著者
大西 斎
出版者
日本法政学会
雑誌
法政論叢 (ISSN:03865266)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.17-31, 2010-05-15

The "Act on Procedures for Amendment of the Constitution", which clarifies the procedure for amendment of the Constitution, was proclaimed on 14 May 2007, and will be put into force on 18 May 2010, after three years of deferment. The hitherto absence of any law on the procedure for amendments to the Constitution stipulated in the Article 96 of the Constitution, is due to omission by the legislature, an indication that the principle of popular sovereignty had been slighted. The implementation of the' Act on Procedures for Amendment of the Constitution' is, therefore of great significance. On the other hand, there remain many challenges. In this report, we consider, from the legal point of view one of the most important issues among the challenges: 'the referendum movement by civil servants and educators'. Analysis is made, with attention paid to trends in judicial precedents, based on the 'freedom of expression' as defined in Article 21 of the Constitution.
著者
増本 浩子
出版者
神戸大学
雑誌
DA (ISSN:09176896)
巻号頁・発行日
no.7, pp.31-39, 2010
著者
瀬戸 浩二
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では,南極宗谷海岸の露岩域に分布する湖沼を,主に湖水の起源に着目し,3つのタイプに分類した.さらにそれらは地理的特徴,流出口の有無(涵養量)によってそれぞれ2つのタイプに細分した.これらの特徴は,湖水の塩分や堆積物の特徴に反映される.本研究において,粒度分析,CNS元素分析,安定同位体(有機物のδ^<13>C)分析を行うことによって,定量的にそれらの関係を解明した.それらの基礎データをもとに,6つの湖沼について柱状試料の堆積物を分析し,古環境の変遷の解析を行った.湖水面の標高が低い3つの湖沼では,柱状試料の下部に海棲の貝あるいは有孔虫化石を含む海成堆積物が見られる.親指池(Type 3a)やぬるめ池(Type 3b)のような塩湖では,貝化石を含む海成堆積物から黒色有機質泥に移り変わっている.淡水湖の丸湾大池(Type 1a)では,有孔虫を含む海成堆積物から黒色のラン藻質堆積物を経てコケを含む氷河性堆積物に移り変わっている.海成堆積物からラン藻堆積物に移り変わる年代は,約3800年前で,海洋〓塩湖に移り変わったことを意味する.また,ラン藻堆積物が存在することは,当時氷床から涵養を受けていないことを示唆する.ラン藻堆積物から氷河性堆積物に移り変わるのは,約3100年前でその間に氷床が拡大したことを示している.すなわち,南極の氷床は約3100年より前が最大の後退を示し,現在はその時より氷床が大きいことを示唆している.これによりヤンガードライアス以降後退し続けていると考えられている南極氷床も実際には前進・後退を繰り返し,氷床後退最大期からそれほど変化していないことが明らかになった.これは,8000年以降急速に隆起し続けている地殻変動が,最近では観測されていないことに関連するものと考えられる.
著者
伊藤 洋一
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.39-66, 2006-01-31

EU憲法条約は,2005年5月29日のフランス国民投票による批准否決により,殆ど「死んだも同然」の状況になった.しかしながら,憲法条約に関するフランス国民投票論議は,ヨーロッパレヴェルにおける基本権保障につき,若干の教訓を残した.国民投票論議の中では,Convention方式の民主的正統性が,批准反対派により争われた.EU基本権憲章の「憲法化」は,憲法条約におけるEU法の優越規定新設と相まって,フランス憲法院に対して深刻な憲法問題を提起することとなった.一般論としては,ヨーロッパレヴェルでの基本権保障の強化は歓迎すべきことであるものの,加盟国の憲法裁判所にとっては,EU法と国内憲法規範との抵触の可能性ゆえに,常にそうであるとは限らないからである.本稿は,加盟国が各国の「憲法制定権力」を援用できる限り,たとえEU憲法条約が発効したとしても,基本権保障問題に関して,EU法の絶対的優越が達成され得ないであろうことを論じるものである.
著者
五月女 律子
出版者
北海学園大学
雑誌
北海学園大学法学研究 (ISSN:03857255)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.23-46, 2005-06-30

