著者
スタンディッシュ ポール
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A, 教育研究 (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.243-262, 2002-03

本稿ではまず初めに,市民教育における最近の動向の文化的背景を素描する.続いて,正邪の問題をめぐる教師の自信喪失という道徳教育の問題に取り組む,イギリスとウエールズにおける試みを紹介し,これを批判的に吟味する.次に,1990年代後期における道徳教育から市民教育への関心の推移という傾向に関連して,1998年に英国で発行されたクリックレポート,『市民性のための教育と学校における民主主義の教授』について簡潔に論ずる.このレポートが首尾一貫し良識あるものであることを認めた上で,本稿は,特に社会への包括(social inclusion)に関し,市民教育の考え方についてより幅広い問いを投げかける.結論として,本稿で考察してきたすべての動向において,倫理,そして市民性についての矮小化されすぎた考え方が浸透しているということを指摘する.人々の生活を特色づけこれに意味を与えている,身近で,局所的で,互いに絡み合い,そしておそらくは葛藤をもはらむ諸々の忠誠の形を重んずるような形で,公的世界と私的世界の関係をとらえ直すことが,特にグローバライゼーションの時代においては必要である.このことは,教育実践全体に関わるものである.
著者
福島 由恵
出版者
日経BP社
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.330, pp.84-89, 2010-05

3連休の初日の20日は、「上野動物園」の開園記念日で誰でも入園料が無料になる。園内では多くの動物にあえるほか、不忍池の風景をゆっくり眺めて一日中楽しもう。西園と東園エリアは道を挟んで分かれているが、この間を移動するモノレールも快適だ。
著者
齋藤 瞳 佐藤 豪
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.774-785, 2014-08-01

交流分析理論に基づき,大学生における自我状態・透過性調整力および基本的構えと精神身体症状の関連について明らかにすることを目的とした.大学生169名(男性143名,女性26名)を分析対象とし,自我状態および透過性調整力を測定するPCエゴグラム,基本的構えを測定するOKグラム,精神身体症状を測定するHopkins Symptom Checklist(HSCL)を施行した.その結果,自我状態に関しては特に批判的な親の自我状態である"Critical Parent(CP)"と自由な子どもの自我状態である"Free Child(FC)"が精神身体症状に正の影響,自我状態を切り替える力とされる透過性調整力"Permeability Control Power(PC)"と基本的構えの"自己肯定の構え"と"他者肯定の構え"は精神身体症状に負の影響があることが示唆された.またFCは,特に大人の自我状態であるAdult(A)が低い場合に精神身体症状と関連があることが示された.以上より,大学生においては,透過性調整力や自己肯定の構え・他者肯定の構えはストレスコントロールを高める働きをするのに対し,CPの自我状態,およびAの自我状態が機能しない場合のFCの自我状態が,ストレスを症状化する方向へ働く可能性が考えられた.
著者
菊池 健一郎 荒川 薫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIS, スマートインフォメディアシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.677, pp.55-60, 2006-03-15
被引用文献数
3

月齢3-4ヵ月の低月齢乳児の啼泣の周波数解析を行うことにより啼泣の原因を推定するシステムを提案する.著者らは先に月齢5ヶ月以上の高月齢乳児の啼泣に対し、「空腹」「眠気」なる二つの原因を取り上げ,周波数解析により、その原因を約8割の正答率で推定できることを示したが、4ヵ月以下の低月齢児の啼泣はその周波数成分が異なるので、同じルールでこれらの原因を推定することができなかった。本稿では、新たに月齢3-4ヵ月児の「空腹」「眠気」「眠気空腹」「不快」に置ける啼泣を周波数解析し、それぞれの啼泣理由に異なる特徴があることを明らかにした.そこで,この性質を用いて,それぞれの啼泣理由を分類するルールベースシステムを構築し、実際の月齢3-4ヵ月児の啼泣に適用し,約80%の正答率で正しく識別することができた.
著者
今井 むつみ
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.124, pp.259-264, 2003-12-19

一般には大人がひとつひとつのことばを丁寧に繰り返し教え込むことによって子どもはことばを学習していくと、考えられているかもしれない。しかし、実際には子どもはことばがその指示対象の少数の事例(多くは一事例)と結び付けられるのを観察するだけである。一事例に対する漠然とした指差しから発話されたことばの意味を推論することは論理的には不可能なことである(Goodman 1983; Quine 1960)。それにもかかわらず,子どもは、2?6歳の間に、一日平均6語、多い時期には10語も新しいことばを覚えると言われている。本講演では名詞と動詞に焦点をあて、子どもがアクションイベントを観察中に新奇な名詞あるいは動詞を聞いたとき、子どもがイベントのどの側面に新奇語をマッピングし、どのような知識と方略を用いてそれらの語の意味を推論し、他の事例にその語を般用していくのか、その知識や方略が発達的にどのように変わるのか、などについて議論する。It is logically impossible to induce meanings of words based on the observation of a limited number of instances. In spite of this problem of induction, young children map new words to their meanings instantly, and learn new words at a rate of 6-10 words a day. In this talk, I present the results from a series of experiments that show how young children infer meanings of novel nouns and verbs. I then explore the mechanism underlying young children's lexical acquisition.
著者
下斗米 貴之 大森 隆司
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.319-332, 2004 (Released:2007-04-13)
参考文献数
20
被引用文献数
2

