著者
吉川 玄逸
出版者
滋賀医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

研究対象は当初予定の32チーム約100名の投手から、最終的に22チーム80名の投手に変更され、調査を実施した。調査方法のうち(1)アンケート調査および全員の診察・レントゲン検査は対象80名に対して施行し得た。(2)投球動作の三次元解析については現在、対象者を順次呼び出しあるいは訪問によって解析を続行中である。現在までの結果は主に(1)によるものである。投球時の肩痛の既往がある選手は38.8%,現在投球時痛がある選手は12.5%であった。Relocation testは肩の痛みや痛みの既往と有意な関連があったが、個々の病態との特異性はなかった。全身関節過可動性と肩関節動揺性は肩の痛みや、理学検査上の異常とは関連がなく、投球障害には無関係であるように思われた。肩峰の形態と肩の痛みやimpingement signはとくに関連性はなかった。但し,type II群には有意に肩甲上腕関節後面の圧痛が少ないことが判明した。以上の概要を第12回日本肩関節学会で報告した。
著者
吉川 玄逸
出版者
滋賀医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

研究対象は以前に調査した22チーム80名を再度対象にして施行した。今回は肩に加えて肘関節の解析にも重点を置いた。アンケート調査の結果、肘痛の既往がある者は38名、現在肘に痛みのある者は15名であった。肘の痛みがある群に偏って多いのは肘外反ストレス検査と内上顆、肘頭外側の圧痛であった。X線検査上、肘に異常を認めたは12名(15%)であり、その殆どは上腕骨内上顆下方の異常であった。投球動作解析は今回から肩回旋運動、肘運動に対してねじりゴニオメーターを応用することを試みた。試験的運用において、データの正確な採取にいくつかの改良を要する点が見つかり、現在、改良を加えて解析方法の信頼性向上に努めている。
著者
平井 肇 天野 郡寿 佐川 哲也 深澤 宏 金 恵子 松田 恵示 沢田 和明
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、スポーツのグローバル化の流れが、アジアの諸国においてどのように受容され、その結果、社会・経済システムや文化形態全体にどのような形で波及し、影響を及ぼしているのかについて分析・考察することを主たる目的として調査研究を行ってきた。「個別の地域研究」(平成11年度)と「特定のスポーツ社会制度に関する比較研究」(平成12年度)に関して、各自がサブテーマをそれぞれ担当して、研究調査を行ってきた。最終年度は、研究成果の統合化を図ると同時に、成果を広く公表して、本研究に関心のある研究者の国内外のネットワークづくりに努めた。研究分担者が取り上げた調査研究テーマは、「子ども労働とスポーツ」、「フィリピンのプロスポーツ興行」、「中国の少数民族政策と体育」、「中国の近代化と体育政策」、「韓日の高校野球組織の比較」、「スポーツ労働者の移動」、「タイの近代化と子どもの遊び」、「シンガポールの華人社会とスポーツ」、「日本植民地下の朝鮮半島のスポーツ」、「米占領下のフィリピンのスポーツ」などである。グループとしては、フィリピン、タイ、中国へ赴き、それぞれの国におけるスポーツとそれを取り巻く社会環境について調査研究を実施した。また、アジアのスポーツ研究者と交流を深めるべく、タイ・チェンマイ大学とチュラロンコーン大学、フィリピン・デラサール大学、韓国・梨花女子大学、中国・河北大学で研究会を実施し、現地の研究者と情報の交換を行うと同時に、今後の共同研究の可能性やネットワークづくりについて協議を行った。これらの結果は、各自が書籍や雑誌、学会などで公表すると同時に、『スポーツで読むアジア』(世界思想社2000年)としてまとめた。また、研究グループのホームページ(http://www.yone.ac.jp/asia-sports/)を開設し、研究成果の公開を行っている。
著者
丹羽 健市 浅井 武 長井 健二 大貫 義人 笹瀬 雅史 竹田 隆一 曽 広新 李 宏玉 修 傳風 揚 振東
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

