著者
安倍 雅史 ハラナギ ホセイン・アジジ ハニプル モルテザ
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

西アジアの肥沃な三日月地帯は、地中海式農耕の起源地として知られている。1990年代には、肥沃な三日月地帯の中でも、西側のレヴァントで最初に農耕・牧畜が開始されたと考古学会では考えられていた。しかし、今世紀に入り急速に発達した遺伝子研究は、対照的に東側のザグロスでも独自に農耕・牧畜が誕生した可能性を示している。筆者は、研究の空白地帯であったザグロス地域における農耕・牧畜の起源、またこの地域からの農耕・牧畜の拡散のプロセスを解明するため、イラン・ザグロス地域を対象に考古学調査を実施した。その結果、中央ザグロスで誕生した農耕文化がどのように東漸していったか、具体的な知見を得ることができた。
著者
村戸 ドール 樋口 明弘 北村 正敬
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

喫煙は多くの疾患や健康被害の原因や増悪因子として考えられており、特に肺における閉塞性肺疾患や肺癌などの影響がよく知られている。眼表面は肺と同じくタバコの煙を含め外界からの影響を受けている。シトクロムP450(CYP)酵素系は眼表面に存在し、外因子に伴う障害を防ぐ作用も知られているがCYP1A1およびCYP2A6系は肺癌発症に関係することも報告されている。我々は6週齢雄SDラットをチャンバー内に入れ、シリンジを用いてチャンバー内に主流煙を添加することにより曝露した。暴露後、フルオレセイン染色液を用いて蛍光染色法により角膜障害を、綿糸法により涙液量を測定した。次に角膜および涙腺を摘出し、シトクロムP450(P450) 1A1, P4501B1および2B2のmRNA発現変動をリアルタイムPCR法により測定した。タバコ煙暴露ラットは角膜上皮障害が生じ、涙液量の著名な低下が認められた。角膜の免疫染色において角膜上皮障害を示すCYP1A1および8-hydroxy-2'-deoxyguanosineの酸化ストレスにより発現が上昇することが認められた。これらの結果は喫煙が角膜だけでなく涙腺にも影響したことを示唆する。
著者
渡邉 英徳
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

開発したシステムによって,災害の進捗状況をリアルタイムで可視化・アーカイブ化することができ,その結果は事後の報道内容とよく一致していた.成果物は多数のユーザに活用され,公開直後の3日間で30万ページビューを超えるアクセスがあった.加えて,その後に発生した多様な災害に対応するアップデートを施した結果,災害発生タイミングに合わせてアクセス数が増加し,これまでに60万ページビューを超えるアクセスがあり,TV,新聞,ウェブメディアで数多く言及された.このことから,研究代表者らの手法が効果を発揮しており,災害速報システムとして社会に定着しつつあると推測する.
著者
加瀬 進 荒川 智 真城 知己 新井 英靖 米田 宏樹 星野 常夫 山中 冴子 渡邉 健治
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

欧米8カ国(アメリカ・イギリス・オーストラリア・ロシア・ドイツ・フランス・デンマーク・スウェーデン)のインクルーシヴ教育は、単に障害児と非障害児を同一空間・同一教材で教授することを施行するのではなく、「学習への完全参加」をすべての子どもに保障しつつ、共に生きる市民として育ち会える環境をどのように構築するか、という大きな教育的チャレンジであり、合理的配慮のあり方も障害者差別禁止法体制との関連で探求されつつある。
著者
BERNARD Gelloz
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

酸化ナノシリコン層の青色燐光について基礎研究を行った。青色燐光は材料の酸化部分の分子種に由来し,シリコンナノ結晶は発光に関与しないことが分かった。青色燐光には6つの振動源をもつサブバンドが含まれており,励起エネルギーにより各強度を調整できる.紫外領域(275-290 nm)での発光が発見され,材料のポーア表面の吸着水に関連する分子種に起因することが分かった。化粧品,ディスプレイ,光電素子, 太陽電池への応用研究も行った。赤・青・白色発光粉末の開発。また、電気的活性なデバイス作製のため,超臨界流体を用いたナノシリコンポーア内部への金属堆積技術を開発した。
著者
吉田 あこ
出版者
実践女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

