著者
坂野 秀樹 陸 金林 中村 哲 鹿野 清宏 河原 英紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声
巻号頁・発行日
vol.97, no.177, pp.15-20, 1997-07-17
被引用文献数
9

これまで音声の短時間位相は振幅情報に比べると聴覚的に重要でないという理由でなおざりにされてきた. しかし, 高品質な音声合成や符号化を考えた場合, それは必ずしもあてはまる訳ではなく, 短時間位相も合成音の品質に大きく関わってくる. ところが, 振幅スペクトルにはいくつかのパラメータ化法が確立されており効率的な表現が可能なのに対し, 短時間位相にはそのような方法は確立されていない. そこで, 短時間位相を効率良く表現する方法を提案し, 主観評価及び客観評価の両方から提案手法の有効性を示す.
著者
保坂 毅 濱渦 亮子
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究代表者はこれまでに、リボソーム攻撃性抗生物質を活用した遺伝学的および生理学的に異なる二つのアプローチがバクテリアの潜在能力を引き出す手法として有効であることを明らかにしてきた。本研究において、その手法がバクテリアのみならずカビや酵母(真核微生物)の潜在能力活性化にも有効であることを実験的に証明した。加えて、ハイグロマイシン B 耐性変異および同抗生物質によるホルミシス効果でカビの潜在的二次代謝能が向上する現象に着目して、その仕組みについて詳しく解析したところ、リボソーム攻撃性抗生物質を用いた同じ手法でも、カビと細菌とでは異なる仕組みで潜在能力が引き出される可能性があることを見出した。
著者
竹本 幹夫
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

江戸初期以前に成立した非現行謡曲(番外曲)全曲245曲を翻刻・校訂し、それを踏まえ謡曲校訂の理論を確立し、モデルとなる校訂本文を作成するのが、本研究の目的である。曲ごとに複数の写本を翻刻したため、当初の245曲に67曲及ばず、ナ行までの178曲となった。未了分は今後も翻刻作業を継続する。この作業の過程で、謡曲本文の遡源的研究の可能性に想到した。これにより謡曲本文がどのように系統化したかのパターン分析の目安を得た。これは世阿弥自筆能本と現存謡本諸本との関係性の想定論に基づく理論であるが、世阿弥自筆本の存在しない非現行曲についても、ある程度の想定をすることが、曲ごとに可能となった。
著者
追塩 千尋
出版者
北海学園大学
雑誌
北海学園大学人文論集 (ISSN:09199608)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.A21-A44, 2003-03-31
著者
小松 英輔 松沢 和宏 下宮 忠雄
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

この研究の出発点は、言語学習ソシュールの残した自筆原稿や学生の講義ノートで研究者自身がマイクロフィルム撮影し、そこから研究することであった。この段階で我々が実証したことは、マイクロフィルムは専門の技術者にその作製をまかせるより、研究者が自分で影写した方がはるかに安価で上質のものができるということであった。次の段階でこれを全国の研究者に公開した。そのためにマイクロフィルムを長巻のままとせず、帰国して紙に定着させ、整理した上で、分類目録を発行して検索しやすくした。その結果、この資料集から多くの論文や著書が生れた。この研究に対して、日本国内から幾つかの反応があった。その一つは日本人が外国の文化に対してこういうことをやるのは、研究者として謙虚さに欠けるという批判、また、純粋に、資料を提供するという目的でやればいいのに、君の書いた英語版の序文は討論家気取りである等。自分自身の著わした著書は外国でも幾つかの書許の対象になったが、日本国内では、大学院の教科書にも使われるようになった(例、名古屋大学、大学院)同書の英訳版は補遺を伴って全三巻として英国のパ-ガモン書店より発行された(二巻まで既刊)。欧文研究誌FENESTRAはこれらの研究の成果を海外に発信するために企画された。ソシュールの『一般言語学講義』は言語学の「原論」であり、また他の多くの分野の人々に刺激を与えている。この研究誌の発行を通じて、多くの全国の研究者とネットワークを作った。
著者
Takuo Emoto Naoto Sasaki Tomoya Yamashita Kazuyuki Kasahara Keiko Yodoi Yoshihiro Sasaki Takuya Matsumoto Taiji Mizoguchi Ken-ichi Hirata
出版者
日本循環器学会
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-14-0644, (Released:2014-10-18)
参考文献数
22
被引用文献数
9 40

