城高等工業学校 編
出版者
京城高等工業学校
巻号頁・発行日
vol.自昭和5年至昭和6年, 1937
著者
滝沢 佳郎 畑 俊彦 遠藤 芳秀
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.70, no.16, pp.2301-2304, 1984-12-01 (Released:2009-06-30)
参考文献数
8

Determination of free nitrogen in steel by constant temperature-hydrogen hot extraction method was studied and optimum analytical conditions were established.1) Lower measured values were obtained with samples that had passed for long time after powdering. 2) The result of 1) was considered to come from the fact that dissolved nitrogen in steel was locked to dislocations and/or formed cluster gradually, thus becoming difficult to be extracted. 3) Higher temperature of environment around samples accelerated these effects, so it must be avoided to heat powdered samples for washing and drying. 4) It is necessary to analyse samples of finer powders soon after powdering. 5) When the sample was analysed under these analytical conditions, free nitrogen could be fully extracted at 400°C.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ドラッグインフォメーションpremium
巻号頁・発行日
no.96, pp.23-26, 2005-10-10

取材で訪れた都内のある薬局。1階に投薬カウンターと待合が、2階に調剤室が置かれている。調剤室前の廊下を通りかかると、壁には折り畳みいすとおぼしきものが三つ付いていた。 スタッフに尋ねると、「調剤室は患者から見えるようにしておく必要があるんですよ」と、苦笑いしつつ教えてくれた。もちろん、わざわざ2階に上がってきて調剤の様子をのぞく患者がいるはずもない。
著者
チャイキェンカイ アマタ 竹下 侑花 柴田 雅史
出版者
Japan Society of Colour Material
雑誌
色材協會誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.439-448, 2012-11-20
被引用文献数
1

Fe源,構造形成剤の除去方法およびメソポーラスシリカの型がFe含有メソポーラスシリカの紫外線吸収能に与える影響を検討した。また,これらFe含有メソポーラスシリカの紫外線防御剤としての可能性を,薄膜にしたときの紫外線透過性,外観色,光触媒活性により評価した。<br>FeアセチルアセトナートをFe源としたMCM-41型を焼成した試料が最も良好な紫外線吸収能を示した。ただし,鉄濃度が高くなる(Fe/Si ≥ 0.02)と薄茶色の外観となった。一方,FeアセチルアセトナートをFe源としたHMS型またはMCM-41型で溶媒抽出によって構造形成剤を除去した試料は紫外線吸収能は前述のものより劣るものの外観色は白色であった。<br>焼成したFe-MPS試料(Fe/Siモル比=0.02)の水分散物の薄膜は,シリカ表面処理をした酸化チタン水分散物と同程度の紫外線透過挙動であった。また光触媒活性もみられなかった。これらのことからFe含有メソポーラスシリカは紫外線吸収剤としての可能性があるものと考えられる。
著者
星野 立夫 田辺 光子 大塚 裕子 清水 文子 山下 幸枝 坂下 清一 大濱 正 宮崎 博子 三浦 賢佑
出版者
JAPAN SOCIETY OF NINGEN DOCK
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.152-155, 2002
被引用文献数
1

禁煙指導の一助とするため,男性の喫煙率と年齢および職種との関連性を人間ドック受診者で調べた。受診者数の多い5職種を選び,その職種の2000年度の男性受診者全員を対象とした。男性の喫煙率は,若い年代で高く,年代が進むにつれて低下する傾向を示したが,年代だけでなく職場環境も喫煙率に影響している事が示唆された。生活習慣病予防のためには若い年代に対する禁煙指導の強化が望まれるが,職場環境を考慮したたばこ対策が必要と考えられた。
著者
宗原 弘幸 Paul Judy M. Paul Augustus J.
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.73-75, 1994

