著者
児玉 謙太郎 園田 耕平
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

近年、認知科学分野でSynergyという概念が着目されている。Synergyとは、多自由度複雑系が、安定的な振る舞いを柔軟に組織化する事態を説明するために考案された概念であり、次元の縮減(微視的には多自由度な系が如何に自由度を減じるか)、相互補償(要素間の柔軟な相互作用関係)などの特徴をもつ。本発表では、運動研究等の事例を通しSynergyの現代的解釈を紹介し、内部観測理論との関連について論じる。
著者
清水 善和
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤地理 (ISSN:0454241X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.9-58, 1993-03
被引用文献数
5

(1)笠原諸島智島列島の聟島,媒島,嫁島,北之島の植生の現況とその特徴を明らかにし,あわせて野生化ヤギが森林の動態にどのような影響を与えているか解析するたあに調査を行った。(2)調査は1990年7月に行われた。森林植生を対象に聟島の19調査区と媒島の5調査区において,100本法による植生調査を行った。各植生型の代表的な林分では,さらに詳細な毎木調査を行った。草地植生については,聟島の9調査区と北之島の10調査区において出現種の被度・群度を求めた。(3)聟島列島の森林植生をモクタチバナ型低木林,シマイスノキ型低木林,タコノキ・ビロウ型低木林の3型に区分し,聟島と媒島の植生図を作成した。モクタチバナ型:モクタチバナとヤロードが優占する低木林で,媒島ではウドノキの大径木が混生する。聟島列島の残存林のほとんどを占める。シマイスノキ型:シマイスノキといくつかの随伴種の出現で特徴づけられる低木林。聟島に小林分がわずかに残るのみ。タコノキ・ビロウ型:ほとんどタコノキまたはオガサワラビロウの純林状をなす低木林。各地の乾燥した立地に分布する。(4)父島や母島の森林植生との比較から,モクタチバナ型,シマイスノキ型,タコノキ・ビロウ型低木林は,それぞれ清水(1989)のシマホルトノキ型高木林,シマイスノキ型低木林,シマシャリンバイ型低木林に対応すると考えられる。ただし,モクタチバナ型低木林は,組成的には父島や母島の湿性高木林に類似しながら,立地条件や林分構造は乾性低木林にちかいという特異な性格を有している。(5)聟島の面積の約80%,媒島の約90%は草地あるいは裸地と化している。とくに,媒島では赤色土の流亡が著しい。嫁島と北之島は全島が草地となっている。聟島ではオキナワミチシバ・フタシベネズミノオ群落,媒島ではコウライシバ群落,嫁島ではスズメノヒエ・シマチカラシバ群落,北之島ではソナレシバ群落がそれぞれ優占している。北之島には小笠原最大のオガサワラアザミ群落がある。(6)智島と媒島の残存森林は,野生化ヤギの食害のため,低木類と林床の樹木の実生・稚樹個体をまったく欠いている。林床の草本類もエダウチチジミザサが散生するのみで非常に貧弱である。(7)野生化ヤギの影響による森林後退のメカニズムは次のように推定される:ヤギの食害により森林は次世代個体を欠く;森林に林冠ギャップができると,これを埋めることができない;ギャップが多くなると林内の乾燥化が進み樹木が弱体化する;常襲する台風の強風により林縁やギャップ周辺の個体の崩壊が起こり疎開林となる;周囲の草地より疎開林の林床に草本が侵入する;最後まで残るオガサワラビロウの孤立木が枯死して完全な草地と化す;草地面積が増えると島全体がいっそう乾燥化し,このプロセスを加速する。(8)空中写真より聟島の草地に点在するオガサワラビロウの孤立木を判読して植生図上に記入し,草地化する以前の森林の広がりを求めたところ,ほぼ全域が森林で覆われていたことが推定された。(9)小笠原島庁(1914),東京営林局(1939),豊田(1981),市河(1992)による1914年,1935年,1968年,1978年,1991年の植生図を並べることにより聟島と媒島の植生の変遷がうかがわれる:かつてこれらの島々はほぼ全域が森林で覆われていた;戦前の開拓(山火事を含む)により森林の3分の1から半分程度が破壊された;終戦から返還までの20年余の空白期に野生化ヤギの影響でさらに大幅に森林が後退し,島の大部分が草地化した;返還後からは土壌の侵食が顕在化し,とくに最近10年間はいっそう激しくなった。返還後の小笠原の気候の乾燥化がこの変化を促進している可能性が高い。(10)土壌侵食にみられるように,野生化ヤギの環境に対する影響は限界にきておりこれ以上放置できない。緊急にヤギの駆除や積極的な緑化等の措置をとる必要がある。
著者
浅川 修一 藤森 一浩 清水 厚志 堺 弘介 満山 進 小島サビヌ 和子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では次世代シーケンサーを用いてメダカおよびトラフグの各組織(速筋、遅筋、腸、眼、脳、心臓、肝臓、卵巣、精巣、初期胚など)から得た小分子RNA(miRNA, piRNA, siRNA)の塩基配列を解読し、その発現プロフィールを明らかにした。精巣、卵巣以外の各組織ではmiRNAが主要な発現産物であったが、精巣、卵巣ではpiRNAが主要な発現産物であることが推定された。またメダカとトラフグに共通に発現している未同定の小分子RNAを多数見いだした
著者
矢野 幹樹 梶 克彦 河口 信夫
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.3274-3288, 2011-12-15