これは平成9年度〜平成11年度の3年間にわたって山形大学教育学部と中国・吉林師範学院体育分院の共同で行われた「日中東北地域におけるスポーツ科学の比較研究」の報告書である。近年、スポーツ科学の発展はめざましく、その国際化と多彩な分野の総合化は急務な課題となっている。そこで山形大学と吉林師範学院の体育・スポーツ研究者が、同じ東北地方に位置するという地理的条件などを考慮し、上記テーマを設定し、共同研究を通じて学術交流をすすめることになった。3年間にわたり、両大学の研究者が2名ずつ相互に訪問し、共同研究を実施した。この報告書には共同研究で得られた成果をもとに発表された論文・資料等を掲載した。また、共同研究会での発表の要旨も収録した。そこであきらかなように、この研究はバイオメカニクス、運動生理学、体育科教育、武道論、体育社会学などスポーツ科学がカバーする広範な分野に及んでいる。ここには、丹羽健市による運動時の水分摂取と体温調節の生理学的研究、大貫義人による低体温者の運動に関するスポーツ医科学研究、浅井武によるサッカーのバイオメカニクス研究。長井健二の体育科教育研究、曽広新の太極拳の運動生理学研究、竹田隆一、宮煥生の武道教育研究、笹瀬雅史の体育社会学的考察、などがまとめられている。また日本および中国の東北部という冬季寒冷な地城におけるスポーツ活動やスポーツ科学的トレーニングに関する知見の交流、さらに学佼やスポーツ施設などの実地見聞も共同研究をすすめるうえで有益であった。資料収集と情報交換は継続して行われた。こうして、同じように東北地方に位置し、教員養成系大学である山形大学と吉林師範学院の体育・スポーツ研究者の共同研究ならびに学術交流は一定の成果をあげたものである。今後は、この基礎作業を土台として、さらに共同研究を継続していくことが必要である。なお、この共同研究の実施と報告書の刊行は、「科学研究費補助金基盤研究(B)(2)」を得て行われたものである。
著者
鈴木 啓之
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

研究成果の総括1) UVA照射による実験結果についてマウスの背部皮膚を用い、UVA照射群ならびにPUVA施行群の2群に分けて実験を行った。その結果、PUVA施行群の一部の表皮にヘマトキシリン・エオジン染色でエオジン好性の顆粒の出現が見られ,epidermolytic hyperkeratosis(EHと略す)によく似た所見が認められた。この好酸性顆粒の性状につき、ケラチンを主とした免疫組織学的検討を行ったが顆粒の性状を同定するには至らなかった。ケラチンの凝集塊と思われるが、その他の物質である可能性も否定できないといった段階である。2) Persistent actinic epidermolytic hyperkeratosis(PAEH)のケラチン凝集塊についてPAEHはケラチンの凝集塊の形成が特徴的である。病巣部のケラチン凝集塊につき、どのようなケラチンの凝集塊なのか光顕ならびに電顕レベルで免疫組織化学を用いて検討した。その結果、ケラチンの凝集塊はケラチン1とケラチン10から成ることが判った。3) PAEHの病因病態ならびに分類に関する考察PAEHの病巣部のケラチン凝集塊がケラチン1とケラチン10から成ることが判った。研究期間内には遺伝子レベルでの検討にまでは至らなかったが、PAEHも先天性のEHと同じくケラチン1とケラチン10の遺伝子のmutationによる可能性が考えられ、誘因は強い太陽光線の照射であろうと推測した。分類に関しては、PAEHは強い日光照射により発症すると考えられ、後天性のEHを来す疾患のなかで独立した位置に置かれるべきと考える。
著者
吉野 和芳
出版者
神奈川工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

ビデオ映像処理による球技のコーチング支援を目的として,本年度は,ハンドボールゲームにおける攻撃時のフォーメーションに主眼をおき,シューターへ最終パスを送った選手をラストパッサーと定義し,ラストパッサーの動きに注目して攻撃フォーメーションの分析と評価を行った.具体的には,本年度の成果は次の2点にまとめることができる.1.選手同士の位置関係によるフォーメーションのモデル化と分類ラストパッサーがボールを受けたときとパスを送ったときの2時刻におけるラストパッサーのコート上の位置の変化により,攻撃フォーメーションを分類した.位置の変化は,ハンドボールコートを19の領域に分割し,それら領域の変化として定性的に表した.また,それぞれの時刻におけるラストパッサーと敵チームの選手との距離の総和の比率を引きつけ率として定義することで求め,ラストパッサーの動きの有効性という観点から攻撃フォーメーションの評価を行った.チームレベルが異なる3チームを敵チームとして,それぞれ同様の評価を行ったところ,チームレベルと評価値において相関がみられたことから,チームのディフェンスレベルの評価への利用も期待できる.2.オフェンスのパスワークによる攻撃パターンの分類チームの攻撃パターン特徴を検出するため,ラストパッサーの位置とラストパッサーからシューターへのパスの方向によって攻撃パターンの分類を行った.得られた攻撃パターンの割合からチームの攻撃特徴を推測した結果,分析対象としたチームの特徴と一致したことから,本手法による分類の妥当性やチーム分析への有効性が確認できた.
著者
三浦 信孝 CHI LEE Pei-Wha SUNENDAR Dadang NGUYEN XUAN Tu Huyen
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

