著者
森 隆司
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

生体の顆頭安定位での骨関節隙を,CT画像から再構築した顎関節の全体について3次元的に計測して,顆頭安定位の形態的な適合性を検討することが本研究の目的である。結果の概要を,以下に示す。1.顎関節骨形態の3次元再構築法:CT画像の下顎窩と下顎頭の形態の2次元座標を計測し,その座標値を3次のスプライン関数で補間する。次いで,形態輪郭線上の1画素ごとに,新たにサンプリングした2次元座標値を積み重ねて上下方向の点列を作成する。この点列を補間して曲線化し,矢状面の骨の輪郭線を描画した後に,曲線の始点から終点までを5画素ごとに2次元座標をサンプリングし,約0.25mm間隔で3次元構築のための構成点の座標値を抽出する。そして,この座標値から顎関節の骨形態を再構築した。2.骨関節隙の計測法:下顎窩を構築する構成点の一つから,すべての下顎頭の構成点への3次元的距離を算出し,その距離が最短となる下顎頭の構成点を選び出して,この距離を選出した構成点での下顎窩-下顎頭間距離とする。そして,骨関節隙の量は隣接する3個の構成点での下顎窩-下顎頭間距離を平均した値とする。骨関節隙の様相は,隣接する3個の構成点で規定される部位の面積の総和を算出することで検討した。3.顆頭安定位での形態的適合性:下顎窩と下顎頭が2mm以内で近接する部位が占める面積の割合の平均は,下顎頭の外側前方部:56.4%,同じく外側後方部:36.0%,中央前方部:45.4%,中央後方部:31.1%,内側前方部:38.7%,内側後方部:18.9%であった。すなわち,外側部では,下顎頭と下顎窩とが2mm以下のわずかな間隙を介して対向している部位が多いことになる。これは,下顎窩と下顎頭の形態は,咬頭嵌合位(中心咬合位)では外側部がより適合していることを意味していて,顆頭安定位での形態的特徴の一つであると考える。
著者
三浦 篤
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は19世紀後半の日本とフランスにまたがる美術交流の実態を、双方向的な視野の下に三つの側面から総合的に解明しようと企てた。すなわち、第1段階として、日本美術からフランス美術への影響現象であるジャポニスム(日本趣味)を研究が進んでいないアカデミックなサロン絵画を中心に調査した。フィルマン=ジラールのような重要な画家の例を発掘したほか、オリエンタリズムの延長としての異国趣味的なジャポニスムが広く存在したことが明らかになった。他にアジアの寓意像、絵の中の文字、陶磁器についてもジャポニスムとの重要な関連性が見出された。第2段階として、アカデミックな画家の中でも好んで日本の美術工芸品を蒐集し、かつ日本近代洋画家たちの指導者でもあったラファエル・コランについて分析した。その結果、コランのジャポニスムは異国趣味とは異なり、印象派のような造形的なジャポニスムとも異質であることが分かった。春信、光琳、茶陶への趣味が物語るように、それは日本美術と本質的に共鳴する美意識に基づく特異なジャポニスムである。その意味で、コランが日本人の弟子を多く育てたことは決して偶然ではない。そして第3段階として、逆にフランス美術の日本美術への影響現象である、フランス留学した日本の洋画家たちにおけるアカデミスム絵画の摂取について研究した。山本芳翠や黒田清輝を始めとする渡航画家たちは、ジェローム、ボナ、コラン、ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ、バスティアン=ルパージュらから、アカデミスム、古典主義、自然主義など多様な絵画様式を摂取して帰国した。日本近代洋画の礎となった画家たちの個性的な受容の有り様が見えてきた。以上のように、従来は別個に研究されていた三つのテーマを相互に連関させながら調査することで、日仏美術交流史の重要な断面をダイナミックに浮かび上がらせることができた。研究に新たな1頁を付け加えることができたと確信する。