モバイル端末向けに提供されるWebサービスやアプリケーションなどのサービスの数は爆発的に増加しており,膨大な数のサービスの中から自分に必要なものを探し出すことが困難となりつつある.我々は,ユーザの状況に応じてサービスの推薦を行うシステムの実現を目指す.推薦を実現するうえで必要となる学習情報の獲得を行うために,現在状況をクエリとするアプリ検索サービスを提供し,ユーザ状況の収集から推薦までを行うプラットフォームを提案する.提案に基づいた状況依存型アプリ検索システム「App.Locky」の実装を行い,インターネット上に公開したうえで,実ユーザを対象とした大規模検索ログ収集実験を行った.実験の結果,収集された検索ログをユーザ状況の推定に利用可能であることを確認した.Recently, it has become very hard for users to find their desired mobile services because the number of applications and Web services are rapidly increasing. Therefore, we aim at providing a system for recommending services according to the user's context. To collect learning information to estimate user's context, we propose a platform for collecting users' context and recommending services by providing an application search service that inquires user's context. We implemented a system named "App.Locky" based on our proposal and conducted experiments by publishing the system on the Internet. As a result, we confirmed that collected search logs can be used to estimate user's context.
著者
天野 清
出版者
中央大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

(1)幼児の読み(READING)能力等の発達についての構造分析・縦断的実験調査:都内2幼稚園の年少クラス児34名(調査開始時年齢範囲3:4〜4:2)を対象にかな文字の読みの習得に関する調査を、4カ月間隔で6回実施し、約2年間追跡したが、その結果、以下の知見が得られた。(1)幼児のかな文字習得は、早い子は3歳後半期から、多くは4歳前半期から習得し始め、その多く(73.5%)は、年中クラス末までに基本音節文字のほとんどを読める状態になるが、その過程には顕著な個人差が認められる。(2)音節分析の発達は、かな文字の読みの習得に先行して発達し、かな文字の読みの習得を条件付けている。(3)順序性の理解の発達は、音節抽出の発達に先行した進み、音節抽出が一般化する段階で、言語的水準に達する。(4)幼児の音節分析、かな文字の読みの習得の時期、進行を大きく条件付けている要因は、語彙能力(語彙発達指数)である。(2)語、文の読み方の構造と発達過程についての実験的分析:語・文の読みテスト及び語の読み過程の音声と下唇の運動を測定する特殊な実験装置で、調べた結果、以下の知見が得られた。(1)幼児は、かな文字の読みの習得に応じて、語・文を読み・理解できるようになり、3歳代からかな文字を読み始めた幼児の1部は、年中クラス期末に、小学1学年担当の文章を読み・理解できる水準に達する。(2)文の読み方の発達テンポは非常に緩慢で、一部の幼児は、年中クラス期末までに、単語読みの段階に達するが多くは逐字読みの段階に留まる。(3)子どもの語の読み・理解過程は、(a)逐字的な音読、(b)つぶやき、(c)下唇のわずかな運動、(d)黙読による分析の4種の分析過程があり、それらの分析諸形式と総合過程としての単語読み及び逐字読みとが結合した形式で進行している。(4)(3)の事実から、幼児の語の読みの発達は、(1)分析過程が前面に出た逐字読み(第1次逐字読み)の段階から、(2)総合過程の色彩をもつ逐字読みが前面に出た第2次の逐字読みの段階を経て、(3)単語読みの段階に至ると仮説することができた。
