著者
宮本 伸二 葉玉 哲生 濱本 浩嗣 穴井 博文 迫 秀則 岩田 英理子 嶋岡 徹
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.862-865, 2002

症例は77歳,男性.身長169cm,体重66kg.特別な器具を用いず両側総腸骨動脈の拡大を伴う最大径7cmの腎下腹部大動脈瘤に対し全長12cmの小正中切開にて径腹的にYグラフト置換術を施行した.末梢側吻合は両側とも内外腸骨動脈分岐部で行った.術二日目に経口摂取を開始し術後経過良好で退院した.ほとんどの腹部大動脈置換術は小切開で可能と思われ,今後推奨される術式と考える.
著者
笹月 健彦 松下 祥 菊池 郁夫 木村 彰方 榊 佳之
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

HLAと連鎖した免疫抑制遺伝子(Is遺伝子)の発現とその医学生物学的意義を明らかにするために、Is遺伝子により支配される免疫低応答性の細胞レベル,分子レベル,および遺伝子レベルでの解析を進め、以下のような成果をおさめた。まず溶連菌細胞壁抗原(SCW),あるいは日本住血吸虫抗原(Sj)に対する免疫応答機構の細胞レベルでの解析を行なった。T4ヘルパーT細胞と抗原提示細胞の間の相互作用はHLA-DRにより遺伝的に拘束されているのに対し、T8サプレッサーT細胞による免疫抑制現象は、抗DQ単クローン抗体により阻止された。これにより、HLA-DR分子が免疫応答遺伝子の遺伝子産物として機能しているのに対し、HLA-DQ分子は免疫抑制に重要な分子であり、Is遺伝子の直接の遺伝子産物であることが示唆された。さらにSCWに対する低応答ハプロタイプであるDw2と,Sjに対する低応答ハプロタイプであるDw12のDQw1β鎖のアミノ酸配列の異同を検討し、【β_1】ドメインの高司変領域の違いにより、免疫抑制遺伝子の機能的相違がもたらされていることを示した。また、HLAと連鎖したスギ花粉抗原特異的Is遺伝子が抗原特異的サプレッサーT細胞を介して、IgE免疫低応答性を支配し、スギ花粉症に対する低抗性をもたらしていることを明らかにした。また、らい腫型らしい(LL)の感受性を支配する遺伝子がHLAと連鎖していることを示し、さらに、LL型らい患者より、らい菌抗原特異的サプレッサーT細胞の存在を証明した。LL型らい患者のらい菌抗原に対する非応答性がサプレッサーT細胞によりもたらされていることが示唆された。このように、ヒトにおける外来抗原に対する免疫応答の遺伝子支配が詳細に解明され、抗原特異的免疫調節機構におけるHLA-クラス【II】分子の役割りが明らかにされた。これらの研究成果は原因不明の難治性疾患の病因解明に資するものであり、さらに疾患の予防および治療への道を拓くものと期待される。
著者
高瀬 つぎ子 高貝 慶隆
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.521-526, 2013-06-05 (Released:2013-06-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

The nuclear accident of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station scattered radioactive cesium, following the Tohoku earthquake on March 11, 2011. In the present work, alternative radioactivity data obtained from NaI(Tl) scintillation analyzers and a Ge semi-conductor detector were compared and evaluated with respect to the correlation of those values, the accuracies and the sensitivities using as an actual agricultural product, brown rice which was contaminated by Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident.
著者
巣籠 悠輔 大澤 昇平 松尾 豊
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.744-752, 2015-02-15

近年,ビジネスの現場において,ソーシャルネットワークサービス(SNS)を人脈構築に利用するケースが増加してきている.特に,人脈形成に特化したSNSはビジネスSNSと呼ばれる.ビジネスSNS上での人脈の構築は,新規顧客開拓や転職先の確保など,何らかの効用を得ることを目的として行われるのが一般的である.ここでいう効用とは,地位や収入などのステータスが高い人と知り合いであることによって,よい取引に一緒に参加する,何か自分の身に不都合が生じた際に助けを求めることができたり,転職などにおいて自分に有利な情報を得ることができたりするなどの経済的なメリットを得られることを指す.人脈の持つ性質として,人脈の維持に時間的な制約が存在することから,1人の人物が持てる人脈の量に限りがあることがあげられる.また,人脈から獲得できる効用は必ずしも一定ではなく,時間軸に沿って変動する.そのため,人脈の構築は期待効用とリスクという2つの尺度に沿って行う必要がある.本研究では,期待効用とリスクの2つの尺度から人脈の最適化を行うことを目的とし,金融工学の理論の1つである現代ポートフォリオ理論をビジネスSNS上の人脈に適用する枠組みについて提案する.また,本研究はビジネスSNSの1つであるWantedlyのデータに対して実験を行い,クラスタ係数の大きな人脈ほど,リスクが高く最適ポートフォリオから乖離していることを示す.
出版者
前田喜兵衛等
巻号頁・発行日
vol.〔40〕 義経千本桜甕鮓屋段,四ツ谷怪談伊右衛門住家段,蘭奢待新, 1909
著者
宇野 文夫
出版者
新見公立大学
雑誌
新見公立大学紀要 (ISSN:21858489)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.29-33, 2010