三浦が2004年7月に国際フランス語教授連合FIPFアジア太平洋委員会委員長になったのを契機に申請した研究課題である。台湾、インドネシア、ヴェトナムの同僚を研究協力者に、日本、タイ、台湾、パリ,などで開かれる国際学会で研究交流を積み重ねた。かつてフランスの植民地だったヴェトナムやインド洋のレユニオン、モーリシャス、南太平洋のニューカレドニアを旅行しフランス語の使用状況について調査した。研究成果は研究課題に直接間接にかかわる多くの論文にまとめて発表した。
著者
大場 清 横川 光司 橋本 義武
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

我々は,複素平面上のある種の図形である稲妻対というものを考え,その稲妻対からdipoleを持つリーマン面を構成する方法を利用して,リーマン面のモジュライ空間の位相的な性質を明らかにしていくことを目的として研究を進めた.稲妻対は,深度と呼ばれる非負整数と複素数のあるある条件を満たす列と対称群の対という組み合わせ的データにより与えられるものであり,そのデータからリーマン面の種数が如何に決まるかを決定した.また,リーマン面上の2次微分に關するStrebelの研究を通して,我々の研究がdipoleのみの状況から一般の第2種アーベル微分を持つリーマン面へと拡張できることがわかった.リーマン面は標数0の代数曲線であるが,正標数の代数曲線に関しても,前丹後構造という概念を導入して,小平の消滅定理が成立しない代数曲面をモジュライ空間の中で正の次元をもつほど多く構成することができた.数理物理的側面からは,最も基本的なリーマン面である2次元球面に関連して,5次元Ads Kerrブラックホールの2つの地平線を近づけrescaleして極限をとることにより,2次元球面上の3次元球面束上に可算無限個の新しいEinstein計量を構成することに成功した.また,Killingベクトル場のツイストにより,Gauntlettたちにより構成されたコンパクトな佐々木-Einstein多様体を再構成することも行った.一方,稲妻対のある種の高次元化として,6次元球面にsmoothに埋め込まれた3次元球面たちを考えた.これはHaefliger結び目と呼ばれる高次元結び目であり,我々は(6,3)-型のHaefliger結び目の結び目解消数を定義して,そのすべてを決定した.
著者
安原 望
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本研究により以下に示す結果を得た.1.p型Si基板上に作製したSiGe歪量子井戸を用いて逆バイアスにより電流注入を行うと,インパクトイオン化によりキャリアが生成される.このとき量子井戸からの発光が観測されない.本研究ではこの原因として,正孔は量子井戸に捕獲されるが,電子は伝導体のバンドオフセットが小さい為量子井戸に捕獲されずに表面近傍に分布することを明らかにした.このような電子と正孔が空間的に分離した状態を形成するための電圧には閾値が存在し,閾値電圧以下ではキャリア供給を抑えた状態で電子正孔分離状態を維持できることがわかった.これらの知見をもとに,閾値電圧以下において溜めておいたキャリアを,電圧を解除することにより任意の時間に発光させることが可能であるあることを示した.これはSiGe/Si歪量子井戸を用いた電気書き込み光読み取りのメモリー動作が可能であることを示しており,デバイス機能化にむけた大きな前進を得た.2.SiGe歪量子井戸では歪によりSiの6重縮退したΔ_1バレーが4重縮退と2重縮退に解けることにより,量子井戸に形成される励起子の結合エネルギーの縮退も解けることが知られている.通常量子井戸は面方向に圧縮歪を受けるため,4重縮退した励起子のみが形成されると考えられていたが,本研究では偏光測定により2重縮退した励起子も形成されていることを明らかにした.SiGe歪量子井戸に形成される間接励起子についての理解を深めた.3.GaSb・Si量子ドットでは光学利得が観測されている.本研究では光学利得の注入キャリア依存特性曲線に対し3準位モデルを仮定することによるフィッティングを行った.実験との比較によりGaSb・Si量子ドットの発光メカニズムは3準位系であることの証拠を示すことができた.
著者
固武 龍雄
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.376-378, 1973-11-01