Recently, many researchers have reported about how children acquire a word meaning. Especially some of them reported that the verb meaning development is delayed to that of noun. In these reports, they used the ANOVA (the ANalysis Of VAriance) for the detection of a difference in the behavioral data. But ANOVA is not a sufficient way of analysis in the sense that we can't know the detailed mechanism of the meaning acquisition in children. So, in this paper, we developed a model based analysis of behavioral data that enable more detailed structure estimation, and analyzed the children's word acquisition data with the method. From the analysis, we found a hierarchical mixture of binomial distribution with three sub-modules is a suitable model for the data. The parameter change in the model indicated that what is changing between three to five years infant is a choice of proper learning action from the recognition of verb/noun situation.
著者
吉田 精作 田口 修三 堀 伸二郎
出版者
室内環境学会
雑誌
室内環境学会誌 (ISSN:21864314)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.7-15, 2004 (Released:2012-10-29)
参考文献数
36

シロアリ防除家屋における有機リン系殺虫剤クロルピリホスと有機塩素系共力剤S-421のヒト曝露の程度についての研究を, 空気および貯蔵米中残留レベルを調査することにより行った。防除処理後5年間の調査結果は既に報告した。今回, 防除処理後5~7年間(家屋B)と5~9年間(家屋F)の空気および貯蔵精白米中クロルピリホスとS-421レベルを報告する。家屋Bリビング空気中のクロルピリホスとS-421濃度はそれぞれ0.005~0.09μg/m3, 0.15~1.03μg/m3の範囲であった。家屋F和室空気中のクロルピリホスとS-421濃度はそれぞれ0.05~0.11μg/m3, 0.01~0.02μg/m3の範囲であった。室内空気中防除剤濃度は季節変動し, 夏期に高く, 冬期に低かった。貯蔵精白米中防除剤濃度は空気中濃度を反映して変動した。家屋Bの室内空気中クロルピリホスとS-421濃度は夏期においては7年間減少せず, 家屋Fにおけるそれらの濃度は防除後9年間で若干の低下傾向を示した。
著者
川上 進 松岡 雅裕 岡本 浩明 細木 信也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2786-2797, 2000-12-25
被引用文献数
3

歩行や車の運転に不可欠な空間視は, 網膜に映るオプティカルフローに基づいて行われることを, 心理学者のGibsonが50年ほど前に見出している.この空間視には, 「自己移動方向の検出」と「環境を構成する平面の空間認識(平面の3次元方位と奥行)」がある.神経生理学が進展し, 自己移動方向をオプティカルフローから検出する細胞が大脳の運動視中枢(MST野)で見出されている.しかし, オプティカルフローに基づいて平面の空間認識を行う細胞は, Gibsonの心理学的発見にかかわらず報告されておらず, またモデルの報告もない.本論文では, 3種類の平面パラメータ(平面の3次元方位, 平面に到達するまでの時間, 平面までの最短距離)を, オプティカルフローを統合して検出するアルゴリズムを報告する.到達時間と方位は複比変換と極変換を用いて, また最短距離と方位は小円変換を用いて検出される.次に, これらアルゴリズムと前報の「大脳MT野で局所運動を検出する神経網モデル(Vision Research, 1996, 1999)」に基づいて, 網膜からMT野を経てMST野までの神経網をモデル化する.また, そのモデル神経網(0.16億個の細胞とそれを結ぶ4.6億本の神経網で構成される)をコンピュータ上に構築して, 到達時間と方位を正しく検出できることを示す.
著者
椎尾 一郎 辻田 眸
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1221-1228, 2007-03-15
被引用文献数
4

