著者
安西 信一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本年度は、研究の中でも特に基礎的な原理的分野に焦点を当てて行った。中でも日常性の美学や環境美学など、庭園という美的芸術的現象の中核をなしながら、しかもそれを現代美学の先端的な問題と接合するために重要な分野にかんする基礎研究が中心になった。具体的には、とりわけ現代日本におけるポストモダン的な美的芸術的諸現象を一つの特権的な事例として取り上げ、それを深く考究することで、そこにおいて顕著な、「今ここ」の重視、「近さの美学」、「日常性の美学」、「歴史回帰」、「ドメスティック指向(地方・国内・家庭指向)」などに光を当てた。そのことにより、庭園の根幹をなす土地への帰着とそこからの超越、また時間的には、現在でありながら永遠を指向するというその二重性を、広いコンテクストから考察することに成功した。と同時に、それらがグローバル化、フラット化、情報化、二次元化といったものの影響を受け、同時代的な変化を強く被っていることにも注目し、それらと調和しつつも、それらに対抗する戦略について考察した(たとえば、ハイブリッド性を確保しつつ、今ここに流れ込む歴史に回帰し、それを咀嚼し、批判的に発展させることなど)。またそのような観点から、現代の庭園美学は、当然テーマパーク研究を視野に含めなければならないが、不完全ながらそのような研究も行った。さらに同様の関心から、現代の映像作品の中で、庭園がどのように描かれるかにも注目し、自然と人工、開かれと閉ざされなどの二重性が、現代の二次元映像の中でも十分に意味を持ちうることを示した。さらに現代美学的な観点から最も重要と思われる風景式庭園(およびランドスケープ・アーキテクチャーやランドアート)についての受容史的な考察も引き続き行っている。
著者
Ren Fuji Zhou Qiang Shi Hongchi
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.100, pp.17-23, 2000-05-22

重要文の自動抽出とは、文章中から重要な文を、コンピュータにより抜き出すということである。多くの電子化文書が流通することに従って、重要文の自動抽出は益々重要な課題になり、実用的な自動抽出システムが要請されている。我々は、統計情報と文章の構造特徴に基づくアプローチを用い、科学技術論文の重要文自動抽出システムを開発している。一方、いかに重要文を自動抽出するシステムを評価するかが多くの手法を提案したが、標準的な評価方法までに至ってない。人間の重要文抽出状況を調査した上、一つの評価方法を提案する。最後に、この評価手法を用い、我々のシステムの性能を考察する。
著者
田代 眞人 小田切 孝人 田中 利典
出版者
自治医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

1.通常は予後の良いインフルエンザは、ハイリスク群では肺炎死をもたらし、重要な疾患として認識されるべきである。そこで、インフルエンザ肺炎の発症機序として、混合感染細菌が産生するプロテア-ゼによるウイルス感染性の増強(活性化)という機序を考え、これをマウスのモデルで証明するとともに、プロテア-ゼ阻害剤の投与によって、このようなインフルエンザ肺炎を治療しうる可能性を示した。2.ブドウ球菌によるマウス肺混合感染モデルでの解析。(1)4株の黄色ブドウ球菌は、インフルエンザウイルスの赤血球凝集素(HA)を解裂活性化しうるプロテア-ゼを産生していた。(2)インフルエンザウイルスとこれらの細菌は、各々の単独感染では、マウス肺に対して病原性を示さない。しかし、マウスに混合経鼻感染すると、ウイルスの活性化が亢進して多段増殖が進行して、致死的肺炎へと進展した。(3)これらの細菌性プロテア-ゼに対する阻害剤ロイペプチンを、混合感染マウスに連続投与すると、ウイルスの活性化が抑えられ、ウイルス増殖の低下と肺病変が軽減し、マウスは致死的肺炎から回復した。3.その他の細菌性プロテア-ゼについての検討。(1)現在のところ、肺炎球菌のプロテア-ゼには、直接ウイルスのHAを解裂活性化するものは検出されていない。これらの中には、血清プラズミノ-ゲンを活性化しうるものがあり、間接的にウイルスの感染性を高めている可能性がある。(2)ヘモフイルスは、IgA抗体を分解するプロテア-ゼを産生している。これが、インフルエンザウイルスの表層感染に対する生体防御機構を障碍している可能性がある。
著者
浅岡 定幸
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

親・疎水鎖の連結点にポルフィリンまたはレニウム錯体を導入した両親媒性液晶ブロック共重合体を用いることによって、薄膜中で生ずる完全垂直配向シリンダー型のミクロ相分離界面をテンプレートとして、これらの色素分子が環状に集積化された構造体がスメクチック層状構造に従って一定の距離をもって周期配列した構造体を形成することに成功した。これらの共重合体を混合製膜したブレンド薄膜では、同様の垂直配向シリンダー型のミクロ相分離構造が維持されており、犠牲剤を含む二酸化炭素飽和溶液中でポルフィリンからレニウム錯体への光誘起電子移動に基づく光反応が進行することが示唆された。
著者
永井 美之 水本 清久 石浜 明 田代 真人 永田 恭介 野本 明男
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1993