研究目的:高齢者の家庭内事故死数は一層増加しているが、その因の一つに加齢に伴う眼球水晶体の白内障化による黄変化が起こり、これが空間把握を誤認し、事故を生む。そこで加齢黄変化そのものを一時的にでも矯正する眼鏡開発、つまり、黄色を中和するその補色にあたる青系の透明薄膜の選出が目標である。研究実績:初年度は、高齢者の見えに関する実態調査(1993)から剪定された加齢対応黄透明薄膜を打ち消す青透明薄膜をカラーチャート一万色より、青み組合せ441色をコンピュータのスキャナーで取り込み、441色の透明薄膜を出力した。これを加齢対応の黄透明薄膜を打ち消し、しかも明るさの現象の少ない青系統名薄膜をカラー輝度計で測定し、矯正候補を数種選定した。この矯正効果を高齢者実態調査で用いた21色のカラーチャートを対象に、黄変化後、それぞれ元の色系統に戻るか否かを色差計で測定後、xy-色度図上で比較判定し、その結果、中度黄変化視界をかなり矯正しうる4種類の青系統明薄膜を選定した。本年度はこの薄膜の視野の暗さを補正するために、人間の目を模したカメラに透明薄膜フィルターを装着させ絞りとシャッター速度で補正調整した。さらに、試行対象として住宅屋内外の環境色を含む固有色名事典全色220の元の色への復帰情況を、元の色と中度黄変化色と本研究創出による矯正青透明薄膜使用で各色をカメラ撮りし、色度図並びに輝度率の比較で、元の色への復帰状況を比較検討し、かなりの矯正復帰効果を得た。なお、これら研究成果を日本建築学会や日本生理人類学会・日本ロボット学会及び、人間工学国際会議に発表し、意見徴収を行ったが、今後は現場で試行を重ねる方針である。
著者
小林 直樹 五十嵐 淳 田浦 健次朗 渡部 卓雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は,本研究代表者が提唱した疑似線形型システムに基づく新しいメモリ管理方式の実現により,プログラミング言語処理系のメモリ管理の信頼性および効率を改善することであった.主要な成果は以下のとおり.・擬似線形型システムに基づく型推論によるメモリの獲得・解放命令の挿入…擬似線形型システムに基づき,プログラム中で用いられる各データが最後に使用される箇所を特定し,その部分にメモリの解放命令を挿入するための方法を確立し,関数型言語MLを対象としてプロトタイプシステムを構築した.・擬似線形型システムに基づくメモリ管理のためのバイトコード言語の設計と実装…上で述べたメモリの獲得・解放命令を挿入したプログラムを実際に実行するためのバイトコード言語を設計し,実装を行った.・通常のメモリ管理の改良と本メモリ管理方式との融合…擬似線形型システムのみでは自動的に管理できないメモリが存在するため,既存のメモリ管理方式であるGCを改良して融合する方法について研究した.主な課題はGC自体の性能,特に並列計算機上のGCの性能をあげること,および疑似線形型に基づくメモリ管理によるダングリングポインタの問題の解決であった.後者については型情報を実行時まで保存し,GC時にこれを用いることによってこの問題を解決した.・線形型解析の資源使用解析への一般化…疑似線形型を拡張し,ファイルやネットワークなど一般の計算資源の使用方法の解析を行うための型システムを構築した.これにより(i)割り当てられたメモリはいずれ解放され,解放後はアクセスされない,(ii)オープンされたファイルはいずれクローズされ,クローズ後は読み書きされない,といった性質が満たされているかを統一的に検証することができる.
著者
樋口 一貴
出版者
(財)三井文庫
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