Background:The protective function of regulatory T cells (Treg) has been identified in experimental atherosclerosis, but the contribution of Tregto the pathogenesis of human coronary artery disease (CAD) remains poorly understood. We investigated Tregand regulatory T-cell/effector T-cell (Treg/Teff) ratio in peripheral blood samples from CAD patients using a new strategy for precise identification of Treg.Methods and Results:Peripheral blood samples were collected from 73 stable CAD patients (55 middle-aged CAD patients and 18 old CAD patients) and 64 controls (47 middle-aged controls and 17 young controls). CD3+CD4+FoxP3+T cells were divided into 3 fractions: CD45RA+FoxP3lowresting Treg(Fr1), CD45RA–FoxP3highactivated Treg(Fr2), and CD45RA–FoxP3lownon-Treg(Fr3). CAD patients had lower percentages of Fr1 and Fr2 and higher percentages of Fr3 and CD45RA–Foxp3–Teff(Fr4+5) within the CD3+CD4+T-cell population compared to age-matched controls. Treg/Teffratio (Fr1+2/Fr3+4+5) in CAD patients was also markedly lower than in controls (middle-aged control, 0.17±0.09 vs. middle-aged CAD, 0.10±0.05; P<0.001). The percentage of CD4+CD28nullT cells within the CD4+T-cell population was negatively correlated with Treg/Teffratio, excluding CD4+CD28nullT cells <0.3% (r=–0.27, P<0.05). High-sensitivity C-reactive protein was also negatively correlated with Treg/Teffratio (r=–0.22, P<0.05).Conclusions:CAD patients had reduced Tregand Treg/Teffratio compared to healthy controls. The present findings may be helpful when developing immunotherapy for the prevention of CAD.
著者
大場 孝宏 末永 光 一松 時生 羽田野 雄大 満生 慎二 鈴木 正柯
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.12, pp.949-953, 2008-12-15
被引用文献数
5

(1)K9系酵母使用の清酒もろみから親株より2〜3倍のリンゴ酸生産性を示す9株を取得した。アルコールの生成、ボーメの切れは親株と同等であり、9株ともに親株よりリンゴ酸を2〜3倍生産し、酢酸の生産量は半分以下である。(2)K901使用のもろみからは、高頻度でリンゴ酸高生産株が得られた。(3)得られたリンゴ酸高生産株について、シクロヘキシミドヘの耐性及びジメチルコハク酸への耐性、またマルトース資化性及びグリセロール資化性を調べた結果、既に報告されている菌株と異なる性質を持っていると考えられる。(4)分離したリンゴ酸高生産株すべてが親株より酢酸生産量が低下していることから、分離したリンゴ酸高生産株では酢酸から生成したアセチル-CoAとグリオキシル酸からリンゴ酸を生成する経路が活性化されるような変異がおきているため、リンゴ酸高生産性を獲得したのではないかと推察される。
著者
森中 康弘 菰淵 寛仁
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.7-11, 2001-01-26
被引用文献数
2