2009年には,1968年以来41年ぶりとなるブタインフルエンザウイルス由来株による新型インフルエンザのパンデミックが発生した。地方都市に設置された学生数397人の短期大学においても,その影響を免れることはできず,2009年11月下旬から12月上旬および2010年1月中旬から下旬にかけての2波の流行的な患者発生が認められた。患者数の合計は少なくとも学生57人(累積罹患率14%),職員1人であった。流行制圧には,発症者の登校・出勤の停止に加えて,クラスの臨時閉鎖(休講措置)と実技演習を伴う個人予防対策の周知が,それぞれ効果的であることが示唆された。 In 2009, the emerging of the new antigenic strain of influenza A virus (H1N1), which was a swine origin, caused the first pandemic since 1968 (Dawood, FS et al.: N Engl J Med 361, 1-10, 2009). The outbreak affected students of a college in a small town of western Japan. Of 397 students, at least 57 infected cases were reported from November 1, 2009 to February 8, 2010 and the cumulative morbidity was 14%. During the period, two clusters were identified. The first one was detected from the late of November to the early of December, 2009 and another was from the middle to the late of January, 2010. The effectiveness of class suspension and personal hygiene measures for the infection control was also discussed.
著者
綾野 雄幸
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.29-34, 1965-12-31

牛肉,豚肉を加熱条件(温度・時間)を変えて水煮した場合,加熱が蛋白質の消化に如何に影響するかについて,ペプシンによる人工消化試験を行なった.(1)生肉および加熱肉(120℃,1時間処理)ともpH 1.4で最もよい消化率を示した.pH 2.0になると加熱肉の場合,急速に消化率が低下した.(2) 60℃または100℃で1時間加熱した肉は生肉とほとんど同じように消化したが120℃に1時間加熱したものはその消化率が低下した.特に肝臓部はもも部や背部の肉にくらべて著しく低下した.(3) 120℃で加熱時間を増すと,消化率は時間の経過にともない低下した.もも部や背部はほとんど同程度に消化率が低下したが,肝臓部の場合は他の二者より著しかった.本実験には幸治孝明,西康隆両君の助力を得た.ここに記して感謝の意を表す.
著者
太田 壽城 原田 敦 徳田 治彦
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.483-488, 2002-09-25
被引用文献数
8 7

高齢化社会の進行に伴って老人医療費は急速に増加し, 新しい高齢者医療の役割として老人医療費の適正化が期待されている. 本研究の目的は, 日本における大腿骨頚部骨折の医療経済に関する文献データを収集し, 大腿骨頚部骨折の治療と介護に関わる費用と, 現在効果的と考えられている対策の医療経済的効果について検討することである. 大腿骨頚部骨折の新規発症について Orimo らは国内の50施設をモニターし, 日本全体における大腿骨頚部骨折の新規発症を89,900~94,900人 (平均92,400人) と推計している. 大腿骨頚部骨折の予後については, 大腿骨頚部骨折により歩行可能な者から寝たきりあるいは要介助となる者は36~42%と推測され, 大腿骨頚部骨折後の生命予後は平均5年程度はあると推察された. 一方, 大腿骨頚部骨折の手術・入院費用は140~180万円, 介護保険制度の単位から算出した最も介護度の低い要介護1の年間介護福祉施設サービス費用は242万円と推定された. これらの文献データを基に, 日本における大腿骨頚部骨折の医療と介護にかかる費用を推計すると, 年間の大腿骨頚部骨折にかかわる医療・介護費用は5,318.5~6,359.0億円と推計された. 大腿骨頚部骨折の予防あるいは骨粗鬆症の治療と大腿骨頚部骨折の医療費について検討した. 日本において80歳代の女性全員 (約273万人) にヒッププロテクターを適用した場合, 単純なコストベネフィットの計算では144.7~243.0億円の適正化という結果になった. ホルモン補充療法も骨折患者の発生を顕著に低下させ, 費用削減効果があるとされている. 日本において80歳代の女性 (約273万人) の半数がビスフォスフォネートを服用した場合の推計を行うと, コストの方がベネフィットを大きく上回る結果となった. しかし, 薬剤中止後も治療期間と同程度の期間効果が継続すると仮定すると, コストとベネフィットが拮抗した.
著者
小林 拓朗 李 東烈 徐 開欽 李 玉友 稲森 悠平
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.159-166, 2011-03-20 (Released:2012-03-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

食品標準成分に基づき細分類された家庭系生ごみと事業系食品廃棄物について,それぞれ高温メタン発酵と高温水素発酵のバッチ実験を行い,メタンおよび水素ガス生成ポテンシャルを調査した.投入VSあたりメタン生成量は,原料の脂質含有率との間に有意な正の相関,炭水化物含有率との間に有意な負の相関を有しており,炭水化物系原料と比較して脂質系原料は平均値で2倍に相当する高いメタン生成量を示した.投入VSあたり水素生成量は,原料の炭水化物含有率に対して有意な正の相関,脂質含有率に対し有意な負の相関を有していた.炭水化物,脂質,タンパク質各含有率とVSあたりメタンおよび水素生成量を因子とする主成分分析の結果から,栄養成分に基づいた各原料の水素発酵またはメタン発酵それぞれの処理方式への適性評価が可能であることが示された.