On 14 September 2003, Sweden held the referendum on the introduction of the "euro", the common currency of the European Union (EU). The majority of the electorate voted "no", and the Swedish government abandoned adopting the euro, effective from 2006. Thi
著者
河村 又介
出版者
九州大学法政学会
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.133-184, 1933-12
著者
杉山 哲男 長井 孝一 久田 健一郎 上野 勝美
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

平成11年度,12年度で合計2回,延べ約50日間,雲南省西部で野外調査を実施し,多くの地質学的新知見を得るとともに,多数の化石,岩石試料を採集した。これまでに明らかになったことを要約すると,1)Baoshan地塊の上部古生界は,温暖な下部石炭系,氷河起源の異常礫(ダイアミタタイト)を含む寒冷な砕屑岩相と浅海-陸上噴出の玄武岩からなる下部ペルム系,温暖だが単純な動物相からなる中部ペルム系から構成されている。2)Baoshan地塊のゴンドワナからの分離は,Woniusi玄武岩の噴出時期に相当し,前期ペルム紀であることを化石によって確認した。3)Baoshan地塊の下部石炭系化石群は,中国南部や西欧の動物群と共通要素を持ち,下部ペルム系には小型単体サンゴなどからなる寒冷な環境に適応しうる動物群が産出する。また,中部ペルム系には温暖なTethys海要素と共通な化石群を含むが,東南アジアのSibumas地塊や東アジアのCimmerian陸塊と共通の化石も多く含まれている。4)これらを総合すると,石炭紀前期には温暖な陸棚浅海に位置していた同地塊は,石炭紀後期にゴンドワナ大陸とともに寒冷化,旋回南下し,ペルム紀前期に寒冷域でリフティングによってゴンドワナから分離北上を開始し,ペルム紀中期には中緯度付近まで北上していたというシナリオが,化石,堆積相からも強く示唆されることが明らかになった。5)西側に隣接するTengchong地塊の上部古生界についても,Baoshan地塊と共通要素を持っていることが明確になった。6)東隣のChangning-Menglian縫合帯には,海山型の炭酸塩buildupsが多数分布しており,今後詳細な検討が不可欠であることが明らかになった。
著者
福田 敬
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.13-24, 1997-09-30

N. Hartmanns Asthetik hat die Zweischichtigkeit des asthetischen Gegenstandes eingefuhrt : ein realer, die Sinne ansprechender Vordergrund und ein irrealer, hinter dem Vordergrund auftauchender Hintergrund. So definiert sich bei ihm das Erscheinungsverhaltnis des Schonen. Diesen Grundsatz hat Hartmann aus den von Menschen geschaffenen Kunstwerken gezogen. Bei einem Naturgegenstand kann von keinem produzierenden Geist die Rede sein. Das Erstaunliche ist aber das Auftreten von Formen, bei denen ein fur den Betrachter durchsichtiges Erscheinungsverhaltnis zu bestehen scheint. Um dieses metaphysische Ratsel, nach der Abstreifung aller systematischer Metaphysik, im Naturshonen zu losen, hat Hartmann sein Problemdenken der neuen Ontologie vorgelegt. Das heisst, "Im Grunde ist alles Erleben von Schonheit von weltanschaulicher Bedeutung : eben dadurch, dass es sinngebend fur unser Leben ist." Obgleich die Strukturanalyse des asthetischen Naturgegenstandes eben nicht eine Einigung mit der des Kunstgegenstandes zulasst, muss alles naturgewachsene Schone nicht herabgesetzt werden. Vielmehr konnte man sagen, dass das Naturschone die Urquelle allen asthetischen Erlebens, einschliesslich allen schopferischen kunstlerischen Tuns, ist.
著者
千住 智信 浦崎 直光
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、先ずかご形誘導発電機の回転速度が一定であると仮定してかご形誘導発電機の故障電流、有効電力、無効電力、かご形誘導発電機端子電圧の過渡応答を求める理論式をもとめた。かご形誘導発電機から電力系統へ流れ込む電力潮流の有効・無効電力の解析式が得られれば、かご形誘導発電機の入力トルクと出力トルクが計算できるため、かご形誘導発電機の機械的運動方程式より過渡応答を表す理論式が得られることになる。次に得られた理論式の妥当性を数値シミュレーションで検証した。数値シミュレーションでは、入力トルクが急減・急増した場合のかご形誘導発電機の電流、有効・無効電力、端子電圧、回転速度の過渡応答を数値シミュレーションと理論式で得られた過渡応答と比較検証した。また、電力系統と風力発電設備を接続する連系線で故障が生じた場合のかご形誘導発電機の故障電流、有効・無効電力、端子電圧、回転速度についても導出された理論式の妥当性を数値シミュレーションで確認した。理論式の妥当性はシミュレーションで確認した。導出した理論式はシミュレーション結果とほぼ一致することが確認された。平成18年度は風力発電シミュレータを用いてかご形誘導発電機の過渡安定性に関する実験を行った。実験は連系線故障時のかご形誘導発電機の故障電流、有効・無効電力、端子電圧、ならびに回転速度の瞬時値を測定した。この実験で得られた瞬時値と前年度理論的に導出されたかご形誘導発電機の過渡応答波形と比較することにより、導出された理論式の妥当性を検証した。また、連系線故障時のかご形誘導発電機の過渡安定性を故障除去時間との関係から実験的に求めた。実験により得られた過渡安定性限界と前年度開発されたかご形誘導発電機の過渡安定度限界の理論値を比較することにより、開発された過渡安定性判別法の妥当性を検証した。
著者
桑谷 善之
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

