著者
品川 和弘 嶋本 薫 小野里 好邦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会秋季大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1994, no.1, 1994-09-26
被引用文献数
4

6月16日に群馬大学において、本会の交換システム研究会、衛星通信研究会、第3種(ネットワーク理論とディジタル移動体通信研究会)の合同研究会が行なわれた。初の試みとして衛星通信を用いて群馬大学、東北学院大学、早稲田大学、大阪市立大学、愛媛大学とを接続し、会場での発表を各大学に放送して質疑を各大学から受ける一方、他会場からの発表も4件あり双方向での研究発表交換会となった。本稿では研究発表とその質疑応答とを衛星を通じて行なう場合とそうでない場合とで画像、音声、違和感などの比較をアンケート調査により行なう。また、発言局切替方式として捕捉効果を用いた接統切替の実験とその評価を行なう。
著者
貫井 正納
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第2部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.39-48, 1987-02-26
著者
池田 華子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

他者の運動が自身の運動に及ぼす影響を調査するために、他者の運動の観察による印象評定についての研究を更に進めた。更に複数の他者の動作を知覚する際の視覚的特性を検討した。平成23年度の本研究員の成果は以下の通りである。(1)受け渡し動作における丁寧さの評定:本研究では人が物体を他者に渡す際の渡し方について、丁寧さの印象に関わる要因について検討し、特に受け手の性別による違いについての影響を分析することを試みた。被験者は渡し手が丁寧に物体を差し出す場合と普通に物体を差し出す場合のビデオ映像を観察し、各動作について印象評定項目に回答した。印象評定項目得点の分析の結果、受け渡し動作について丁寧さの印象を判断するために男性は女性に比べると運動の特性や機能的側面により敏感で、女性ではその魅力といった対人的な特性を重視する傾向にあった。この成果は今年度開催の国際学会KEER2012において発表され、発表内容は同学会論文誌に掲載される予定である。(2)他者の歩行方向判断における周囲の人間の動作の影響の検討:集団の中で特定の他者の運動を特定する際の知覚の特性について、周辺視野で複数の物体が固まって提示されると個々の物体の同定が困難になるというクラウディング効果を利用して研究を行った。実験では歩行している人間の関節運動情報のみから構成されたバイオロジカルモーション(BM)刺激を複数体、周辺視野で観察させ、その中の1体の歩行方向を判断させた。その結果、観察者はターゲットの歩行方向を正しく回答することが困難になった。更に、ターゲットとなるBMの歩行方向の回答は、近接する妨害BM刺激の歩行方向の影響を受けた。以上から、人が他者の動作を認識する時には対象に近接する人間の動作から妨害を受けかつ動作の影響をも受けるということが示唆された。この成果は今年度開催の国際学会ECVP2012において発表される予定である。
著者
池田 大輔 安東 奈穂子 田中 省作
出版者
ディジタル図書館編集委員会
雑誌
ディジタル図書館 (ISSN:13407287)
巻号頁・発行日
no.27, pp.1-8, 2005-03-08