著者
岸 邦宏
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成13年度はロジット型価格感度測定法(Kishi's Logit PSM ; KLP)の精緻化に重点を置いて研究を進め、モデルの評価指標の信頼性について明らかにした。平成14年度はその結果を受けて、KLPを用いて公共交通機関の運賃と利用者数について分析を行った。適用事例を以下に示す。1.北海道におけるコミューター航空北海道宗谷南部地域において空港が建設され、コミューター航空が就航された場合の運賃評価について意識調査を行った。業務目的と観光目的、目的地が道央圏と首都圏について分析を行い、それぞれの運賃評価と市場規模を考察した。2.北海道新幹線の函館開業時北海道新幹線が函館まで延伸された場合の函館〜東京・東北地方の運賃について意識調査を行い、利用目的によっての詳細な運賃評価から、北海道新幹線開業時のサービス提供方策を提言した。また、KLPのさらなる理論構築を目的として、公共事業に対する住民の負担金領の評価と道路構造改良による心理的負担軽減の価値について適用を試みた。前者は北海道の4都市における除雪事業について、住民の望む除雪水準とそれに対する住民の費用負担意識を分析した。その結果、住民は除雪水準の向上に対して費用負担の増加を受け入れることが明らかになった。後者については、山間部における高規格幹線道路の安全性に対する価値を通行料としてKLPで評価した。そして、KLPの評価指標のうち、基準価格を用いて心理的負担軽減の価値を求め、道路解消による心理的負担軽減の便益を算出した。以上、主に4つの意識調査を行い、KLPによる利用者の運賃評価と利用者数についての検討、そして公共事業の価値の評価手法としてKLPの理論構築を行った。
著者
横山 淳
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

1.背景我々の長期的な研究目標は,近年提案された第一原理手法である細胞動力学理論を人体の臓器器官に応用し,臓器の形態形成メカニズムや細胞の集団戦略を理論的に解明することである.特に,糖尿病との関連から実験的知見が豊富である膵臓細胞の組織形成をターゲットとする.その為にまず,細胞内エネルギーが一定に保たれるメカニズムを解明し,堅牢なエネルギー論に基づいたミトコンドリアのモデルを構築する.次に組織形成に向けた細胞間相互作用を担う情報伝達物資の,膵臓細胞における分泌・受容機構のモデル化を行う.2.結果(1)ミトコンドリアが細胞内ATP濃度を一定に保つメカニズムの有力な仮説のひとつであった"feedback control theory"は,激しく変わるATP需要に十分に耐えられないことが近年の理論研究から示されている.そこで我々はATP-ADP交換体の熱力学的平衡により細胞内ATP濃度が一定に保たれるという新しい仮設を提唱した.本仮説に基づいたモデルは,100倍以上変化するATP消費速度においてもATP濃度が一定に保たれ,かつミトコンドリア数の変動に対してもロバストであることが理論研究から認められた.本論文はJournal of Theoretical Biologyに投稿され,現在審査中である.(2)膵臓細胞の情報伝達物質の分泌・受容機構のモデル化として,フィックの法則を細胞膜の境界条件に応用した情報伝達物質分泌の新しい空間モデルを構築した.本モデルをテストケースとしてGnRH分泌細胞に応用したところ,情報伝達物質の拡散性が小さい方がより遠くまで情報を伝達できるという画期的な現象を発見した.これは拡散性が小さい程,分泌細胞の近くに情報伝達物質が滞留し,より細胞発火の閾値に近い状態を維持する為,僅かしか情報達物質が伝わらなくても細胞の発火を引き起こす為に起こる.本研究成果によりSociety for Mathematical Biologyからポスター賞が授与された.
