著者
北川 勝彦 キタガワ カツヒコ Katsuhiko KITAGAWA

本研究は、諸外国と日本の実に多面的な国際関係についての歴史的研究の一部をなす日本-アフリカ関係を経済関係ないしその発展から考察している。また、本研究は、第一に、戦前期日本の「領事報告」 第二に、戦後、海外市場調査に重要な役割を演じた日本貿易振興会から刊行された『通商弘報』に依拠して進められてきた。 具体的には、日本と南アフリカとの経済関係の歴史に焦点をあて、第一に、戦前期日本の南アフリカへの経済的関心がいつ頃から生まれ、南アフリカに関する経済情報がどのように収集され、それを日本国内の当該業者に報知するどのようなシステムが形成されていたのか、また、戦後の日本ではどのように南アフリカの経済情報が収集され、それを関連業者に拡散させるどのようなシステムが形成されたのか、を明らかにした。第二に、戦前と戦後において、日本と南アフリカの貿易はどれほどの展開を示していたのか、また、日本と南アフリカの通商関係とその展開の中で、それぞれの段階でどのような問題が生じ、さらに、日本の対南アフリカ貿易を促進するために、どのような市場獲得政策が展開されたのかについても明らかにしている。 本論では、第二次世界大戦を挟んで二つの時期にわけて考察した。第1章では、日本が海外へと進出しはじめ、しかもアフリカ大陸各地域に対する経済的関心を有するにいたった時期には、いったいどのような国際経済関係が展開されていたのか。ここでは、何ゆえに海外経済情報収集の制度的枠組の構築が急がれ、海外経済事情調査が行われたのか、その背景について考察した。 第2章では、戦前期の日本において、南アフリカに関する経済情報の報知に重要な役割を演じたのは、当時発行された「貿易雑誌」であった。まず、戦前期に外務省通商局が刊行した南アフリカ連邦に関する経済調査報告書の中で重要と思われるものを概観し、次に、戦前期において海外経済情報の国内への報知(情報の拡散)に大きな役割を演じた「貿易雑誌」に掲載された南アフリカ経済情報を整理した。 第3章では、南アフリカ連邦形成期から第二次世界大戦の勃発に至る約30年間に、日本の商品がどのような経路で南アフリカに輸出され、南アフリカではどの地方のどのような人々にどのような経路でもたらされ消費されたのか、他方、南アフリカの商品がどのような経路で日本に輸出され、日本ではどのような経路でいかなる地方のどのような人々に利用されるにいたったのか、その具体的な状況を描き出そうと試みた。しかし、両大戦間期における日本の対南アフリカ貿易とそれにかかわりをもった日本企業の活動の考察にとどまっている。 第4章では、1930年代の世界恐慌期における日本-南アフリカ通商関係の展開とそれににともなってあらわれてきた諸問題について考察した。第一に、当時の南アフリカ市場に関する情報収集の一端を担った朝日新聞記者による南アフリカ市場調査を紹介し、第二に、ケープタウン在住日本領事のもたらした通商報告に基づいて世界恐慌期番こおをする日本の対南アフリカ貿易の展開を概観した。第三に、ダーバン在住の名誉領事からもたらされた通商報告に依拠して南アフリカ市場への日本品の進出から生じた具体的な通商問題の一端を明らかにし、第四に、世界恐慌期に南アフリ力連邦でとられた通商政策と日本の対南アフリカ通商政策について当時の領事報告番こ依拠して明らかにした。第5章では、両大戦間期における日本-南アフリカ通商関係史のなかで、とくに1930年10月の『南阿入国居住其他二関スル日阿取極』締結の時期に焦点をあわせて、本『取極』とその背後で展開された「南阿羊毛購入対策」について、主として日本領事報告と外交記録に依拠しながら考察した。第2部では、戦後の関係を扱っているが、まず、第6章で番よ、第二次世界大戦の終結から1980年代までの国際経済、日本経済および南アフリカ経済の展開を簡単にふりかえっている。次いで、第7章では、第一に、戦後日本の海外市場調査機関として今日にいたるまで重要な役割を演じている「日本貿易振興会」(JETRO)の設立経過をふりかえり、第二に、JETRO発行の『通商弘報』(日刊一こ転載された南アフリカ市場調査を概観した。第三に、この『通商弘報』その他の資料に依拠して戦後日本の対南アフリカ貿易の展開過程を概観し、戦後日本-南アフリカ通商関係番こみられた問題を提示している。 第8章では、過去の関係の継承とこれまでには見られなかった新たな関係の展開とが混在している日本・南アフリカ関係の現状を観察しようと試みた。その場合、とくに1980年代の対南アフリカ経済制裁期からマンデラ政権誕生にいたる時期を取りあげ、(1)日本・南アフリカ貿易の現状、(2)日本の対南アフリカ投資、(3)日本の対南アフリカ通商政策について順次考察した。 南アフリカでは、最初の非人種的民主的選挙後、「暫定憲法」の下で樹立された「国民統一政府」(Government of National Unity)を中心にして、「虹の国家」の建設が始まった。第9章では、第一に、マンデラ政権誕生後の南アフリカ経済の動向を概観し、第二に、日本と南アフリカとの貿易関係の現状について考察した。次いで、第三番こ、投資市場としての南アフリカの変化と最近の日本企業の対南アフリカ投資の動向を明らかにし、第四に、南アフリカの通商戦略とそれに伴って現れてきた対日要求の意味について検討している。 ところで、本研究では、2つの付論を設けている。付論Iでは、サハラ砂漠以南のアフリカのなかで、対象とする地域を英領熱帯アフリカに限定し、第二次世界大戦前の日本との通商関係の発展を考察した。すなわち、戦前期の日本と英領熱帯アフリカの貿易はどれほどの展開を示していたのか、また、英領熱帯アフリカへの日本製品の進出が諸外国との関係ににおいでどのような問題を引き起こすことになったのか、という点について考察している。
出版者
商船学校
巻号頁・発行日
1911
著者
立岡 裕士
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.326-340, 2015-03-13