電子図書館サービスの多くは、従来からある図書館サービスを電子的に行うことにより、図書館員が行う作業の効率化や資料への効率的なアクセスを実現するものであり、新たなサービスを提供するものは少ない。筆者らの研究グループは新たな電子図書館サービス構築を目指し研究を進めており、その過程で個人情報を含んだ貸出履歴をサービスに使うことの是非が大きな問題点として浮上した。本稿では、図書館の役割や利用者の個人情報について考察し、新たな電子図書館のサービスによる利便性向上と個人情報保護を両立するモデルを提案する。
著者
阿部 正子 中島 通子 宮田 久枝
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は女性不妊症患者と自然妊娠女性の生活習慣を比較検討し,女性の妊孕力を予測するアセスメント指標ならびに妊孕力に影響を及ぼす予測因子を探索することであり,この成果を活かし看護介入プログラムへの示唆を得ることにある。そのために平成20年度は質問紙調査の実施および分析を行った。調査期間は平成20年7月〜平成21年2月,調査票は関東および関西の不妊治療クリニックならびに総合病院産婦人科に受診している妊婦700名に配布し615部回収した(回収率87.8%)。調査内容はフェースシートとして年齢,職業,妊娠前の体重や体温,不妊治療の有無などを尋ねた。妊孕力を左右する変数としてダイエットの経験,嗜好品の摂取状況の他に生活習慣,食習慣等39項目を採用し,(1)高校(18歳)まで,(2)高卒後〜結婚,(3)結婚〜妊娠,(4)現在の各時点での経験頻度を4段階で測定した。分析はSPSSver.15を使用し,記述統計と多重ロジスティック回帰分析でステップワイズ法による変数選択を行った。対象の年齢は29.8歳(SD5.0),今回の妊娠が不妊治療による者は73名(11.9%),自然妊娠は537名(87.3%)であった。今回の妊娠が不妊治療による妊娠であることに有意に関連を示したのは次の7変数であった(Hosmer Lemeshow検定x2(8)=5.89,p=0.66)。結婚年齢(オッズ比:OR=1.1,95%信頼区間(CI):1.02-1.22),月経困難症の既往有(OR=12.6, 95% CI=1.16-137.74),クラミジア感染症の既往有(OR=5.9 ,95% CI:1.68-20.77),月経不順の班往有(OR=2.8, 95% CI:1.17-6.77),過去に不妊予測有(OR=O.85, 95% CI:0.25-0.29),高卒後から結婚までの間にジュースなどの清涼飲料水を毎日飲むかについて「その通り」と回答(OR=2.0, 95% CI:1.31-2.91),結婚後から妊娠までの問にイライラしたときにおやつを食べることが多いかについて「その通り」と回答(OR=0.7, 95% CI:0.52-0.98)。以上よりライフコース選択や性の健康へのセルフアウェアネスの強化の重要性が示唆された。なお,上記の結果には関連の向きについて解釈の困難なものがあり,今後より詳細な検討が必要で壷ると考えられた。
著者
森 直樹 鄭 則秀 垣本 健一 原 恒男 小出 卓生
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.343-347, 1999-05
被引用文献数
2

症例1:64歳男.1995年5月食道癌(扁平上皮癌)に対し右開胸開腹食道亜全摘術を施行した.7ヵ月後右腎腫瘍を指摘され,右根治的腎摘除し,転移性扁平上皮癌であった.7ヵ月後死亡した.症例2:63歳男.右気胸に対する手術中,右肺に腫瘍を認め右肺上葉を切除した.腺癌であった.術後,腹部CTで右腎腫瘍を指摘され,右根治的腎摘除術を施行した.組織学的に転移性中分化型腺癌であり,7ヵ月後死亡した.症例3:69歳男,原発性右肺癌に対し右中葉切除,下葉部分切除を行った.腺癌であった.術前後の腹部CT,エコーで左腎嚢胞の増大を認め,開腹生検,転移性腎癌と診断し,右腎摘除術を施行したが,10ヵ月後死亡したSince solitary metastatic renal tumors are not commonly diagnosed before death, the conclusive treatment of the metastatic renal tumor has not been established. We report three cases of metastatic renal tumors and discuss the indication of surgical therapy for metastatic renal tumors. The first case was in a 64-year-old male who underwent esophagectomy for squamous cell carcinoma. Seven months after the operation, a right renal tumor was found. The second case was in a 63-year-old male who underwent right upper pneumonectomy for adenocarcinoma with a right renal tumor, which seemed to be a solitary metastasis. The third case was in a 69-year-old male who underwent right pneumonectomy for adenocarcinoma. One month after the initial operation, a left renal cystic tumor was found. Since, in all cases, the tumors seemed to be solitary metastatic renal tumors without any other metastatic lesions, nephrectomy was performed. Unfortunately, however, the nephrectomy did not improve prognosis and all three patients did within 10 months after the nephrectomy. Nephrectomy may not be recommended in cases of metastatic renal tumors even if no other metastatic lesions can be found by various image examinations.
著者
上田 晴彦 林 信太郎 林 良雄 林信 太郎 林良 雄
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