著者
佐藤 亮一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、地震で崩壊した建築物領域の識別を可能とするために、散乱電力分解法の一つであるNNED(Non-Negative Eigenvalue Decomposition)と偏波回転補正を組み合わせる手法を提案した。PolSARデータの画像解析結果より、提案手法が有効であることを示した。また、NNEDで生じる「余り電力」も、補助指標として有効活用できることも示した。さらに、円偏波相関係数と正規化した相関係数の組み合わせは、積雪時かつ様々な方向に配置された被災住宅の観測に有効であることも明らかにした。
著者
森 信介 山地 治 長尾 眞
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.120, pp.87-94, 1997-12-11
被引用文献数
8

本論文では、文字 n?gramモデルや形態素 n?gramモデルの予測単位を文字列や形態素列に拡張した連文字 n?gramモデルや連語 n?gramモデルを定義し、予測力という観点でモデルを改善する方法を提案する。モデルの探索における目的関数は、形態素クラスタリングで有効性が示されている平均クロスエントロピーである。これは、削除補間のように、評価用のコーパスとモデルの推定用のコーパスとを別に用意するというアイデアに基づいている。日本語コーパスを用いた実験の結果、クロスエントロピーを計算すると、連文字 n?gramモデルは4.3791であり文字 n?gramモデルの5.4105より低く、連語 n?gramモデルは4.4555であり形態素 n?gramモデルの4.6053より低く、モデルの改善が観測された。In this paper, we define a string-based n-gram model and a phrase-based n-gram mode as expansions of character n-gram model and word-based n-gram model, and we propose a method to improve an n-gram model in terms of prediction. The objective function in model search is the average cross entropy, which is proven to be effective for word clustering. This criterion is, like deleted interpolation, based on the idea of separation of the corpus for evaluation and the corpus for model estimation. As an experimental result on a Japanese corpus, we obtained the entorpeis as follows: the string-based n-gram model had 4.3791, which is less than the character n-gram model's 5.4105, and the phrase-based n-gram mode had 4.4555, which is less than the word-based n-gram model's 4.6053.
著者
山田 知充 井上 治郎 川田 邦夫 和泉 薫 梶川 正弘 秋田谷 英次
出版者
北海道大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

降雪や積雪などの雪氷現象に関わる災害の中で, 新聞に報道されるものは社会的関心が高く, 日常生活に深い関わり持っている. 雪害は自然現象と人間社会との関わりであるから, 地域や季節および時代により雪害の内容や発生機構は変化する. 本研究では新聞記事からの雪害事例収集を統一的に行い, 雪害記載カードを作製し, これを基に雪害のデータベースを作製した. 北海道, 秋田県, 新潟県, 富山県, 石川県, 滋賀県, 京都府, 福井県, 兵庫県について, それぞれの地方新聞を用いて, 豪雪年(昭和55-56年冬期)寡雪年(昭和61-62年)の2冬期分につき約1,800件のデータベースを完成した.一方, 雪害と自然現象を対比するため, 対象地域の2冬期分のアメダスデータを磁器テープから地域別に編集し, フロッピーデスクに収録した. 雪害の発生, 規模, 内容の地域特性と自然現象を比較するため, 本年2月末, 対象地域一体の126地点にわたって積雪調査を実施した.いずれの地域も, 雪害件数の最多は道路や鉄道等の交通等の交通障害, 次いで雪が原因となった交通事故であった. 豪雪年は道路除雪が不備なため, 走行車両の減少と低速走行のため, 事故件数は減る傾向にあるが, 除雪が完備すると事故件数の増加が予想される. 豪雪年には建物の倒壊や雪処理中の人身事故が目だつ. 京都, 滋賀では列車の運行規制, 道路のチェーン規制, 北陸地方では屋根雪処理中の転落事故, 東北地方では他県での降雪による列車の遅れ(もらい雪害), 北海道では空港障害が多く, 雪害の種類や規模の地域的特徴が明らかとなった. 雪に対する防災力が地域と季節によって大きく変化するため, 雪害を発生させる降雪量は地域差が大きい. 小雪地では数mm/dayの降雪で雪害が発生するが多雪地では40mm/day程度である. 社会の進化に応じて雪害の様相も変化するため, 雪害の予測や対策のために継続した調査が必要である.