1973年7月27日から29日の3日間,箱根で開催された日本ドクメンテーション協会主催の「企業体における文献情報と特許情報」という夏期特別セミナーで行なわれた分科会「公開特許公報を中心とした特許情報の利用・保管・検索」についての報告をまとめたものである。
著者
奥富 清 亀井 裕幸
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.77-87, 1980-12

1. 近年異常に繁殖している自然教育園のシュロの開花・結実個体群, いわゆる成熟個体群の構成について調べた。またそれとの比較のため, 都下府中市栄町のヒノキ・シュロ混植林のシュロについても同じくその成熟個体群の構成を調べた。2. 1980年夏現在, 自然教育園に生育している幹高0.55m以上のシュロの総数は1,060本であった。このうち今までに開花歴のある成熟個体は186本(17.6%)で, それらは小は幹高1.5mクラスのものから大は現存個体中最大の5.2mクラスのものに及んでいる。また, シュロの総個体数に対する成熟個体数の割合は幹高の増大とともに増し, 4.1-4.5mクラスで80%を超える。3. 自然教育園での1980年夏の開花雌株は54本であった。これは各幹高にわたっているが, 幹高の増大に伴なう個体数の増減傾向はみとめられなかった。しかし総個体数に対する割合は幹高の増大に伴なって増加し, 4.1-4.5mクラスで通常の最大期待値である50%に達する。このことは, 自然教育園では今後, 幹高が4.5mを超えるシュロの約半数を種子供給源とみなしてよいことを示している。4. 自然教育園では, 各幹高クラスの成熟個体の割合, 当年開花雌株の割合とも, 林縁生のシュロの方が林内生のシュロよりも高い。5. 上記2〜5にあげた自然教育園のシュロ成熟個体群の構成上の諸傾向は, 府中市のヒノキ・シュロ混植林のシュロに対しても程度の差はあれ当てはまる。6. 1980年に自然教育園で開花した54本のシュロ雌株の種子生産量を概数10,000〜20,000粒と推定した。この数値は不作を示し, その原因として, この年の夏の日照不足・低温とともに, アオバハゴロモ幼虫のシュロ果穂への寄生があげられた。
著者
窪木 幹夫
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.97-110, 1999-09-25
参考文献数
21

日本列島の気候の特徴の一つである太平洋側の気候と日本海側の気候の境界に位置する尾瀬・奥鬼怒地域でPidonia相とその垂直分布, 訪花植物, 幼虫の生活を調べた.1974年から行ってきた全国各地でのPidoniaの生態調査とウルム氷期最盛期以降の植生変遷に関する研究を参考に, この地域でのPidonia相の形成について考えた.1. 1993年7月27日から31日の調査で, 合計24種のPidoniaを確認した.2. 落葉広葉樹林のPidoniaは, その分布域が太平洋側または日本海側のどちらかの地域に片寄る種が尾瀬・奥鬼怒地域でみつかった.P. obscurior, P. insuturata, P. semiobscura, P. limbaticollis, P. oyamaeは太平洋側地域を, P. hakusana, P. hayashii, P. miwai, P. takechiiは日本海側地域を中心に分布していた.3. P. insuturataとP. hayashii, P. obscuriorとP. hakusanaのように, 系統的に近縁な種間に対応的分布関係が調査地域内でみつかった.4. 尾瀬地域のPidoniaはミズキやオガラバナのような木本類を, 奥鬼怒地域のPidoniaはオニシモツケ, シラネセンキュウのような草本類を主要な訪花植物とする傾向があった.5. 1989年7月30日, 燧ヶ岳の亜高山帯の枯れたオオシラビソの樹皮内から摂食中のP. bouvieriの幼虫が見つかった.6. 1995年7月25日, 鳩待峠付近のダケカンバの生木の樹皮内から, P. chairoの蛹室が見つかった.それらの高さは, 11例中8例が地上1m以内, 3例が1∿2.8mであった.7. 日本海側地域では冬の積雪が樹皮内で生活するPidonia幼虫を乾燥から守っている.8. 尾瀬・奥鬼怒地域のPidonia相は後氷期の森林の移動に伴って, 太平洋側と日本海側からこの地域に分布を拡大したPidoniaによって形成された.
著者
植木 健至 寺山 保彦
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.42-48, 1955-11-30