ウイルスの体内伝播機構や臓器向性、宿主域などを決定する機構をウイルスと宿主相互の特異的分子認識の立場から解析する「ウイルス病原性の分子基盤」という新視点からの研究グループを組織し、重点領域研究を申請する準備活動を行った。具体的には、シンポジウム「ウイルス遺伝子機能研究の新展開」(平成5年12月7〜8日、重点領域研究RNAレプリコンとの共催)を開催、わが国における当該分野の研究の現状を分析し今後の発展のさせ方について討議した。また班会議(同年8月28日、11月8日)、活動者会議(同年9月11日、12月1日、12月25日)においては、国際専門誌におけるわが国研究機関の論文発表状況の調査、シンポジウムの総括、なども行い、重点領域研究申請へと集約した。その結果、ウイルス複製の各過程に必須の生体側分子を分離・同定し、これら分子の生体内での組織分布を明らかにすることにより個体への種および組織特異的なウイルス感染の分子メカニズムを追求すること、すなわち、ウイルス複製と病原性発現機構を分子の水準で確立すべき機が熟していること、またそのことが同時に新しい生体分子の発見や既知生体分子の新機能の発見をも約束することを強く認識した。このように本領域が活気あふれる領域であるとの再確認の上に立ち、「ウイルス感染を決定する生体機能」を平成7年度発足重点領域研究として申請する運びとなった。尚、本総合研究の研究代表者永井美之が、同じく平成7年発足の「エイズ重点」申請代表者に強く推されている状況についても種々討議した。その結果、「エイズ重点」は永井が領域申請代表者を務めることとし、「ウイルス感染を決定する生体機能」は重点領域研究「RNAレプリコン」(平成4年〜6年度、代表 野本明男)の継承と飛躍の意味を込めて野本が担当することとした。
著者
美馬 圭介 引原 隆士
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EE, 電子通信エネルギー技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.309, pp.1-6, 2010-11-19

本報告では,リチウムイオン電池と電気二重層キャパシタの併用効果の検討に向け,各素子の数式モデルを導出する.このモデルは,素子内部における電流密度,電位のほか,電気伝導に関与するイオン濃度の分布に着目し,充放電における各々の現象の支配方程式に基づく動的挙動の表現可能な偏微分方程式系となる.実験結果およびモデルを用いた数値計算結果に基づき,両蓄電デバイスの電気的特性の検討を行なう.
著者
豊田 裕 中潟 直己 馬場 忠 佐藤 英明 斉藤 泉 岩倉 洋一郎
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1)卵成熟と受精の制御A)卵胞液から卵丘膨化を促進させる熱に安定な物質を分離した。また本物質は精子核の膨化に対しても促進的に作用することを明らかにした。B)c-mos遺伝子欠損マウスの卵成熟と受精について解析するとともに、c-mos遺伝子欠損により単為発生が誘起されることを明らかにした。また、遺伝子ターゲット法によりアクロシン遺伝子欠損マウスを作製した。このようなマウスから得た精子は透明帯を通過し卵子に侵入するものの、受精成立に要する時間が長くなることを明らかにした。C)膨化卵丘に含まれる液状成分に受精促進作用のあること明らかにした。2)初期卵割の制御A)プロジェステロンにより単為発生の誘起されることを明らかにした。また、XX型胚とXY型胚を凝集したキメラ胚は雄になるが、組織学的に解析しキメラ胚における性腺の分化過程を明らかにした。B)エンドセリン遺伝子欠損マウスを作製しホモ化したものでは頭蓋顔面に奇形を誘発することを明らかにした。C)ラット初期胚の内部細胞塊に由来する多分化能細胞株を樹立した。3)初期胚保存の制御A)マウス初期胚の凍結保存条件、特に凍結に用いる溶液や平衡時間について解析し、胚保存の最適条件を決定した。また、超急速凍結法によりラットの受精卵の凍結保存に成功した。
著者
Shao-Kuang CHANG Dan-Yuan LO Hen-Wei WEI Hung-Chih KUO
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.13-0281, (Released:2014-10-28)
被引用文献数
2 37