高速撮像に適した8チャンネル並列読み出しCCDを開発した。撮像領域を短冊状の8つのブロックに分割し、各々のブロックをそれぞれ独立のアンプから読み出す。VCCDの隣にPD(フォトダイオード)のない領域を作り、VCCDの最終段に配置したHCCDにかけて絞り込む。そそて、VCCDの絞込みによって生じたスペースに読み出しアンプとその周辺回路を配置する。これによりアンプ間特性の均一化を図ることができる。VCCDの高速転送のために裏打ち配線構造を導入し、VCCDの折れ曲がり構造に対しては3次元のデバイスシミュレーションにより構造最適化を行った。セルサイズを11.5μm×11.5μmで設計し、またVCCDの絞込み構造によりアンプをFDAに最隣接させることで、高ダイナミックレンジを実現した。
著者
安田 純生
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
樟蔭国文学 (ISSN:03898792)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.23-29, 1983-11-06
著者
兄井 彰 須﨑 康臣 横山 正幸
出版者
日本生活体験学習学会事務局
雑誌
生活体験学習研究 : 日本生活体験学習学会誌 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.43-50, 2013-01

平成20年から平成22年の3カ年にかけて、福岡県内の小学4年生、6年生、中学2年生、3年生、計44,806人を対象に実施した自尊感情(Rosenberg, M.(1965)の作成した質問紙の和訳)と生活実態(①就寝時間、②遊ぶ時間、③メディア視聴時間、④学習時間、⑤読書量、⑥友人の人数、⑦手伝いの頻度、⑧被叱責体験の頻度、⑨被称賛体験の頻度、⑩授業中の挙手・発言の頻度)について、調査を行ったデータを基に、要因間の因果関係を推定できる共分散構造分析を用いて、子どもの自尊感情と生活のあり方の関係について検討した。その結果、保護者から褒められることが子どもの自尊感情に影響を与えており、保護者が褒めることにより自尊感情は高まることが確かめられた。さらに、子どもの自尊感情は、就寝時間やお手伝い、挙手・発言行動に影響を与え、自尊感情が高いと早く寝るようになり、お手伝いを頻繁に行い、授業中に手を挙げたり、発言したりする行動が多くなることが確かめられた。
著者
相見 昌吾
出版者
筑波大学比較民俗研究会
雑誌
比較民俗研究 : for Asian folklore studies
巻号頁・発行日
no.19, pp.141-152, 2003-11-30

近代以後の国家は、ウェストファリア条約(1648・三十年戦争の後の講和条約)の結果誕生したもので、それを主権国家と呼ぶ。(この概念が定着するまで、約百年はかかっている。)主権国家は当然歴史的過程において出現した国家であり、①国家主権、②領土を中心とする領域、③永続的に生活する住民、④統治する政府、という四つの構成要素からなる。・・・
著者
石戸 教嗣
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.185-194, 313, 1, 2002-06-25

今日の学校における公共性の錯綜した状況は、ポスト福祉国家のあり方をめぐって、保守主義対リベラリズム、ネオリベラリズム対ラジカル・デモクラシーという枠において論じられてきた。また、最近ではグローバル化した社会と文化多元主義という観点からのとらえ直しもなされている。本論では、まず学校の公共性をめぐる各種の具体的な問題を問題群I〜IIIの3つの群に整理し、それらの3つの問題群をこれまでの公共性論と関連づけて考察した。問題群皿として取り上げられるのは、コミュニケーション能力を十分に持たない、特殊なニーズを抱える子どもたちのそれである。アレントは先駆的にこの問題に光を当てていた。アレントは彼女自身の体験から「見捨てられた境遇」の人々について注意を払っていたが、そのような存在から脱却した英雄的市民から成る公共圏のイメージにとらわれ、両者を統一する理論を提起できなかった。この理論的課題に答える上で、本論ではルーマンのシステム論における「組み入れと排除」の概念、および「尊厳」概念に注目した。ルーマンはシステム化した機能主義社会においてはシステムにいながらにして排除される可能性があることを指摘する。排除された者は自己の尊厳を守るために、関わりをもつ社会的状況から退出し、ますます尊厳を失うことになる。このような悪循環から脱却するためにはその問題に「世論」が注目し、「人物」として関心をもつことがまず求められる。このようにして、本論では、「公共性」を自己表出の可能性およびその回復のプロセスとしてとらえた。
著者
林 文男 上村 佳孝
出版者
首都大学東京
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