著者
清水 惠司 梶 豪雄
出版者
高知大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

神経幹細胞(NSC)は、自己複製を行いながら非対称性分裂を行うことでニューロンやグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト)を生み出すとされているが、どのようなメカニズムによって分化・誘導されているか解明されていない。bHLH型転写因子であるOlig2は、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OLP)と運動ニューロン(MN)の発生に必須の因子であり、ニューロン/グリア分化制御機構の鍵を握る因子であると考えられている。Olig2は抑制型の転写因子で、下流因子を抑制することによりOLP/MNの発生を誘導すると考えられているが、いまだ直接的な下流因子は同定されていない。オリゴデンドロサイトは、胎生12.5日(E12.5)頃より前脳ではganglionic eminence(GE)、脊髄では腹側のpMNドメインの脳室下層から生じることが証明されている。そこで、E12.5のOlig2ノックアウトマウスと野生型マウスから前脳のGE、および脊髄を採取し、cDNA subtraction法により野生型で発現されているが、ノックアウトマウスで発現しなくなった因子、すなわちOlig2の下流因子を現在も懸命に探索し続けている。一方、最も悪性度の高い神経膠芽腫(GBM)はOlig2転写因子を高率に発現しているとの報告もなされている。そこで我々は、各種グリオーマ細胞株に対し、DNAマイクロアレイを用いて転写因子発現差異について網羅的解析を続けており、現在英文投稿の準備中である。今後とも本研究を継続する事で、腫瘍化に至る過程でのOlig2の役割を解明すると共に、首尾よくOlig2下流因子が同定できれば、パッケージング細胞を改変する事で得られた高力価レトロウイルスベクターを用いて、Olig2下流因子をGBM細胞に導入することで高分化しうるかどうか検証する計画である。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1537, pp.48-52, 2010-04-19

毎年7月、フランスを中心とした約3000kmのコースで繰り広げられる世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」。自転車競技の最高峰とされるこのレースには、世界中から200人近くのトップアスリートが参加し、優勝を賭けた激しい戦いが展開される。 起伏に富んだコースを猛スピードで駆け抜けるスポーツ自転車。
著者
白波瀬 丈一郎
雑誌
慶應醫學 (ISSN:03685179)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.189-204, 2001-11-25
参考文献数
51
被引用文献数
2
著者
作山 葵
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

高齢化が進行し骨粗鬆症の患者数が増加しており,ビスフォスフォネート系薬剤(以下BP薬)の服用による顎骨壊死が多く報告されている. BP薬がインプラントへおよぼす影響をインプラント周囲骨形成の観点から研究を行った.インプラントと骨接触率は,下肢においてBP薬投与の有無により顕著に有意差があった.下肢と顎骨では,インプラント周囲への新生骨形成が異なるため新生骨形成を解明するには顎骨を観察する必要がある.またBP薬を投与していない時に,活発な骨形成が認められた.BP薬は, インプラントが骨結合した後でもインプラント周囲骨へ影響をおよぼすため定期検診が重要である.
著者
前原 なおみ 仲宗根 洋子 新垣 利香 吉川 千恵子
出版者
沖縄県立看護大学
雑誌
沖縄県立看護大学紀要 (ISSN:13455133)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.73-79, 2004-03
被引用文献数
1