秋田大学教育文化学部内にウェブサーバーを設置し, バーチャル天文館を開設した。そしてその教育効果を調べるために, バーチャル天文館内のデジタルコンテンツを利用した教育実践を県内の小・中学校の教育現場でおこなった。その結果, バーチャル天文館内のデジタルコンテンツは教育的有効性があることが分かった。また特別な知識を持たなくても作成可能な本格的なデジタルコンテンツについての研究も, あわせておこなった。
著者
秋山 友宏 八木 順一郎
出版者
社団法人日本鉄鋼協会
雑誌
鐵と鋼 : 日本鐡鋼協會々誌 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.177-184, 1996-03-01
被引用文献数
3

The concept of zero emission of waste material in the manufacturing process has been focussed worldwide for more efficient utilization of fossil fuels and environmental protection. In this study, background and feasibility of symbiotic ironworks based on this concept were discussed from the state-of-the-art technology in catalyst and heat storage/transportation. One possibility is ironworks with methanol industry, in which charged coke is partially replaced by natural gas and the hydrogen-enriched blast furnace offgas (BFG) is used as raw material for methanol synthesis. The results of systematic analysis demonstrated that this system leads to not only exergy saving but also less emission of greenhouse gas (GHG). The key technology is to develop a catalyst for BFG of CO_2-CO-H_2 system. Another one is "urban-symbiotic ironworks", where excess outflow energy from ironworks is efficiently employed as a utility for household affairs. The use of latent heat and reaction heat is being planned in this system for thermal energy recovery and transportation. Possible energy recovery processes for the waste heat remaining in the ironmaking industry was reviewed, together with the detailed concept of 'urban-symbiotic ironworks' as an energy supplier. In particular, the use of phase change materials (PCMs) and of hydrogen storage alloy as the new technologies was fundamentally promising.
著者
尾関 高行 中垣 隆雄
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.76, no.763, pp.406-408, 2010-03-25

Electrochemical partial oxidation (EPOx) of methane can convert exhaust heat into electricity as much as difference between change of Gibbs free energy and change of enthalpy. In this paper, we considered 30kW power generation system combined Micro Gas Turbine and the Partial Oxdation Solid Oxide Fuel Cell using Gadolinium Doped Ceria as the electrolyte that has high oxide ion conductivity below 600℃. The cylindrical-shaped POSOFC is operated at 572℃ recovering turbine exhaust heat of 593℃ and accompanying production of hydrogen and carbon monoxide. According to the result of process simulation coupling with SOFC simulation including detailed polarization models, only addition of 16 liter POSOFC can increases the power generation efficiency by 8.5 points at fuel utilization of 80.1%.
著者
西城 惠一
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