In 1936-1948, Koyama−shoten published 8 books under the title of Sin−Hudoki Sosyo(New Chorography Series). Koyama had confidence that this series aiming at Heimatdichtung would gain popularity. Finally this series suffered a setback by the War. It is said that the series succeeded to a certain extent. This author survey the posession of public libraries to make clear whether the books of this series were read everywhere in Japan. The survey reveals that the distribution of the books has spatial partiality, but that the partiality is not so keen.
著者
上林 美保子 綱島 不二雄
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.465-470, 1997-01-31

【緒言】各種の半矮性遺伝子を有する短稈水稲品種を用いた多肥・密植栽培によって水稲の収量は,飛躍的に増加した.しかし,多肥・密植栽培は各種病害の多発を随伴し,また農薬多用による環境汚染が指摘されてきた.このような趨勢に対して,低投入・環境保全型農業(Low Input Sustainable Agriclulture=LISA)の生産体系の構築の必要性が指摘されている.しかし,このような観点からの農業生産体系の構築に関する実証的研究は極めて少ない.本研究では,LISAの観点からの農業生産体系の構築のための基礎資料を得るため,現在の良質品種の一つササニシキを用い,栽植密度と肥量水準を慣行よりも減少させることによって,水稲個体群の病気,倒伏に対する耐性を高め,しかも収量を慣行より減少させない栽培法の確立ができるかを検討した.
著者
大下 紘史 古林 敬顕 中田 俊彦
出版者
The Japan Institute of Energy
雑誌
日本エネルギー学会誌 (ISSN:09168753)
巻号頁・発行日
vol.90, no.11, pp.1047-1056, 2011
被引用文献数
3