アラスカ湾北部, 氷河フィヨルド地帯, リザレクション湾において, 春季のカサゴ目仔稚魚の出現状況を調査した.標本採集はNIOTトロールを用い, 湾内3地点において1991年4月2日から7月9日まで, ほぼ毎週行なった.42回の曳網でカジカ科10, トクビレ科1, クサウオ科1, およびギンダラ, 合計13タイプ75個体のカサゴ目仔稚魚が採集された.これらのうち, ギンダラを除く12種は, 沈性粘着卵を産むこと, および湾内の流速などから判断して, 湾内で繁殖しているものと考えられた.調査期間中の各タイプの平均分布密度0.28-8.96/1000m<SUP>3</SUP>は, 同様の方法で同時期に採集されるスケトウダラおよびニシンの数値と比べて極端に低く, カサゴ目仔稚魚は本調査海域における春季のプランクトン消費者としての役割は小さいとみなされた.しかし, 氷河の影響がないアラスカ湾南東部のオーク湾およびアラスカ湾西部のコディアック島周辺では, カサゴ目魚類, 特にカジカ科魚類は主要な出現仔稚魚となっており, これらのことから, 低温低塩分濃度, 大量にシルトを含んでいることなどで特徴づけられる氷河フィヨルド地帯は, 北太平洋東岸に生息するカサゴ目魚類にとって, 好適な棲み場ではないことが示唆された.
著者
Jung-Sub Shin Hee-Won Park Gyo In Hyun Kyu Seo Tae Hyung Won Kyoung Hwa Jang Byung-Goo Cho Chang Kyun Han Jongheon Shin
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
pp.c16-00240, (Released:2016-07-05)
参考文献数
17
被引用文献数
14

Panax ginseng C.A. Meyer is one of the most popular medicinal herbs in Asia and the chemical constituents are changed by processing methods such as steaming or sun drying. Metabolomic analysis was performed to distinguish age discrimination of four- and six-year-old red ginseng using ultra-performance liquid chromatography quadruple time of flight mass spectrometry (UPLC-QToF-MS) with multivariate statistical analysis. Principal component analysis (PCA) showed clear discrimination between extracts of red ginseng of different ages and suggest totally six discrimination markers (two for four-year-old and four for six-year-old red ginseng). Among these, one marker was isolated and the structure determined by NMR spectroscopic analysis was 13-cis-docosenamide (marker 6-1) from six-year-old red ginseng. This is the first report of a metabolomic study regarding the age differentiation of red ginseng using UPLC-QToF-MS and determination of the structure of the marker. These results will contribute to the quality control and standardization as well as provide a scientific basis for pharmacological research on red ginseng.
著者
シュプリンガー マークS. 樋口 広芳 上田 恵介 ミントン ジェイソン シブレイ チャールズG.
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.66-77_1, 1995-10-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
37
被引用文献数
8 8

小笠原諸島の固有種,メグロApalopteron familiareは,1958年以降ミツスイ科に分顔されているが,これまでにヒヨドリ科,メジロ科,チメドリ科などにも分類されており,分類学上の位置が不安定な鳥である.われわれはミトコンドリア12SリボソームRNAをコードするDNAの塩基配列に基づく分子生物学的手法により,メグロがメジロ科の1種であることを示す証拠を得た.また,メジロ科の中では,マリアナ諸島南部に生息するオウゴンメジロCleptornis marcheiに近縁であることを明らかにした.オウゴンメジロもかつてはミツスイ類とされていたが,最近,DNA-DNAハイブリダイゼーション法や生態•行動研究などによってメジロ類であることが判明した鳥である.メグロは,相互羽づくろいや接触就眠を行なう,巣づくりから育雛まで雌雄で行なう,求愛給餌を行なわない,などの生態,行動面でもメジロ類に似ている.また小笠原諸島には元来メジロ類は分布しないことになっているが,メグロがメジロ類の1種になることで分布のこの奇妙な空白も埋まることになる.
著者
鈴木 史明 谷口 武 庄野 明子 富山 俊彦 小野 雅昭 谷口 定之
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.71-76, 2007
被引用文献数
2

近年,男性の喫煙率は減少傾向にあるが,女性の喫煙率は増加傾向にある.妊婦の喫煙率は,約20%である.妊婦の喫煙は,胎児発育遅延,常位胎盤早期剥離等の原因になる.従来の禁煙指導は,成果が十分でない.そこで当院では,多くの喫煙者が禁煙できるように,外来診察中に短時間(約2分30秒間)の禁煙指導(「ライト」)を開始した.「ライト」と禁煙外来の禁煙成功率を比較し,効果的な禁煙指導法を考察した.妊婦の場合,禁煙成功率は「ライト」で27.8%,禁煙外来で88.9%であった.妊婦1人の禁煙に要する指導時間は,「ライト」で9分,禁煙外来で1時間41分であった.禁煙指導1時間当たりの禁煙成功妊婦数は,「ライト」で6.7人,禁煙外来で0.6人である.このように短時間の禁煙指導である「ライト」でも,禁煙指導の効果は期待できる.「ライト」は,多忙な日常診療のなかで行う禁煙指導として意義は十分ある.さらに,「ライト」,禁煙外来,その他の禁煙指導法を組み合わせることよって,多くの喫煙者の禁煙が期待できる.〔産婦の進歩59(2)71-76,2007(平成19年5月)〕<br>