著者
太田 恭子
出版者
一般財団法人日本英文学会
雑誌
英文學研究 (ISSN:00393649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.35-50, 1954-12-30

It is generally supposed that Ulysses is the incarnation of Stephen's theory of "static beauty," and that his esthetic theory owes for the most part to Thomas Aquinas' esthetics, as Stephen himself approves it. The perusal of Portrait reveals, however, an unexpected fact that his esthetics was rooted into his own experience-a kind of ecstacy he was thrown into from time to time. The "static beauty" was nothing but the image of beauty he conceived in this holy silence of rapture. In such mysterious instant he escaped from time and space and elevated to a higher dimension where he bathed in a new life of all with a glee of fullness. It was a feeling of possession du monde, at the same time, of the bliss of being made one with God. In order to induce this rapture he fostered the habit of contemplation, as was the case with Proust. In Stephen Hero, Stephen mentions the sudden spiritual manifestation caused by contemplation, which he calls epiphany. This corresponds to the radiance, the supreme quality of beauty in Stephen's esthetics. Stephen believes that it is for the man of letters to record these epiphanies with extreme care, as they are the most delicate and evanescent of moments. Ulysses is an attempt to eternalize such momental experience. As it was an experience of possession du tnonde, at once, of communion with something divine, obtained through a trivial object, he must pack eternity and all into a short and narrow space and time (space-Dublin Time-one day). This bold attempt was enabled by the double structure of time in monologue interieur. By this new technique he imbued cunningly eternity and all into his grain, pretending to follow faithfully his hero's stream of consciousness. Here we find the intrinsic resemblance with Proust who also tried to fix such instance of ecstacy. But Proust wrote it from inside of "Je", while Joyce tried to build it up into an objective frame work. This striking difference was caused by their mode of existence. Though we cannot tell whether he was conscious or not, Ulysses is an alibi of God. In this manner the theme of Ulysses mirrors the tragedy of Joyce himself.
著者
市 育代
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

酸化ストレスは動脈硬化発症と進展に深く関与している。セラミドはアポトーシスを誘導する生理活性脂質で、細胞内のセカンドメッセンジャーとして機能していることが知られている。我々は以前、ヒトの血漿セラミドが動脈硬化の脂質マーカーと相関関係にあることを報告している。そこで本研究では、酸化ストレスにおけるセラミド代謝の変化を動物実験によって明らかにするために、四塩化炭素による劇症肝炎時に誘発される酸化ストレスが、肝臓だけでなく、他の臓器においてもセラミド代謝に影響をあたえるかについて調べた。組織のセラミドは、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)を用いて測定した。次に、ストレプトゾトシンによる糖尿病ラットにおいて、各臓器でセラミド代謝の変化がみられるか、またセラミドの蓄積が糖尿病の合併症に関与しているかについて検討した。肝臓のセラミドには変化はみられなかったが、血漿と腎臓のセラミドは糖尿病ラットで増加した。またセラミドの産生酵素であるスフィンゴミエリナーゼ(SMase)活性は、血中の分泌型SMaseが有意に増加した。このように、酸化ストレスを介した過度のセラミド蓄積は動脈硬化の発症因子のひとつであることが示唆された。
著者
後藤 美緒
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.51-68, 2011-06-30 (Released:2013-03-01)
参考文献数
30

本稿は,戦間期の学生団体である東京帝大新人会(1919-1929,以下新人会)が行った読書実践を論じる.その際,とりわけ諸活動を遂行していく中で新人会が得た「科学から空想へ」という着想に注目し,着想にいたる論理を分析することを通し,戦間期に高等教育を受けた人びとの社会運動が,いかなる可能性と挫折を有していたのかを明らかにする.機関誌や労働学校での講義といった新人会の読書実践から浮かび上がるのは,会員らの読書実践が社会的属性を超えた連帯の模索であったことである.会員らは読書を通じて,労働者や貧困層をとりまく劣悪な生活環境や労働状況を認識し,その中で生きる彼らもまた,同一の時代に生きる人々であることを自覚した.そして,読書を自らの社会的地位を強化する読み方と手段から,いわゆる社会的弱者を包摂する社会を改善するための手段へと展開した.その過程において彼らは,知識の送り手と受け手の立場が無限に交替することを経験し,諸活動の遂行の中で自らが働きかけた現状に対し,応答する責任に気づいた.テクストを用いることで現状を「科学」的に解釈し,さらにその解釈を新たな共同性の「空想」へと発展させた新人会の読書実践は,自己に胚胎する受動性への気づきに支えられた活動であった.