Recently, the microalgae that can produce fats and hydrocarbons attracts a lot of attention as means to solve the issue of global warming. The purposes of this study are to design microalgae-based biodiesel fuel (BDF) production system using exhaust gas from thermal power plants and considering regional characteristics, and to analysis potential of the microalgae from the viewpoint of energy balance, CO<SUB>2</SUB> balance and fuel production cost. The system consists of five components: Culture, harvesting, extraction, transportation, conversion. In addition, the methodology of this study has three processes: Allocating microalgae culture plants and BDF production plants, optimizing transportation using Geographic Information System (GIS) with Network Analyst, and evaluating energy balance and CO<SUB>2</SUB> reduction of the system. Besides, to minimize BDF production cost, we change the number of BDF production plants and consider trade-off between transportation cost and BDF production plants costs. The result shows that microalgae-based BDF production system has high potential for CO<SUB>2</SUB> reduction and the possibility to competitive with the fossil fuel cost.
著者
石川 哲也
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.4-8, 2014-02-28 (Released:2014-03-05)
参考文献数
17

SPring-8 Angstrom Compact free electron LAser(SACLA)is the world second X-ray laser which started user operation in 2012. As an introduction of the special issue, here we show how the SACLA project got started. While originated as a tiny R&D program within RIKEN, the SACLA project has been grown to one of the five National Key Technology projects in Japan. SACLA is the first step of the Compact X-ray free electron laser. Further downsizing of the facility is envisaged.
著者
Naoaki YAMADA Takashi KITAMORI Fumiyo KITAMORI Kanako ISHIGAMI Koji IWANAGA Taiki ITOU Ryosuke KOBAYASHI Shino KUMABE Takuya DOI Junko SATO Yumi WAKO Minoru TSUCHITANI
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.14-0513, (Released:2015-05-08)
被引用文献数
2

A 7-year-old female boxer dog died suddenly without any clinical signs. It was suspected that the dog had arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy (ARVC) due to ventricular premature complexes and ventricular tachycardia at 3 years of age. The final diagnosis of ARVC was confirmed by histological characteristics, such as loss of cardiocytes and fibrofatty replacement, occurring in the right and left ventricular walls. In the cardiocytes, non-lipid vacuoles were observed. Cardiac fibrosis and intimal thickening of the small arteries occurred without fatty replacement in the inner muscle layer including the papillary muscles of the left ventricular wall. This paper describes the pathomorphological details of an ARVC case with coincidental cardiac fibrosis in the inner muscle layer of the left ventricular wall.
著者
邑橋 一輝 川原 圭博 浅見 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.36, pp.71-76, 2013-05-09

GNU Radioに代表されるソフトウェア無線により,無線の物理層の研究をハードウェア開発から解き放ち,ソフトウェアベースでアイデアを具現化できるようになった.本稿は,電磁波を対象にすることが多かったソフトウェア無線を水中音響通信に応用する際の構築方法について紹介する.水中音響通信に関する資料は少なく,水中音響トランスデューサ等高価であること,これまで専用のハードウェアで研究することが一般的であったことから,日本では,この分野の研究に対するハードルは高かった.本稿は消費者向けに販売されている水中マイクを送受信器両方に使用し,廉価かつ簡易な水中音響通信テストベットの構築法を示す.水中音響通信の中心周波数は数10kHzとマイクロ波に比べて千分の1から10万分1程度と低いため,ソフトウェアベースで複雑な信号処理を行うことができる.
著者
太田 康嗣 山本 辰久 神吉 正和 松浦 龍基 辻田 圭一
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会全国大会研究発表論文集 日本社会情報学会 第17回全国大会
巻号頁・発行日
pp.133, 2002 (Released:2002-09-19)

Since public planning process is now heavily depending upon government officials' personal experiences and skills, sharing knowledge and information of its departments is essential to encourage efficient and logical planning.This paper is focusing on profiles and promising advantages of a bland-new package system "KGM (Knowledge Government Manager) (TM)". KGM integrates major government information systems such as planning, budgeting, staffing and documents database, and also introduces analytical techniques (i.e. operations research). Through these, it is going to support local governments to improve efficiency and to reduce time and/or cost; furthermore, KGM ultimately aims to realize democratic society.
著者
杉本 信夫
出版者
沖縄国際大学
雑誌
地域研究シリーズ
巻号頁・発行日
vol.35, pp.1-84, 2008