背景:テレナーシングは、1995年頃から欧米において看護活動の技法の一つとして研究され、外来看護や在宅看護の分野で患者・家族のケアに応用され、入院や在院日数を半減し、タイムリーな援助が提供できるなど効果をあげている。日本においては医療・保険制度、診療報酬体系の相違もあり開発途上にある。目的:テレナーシングに関する4つの文献から、テレナーシングの概念、世界の看護活動の現状を把握し、必要な能力を考える。 対象:テレナーシングに関する文献(1)D. Kathy Milholland:TELENURSING, TELEHEALTH Nursing and Technology Advance Together (2)Margaret L Larson-Dabn:Tel-eNurse Practice A Practice Model for Role Expansion (3)Margaret L. Larson-Dabn :Tel-eNurse Practice Quality of care and Patient Outcomes (4)Diane L. Huber, Kathleen Blanchfield:Telephone Nursing Interventions in Ambulatory Care 結果および結論:1998年、ICN は新しい概念としてテレナーシングを定義し、看護への応用、コスト効果などをあげてテレナーシングへの関心を喚起している。テレナーシングの技術を看護に活用するには実践、研究、教育、管理の4つの柱がある。安全で質の高いテレナーシングは、看護師の専門的知識と経験、クリティカルシンキング技術、人間関係を確立するためのコミュニケーションとケアリングアプローチを行う能力が必要である。これらの能力は大学教育または継続教育をとおして得られる。Tel-eNurse Practice Model (TNPM) が2000年に発表され、テレナーシング実践に活用されている。テレナーシングは国家の政策として予算化し活動している国もあるが、我が国の看護教育では情報通信を介しての看護師のケア提供技術は体系化されていない。今後、テレナーシングの実践にむけての研究および大学教育・継続教育が必要であると考える。Background: Telenursing has been studied as one of nursing activities in the West since 1995, and it is applied to care of patients and families in ambulatory nursing care or home health care. Telenursing helps reduce the number of hospitalizations and length of hospital stay and provide timely support for patients. Telenursing in Japan is in a developmental stage with its unique health care systems including the insurance and remuneration systems. Purpose: The purpose of this study is to grasp the concept of telenursing and the current telenursing activities practice world wide, and to consider required competencies. Design:Integrated literature of telenursing at home and abroad. (1)D. Kathy Milholland : TELENURSING, TELEHEALTH Nursing and Technology Advance Together (2)Margaret L Larson-Dabn : Tel-eNurse Practice A Practice Model for Role Expansion (3)margaret L. Larson-Dabn :tel-eNurse Practice Quality of care and Patient Outcomes (4)Diane L. Huber, Kathleen Blanchfield: Telephone Nursing Intervention in Ambulatory Care Results and Conclusion: In 1998, ICN defined telenursing as a new concept, and stimulated interest in telehealth for its application to nursing and for cost effectiveness. There are four domains of nursing for the application of telehealth technologies: practice, research, education and administration. To use telenursing optimally and safety, nurses must become competent with clinical knowledge, experience, communication skills, competencies to practice of critical thinking and caring approach for establishing a relationship with caller. These competencies may be acquired through academic or continuing education. The tel- eNurse Practice Model (TNPM) was announced in 2000, is a theoretical framework telephone nurses can use to telenurse practice. Although there are several countries that address telenursing as a national policy and provide financial support, the level of care is not systematized in the nursing activities of Japan. In conclusion, telenursing research and education are required for future telenursing practice.