前報において, 低水温灌漑が水稲の生育収量に好影響を与えることを報じたが, 本年度はかかる現象に対し, 栄養生理的な検討を行うべく, 生育時期別に稲体有機成分を分析した.処理方法の大要は前年同様であり, 得られた水温は貯溜区(対照区)最高29〜34℃, 平均約27℃で掛流区最高24〜27℃, 平均約24℃であつた.なお掛流処理期間は7月27日〜9月30日迄である.実験結果は次に示す通りであつた.1.乾物重 : 伸長期より登熟期にかけて, 根, 茎葉, 穂と順次に掛流区が大となつた.2.登熟中期に至る迄, 茎葉部においては掛流区の粗蛋白含有率は貯溜区よりも常に高く, 澱粉含有率では全く逆の傾向を示した.3.幼穂形成期より出穂直後にかけて, 掛流区において株当粗蛋白含有量著しく大で且つ, 全糖含量もやや勝る傾向がみられた.粗澱粉含量については分蘗期には貯溜区が大であつたが, 出穂後は粗繊維と共に掛流区が凌駕し, 殊に穂部澱粉において著しい差異がみられた.以上掛流区における増収の過程を推察すると, 幼穂発育期において根重の増加に伴い, より多くの窒素を吸収し, これが一方では1穂粒数の増加をもたらすと共に, 他方では二次的に出穂後の光合成等を盛にし, 穂への多量の澱粉蓄積を可能としたと思われる.なお本年度も前報同様, 稈長, 穂長, 1穂粒数, 株当籾重等の区間差を認めえた.
著者
平山 和宏
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.17-23, 2005 (Released:2005-07-05)
参考文献数
86
被引用文献数
4

近年大豆イソフラボン類の健康増進効果や疾病予防効果が注目されている.大豆イソフラボン類はエストロジェン様活性を示し,乳癌や前立腺癌,骨粗しょう症,高コレステロール血症,心疾患などに予防効果があることが示されている.大豆に含まれるイソフラボン類は主にgenisteinとdaidzeinであるが,発酵食品を除けばそのほとんどは配糖体として存在している.大豆イソフラボン類は配糖体のままでは腸管から吸収されないことが知られており,その吸収には加水分解によりアグリコンとなることが必要である.加水分解には腸内フローラの β-グルコシダーゼの活性も重要な役割を果たしていると考えられる.また,吸収された大豆イソフラボン類は肝臓で抱合されて胆汁中へと排出されるが,腸管内で脱抱合されて再びアグリコンとなって腸肝循環をする.この脱抱合に腸内フローラの β-グルクロニダーゼが関わっている.大腸に達した大豆イソフラボン類はさらに代謝されている.たとえばdaidzeinはエストロゲン様活性や抗酸化作用が強いequolと活性のない O-desmethylangolensinに代謝されるが,これらの代謝には腸内フローラの存在が必須である.daidzeinからのequolの産生には非常に大きな個体差があることが知られており,その個体差は腸内フローラの違いによるものと考えられている.このことは,同様に大豆イソフラボン類を摂取しても腸内フローラの構成の差により得られる保健効果が個体によって異なる可能性を示している.しかし,これらの代謝を担う菌種や菌株を分離,同定した報告は少なく,今後の研究が期待される.
著者
荒木 兵一郎
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

精神障害者の自立生活と居住環境との関係について、一昨年度はグループホーム居住者を含む在宅精神障害者を、昨年度は自立度が最も低い入院患者と救護施設等の入所者を対象としたが、本年度はそれらと比較するため自立度が高い健常者(学生等38名、高齢者向け住宅居住者76名)を対象に同一の面接アンケート調査と行動観察調査を実施した。調査内容は、当該対象者の基本属性としてのとしての家族構成、障害程度、問題行動や特殊行動の種類と状況、日常生活動作能力(ADL)、生活歴(職歴、入院歴など)などをみたのち、各種の日常生活行為について、これに係わる空間構成との関係をみている。日常生活行為としては、就寝、食事、だんらん、接客、排泄、入浴、家事、および近隣や友人との交流状況や就労状況などについて、その自立度または介護度を3段階の評価基準を設定して尋ねている。平均自立度は想定通り、健常者・学生>高齢者向け住宅居住者>グループホーム居住者>外来患者>救護施設等入所者>入院患者(とくに高齢精神障害者)の順である。しかし健常者だからといっても満点の人はなく、それぞれの生活部面でそれぞれが役割分担したり、社会資源で補なったり、手抜きしたりしている。自分の意思で手抜きしたりするのはいいが、自立や社会参加をしたくても、それが心身の障害によってできない人たちの問題が改めて提起される。とくに高齢精神障害者の場合には、病院や施設内で無為無欲の状況に陥り、ただ死を待つような状況さえもが見られる。これに対応する環境整備の充実を痛感している。