"わらべうた再創造ノート"については、沖縄国際大学南島文化研究所紀要『南島文化』第28号「読谷のわらべうた再創造ノート」に書いたのでここでは省きたい。同様の趣旨で、今回は沖縄国際大学南島文化研究所の2005年から2008年にわたる3年間の与那国島調査に特別研究員として参加させていただき、その成果をここに発表し、報告をしたいと思う。なお、わたしの与那国伝承音楽のフィールドワークは、沖縄の日本復帰前の1970にさかのぼるので、以下にその経過を記録した上で本論に入りたい。
著者
坂巻 英一
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2011年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.98, 2011 (Released:2011-12-01)

携帯電話の普及とともに,携帯電話に関するデータを企業のマーケティング戦略立 案へ活用しようといった動きが今日盛んになってきている。中でも,検索エンジンに は全国のユーザが毎日膨大な量の検索語句を入力しているにも関わらず,データベー スに蓄積されたデータは殆ど活用されずに捨てられているのが現状である。携帯電話 はユーザの性年代といった個人属性を特定することが可能であるため,携帯電話から 入力された検索語句を活用することで,マーケティング戦略立案に対して有効である と考えられる。本研究では,検索エンジンに入力されたデータを基に,携帯端末の解 約を予測するモデルを提案するとともに,携帯電話会社に於いて提案モデルを解約防 止施策に適用した事例を紹介することを目的とする。
著者
片山 泰久
出版者
素粒子論グループ 素粒子研究編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.4, no.9, pp.97-111, 1952-09

場の理論の発散を除くために導入されたFrom Factorを中心として非局所的相互作用の理解と非局所場の理論の関係を求め、これによつて非局所場理論はどの様に一般化することが可能かを論ずる。
著者
今野 海航 園田 潤 金澤 靖 佐藤 源之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J98-C, no.5, pp.87-95, 2015-05-01

FDTD (Finite-Difference Time-Domain)法を用いた実環境における電波環境解析を実現するために,撮影した対象環境中の物体までの距離情報が直接得られる深度センサと,三次元点群処理のライブラリであるPCL (Point Cloud Library)による三次元復元技術を応用した実環境FDTD数値モデル構築システムを開発する.本システムは,(1)深度センサで測定された距離情報からPCLにより深度センサを基準にした相対座標を取得し,(2)得られた相対座標と対象環境中の基準平面から深度センサの傾き角を算出することで対象環境中の水平垂直面を基準にした絶対座標を計算し,(3)ポイントクラウドデータが存在する三次元セル上に電気定数を与えることでFDTD数値モデルを構築するものである.本論文では,実際に室内二つの対象環境でFDTD数値モデルを構築し,三次元座標の精度や処理時間を評価している.
著者
ダワードルジ ニャムバヤル 濱田 佑希 越島 一郎
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.229-237, 2014-04-19

プロジェクト・マネジメントでは、人材資源からプロジェクトで必要な技術者を使用して目的を達成する必要がある。そのためプロジェクトでは十分な知識と経験を持ってない新しいエンジニアを雇用するのは非常に難しいである。しかしながら、新興国ではプロジェクト・マネジメントに熟達した人材が限られている。このことから、プロジェクトを遂行しつつ人材育成を図らざるを得ない状況にある。人材教育にあって二つの方法がある。一つはOJT (On the Job Training), もう一つはOff-JT (Off the Job Training)である。プロジェクトの時間的な制約で教育する時間がない。そのため、教育に従事できる人材の不足を考慮したプロジェクトエンジニア育成のための教育方法の開発が望まれている。本論では本来のプロジェクトと教育プロジェクトを両立させる手法の開発を目指しているので紹介する。