著者
水山 高久 VOTRUBOVA Jana
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

林地斜面土層内の不均質な水移動の実態を解明する目的で,TDR式水分計による体積含水率の計測を,高空間分解能で行った。計測は,滋賀県南部の田上山系内に位置し,ヒノキ,コナラを主木とし,ヒサカキ,ネジキ,リョウブ等の下層植生を有する天然性林において行った。縦50cm,横50cmの土壌断面を掘削し,縦・横10cm間隔の格子点上に合計25本のTDRセンサーを設置した。TDRセンサーは,センサーロッド長30cmのものを10cmにカットし,より小範囲の水分状態を詳細に計測できるようにした。このため,出力値を含水率に変換するために提示された既往の経験式を用いることができない。このため,現段階では含水率の絶対値の議論を行うことはできず,本年度は出力値の変動からみられる水みちの様子について解析を行った。2002年の秋から冬にかけては,土層の左半分に偏った浸透が見られたが,その後,その偏りが徐々に緩和され,土層の表面から順に平均的に浸透する様子が観測された。2002年の夏から秋にかけては,例年にない小雨で,土壌が極端な乾燥状態にあった。乾燥にともなう土壌の撥水性の発現により,2002年の秋から冬にかけて浸透の不均質性が大きくなり,時間の経過と共に撥水性の影響が少なくなったものと考えられた。2003年の4月より約2ヶ月おきに,含水率計測地点付近の表層土壌から採取した土壌サンプルを用いて,撥水性の試験(WDPT試験)を行った。いずれ計測でも,現場の含水状態では大きな撥水性が観測されなかったものの,サンプルを乾燥させた後に計測した結果は,いずれも大きな撥水性を示した。このことから,表層土壌が潜在的に撥水性を持ち,土壌の乾燥に伴ってそれが発現されることが確かめられた。
著者
吉本 秀子 三宅 義子 藤目 ゆき 纐纈 厚 吉本 秀子 三宅 義子
出版者
山口県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

これまで在日米軍基地問題は、主として政治領域の問題として扱われてきたが、本研究は、これにジェンダーの視点を持ち込み、女性を中心とした岩国市民のオーラル・ヒストリーを記録することで、基地問題を公的領域としてだけでなく、公的領域と私的領域を橋渡しする問題として捉え直している。三宅は、岩国市民のキーパーソンに聞き取り調査を実施、オーラル・ヒストリーを記録した。藤目は、占領期における基地被害を女性史の視点から描き出し、著書『女性史からみた岩国米軍基地』を出版した。纐纈は、日米安保条約の枠組みから見た岩国基地の位置を考察した。吉本は、在日米軍基地が米国でどう報道されてきたかについて、ニューヨークタイムズ紙を例に分析した。基地問題で私的領域は顕在化しにくい。本研究は、顕在化しにくい部分を聞き取り調査と一次史料調査で顕在化させることを試みた。また、メディア分析で私的領域が公的領域として顕在化する事例を探った。
著者
小野寺 康之
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ホウレンソウには雄花のみを着生させる雄株および雌花のみを着生させる雌株に加え、雌花と雄花あるいは両性花が様々な比率で混成する多様な間性が見出される。これまでの研究で、我々は花器形態に基づいて5種類の間性自殖系統を雌雄異花同株および雌花両性花同株の二つのタイプに分類できることを明らかにした。さらに、雌花形成割合(雌性率)および各間性形質の遺伝様式に基づいて、これらの間性系統の性型を4型(I型〜IV型)に分類した。本研究では、これまで解析に用いてきた間性系統の中で最も雌性率が低く、雌雄異花同株タイプに属する系統(03-336)が示す1型間性の発現を支配する遺伝子の同定を試みた。03-009♀x03-336によって得られたF1個体を雄株(系統03-009:XY)と交配してBC1世代を作出し、2007年4月から6月にかけてこのBC1集団を北海道大学構内のビニールハウス内で育成した。当該F1集団および前述のBC1集団のおよそ半数からY遺伝子マーカーが検出されたことに加えて、それらの全ての個体が雌性率0%(雄株)を示したことからY遺伝子はI型間性の発現を支配する遺伝子に対して優性もしくは上位性を示すと結論づけた.さらに、このBC1世代(169個体)において,雄株:間性株:雌株=2:1:1の比に適合する分離が生じていることも判明した(x^2検定,ρ=0.372).雌雄決定遺伝子XおよびYに加えてI型間性遺伝子としてM遺伝子を想定することによって,雄株:間性株:雌株=2:1:1(XY;Mm:XY;mm:XX;Mm:XX;mm=1:1:1:1)の分離が当該BC1世代で生じることが説明できる.