昆虫類のオスの交尾器の多様性は顕著である.そうした多様性は,雌雄の交尾器の接合を通して進化してきたものである.しかし,交尾器のそれぞれの部分の機能については,その方法上の問題からほとんんど解明されていない.そこで,本研究では,新しい手法として,微細蛍光ビーズをオスの交尾器の各部に塗布し,交尾後にその蛍光ビーズがメスの腹部末端のどこに付着するのかを調べることによって,交尾器の接合部を明らかにした.大型昆虫であるカマキリ類を用いて,この手法を確立し,カマキリ類のオスの左右非対称な交尾器の機能が,メスの産卵弁を持ち上げることにあることを明らかにした.この手法は交尾器の機能解明に広く応用できる.
著者
水間 公一 西尾 昭彦 臼井 朋明 相川 真 後藤 幸夫 中山 豊 渋谷 均 古家 隆司 福井 四郎 戸塚 守夫 早坂 滉
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.1037-1041, 1980-12-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
20

甲状腺癌は他臓器の癌に比べ発症年齢のピークは若年者側にある.しかし小児症例は多くはないが著者らは教室における経験例を中心に診断,治療の面について検討を加えた.術前から癌の確診をえた症例は少なく,早期診断と治療が要求される小児例においては甲状腺腫に対して生検を含む積極的手段を構じ癌の確診をうるよう努力すべきであろう.また術式は,高い根治性と最小の合併症が要求されるため慎重に各症例に最適な術式を撰択すべきである.予後は成人とほぼ同様に良好と考えてよいと思われるが,死亡原因の大半を占める肺転移に対する対策は今後さらに検討・改善を加えてゆくべきと思われる.
著者
福島 俊彦 鈴木 眞一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.24-26, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
4

永続的上皮小体機能低下症は,甲状腺手術において避けるべき合併症の一つである。本稿では,当科で行っている上皮小体温存手技の実際を解説する。1.Capsular dissection:要点は,膜解剖の正確な把握である。Surgical thyroid fasciaとtrue thyroid fasciaを確認し,その間で,剝離操作を行う。これにより,自ずと上皮小体はin situに温存できる。加えて,反回神経はsurgical thyroid fasciaと同じ層で温存されることになる。2.上皮小体の自家移植:中心領域のリンパ節郭清を併施する場合,下腺の血流は犠牲にせざるをえないことが多いので,摘出しmincingしたものを胸鎖乳突筋内に自家移植する。胸腺舌部に迷入している下腺も可及的に確認し,同様に自家移植する。3.Surgical loupeの使用:高解像で明るい2.2倍レンズのloupeとloupe装着型のLEDライトを好んで使用している。これにより,明視野下に膜解剖の認識が可能である。
著者
井上拓哉 山本邦雄 乃万司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.3, pp.1-8, 2014-07-28

本稿では,広域での経路案内において事前に経路全体を確認したいユーザに向け,曲がる場所など経路案内する上で重要なところを拡大しつつ,重要でないところは簡略化して経路全体を示す案内地図作成システムを提案する.提案システムの特徴は,重要地点周辺を拡大した部分地図を抽出し,それらを画像として上手く貼り付け,いわば,コラージュのように組み合わせて経路全体を表示する点にある.提案システムの開発により,案内地図が上手く作成できるかを検証した.
著者
五十嵐 学
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

インフルエンザの流行を効率よく制御するためには、抗原変異の機序を理解し、予測することが必要である。本研究では、インフルエンザウイルスの主要抗原であるヘマグルチニン(HA)とそのモノクローナル抗体(mAb)に焦点をあて、ウイルスがmAbからエスケープする際に起こるHA上のアミノ酸置換の特徴を明らかにすることを目的とした。具体的には、アミノ酸置換に伴うHA-mAb複合体の相互作用変化、およびHAの機能や構造安定性への影響を分子シミュレーション等の計算科学的手法により解析し、実際にエスケープ変異株で観測されるアミノ酸と比較した。