渾天儀は中国で古来より天体の位置観測に用いられた儀器であるが、わが国では江戸幕府初代天文方となった渋川春海が中国古来のものを簡素化したものを製作し観測に用いて以後、幕府天文台において観測に使用された。予備的な調査からは、江戸時代にわが国で製作された渾天儀は40基弱が現存するが、その大部分は観測用ではなく、あるものは天球儀と対になった教育・研究用のものであることが判明した。教育用のものは小型で、後期の物には中心に観測用の筒(玉衡)のかわりに地球の小模型を配する。本研究は平成16・17の両年度に行なわれ、これらの現存する渾天儀についてその構造等を実地に調査し、その由来や目的等を文献調査を含めて明らかにし、それらの時代による変遷や製作者などによる変化を調べて、わが国の渾天儀の特徴を明らかにすることが目的である。平成17年度は研究最終年度であり、7基の渾天儀の実地調査を行なうとともに、20基の渾天儀について写真資料による調査を行なった。これにより、現存が知られる江戸時代の渾天儀のほとんどについて調査がなされ、また上記の観点から総合的研究を行なった。詳細については省くが、現存する渾天儀のうち仙台市天文台所蔵の大型の金属製渾天儀(製作年1776)のみが、実際に天体観測に使用されたことが再確認され、これを含む18世紀半ばまでの渾天儀は目盛が古度(中国度)のものが多く、観測に用いられるものの模型として考えられたこと。それ以後から中心に地球をおき、天空の天体の運行模型として考えられたこと、さらに幕末期には白道環が黄極で回転するようになり、日月食の再現・予報の概略が解説できる模型になったことが変遷の特徴である。また、暦書など基本的文献資料から関連する天体観測機器の記述について調査を行なった。
著者
小林 研二 青木 太郎 西岡 清訓 高地 耕 小森 孝通 畠野 尚典 吉田 恭太郎 林 英二朗
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.28-34, 2011-01-20
参考文献数
20
被引用文献数
2

61歳男性.主訴は嚥下時心窩部痛,胸部中部食道(Mt)の長径3cm,IIc,食道扁平上皮癌で,ESDを施行.切除標本では低分化型扁平上皮癌,sm1,ly1,v1であり,追加治療として化学療法を施行.14カ月後に胸部大動脈周囲リンパ節転移再発にて,手術を行い,組織学的にはリンパ節再発,内分泌細胞癌であった.集学的治療をするも,初回治療から2年1カ月,食道切除から10カ月で原病死した.術前診断困難な悪性度の高い食道癌におけるESD後のリンパ節再発死亡例を報告した.
著者
Eiichi Hinoi Yukio Yoneda
出版者
The Japanese Pharmacological Society
雑誌
Journal of Pharmacological Sciences (ISSN:13478613)
巻号頁・発行日
pp.1106090573, (Released:2011-06-10)
参考文献数
67
被引用文献数
12 21

The prevailing view is that L-glutamate (Glu) functions as an excitatory amino acid neurotransmitter through a number of molecular machineries required for the neurocrine signaling at synapses in the brain. These include Glu receptors for signal input, Glu transporters for signal termination, and vesicular Glu transporters for signal output through exocytotic release. Although relatively little attention has been paid to the functional expression of these molecules required for glutamatergic signaling in peripheral tissues, recent molecular biological analyses including ours give rise to a novel function for Glu as an extracellular signal mediator in the autocrine and/or paracrine system in several peripheral and non-neuronal tissues, including bone and cartilage. In particular, a drastic increase is demonstrated in the endogenous levels of both Glu and aspartate in the synovial fluid with intimate relevance to increased edema and sensitization to thermal hyperalgesia in experimental arthritis models. However, to date, there is only limited information about the physiological and pathological significance of glutamatergic signaling machineries expressed by articular synovial tissues. In this review, we have outlined the role of Glu in synovial fibroblasts in addition to the possible involvement of glutamatergic signaling machineries in the pathogenesis of joint diseases such as rheumatoid arthritis.
著者
大原 興太郎 富岡 昌雄 波多野 豪
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

