著者
田中 嘉雄 上野 正樹 濱本 有祐 木暮 鉄邦
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

Tissue engineering chamber(以下、TEC)を再生の場として、動脈血管束,人工真皮, FGF-2、多血小板血漿(PRP)を併用して、独自の栄養血管を有した軟組織を再生する方法を検討した。実験群は、コントロール群、非活性化PRP群、活性化PRP群、活性化PRP群+ FGF-2群、非活性化PRP+ FGF-2群の6群(n=5)に分け、再生組織の量、器質化の成熟度、血管新生について検討した。結果:血管付軟組織の再生組織量はcontrol群1. 13±0. 33cm^3、非活性化PRP群1. 79±0. 35cm^3、活性化PRP群1. 48±0. 22cm^3で、非活性化PRP群がcontrol群に比し有意差を認めた(p<0. 05)。人工真皮の器質化も非活性化PRP群で進んでいた。TECを用いた血管柄付き軟組織再生において、活性化PRPよりも非活性化PRPが有用であることが判明した。
著者
岩淵 邦芳 福徳 雅章
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

p53は発癌の抑制に関与する転写因子であり、p53の遺伝子の異常が各種のヒト癌の発症に関係することが明らかになってきている。我々はyeast two hybrid systemを用いて、p53のDNA結合ドメインを介して野性型p53とのみ結合する2種の細胞性蛋白質53BP1,53BP2を見い出し報告してきた。本研究機間に53BP1,53BP2の機能に関して以下のような結果を得た。1.1972残基から成る53BP1の全アミノ酸配列を明らかにした。p53との結合領域であるC末270残基は、酵母蛋白質RAD9および乳癌抑制遺伝子産物BRCA1のC末に見られるBRCTdomainと呼ばれるモチーフと相同性を示した。2.53BP1、53BP2のゲノム遺伝子はそれぞれ染色体上の15q15-21、1q41-42に位置した。3.動物細胞内で53BP1、53BP2の^cDNAからそれぞれ22kD以上、150kDの大きさの蛋白質が産生された。抗53BP1抗血清によるウェスタンブロッテイング法で、肺癌細胞株H358細胞に^cDNAからのものと同じサイズの内因性53BP1を検出した。4.53BP1は1)細胞質と核内 2)核内に均一 3)核内にドット状と3つの局在パターンを示したが、53BP2は常に細胞質に局在した。5.53BP1、53BP2はp53の転写活性化因子としての機能を増強させた。BRCTdomainは細胞周期のチェックポイントに関与する蛋白質に広く見い出されており、又、両蛋白がp53による転写を活性化する事から、両蛋白はp53のシグナル伝達経路のなかでp53の上流に位置する可能性がある。今後、両蛋白によるp53活性化の機序を検討する予定である。
著者
長谷 隆
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

歩行者や避難者の大規模集団である群集の巨視的挙動を予測する微視的モデルの構築とシミュレーションプログラムの開発を目的としていた。群集集団の微視的モデル構築の基礎となる実験を行い、その実験結果に基づいてモデリングを行った。そのモデルの計算機シミュレーションプログラムを構築し、実際の群集集団の挙動を予測した。以下の四つの場合の群集挙動を明らかにした。(1)教室からの脱出緊急時における教室からの脱出実験に基づいたモデリングによって避難学生の避難時間、避難軌跡、避難時間の位置依存性を計算し、実験結果を再現することを示した。(2)歩道橋や地下道で発生する群集移動停滞現象通勤ラッシュやイベントでの混雑回避を目的として、単純化したチャンネル対向流の実験観察を行い、その実験結果をもとにモデリングを行い、実験結果をシミュレートする計算機プログラムを開発した。(3)火災・地震等による停電時における暗闇での避難群集挙動上記の状況をモデリングするために、アイマスクを着用した避難群集の実験観察を行い、その結果に基づいて暗闇下での避難過程のシミュレーションを行った。(4)立って歩けない状況下での四つん這い移動避難群集挙動狭い空間や地震等で立って歩けない状況下での避難群集の実験観察を行い、その実験結果に基づいたモデルを構築し、計算機シミュレーションを行った。これら四つの典型的な避難群集挙動を微視的モデルでシミュレーションできることを明らかにし、開発した計算プログラムが有効であることを示した。
著者
菊沢 喜八郎
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.189-203, 1986-12-31
被引用文献数
9