古来日本絵画において大気の表現は、画家の空間を把握する認識のありかたが如実に示される部分である。室町時代以来わが国の水墨画に多大な影響を与え続けてきた中国・南宋時代の画家牧谿や玉澗の大気表現は、薄墨を滲ませるように用いたものであった。一方着色画においては、狩野・土佐・長谷川派などが金泥や金箔で雲あるいは霞をあらわしており、平面的で概念的・装飾的印象を与える。空の色が今日我々がイメージするところの青色であらわされるのは、18世紀後半までまたねばならず、19世紀になって葛飾北斎筆『富嶽三十六景』シリーズの目にも鮮やかな青い空が巷間を席巻したのは日本絵画の空間表現における一大革命といえる。本研究では以上のように江戸時代における大気表現が装飾的なものから青い空へと変遷する過程を考察するものである。平成16年度は、14、15年度の研究に基づき、空を青く表現する絵画の調査・データベース化を進めた。この成果として、研究発表「浮世絵風景版画の大気表現-『冨嶽三十六景』の青い空」(平成16年12月21日、於慶應義塾大学)を行った。また、本研究を補い、同時に本研究から発展する問題意識として、大英博物館にて狩野休栄筆「隅田川長流図巻」の資料調査を実施した。この資料は当該研究に関連し、なおかつ平成17年度科学研究費補助金に応募中の課題「江戸都市景観図に関する総合的研究」へとつながるものである。
著者
細田 亜津子 柳原 透 後藤 始 MALAMASSAM Daud TANDO Samuel
出版者
長崎国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、外部要因による紛争後の経済活動、社会関係、伝統文化がどのように変化するかその過程で受ける影響および人々の適応についての研究である。インドネシア共和国南スラウェシ州トラジャ族は伝統的慣習、儀礼、建築学など多層的な学際的意味を有している。この人々が移住先での紛争後の新居住地の生活は簡素で経済活動はわずかに始まったばかりであった。新居住地では、小学校での教育現場や隣接した地域の相互扶助が認められ宗教間の紛争後は新しい地域づくりの萌芽があった。トラジャ族は移住先でのその地の文化に適応しつつトラジャ族としての伝統的確執は維持され新生活形態の構築が始まっていた。
著者
影山 太郎
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

英語と日本語における語彙の意味構造と構文的用法の検討を通して,動詞・名詞・形容詞を柱とする総合的なレキシコン(辞書)理論の開発を行い,14篇の論文を3部構成にして研究成果報告書をまとめた。第I部「統語論とレキシコン」(3篇)では,形態論の規則が語彙部門だけでなく統語部門でも成立すること,語と句の境界に「語+」という特別の範疇が存在すること,項の受け継ぎ現象が動詞の語彙概念構造および名詞の特質構造によって説明できることを明らかにした。第II部「動詞の意味構造とレキシコン」(5篇)では,動詞の自他交替が反使役化,脱使役化,使役化,場所表現の取り立てなどの意味操作によって行われることを示し,英語と日本語の相違を明らかにした。また,語彙概念構造における物理的位置と抽象的状態の表示形式に基づいて,言語体系と心理的外界認知とが異なることを明らかにした。第III部「名詞・形容詞の意味構造とレキシコン」(6篇)では,名詞および一部の形容詞の意味を検討し,語彙概念構造を特質構造に組み込む表記方法を提示した。これによって,動詞が名詞化された場合などで,動詞の意味構造と名詞の意味構造のつながりが明確化される。また,一般的な語形成規則によるのではなく,言語の創造性によって生じる偶発的な造語を特質構造で処理することを検討した。更に,英語が特質構造内部の主体役割や目的役割にかなり自由に言及できるのに対して,日本語はそのような意味操作が乏しく,複合語などの形態を重視することを指摘した。しかし名詞・形容詞に関する考察はまだ荒削りで,今後,副詞などの品詞も含めて更に精緻化を進めていく必要がある。
著者
渡部 圭一
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、歴史民俗学的な視点から「頭役帳」の特徴を明らかにすることで、これまで等閑視されてきた宮座組織における長期的な帳簿(記帳史料)に対する研究の進展を図った。
著者
濱田 英嗣 小野 征一郎 島 秀典
出版者
下関市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