リサイクル社会は、(1)使用済みの物質をすべて回収するのは事実上不可能である、(2)リサイクルによって物質が劣化するのは避けられない、(3)物質のリサイクルを駆動するにはエネルギーが必要である、という三つの制約をもっているが、微生物やミネラル、そして生物自身のエネルギーによって循環が促進される生物系の資源循環は持続可能な社会を創っていく上で極めて重要である。特に、環境中から採取した資源は十分に利用しつくし、最終的な廃物は自然の循環機能を損なわない形で廃棄することが重要である。生物系廃棄物の循環にとって大きな可能性をもっている堆肥化も物質を循環させる人のネットワークと新しい技術の開発が課題である。この点で、大規模複合経営を行っているY農事組合法人の牛糞堆肥・乾燥鶏糞を周辺の稲作農家の藁との交換により、有機栽培米を生産している事例では、試行錯誤の末、化学肥料に頼らずに慣行農法以上の品質・収量を上げる技術が創られつつあり、農薬も用いるとしても最低除草剤一回とする技術を確立した。Y法人の若者達が牛糞堆肥はマニュアルスプレッダーで、鶏糞堆肥はライムソワーを改良したもので機械散布する技術を確立したとにより、高齢農業者の業者のクループが行う稲作を支える役割も果たしている。このような堆肥化システムに有機農家を取り込むことは、良質の堆肥を産出するノウハウの蓄積を促す。実際に白山町の農家では、共同利用型のコンポスターによる堆肥化だけでなく、強制加熱や発酵菌の添加が不要で、取り扱いの容易な個別処理型の堆肥化方法も確立している。また、集合型コンポスターを利用するには、一定規模の利用者の確保、生ゴミ排出時のモラルを維持すること、それらによって投入量の大幅な変動と異物の混入を避け、微生物発酵の円滑な進行を保つこと、その際、利用グループの形成・リーダーの育成とその維持運営方法に関する問題の解決が課題となる。総じて、資源循環技術を社会システムに組み込むノウハウの確立の重要性を改めて指摘できる。
著者
井上 清俊 西田 達 河田 安浩 泉 信博 山本 訓史 西山 典利 大杉 治司 木下 博明
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.150-156, 2002-03-15
参考文献数
30
被引用文献数
1

交通外傷12年後に診断され,手術治療した気管食道瘻の1例を報告する.症例は31歳,男性.1987年交通外傷にて両側気胸,意識消失のため入院加療を受けた.1999年4月食事摂取時の咳嗽のため受診した.気管分岐部直上膜様部の径33mm大の気管食道瘻と診断し,手術を施行した.瘻孔を食道壁とともに自動縫合器により閉鎖し,第5肋間筋を間置した.術後合併症はなく退院し社会復帰している.
著者
柳本 高秀
出版者
北海道旭川北高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、小学生・中学生・高校生の基礎的な天体運動の理解に関する理解度を調査し、また、これまでに行った授業実践の結果を受け、空間概念の形成に関係する単元として、小学校では「月の満ち欠け」、中学校では「金星の満ち欠け」、高校では「惑星の視運動」に関する系統的な学習プログラムを開発することである。研究方法では、小、中学生、高校生に対する質問紙調査、面接調査を行った。児童・生徒が持つ、「月の満ち欠け」、「金星の満ち欠け」、「惑星の視運動」に対する理解の特質を、これらの調査から明らかにした。これまでの授業実践の評価に基づき、空間概念を形成する具体的内容として、アメリカやイギリスの理科カリキュラムに見られる「観察活動」、「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」を導入した授業を開発、試行した。授業後、その評価を行い、児童・生徒の空間概念の変容について調査した。中・高校生の日食・月食、月の満ち欠けに関する調査からは、多くの生徒に、月の満ち欠けと食現象に多くの混合した誤認識が存在することが明らかとなった。また、空間概念を形成する具体的内容である「観察活動」、「光とかげ」、「相対運動などのモデル化」を導入した授業として、小学校では月の満ち欠け現象に関して「2種類のかげ(影、陰)」に着目した授業実践を行った。2種類のかげの内容を中心に、観察活動やモデル化などを密接に関連させた授業展開を行った結果、2割程度だった月の満ち欠けに関する理解度が、授業後には、約75%へと大幅に増加した。加えて、中・高校生への「金星の満ち欠け」・「惑星の視運動」に関する授業実践でも、物体によってできる影と物体そのものにできている陰の2種類のかげの区別やモデル化を密接に関連づけることで、多くの生徒に、相対運動を1つの視点だけでなく、多視点で見る視点移動能力の発達傾向が見られ、空間認識能力の高まりが確認できた。