This study determined the antimicrobial resistance profiles of Escherichia coli isolates from dogs with a presumptive diagnosis of urinary tract infection (UTI). Urine samples from 201 dogs with UTI diagnosed through clinical examination and urinalysis were processed for isolation of Escherichia coli. Colonies from pure cultures were identified by biochemical reactions (n=114) and were tested for susceptibility to 18 antimicrobials. The two most frequent antimicrobials showing resistance in Urinary E. coli isolates were oxytetracycline and ampicillin. Among the resistant isolates, 17 resistance patterns were observed, with 12 patterns involving multidrug resistance (MDR). Of the 69 tetracycline-resistant E. coli isolates, tet(B) was the predominant resistance determinant and was detected in 50.9% of the isolates, whereas the remaining 25.5% isolates carried the tet(A) determinant. Most ampicillin and/or amoxicillin-resistant E. coli isolates carried blaTEM-1 genes. Class 1 integrons were prevalent (28.9%) and contained previously described gene cassettes that are implicated primarily in resistance to aminoglycosides and trimethoprim (dfrA1, dfrA17-aadA5). Of the 44 quinolone-resistant E. coli isolates, 38 were resistant to nalidixic acid, and 6 were resistant to nalidixic acid, ciprofloxacin and enrofloxacin. Chromosomal point mutations were found in the GyrA (Ser83Leu) and ParC (Ser80Ile) genes. Furthermore, the aminoglycoside resistance gene aacC2, the chloramphenicol resistant gene cmlA and the florfenicol resistant gene floR were also identified. This study revealed an alarming rate of antimicrobial resistance among E. coli isolates from dogs with UTIs.
著者
小笠 航 片寄 晴弘
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.77-79, 2014-09-12

ここ数年,プロジェクションマッピングの社会的認知が高まりつつある.ただし,プロジェクションマッピングの鑑賞者は,その内容に関与することはできない場合が多い.本稿では,タブレット端末を用い,多人数の鑑賞者が映像の内容やエフェクトにリアルタイムに関与することを可能とするアプリケーョンを提案する.これにより,映像内に複数ユーザによる動きを反映させ,ユーザ同士のインタラクションを実現することができる.映像としてだけではなく,アトラクションとしてのプロジェクションマッピングの機会をユーザに提供する.
著者
小島 理永 藤田 和樹 島本 英樹 内藤 智之 門田 浩二 河野 史倫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,大学生の生活習慣やメンタルヘルス等の健康状態を多元的視点から評価可能な生活習慣尺度を作成し,その妥当性を検討するとともに,回答者の健康状態と経時変化が確認できるWebアンケートシステムを構築した.そして,フィットネスとメンタルヘルスの因果関係について検討した結果,大学生の体力の低下は,直接的にメンタルヘルスに,また,間接的にソーシャルヘルスに影響を及ぼしており,性差によって影響要因が異なっていたことが明らかになった.これらの成果より,健康教育における本アンケートシステムの汎用性が確認できた.
著者
金 宗郁
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.158-168,216, 2006-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15

本稿は,近年自治体において行っている改革政策を検討しながら,自治体の政策パフォーマンスに影響を与える要因を析出する。また,こうした自治体の政策パフォーマンスを地域住民は,いかに受け止めているのかを分析する。分析対象は,672市(2001年基準)であり,自治体の政策パフォーマンスとして行政サービスと各政策や制度を設定する。分析では,政策パフォーマンスの規定要因として各自治体の組織規範(政策執行規範•組織運営規範•公共参加規範)を設定し検証を行った。さらに,自治体に対する影響力について地域住民がいかに意識しているかを分析した結果,地域住民は,各市の政策パフォーマンスが自分の日常生活においてあまり,影響力がないと認識していることがわかった。ただ,住民参加政策が進んでいる市ほど,自治体が自分の生活を改善してくれると思う住民が多いことがわかった。
著者
宇座 美代子 田場 真由美 儀間 繼子 當山 裕子 小笹 美子 古謝 安子 平良 一彦 宮城 瑛利奈
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、保健師マインド育成プログラムを検討するために保健師・看護師・住民に沖縄の伝統文化に関連した支援内容等を調査した。保健師マインドを育成するためには、保健師のアイデンティティが確立され始める保健師経験3年目に焦点を当て、沖縄の伝統文化に関連した知識や対応技術等の内容を中心に、自らの「経験」を語ることによって「自信」に繋がるプログラム構築の必要性が示唆された。
著者
櫻井 敬三
出版者
日本経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

インタビュー調査(初年度から2年半、技術革新を実現した62社の中小製造企業)とアンケート調査(2014年6~7月、回収250社)を実施した。その結果から下請型企業と独立型中小企業では相違があった。技術醸成期間は下請型企業が社長主導、独立型企業が取引先や大学支援を受けながら新技術を獲得している。事業化推進期間は差異はなかった。ただし用途先調査や新たな取引先との接触は行われていないことがわかった。他に情報源や業界別分析も合わせて行った。
出版者
日経BP社
雑誌
日経情報ストラテジ- (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.56-60, 2004-12

CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)は、顧客の理解がかなめとなる。実際は、購買履歴をはじめとする限られた顧客情報から推察するが、購買顧客の年齢や性別、居住地といった属性情報をいくら分析しても顧客の顔はなかなか見えてこない。だれが何を買ったかだけではなく、「なぜ」買ったのかを探り出す必要がある。