わが国の水産物輸出は2005年現在、金額ベース1,750億円と、ここ5年間で30%増となった。いうまでもなく、韓国・中国を中心とした東アジア圏の経済成長が著しく、健康・高級食材としての水産物需要が増大し、高品質な日本産水産物の輸出が活発化しているのである。この輸出効果をタチウオを対象に調査研究した結果は以下の通りである。少なく見積もっても、タチウオは全漁獲量のうち30%は韓国に輸出されている。和歌山県M漁協では対韓輸出が開始された1999年を基点として、単価上昇率は平均1.5倍、とくに中型サイズタチウオの上昇率は4倍を越えている。大分県などでも事態は同様であり、タチ釣り漁業以外に、効率的な網漁業によってタチウオを狙う新規参入の動きも確認できた。これまで国内量販店が安く買い叩いてきた中・小型タチウオは、韓国相場の方が高くなり国内市場から流出し、結果として、タチウオ扱い量が20〜30%減少した大手量販店もある。水産物輸出が、わが国の漁家経営・流通に変化をもたらしていることが明らかとなった。しかし、輸出活発化はプラス面だけでなく、早くもタチウオ資源の急激な悪化も招いている。今後FTA交渉が進展し、さらなる水産物貿易の活発化が予測されるが、貿易活発化と資源悪化の矛盾をどう緩和させるか。輸出促進施策としての輸出相手国市場調査やパンフレット作成を否定するつもりはないが、もう一方で、秩序ある輸出体制が求められている。持続的な水産物輸出施策を構築する必要があることも明らかとなった。
著者
源 利文 冨田 勢 日高 舜介 福本 想
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

特別天然記念物であるオオサンショウウオの環境DNA検出手法を確立し、分布域全域である西日本の河川で検出試験を行った。12水系の331地点で調査を行った結果、111地点でオオサンショウウオのDNAを検出した。この結果をもとに、生息適地モデルを作成したところ、既知の生息地とほぼ一致するモデルが得られ、環境DNA分析を用いた希少種の生息適地探索が可能であることが示された。研究の過程では市民団体や高等学校との協働も行い、お互いにとって意義のある連携が可能であることが明らかとなった。
著者
田村 厚夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