ベンゼンの炭素-炭素結合にsp炭素を2個ずつ挿入することによる設計される1,2,4,5,7,8,10,11,13,14,16,17-ドデカデヒドロ[18]アヌレン1は、等価な極限構造式の間の共鳴によりベンゼンと同じD_<6h>の対称性を持つと考えられ、分子軌道の縮退や芳香族性などの観点から興味が持たれる新奇な共役系化合物である。本研究では、対称的に置換基を持った誘導体を合成しその基本的性質を明らかにした。合成に当たっては、3,9,15位にフェニル基、6,12,18位に置換基Rを持った誘導体2を標的化合物として選択し、18員環骨格を構築した後にブタトリエン結合を還元的に導入するという方法による合成を検討した。具体的には4,10,16-トリメトキシ-4,10,16-トリフェニルシクロデカ-1,7,13-トリオン(3)を鍵中間体として合成し、そのカルボニル基に求核的に置換基を導入した後塩化スズを用いて還元することにより、ヘキサフェニル体(2a)をはじめ三種の誘導体(R=Ph,4-^tBuC_6H_4,^tBu)を得ることができた。驚くべきことにこれらはかなり安定な結晶として得られ、いずれも200℃以上の高い融点を示しその温度でもあまり分解しなかった。また、^1H NMRにおいて反磁性環電流による低磁場シフトが見られ、例えばフェニル基のオルト位のプロトンでは通常より約2ppmも低磁場に観測された。その他の分光学的データも、[18]アヌレン骨格が等価な極限構造式の間の共鳴によって良く表現されることを示しており、2が高い芳香族性を有することがわかった。さらに2aのX線結晶構造解析により、[18]アヌレン骨格がほぼD_<6h>の対称性を持つことが明らかとなった。化合物1は拡大されたベンゼンとして様々な応用が期待される。また本研究で用いた分子設計は非常に単純な考えに立脚しており、同様の方法で新しい化合物群が設計でき、今後それらに対する様々な展開も期待できる。
著者
水谷 長志
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.216-221, 2011-06-01

ミュージアム,ライブラリ,アーカイブという蓄積・検索型の情報サービスを提供する機関のトータルなイメージには,「差異を孕みつつ連続するもの」がある。近年,多くの場面で語られるMLA連携においても,その同質性において「連続」し,かつMLAの個々が固有に持つ伝統的な所作の差異を背景として他者へ「侵犯」することによって個々の成長が企図される。その時現れる緊張感が,MLA連携が意味を持つ可能性を開いていくと考えられる。このMLAの間で進行する「連続と侵犯」は,MLA連携のフィロソフィーにとってその原理の一面であると考える。