PDA や携帯電話などの表示画面が小さな小型情報機器では,大きなサイズのWWW ページなどを閲覧する場合に,スクロール操作と閲覧操作を頻繁に繰り返す必要がある.本論文では,表示コンテンツのスクロール操作と編集操作を直感的に切り替える手段として,文鎮メタファに基づくインタフェース手法を提案する.平滑な机の上に紙片を置き,片手で紙片に文字を書き込もうとする場合,筆記具の先だけを紙の上において動かすと,文字を書くことができず紙が滑ってしまうことがある.このような状況では,人は,手のひらを使って,紙を押さえて固定して文字を書こうとする.手を使って文鎮のように紙を押さえるこの動作をメタファとして利用すれば,スクロールと編集操作をスムーズに切り替えるインタフェースが実現可能である.そこで,本論文では,ペン入力が可能なPDAなどの手のひらが当たる部分にタッチセンサを取り付けたデバイスを提案する.これにより,手のひらがタッチセンサに触れていないときに,ペンでドラッグするとコンテンツがスクロールするインタフェースを実現できる.本論文では,このインタフェースを実装し,地図,WWW ページ,写真を閲覧するアプリケーションを試作し評価した.Conventional scrolling methods for small sized display in PDAs or mobile phones are difficult to use when frequent switching of scrolling and editing operations are required, for example, browsing and operating large sized WWW pages. In this paper, we propose a new user-interface method to provide seamless switching between scrolling and other operations such as editing, based on "Paperweight Metaphor". A sheet of paper that has been placed on a slippery table is difficult to draw on. Therefore, in order to write or draw something on the sheet of paper, a person must secure the paper with his/her palm to avoid the paper from moving. This will be a good metaphor to design switching operation of scroll and editing modes. We have made prototype systems by placing a touch sensor under each PDA display where user's palm will be hit. We also have developed application programs to browse maps, WWWpages and photographs, which switch scrolling and other operation mode by the sensor output, and have evaluated them.
著者
阿部 秀樹
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.53-57, 1997-03-31

本研究は一自閉症幼児の2年間に渡る療育から、ひらがなが獲得され、概念形成が行われた経過について考察を行った。療育経過はI期、II期の2つの期に分けた。I期では、ひらがなの読みが獲得されたが、その要因として弁別課題や構成課題の大きな進歩があげられた。また、II期では、なぞなぞやルール活動などの概念学習課題の中に、I期で獲得された文字を活用したことが、概念の達成の手がかりとなっていた。さらに、集団療育場面においても、概念が形成されたことが、場面・状況の把握の向上や、集団への積極的な参加につながっていたことが示唆された。
著者
岩波 洋造
出版者
The Botanical Society of Japan
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.892, pp.371-376, 1962
被引用文献数
2

マツバボタンの花の雄ずいの運動に関する研究の一部として, 花糸の内部構造について調査を行なった.<br>マツバボタンの花糸は, 周囲が厚い膜にかこまれているにもかかわらず, 全体がたいへん柔らかい感 じで, たとえば, ピスにはさんで切片を作ると, 花糸がつぶれてしまう. したがって, パラフィン法, 凍 結法によって切片を作り, その横断面, 縦断面を観察したところ, マツバボタンの花糸は, 表皮, 柔組織 および管東組織の3つの部分からなっていることがわかった.<br>表皮の細胞は縦に長く(10×30×100μ<sup>3</sup>), 外側の膜だけが大へん厚くなり, その一部が突起となってい た. 柔組織の細胞も縦長で, 表皮細胞よりはかなり小型であるが, その大きさは大小さまざまで, ここに は細胞間げきが多くみられた. このような柔組織中の細胞間げきは, とくに花糸の基部において多くみら れ, そのため, ときには個々の柔細胞が細胞間げきのなかに浮いている状態にちかいところもあった. 花 糸の中央部にある管束の部分には, 3~4本の道管と, これを囲んで多くの師管が存在していた.<br>マツバボタンと花の形や葉の形はたいへんちがうが, これと同属であるスベリヒユにおいても雄ずいの 運動がみられる (後報). このスベリヒユの花糸の内部構造は, 全体にマツバボタンのそれより小型である が, 細胞の並び方や細胞間げきがあることなど, ほぼマツバボタンと同様であった.<br>マツバボタンの花糸を水で封じ, これを凍結させ (炭酸ガスの噴出による) て切片を作ったとき, 組織 が凍っているときはパラフィン切片と同様のことが観察されたが, 氷が溶けるにしたがってその切片は強 く収縮した. この収縮の過程において, 表皮の大きな細胞は, 突起の部分から内側に折れ曲るようにして 収縮してきた. したがって, 花糸の表皮細胞は, 本来そのように曲る膜の性質をもっていて, 自然状態に おいては, これが吸収による内圧によって押し拡げられていると考えられる. 生体のまま切片を作ると, 花糸の横断切片はすべてつぶれた状態になることや, 花糸が厚い膜につつまれていながら全体としてはご く柔らかい感じがするのは, そのためであろう. この表皮細胞の膜のうちがわに曲る物理的な性質は, 雄 ずいの運動の機構にある程度関与していると想像される. (横浜市立大学生物学教室)