1 0 0 0 OA 39 眠れない夜

著者
上田 勝也
出版者
九州産業大学
雑誌
九州産業大学芸術学会研究報告
巻号頁・発行日
vol.39, 2008
著者
内田 和子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ため池卓越地域においては、その決壊に備えるためのハザードマップ作成が重要である。筆者は全国都道府県対象にため池ハザードマップ作成状況の調査を行い、作成例が?なく、作成方法や活用方法も多様であることを明らかにした。次に、その中から先進事例について現地調査を行い、マップ作成の成功要因や留意事項を明らかにした。結果は、ハザードマップ作成は行政が主体と成らざるを得ない、想定区域の想定手法は何種類かあり、行政の予算に応じた方法を選択すべきである、行政と住民が連携したマップ作りが効果的であるが、ファシリテーターと住民の危機意識が鍵となる等である。マップ作成は地域性に応じた方法を考慮すべきであって、作成マニュアルが必要であり、その作成も可能であることが明らかとなった。
著者
井街 宏 鎮西 恒雄 満渕 邦彦 藤正 巖 今西 薫 阿部 裕輔
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1992

人工心臓は心臓手術後の循環補助や心臓移植への繁ぎとして多くの臨床例に用いられ患者の救済に役立っている。しかし、現在の人工心臓は形態的にも機能的にも生体心臓の模倣を目標に開発されてきたため、健康を維持する能力はあっても病気に陥った臓器を積極的に治療・回復させたり目的に応じて特定の臓器や組織の機能を昴進させる能力がないなどの限界を有している。本研究はいままでの人工心臓と180度発想を転換した場合、10-20年後を指向した次世代型人工心臓としてどのような人工心臓を開発すべきかについてその基本構想を述べ、それに対する基礎的実験を行なうことを目的とした。3年間の研究成果は以下の通りである。1 次世代型人工心臓として分散型人工心臓を提唱してその開発の意義や可能性について考察した。2 システムの小形化の研究を行ない、(1)人工心臓用Jellyfish弁の小形化、(2)新しい方式の人工心臓の開発とその小形化の研究、(3)新しい方式の補助循環装置の開発、(4)マイクロマシンの技術による人工筋肉の開発とその理論解析などで新しい知見を得た。3 新しい計測法の研究として、(1)材料表面に吸着するタンパクの動的挙動の測定、(2)血中カテコラミン測定センサの開発、(3)微小循環の長期間実時間観察法の開発などこれまで不可能であった計測法の研究開発を行なった。4 新しい制御方法の研究の結果、人工心臓を装着した生体自身に自己の人工心臓を制御させるという全く新しい制御方法(1/R 制御方法)を考案し、ヤギを360日間生存させることに成功した。
著者
鈴木 参朗助 佐賀 正道 成田 正弥 安藤 靖恭 真島 行彦
出版者
慶応義塾大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