自然界に存在するタンパク質等の生体分子の多くは、自己集合により規則的な構造体を形成することでその機能を発揮している。本研究では、らせん型のへリックス構造を骨格としたタンパク質(ペプチド)を人工設計し、新たな立体構造体や新機能の創製を目指した。機能として酵素機能、アミロイド線維分解能、細胞凝集能、レアメタル結合能など自然界には存在しないものを含む新機能の獲得に成功した。これらは、高齢化に伴う病気や資源の有効活用など現代社会の多くの問題解決の糸口になるものと期待される。
著者
杉本 香織
出版者
文京学院短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、ヘミングウェイの死後出版作品のマニュスクリプト研究を通じて、遺族や出版社による編纂方法とその問題点を指摘し、ヘミングウェイが生前目指した独自の自伝的アプローチの様相を明らかにした。3年間の研究期間で遂行した作品は、計4作品(『海流の中の島々』『エデンの園』『移動祝祭日』『危険な夏』)。本研究の採択前に研究を終えていた『夜明けの真実』の考察と併せ、最終的にはヘミングウェイの死後出版作品群(長編小説)全体の総括を行った。In this project, I focused on four posthumous works written by Ernest Hemingway : Islands in the Stream, The Garden of Eden, AMoveable Feast and The Dangerous Summer. Based on my research at the Hemingway Collection in Boston, where his original manuscripts are kept, I accomplished two things. First, I defined different editing methods and how they deviated from his original manuscripts by comparing an original manuscript with its corresponding published text. Second, I clarified some of the struggles Hemingway went through when he attempted - and failed - to create a new style of writing auto/biography.
著者
星野 英人
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の主題は、1細胞レベルで起こる転写制御の変化を生物発光技術のみによりリアルタイムかつ定量的に評価するシステムを構築することにある。ストレス応答性転写因子の経時空間的な細胞内局在変化とその転写制御機構を対象とした"リアルタイム"生物発光イメージング技術への発展と二色同時観察のための新規の生物発光プローブ群などの基盤技術を開発した。
著者
伊藤 万利子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究では、身体知形成過程での視覚の役割を明らかにすることを目指し、けん玉熟練者のふりけんにおける身体運動と玉の運動を記録・分析した。視覚の役割を検討する上で、視野遮蔽眼鏡を用いてけん玉熟練者の視環境の制約を行った。けん玉熟練者3名を対象とし、視野遮蔽眼鏡により視環境が制約された状況下でのふりけんの練習を計8回行った。8回の練習の前後には、どの程度見える時間があれば、ふりけんを成功させることができるのか調べる実験(pre-testとpost_test)をし、一人のけん玉熟練者につき計10回の実験を実施した。分析では、視環境の制約の有無で1)玉の運動・玉を操作するけんの運動・頭部運動がどのように変化するのか、2)回転する玉の穴にけんを入れる際に利用される視覚情報に対して、頭部運動がどのように影響を与えるのかを検討した。データ解析は学習過程(練習時データ)の分析にまで到達しておらず、現在はpre-testとpost-testのデータを中心に分析をしている。Pre-testとpost_testにおける熟練者の傾向としては、pre-testでもpost_testでも視環境の制約の有無によって玉の運動、けんの運動、頭部運動が変化した。pre-testでは視環境制約の有無によってふりけん時に利用された視覚情報が異なるとも同じとも言えなかった。一方post_testでは、視環境の制約に関わらず成功試行では利用された視覚情報は異なっておらず、成功試行と失敗試行とで利用された視覚情報が異なっていた。さらに、玉にけんを入れるときの制御に対しては、頭部運動によりその見えが相対的に緩やかになることがわかった。以上より、ふりけんが成功する場合には視環境の制約の有無にかかわらず同一の視覚情報が利用されており、各条件下で視覚情報が得られるように身体運動が変化するのではないか、つまり運動の柔軟性・多様性の背後に視覚情報の一貫性があるのではないかと考えられた。今後は現在の考察を仮説として残りのデータの解析を進めつつ検証をしていきたい。
著者
挾間 章博 三宅 将生 小林 大輔 勝田 新一郎
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

セシウムの臓器蓄積モデルとしてHeLa細胞を使用した。HeLa細胞に対してCsが増殖抑制効果を示すことを明らかにし、学術論文(FEBS Lett. 2017 Mar;591(5):718-727)として発表した。本研究で細胞内へのCsの流入が実際に起きていることが示され、Csにより解糖系酵素の発現抑制や機能抑制が起きている可能性が示された。HeLa細胞と他の細胞株のCs感受性の違いからCsの透過経路となる遺伝子を調べたところ、TRPC1、TRPM7がCsの透過経路と予想できた。
著者
森本 剣太郎
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,持続可能な魅力的ある朝市について特性導き出しこれを一つの地域資源として活用することを最終目的として,①アンケートやヒアリング調査による量的データを収集し,また②現地調査を通して朝市の細かい特性を導く質的データを収集し,これを整理分析した2カ年の研究である.その結果,朝市の魅力キーワードを抽出し,朝市が持続的に地域活性化を担う考察した.
著者
永田 和宏 須佐 匡裕 福山 博之
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

以上の結果、たたら製鉄の特徴は低温度操業(約1350℃)、高酸素ポテンシャル(約1x10^<-12>atm)、急速加熱・急速反応(砂鉄投入から20〜30分で鋼あるいは銑鉄になる)であり、炭素濃度が1.5〜3.5%でシリコン濃度はほとんどトレース程度であり、リンと硫黄濃度も溶鉱炉法より低い値であることが分かった。このシリコン結果は熱力学的平衡から予想される値より非常に低く、現代製鉄法の製鉄原理とは異なっている。(6)たたら製鉄法の原理を現代製鉄法に応用するため、炭材内装ペレットを用いて銑鉄製造機構の解明を行った。その結果、不活性ガス中で急速加熱することにより約1350℃、約8分で銑鉄が生成することが分かり、新製鉄法の指針を得た。