Existing literature on seasonal replacement in forest tree-leaves was reviewed from the viewpoints of phenology, leaf biomass, leaf fall, leaf survivorship-curves and defoliation by insects. Many of the investigations which had focused on phenological and leaf fall analyses were found to be inadequate to obtain accurate information about the life span of individual leaves. Life table analysis of leaves should be introduced into this type of investigation in order to construct an economic life table from a combination of life-tables with photosynthetic or respiratory activities. Leaf longevity is considered to be determined by the balancing of the cost of leaf construction, leaf maintenance, and the benefit or photosynthetic gain from the leaves. Therefore, leaf longevity is one adaptive strategy of plants to environmental conditions. The leaf survival strategy of pioneer species is characterized by long term leaf-emergence and short leaf-longevity, whereas tree species which are members of climax forests show simultaneous leaf-emergence and leaf-fall. Leaf longevity of forest-understory species is usually long. Leaf survival strategies are considered to have resulted from the evolutionary adaptive radiation of each species to various environments, accompanied by the evolution of morphological features such as shoot structure.
著者
古川 貴久
出版者
(財)大阪バイオサイエンス研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

我々は網膜の発生の中でも、網膜視細胞の発生機構の解明を目指している。我々は以前、視細胞の運命決定の鍵をにぎる因子がOtx2であることを明らかにした。我々はOtx2 CKOマウスの網膜(視細胞がまったく形成されない)と正常の網膜の遺伝子発現をマイクロアレイによって発現比較解析し、視細胞の分化、視細胞の形態形成、シナプス形成ならびに機能に重要な遺伝子群をまとめて同定し、視細胞発生のメカニズムの解明を目指している。今年度までの研究から、実際我々は生後12日目、1日目、胎生17.5日目でのマイクロアレイを行い、281遺伝子がOtx2ノックアウト網膜において有意義に低下していることを見いだした。その中の一つ、視細胞特異的な発現を示し、ラミニンドメインを持つ細胞外マトリックス蛋白質をコードする新規遺伝子pikachurinについて、ノックアウトマウス(KO)を作成し生体レベルでの機能解析を行った。Pikachurinは視細胞リボンシナプスのアクティブゾーンに局在し、KOマウスでは双極細胞樹状突起のリボンシナプスへの陥入が有意に減少していた。網膜電位図では、優位な遅延が認められ、シナプス伝達の遅れが観察された。これらの結果からpikachurinは視細胞-双極細胞の特異的シナプス形成に重要な役割を果たす細胞外マトリックスタンパク質であることが示された。さらに、我々はpikachurin KOの網膜電位図が筋ジストロフィー患者の示す網膜の電気生理学的異常と似ていることから、pikachurinとDystroglycanとの相互作用について検討した。実際、我々はpikachurinのラミニンドメインがalpha-Dystroglycanと糖鎖部分で結合することを見出した、つまりpikachruinはDystroglycanの新たなリガンドであることを示した。これらの結果から、我々はpikachurinとalpha-Dystroglycanの結合が網膜における精密なシナプス形成に重要であることが明らかとなり、さらに筋ジストロフィー患者の網膜生理異常の分子メカニズムの一端も解明された。現在、これらの結果についての論文投稿中である。
著者
濱崎 襄二 岡田 三男 宇都宮 昇平
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.127-136, 1988-03-01