著者
田村 恒一
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、小型簡易風力発電機による雪庇生成阻止機能を考慮し、豪雪地域での人身事故の抑止効果に関する基礎的検討を行った。先ず、風力エネルギーの効率良い取り込みのために、風車翼と起動力の関係を検証した。風車翼の種類は翼面寸法が同じ9枚の平板翼と曲面翼とし、翼の傾き角度は風向に対して10、20、30、40度の場合、また、風車自体の向きを風向に対して正面、±22.5、±45度と変えた時の起動力データを測定した。測定結果から、平板、曲面翼とも翼角が大きくなると起動力も大きくなり、曲面翼は平板翼の25%増となった。風向に対する風車の対向角度変化の測定データより、風向に対して45°風車がずれていても平均で風力エネルギーの54%を取り込むことができるという結果を得た。さらに、米沢市のアメダス・データを検討した結果、冬季の風向発生頻度の約86%、頻度と風速の積値では93%が西北西を中心に±45度の範囲にあり、風車は風向追随型ではなく固定型で実用上十分で、雪庇対策効果や構造強度的にも好都合と考えられる。基礎実験データを参考に、ハブダイナモを用いた風車二機を試作した。風力発電機の直径は二機とも約1200mmで、ライト管210型9枚翼とVU管100型6枚翼とした。試作風車を二階屋根東側端(季節風の風下、雪庇の生成位置)外側に固定し、傍に風向・風速計を設置して、風速・風向と発電電圧のデータを収集し、加えて雪庇生成や積雪状況の観測を行った。試作した風力発電機は二機とも、起動風速は1m付近と自己起動性が良く、1.4m付近で発電電圧が6Vを超え、蓄電も十分行えることが確認できた。微風で風車が回転するため、風車設置位置での雪庇の生成が押さえられ、風車両脇の雪庇も支えを失い、早期に落下することが認められ、適切な風車の配置によって、雪庇生成が抑制されると考えられる。複数機設置することにより、より有効な抑制効果が期待できる。
著者
久慈 憲夫
出版者
八戸工業高等専門学校
雑誌
八戸工業高等専門学校紀要 (ISSN:03854124)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.29-34, 2006-12-15

A novel life-rhythm analysis system, which secures safety of living-alone seniors by sensor network, has been developed. Sensor network consists of sensor nodes which are composed of various sensors, CPU and a wireless communication module. Sensing data are transferred to the host computer through wireless communications among sensor nodes. Since the sensor network enables us to place processors and various kinds of sensors in any places, we can not only obtain much more life-rhythm information, but can also control electric appliances in the household. The developed system acquires sensing data from sensor network and transfers them to a database on a host computer through internet. Clients access the database through web browsers. The system was applied to measurement of actual home environment. As a result, it was shown that many kinds of life rhythms, such as washroom usage, rising hour, bed time, coming-home time, can be obtained at a time. Also it was confirmed that each sensor node can control external devices, such as LEDs. From these evaluations, we can say that the system is very promising for remote sensing of an extraordinary life rhythm of living-alone seniors and coping with such an unusual situation.
著者
松尾 秀哉
出版者
聖学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

政権形成交渉に要する「時間」は、(1)国家元首の権限および行動、(2)政党システムの破片化の程度によって決定され、さらにその政権形成交渉期間にどの程度、連立の焦点となったイシューを具体的政策案として提示しうるか、が新首相のイメージを形成し、その後のリーダーシップに影響を及ぼして命運を決する。ベルギーの首相(2008年3月~)イブ・ルテルムは(首相在任中)「扇動者」のイメージが付きまとい、そのため短命政権で終わったのである。
著者
平松 亜衣子