1 0 0 0 OA 田宮孝勇伝

出版者
中村芳松
巻号頁・発行日
1888
著者
出口 拓彦
出版者
奈良教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

授業における私語の発生過程について, コンピュータ・シミュレーションや質問紙調査等によって検討した。シミュレーションの結果, (1)周囲の状況を考慮せずに私語をする確率が10%程度であっても, 教室全体に私語が広がる可能性があること, (2)教室内の仲間集団の数が多いほど私語が広がりやすくなること等が示唆された。一方, 質問紙調査では, 友人の数と私語の頻度・被私語頻度との間に, 弱い正の関連があること等が示された。また, 私語の発生位置に関するシミュレーションと質問紙調査の結果は, ほぼ一致した。

1 0 0 0 OA 横須賀案内記

著者
伴田滔洋, 股野東洋 編
出版者
軍港堂
巻号頁・発行日
1908
著者
堀田 政二
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本課題では,あるサンプル集合(陽サンプル)と,その原点対象となる鏡像サンプル(陰サンプル)を一つのガウス分布で表現する分布を提案し,これらから導かれる統計的パターン認識手法を開発し,これまで発見的に拡張されてきた相互部分空間法や複数サンプルの同時クラス分類を効率的に行う手法を統計的に導くことを可能とした.これらの手法を画像認識,音声認識,動画像認識などの大規模データに適用して,その有効性を確認した.
著者
福嶋 誠宣 米満 洋己 新井 康平 梶原 武久
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : 日本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.3-21, 2013-03-31

本論文の目的は,経営計画の有用性について検討することにある.現在では,経営計画はマネジメント・コントロール・システムの基礎的な構成要素として理解されるようになっている.実際,我々が行ったレビューの結果でも,多くの管理会計の教科書が経営計画に言及していた.しかし,マネジメント・コントロール・システムとしての経営計画の有用性に関する経験的な知見の蓄積は十分とはいえない.そのためか,経営計画に関して,教科書間で異なる説明がなされている点も存在するというのが現状である.そこで本論文では,経営計画の諸要素が,企業業績に与える影響を探索的に検証した.その結果,経営計画の策定目的や更新方法が,適切な資源配分の評価尺度といえる総資産利益率(ROA)に有意な影響を与えていることが明らかとなった.
著者
彦根市史編集委員会編
出版者
彦根市
巻号頁・発行日
2001

1 0 0 0 滋賀縣史

著者
滋賀縣編
出版者
滋賀縣
巻号頁・発行日
1927
著者
佐藤 亮太 廣田 啓一 山本 太郎 谷本 茂明 塩野入 理 金井 敦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.140, pp.87-94, 2007-07-12

インターネット社会における匿名性に関する問題の一解決策として,我々は分散アイデンティティエスクロー(DECIDE : DECentralized IDentity Escrow)を提案している.DECIDEは,ユーザの匿名性を担保する管理者が複数存在する仕組みで,一定数以上の管理者が合意するとユーザの匿名性がユーザ間や管理者に対して剥奪される特徴をもつ.本稿では,この仕組みの適用先として,匿名性に由来する誹謗中傷などの問題が多発している電子掲示板に着目し,掲示板上でのユーザの振る舞いについてモデル化を行い,シミュレーション実験やその検証,補足をする被験者実験の結果を示すことで,インターネット社会における匿名のあり方についての基礎的な検討を行う.
著者
ラムザン 優子
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は多言語多文化共生日本語教育を実践する教員の多文化性の理解の仕方を明白にし、それが日本語学習者の多文化性の開発にどのように影響を及ぼすのかを明確にし、現在世界の教育一般に求められている多文化間のコミュニケーションを円滑に執行することができる人材育成を目的にした言語教育に貢献するという目的の基に執行された。結果は「多文化共生教育」を目指すに あたり、言語教育の範疇で「多文化性」とは何なのかという教員自身の捉え方の重要さを明白にし、教員のその捉え方によって授業の到達目標、評価基準、授業活動、課題設定が全く違った体を成す事を示した。
著者
北山 加一郎 山本 太郎
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.39, no.446, pp.430-436, 1927-03-31
著者
濱田 淑子 本田 秋子
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学芹沢[ケイ]介美術工芸館年報
巻号頁・発行日
vol.4, pp.[59]-[59], 2012

人間の形をしたジャイナ教の宇宙像をローカ・プルシャと呼ぶ。考えうる限りの全世界と全時間を含み、世界の霊魂は上方世界、中央世界、下方世界の三界に住み分け、輪廻していると考える。最上位にあるのが完成者で上方世界は天上界である。下方には地獄界がある。中央には人間が住む円盤状の地上界がある。取り上げた資料はインド・ラジャスタン州かグジャラート付近で、17 世紀に制作されたものと考えられ、木綿地に顔料で描かれた掛け絵である。しかも、他に比べて大きく絵画的であり、サンスクリット語の詳細な説明書きが付されていて、きわめて貴重で、興味深い資料といえる。