眼鏡なしで、ある範囲の方向から自由に観察できるような彩色三次元映像を、白色照明のもとで普通の解像力を持った大型カラー・フイルムの上に、瞬時に撮像することができる三次元写真機について、その原理と基礎事項の理論的な結果を述べる。この写真機で記録したフイルムを現像・定着し、撮像の際に用いたレンズ板と同種のレンズ板を重ねて位置合わせし、後方から白色光で照明するならば、前方にいる観察者は三次元映像を観察することができる。(改行)この解説では、基本となる原理(光線方向反転結像)、理想反転板の近似的実現方法、実際的な正逆視像変換光学系により得られる逆現像の光学的性質、記録面上に記録される像の性質等を主に説明する
著者
Mayumi MINAMISAWA Shoichiro YOSHIDA Nobuharu TAKAI
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
Analytical Sciences (ISSN:09106340)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.325-328, 2004 (Released:2004-08-06)
参考文献数
22
被引用文献数
40 55

We studied the simultaneous quantitative analysis of biologically active substances, such as nicotinic acid, trigonelline, caffeine, qunolinic acid and tannic acid and pyrogallic acid, in several roasted coffees by an HPLC/diode-array system with a home-made sol-gel and ODS-2 columns. A simple method for simultaneous quantitative analysis of biologically active substances in the coffee brew became feasible by an HPLC/diode-array system with a sol-gel column at a single wavelength of 210 nm. The most efficient condition of the Rs value was above 1.05 when two sol-gel columns were connected. In addition, the elution behavior of nicotinic acid in brew extracted from commercially available coffee beans suggests the thermal decomposition process during roasting, and indicated the maximum value for full city roasted coffee.
著者
福田 敏男 ZYADA Zakarya
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

金属探知器(Metal Detector : MD)は現在人間による地雷撤去作業に用いられる最も主要なセンサーである.それはシンプルかつ低価格であり,また浅い地表面に接地された対人地雷(Ann-Personal Mine : APM)を発見することにも役立っている.しかしながら,地雷以外にもあらゆる金属片に反応してしまうために,誤認警報率が高い(約99.95%)という問題がある.一方で,地中レーダー(Ground Penetrating Radar : GPR)により誘電特性に基づいて地中の物体を認識する技術を提供できるが,金属と非金属における誘電不連続面を検出するため,地雷以外の物体にも反応する問題がある.本研究では,誤認警報率を大幅に削減し,浅い地表面に接地された対人地雷を自動検出することを目的としたGPRとMDのファジー融合手法を提案する.金属探知器と地中レーダーはロポットにより操作される.この融合アルゴリズムは,GPRとMDに対し,特徴を入力し判定を出力するファジーアルゴリズムである.ファジー融合システムへの入力はGPRとMD双方の計測結果から抽出された特徴情報である.これらの特徴はそれぞれGPRとMDに対する最大振幅強度と強度の累積和である.ファジー融合システムからの出力は地雷が存在するか,またその場合はどの程度の深さかに関する判定である.ファジー融合規則はファジー学習アルゴリズムを通じて学習データから抽出される.実験結果からファジー融合アルゴリズムの妥当性,および地雷撤去作業における誤認識率を低減できることが示された.本研究からは以下の2つの主要な結果が得られた.第一に,地雷とプラスチックケースや金属ボルトを識別できる可能性であり,これは誤認識率を低減することに寄与するものである.第二点として,GPRとMDセンサーに対して所定の特徴量(最大強度振幅および強度の累積和)は提案されたセンサー融合アルゴリズムにとって十分なものであることである.本研究による提案アルゴリズムは以下の利点を持つ.単純かつ実環境で使用が容易であり,一般的な操作者により実行可能である.アルゴリズムは実環境下の測定結果から得られたファジー学習のルールに基づいているため,環境からの影響が既に学習則に含まれており,例えば水分を含んだ環境状態などの影響が低減されることが期待できる点にある.
著者
加藤 好郎
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.24-28, 2001-02