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、現代クウェートにおけるイスラーム復興運動について、政治的領域だけでなく経済・社会的領域における影響について検討しようとするものである。本年度は、まず5月に開催された日本中東学会年次大会において、「現代クウェート議会における投資のイスラーム適格性をめぐる議論」と題する研究報告を行った。本発表では、クウェートの金融部門においてイスラーム的な規範を重視しようとする動きが観察されることについて、クウェートの政府系ファンドであるクウェート投資庁の投資活動に関するクウェート国民議会の議論を材料に明らかにした。本発表では、近年膨大な石油収入を獲得している他の湾岸アラブ産油国においても類似の潮流があることを念頭におきつつ、クウェートの事例を紹介した。また、湾岸アラブ産油国の政府系ファンドについては、近年大きな関心が寄せられるようになっているものの、その実態について分析した研究がなされてこなかった。本研究はこの研究上の空白を埋めるという点においても意義がある。次に、7月に実施した現地調査では、議会におけるクウェート国民議論の全貌が記された議事録を入手した。また、調査対象であるイスラーム主義系の国会議員へのインタビューのほか、クウェートの政府系ファンドであるクウェート投資庁では同庁幹部へのインタビューおよび資料収集を行うことができた。現地調査で収集した資料をもとに、9月に中国・北京で開催された、日本・中国・韓国・モンゴルの中東学会に属する研究者が一同に会する国際会議であるアジア中東連合において、"Overseas Investments and "Shari'a Compliance" in the Arab Gulf Countries : A Case of Study on Kuwait Investment Authority"と題する研究報告を行った。そこでは、四力国を代表する中東専門家たちからコメントを受けた。それらをふまえて、10月に開催された国際ワークショップ"Technology, Economics and Political Transformation in the Middle East and Asia"において、"Where should Kuwait's Oil Wealth Be Invested?-Islamists' Demands in Kuwaiti National Assembly"と題する報告を行った。上記3つの研究報告をもとに、12月には『日本中東学会年報』に「現代クウェートにおける政府系ファンドと投資のイスラーム適格性」と題するペーパーを提出、査読審査のうえで掲載が決定した。2月には、チュニジアやエジプトで民主化への革命が連鎖的に生じたことから、『中東・イスラーム諸国民主化ハンドブック』が商業出版されることになり、同書の「クウェート」の章を執筆した。
著者
佐藤 匠徳 赤沼 啓志
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2010-04-01

1.臓器・組織の再生に必須な「Angiocrine因子」を同定した。2.臓器間を結ぶ新規の「臓器間血管網」を同定した。3.心筋梗塞における線維芽細胞特異的な細胞内エネルギー代謝機構の阻害をターゲットとした薬剤が梗塞後の線維芽細胞の増殖を抑制し、心臓の線維化を最小限化し血管形成を促進することで、心機能の向上を誘導することを示した。4.血管新生における、神経細胞の新たな役割とそのメカニズムを明らかにした。5.心機能の異常に伴う合併症の発症に関与している因子群を同定し、それらの作用機序に関する知見を得た。
著者
後藤 乾一 塩崎 弘明 山田 満 吉野 文雄 玉木 一徳 山崎 功
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成18年5月、本研究グループは、平成15-16年度の基盤研究B(課題番号 15330034)の研究成果を『東ティモール『国民国家』を巡るエスニシティと国際・地域環境』として上梓し、その成果をさらに深めることを本年度の課題とした。その概要は以下のとおりである。(1)独立後最初の深刻な内部対立(地域差が主因)が発生したが、その直後に現地調査を行い、権力構造、経済事情に関する基礎的資料を収集した。(2)混迷する経済の活性化には、一定の外国援助・投資が必要であり、特に日本の関与が『期待』されている。その観点から日本政府、企業。NGOの体東ティモール政策・関与の実態を聞き取り調査を含め実施した。(3)日本との関係においては、今なお戦時期の軍事占領に起因する微妙な対日感情が見られるが、この点につき前年度に現地で行った聞き取り調査のテープ記録を起こし分析した。(4)東・東南アジアでは経済分野における域内関係が密接化しているが、東ティモールも経済規模はきわめて弱体ではあるものの、こうした潮流に加わることを課題としている。そのような観点から、アセアンさらにはAPECなどの地域協力機構、その加盟国はどのような東ティモール政策を準備しているかについて実態調査を行った。(5)2002年5月の独立に際しては最大の宗教勢力であるカトリック教会が重要な役割を演じたが、今回の政治的・社会的・文化的な亀裂の修復にはどのような役割を果たしたのか(あるいは果たせなかったのか)につき、教会側の動きについて、主に現地で活動する日本のカトリック系NGOからの聞き取り調査を行った。以上の諸活動およびそこから得られた情報・資料・データについては、現在のきわめて流動的な状況が一段落をした時点で分析を行い、平成20年3月をめどに最終報告書を取りまとめる予定である。
著者
鈴木 恭宜 大下 浩二郎 垂澤 芳明 野島 俊雄 豊島 健 藤本 裕
出版者
社団法人日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 : 日本エム・イー学会誌 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.189-201, 2008-04-10
参考文献数
23

This paper presents a probabilistic evaluation of electromagnetic interference caused by portable telephones in implantable cardiac pacemakers. Based on experimental results of electromagnetic interference in the 900 MHz and 1.5 GHz band PDC(Personal Digital Cellular) system in Japan, a distribution is extracted of the maximum distances between the affected pacemaker and a portable telephone. This paper shows that the distribution is approximated as a Rayleigh distribution using statistical analysis. The interfering probability for which the maximum distance of X cm is exceeded is defined based on the product of the cumulative distribution of the Rayleigh distribution and the ratio of the affected pacemaker types to the measured ones. The interfering probabilities that exceeded the maximum distance of 15 cm for the 900 MHz and 1.5 GHz band portable telephones are 5.0×10^<-4> and 6.0×10^<-4>, respectively. The expected values, which are a product of the interfering probability and the number of measured pacemaker types for the 900 MHz and 1.5 GHz band portable telephones, are 0.210 and 0.248, respectively. The continued surge in the number of pacemaker types indicates that the expected values will continue to increase. If the immunity of the new pacemaker types in the future maintains the same level as that in the present, this paper indicates that the maximum distance of the new pacemaker types must continue to be confirmed using the electromagnetic interference test.
著者
香川 せつ子
出版者
西九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、19世紀後半から20世紀初頭に、イギリスの高等教育機関を修了した女性の卒業後のキャリア形成について考察した。この時期に女性の高等教育機会は急速に拡大し、1930年にはイギリスの大学に在籍する学生の4分の1が女性であった。その大半が卒業後に教職の道を歩んでいる。他方では女性の医学教育機会の獲得と医師職への進出が実現し、女性医師数も着実に増加した。本研究では、この二つの職種に注目し、医師についてはロンドン女子医学校、教職についてはケンブリッジ大学ガートン・カレッジを事例にとりあげて、入学生の社会的出自とプロフィール、卒業生のキャリア形成を検討した。ガートン・カレッジに関しては、その同窓会名簿の記載事項を分析した結果、(1)初期の卒業性にとって職業と結婚とは二者択一の関係にあり、19世紀末まで後者の数が前者を上回った、(2)職業の大半は教職であり、1910年まで卒業生の半数以上、就業者の4人に3人までが教職に就いた。教職の中でのキャリア形成の様相は年代とともに変化している、(3)教職以外では、有職無職様々な形をとりながらアカデミズムの世界で生きた女性、卒業後に医学校等に進学し医師となった女性、結婚後ボランティアなど社会活動で活躍したことが明らかとなった。ロンドン女子医学校に関しては、その年報と校内誌から教育課程や学生生活の実態を探るとともに、女性医師数の動向を検討し、卒業生の主たる活躍の場が、女性と子どもを対象とした病院や、植民地医療にあったことを明らかにした。
著者
福田 博同
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.A95-A110, 2010-03 (Released:2010-03-15)

図書館は「読む自由」を保証するため、すべての人に電子資料を含む図書館資料を提供する義務がある。図書館は今や、その電子資料を作る主体でもある。ICT の発達により「読書権」を保証する機会は拡大したが、その利用方法もアクセシビリティに配慮する必要がある。公立図書館の利用教育において、児童や障害者へのサービスは古くから取り組まれているが、重複障害者や高齢者への取り組みは緒に就いたばかりである。そのような現状において、公立図書館での利用教育の課題を分析し、インターネットによる図書館利用教育を中心として、あるべき方向を論ずる。
著者
本田 純久 野村 亜由美 今村 芳博
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

スマトラ沖地震による津波に被災したスリランカ南部において行った調査により、家族や友人・知人の死亡、家族や本人の負傷、家屋や家財の被害、生計の喪失、年齢、性別、主観的健康感といった要因とGHQ-12項目得点、IES-R得点との間に関連がみられた。津波による被災体験や被災時の状況が、心的外傷後ストレス障害をはじめとする精神的健康状態に影響することが示唆された。