ここ数年来、次年度の事業計画を作成する際、いつも悩まされるのが、「変わらなければならないもの」と「変わってはならないもの」とを常に対比しながら事業計画を考えることにある。つまり、慶応義塾図書館の伝統あるサービスの継承とインターネット環境下の新しいサービス展開を考えることであるが、予算が潤沢な時期であれば、悩むこともないわけだが、予算縮小期における事業展開については予算枠内での組み替え運用が必要となる。一方、新しい事業展開や研究支援をするうえでの必要な能力を持った図書館員の確保も必要になってきている。図書館員の養成・育成は、事業の実施・拡大において急務であり、そのためにしっかりした研究計画を立て、確実に養成・育成を実現していかなければならない。今回、慶応義塾図書館で行っている研修を紹介することで、今後の図書館界全体における研修が充実することを期待する。
著者
平山 晴子
出版者
岐阜大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

グレリンは、胃から主に放出されるペプチドホルモンで、成長ホルモン分泌亢進など中枢に対する作用がよく知られている。作用発現には脂肪酸修飾が必要であることがグレリンの構造上の特徴であり、脂肪酸修飾を持たない型をデスアシルグレリンという。これまでに申請者の所属研究室では、中枢からの消化管運動への影響も検討できるin vivoの実験系を用い、非ペプチド性グレリン受容体アゴニストが脊髄排便中枢に作用し大腸運動を亢進させることを報告した。この結果に基づき申請者は、ペプチド性グレリンは脊髄排便中枢への投与により用量依存性に大腸運動を亢進させること、また、デスアシルグレリンは単独投与によっては大腸運動に変化は起こさないものの、グレリンの効果に対しては抑制効果をもつことをこれまでに明らかにした。さらに脊髄におけるグレリンおよびグレリン受容体のmRNA発現が確認され、グレリンが神経伝達物質として作用する可能性が示唆された。前述の結果をふまえ、申請者は当該年度、グレリンの大腸運動亢進作用をさらに詳細に検討し、脊髄から大腸運動を亢進させるに至る経路が骨盤神経であることを特定した。また、この脊髄を介するグレリンの大腸運動亢進作用は、大腸内腔圧を上昇させることにより誘発される蠕動亢進には必須ではないことを明らかにした。本研究の最終的な目的であるグレリンと病態との関与について検討するために、覚醒下の実験条件の検討を行い、無麻酔下のラットへのグレリンの脊髄腔内投与方法を確立した。また、ストレス下の状況は既存のコルチコトロピン放出ホルモン投与による手法を用いた。グレリンとストレス、そして消化管運動の相互関係について確定的な結論を導くまでの結果は得られなかったが、予備的な実験は進んでおり、近い将来に結論が導かれ、過敏性腸症候群などの消化管疾患の病態解明に寄与すると期待される。
著者
栗本 康司
出版者
秋田県立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、廃棄CCA処理木材を液化し、得られた液化生成物からCCA薬剤を完全に除去回収すると共に残った液化物を接着剤や発泡体として利用することを検討した。1.CCA処理木材の調製CCA含有濃度の異なった防腐処理木材を,ベイスギを用いて調製した。液化試料には処理材をウィレーミルで粉砕し0.5-1mmの粒度にしたものを使用した。2.最適液化条件の検討液化溶媒として10%のグリセリンを含むPEG#400を用い、液化条件の検討を行った。本研究での最適な液化条件は、短時間かつ低温度で、木質部のすべてが液化することである。液化率には、反応温度、反応時間、触媒濃度、液比が影響を与えた。液化率を90%以上にするためには150℃以上の反応温度と45分の反応時間を必要とした。触媒濃度は3%が最適であった。液化率が100%に達しなかったのは、一部のCCA薬剤が未溶解であるあるためである。液化物をアルカリ(NaOH)で中和し,液化に用いた触媒を中和すると同時に,CCA薬剤を不溶性の塩として液化物から除去することができた。3.ポリウレタン樹脂の調製とその特性CCA薬剤を取り除いた液化物の水酸基価と水分を基にイソシアネートの配合量を決定し,ポリウレタンフィルムおよびフォームを調製した。フィルムおよびフォームの機械的特性は,液化物を含まない場合(コントロール)と比較して,イソシアネート量が少ないにも関わらず同等の強度を有した。耐熱性,加水分解性などについても,コントロールと比較して劣っている項目は見られなかった。