難治性網脈絡膜炎、特にヘルペスウイルス性ぶどう膜炎におけるPCR法の診断的意義および病態との関連性を解明するために、以下の研究を行った。家兎を用いて実験的単純ヘルペスウイルス性網脈絡膜炎を発生させ、その網脈絡膜炎の病態、病期とPCR法の検出感度およびウイルス抗体価の変動を検討した。抗体価の上昇は硝子体内へのウイルス接種後7日より上昇し始め、21〜28日にピークを示した後、低下した。PCR法による前房水中のウイルスDNAの検索では、接種後3〜7日に検出され、その陽性率は30%であった。ヘルペスウイルス性網脈絡膜炎の臨床症例の検討では、前房水におけるPCR法によるウイルスDNAの検出は、硝子体に比べ、検出率が低かった。しかし、2週間の抗ヘルペス剤投与後にも眼内液から検出することが可能であった。免疫抑制患者においては、眼内液のウイルス抗体価よりもPCR法によるウイルスDNAの検出が有用であった。免疫抑制患者における水痘・帯状ヘルペスウイルス性網脈絡膜炎の検討から、免疫能の低下が網脈絡膜炎の病態に関与していることが示唆された。ヘルペスウイルス性網脈絡膜炎の診断における眼内液のPCR法によるウイルスDNAの検出率は、必ずしも高率ではなかった。生体の免疫能を考慮し、眼内液のウイルス抗体価と併せて評価すべきと考えられる。免疫抑制患者では、健常者と比べ免疫能の低下していることから、眼内液のウイルス抗体価は低く、PCR法によるウイルスDNAの検出率が高くなると考えられた。ウイルス性網脈絡膜炎患者においては、その免疫能を考慮し、ウイルス学的検索結果と臨床所見を詳細に検討する必要がある。
著者
忍足 俊幸
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

糖尿病網膜症における神経細胞死にはミトコンドリア・カスペース依存性経路が関与することを網膜器官培養を用いて解析した。また、同時に小胞体ストレス関連細胞死経路も糖尿病誘導神経細胞死に関与していることを網膜培養及び人糖尿病網膜組織切片を用いて解析した。このことからミトコンドリア・カスペース依存性経路と小胞体ストレスの間には分子レベルでのクロストークがあることが示唆された。さらにBDNF,NT-4,citicolineは糖尿病誘導神経細胞死を救済し再生を促進することを確認した。特にNT-4は糖尿病環境における神経保護・再生に最も適した神経栄養因子であることが示唆された。
著者
小松 幸平 森 拓郎 北守 顕久 荒木 康弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

CO_2を長期間固定する方法として、戸建て住宅や大規模な公共建築物を全て木造建築とすることは有効な方法であり、既に2006年に「木造低層公共建築物を促進させる法律」が施行されている。本研究はこの法律に沿って、高強度・高剛性、そして大地震にたいしても崩壊せず地震後に現状復帰可能な木造ラーメンフレーム構造を戸建て木造軸組構造住宅から3階建て大規模集成材構造建築物に至るまで安心・安全に適用できる技術を開発したものである。
著者
丸山 哲夫 梶谷 宇 長島 隆
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

昨年度に引き続き本年度は、哺乳類胚発生のメカニズムならびに胚の個体発生能を含めた質的ポテンシャルを、非侵襲的に解明し評価することを目的とした。そのために、マウス胚発生過程において培養液中に分泌されるタンパク質のプロファイル(secretome)を明らかにし、そのデータベース構築を目指すとともに、agingや機械的受精操作などがsecretomeにどのような影響を及ぼすかについて検討するための実験システムの整備を行った。まず、secretomeと胚発生・発育の関連を検討する際に、十分な胚盤胞到達率が得られなければならない。一方、プロテインチップ解析に供するためには、出来るだけ少量の培養液で行う必要があり、これは胚発生・発育にとって厳しい環境となる。このように、両者は相反するため、至適条件の確立が極めて重要である。そこで、培養液の変更など種々の検討を行った結果、60μ1の培養液量で約90%の胚盤胞到達率を再現性良く得られる培養システムを確立し、引き続いてその実験システムにより得られた各時期の培養液をプロテインチップ解析に供した。その結果、コントロール培養液に比較して、胚存在下の培養液では、複数の特異的蛋白ピークが検出され、また時期に応じてそのプロファイルは変化した。これらの一連のsecretomeのプロファイリングと胚盤胞到達率との関連を検討するとともに、今回検出された複数の特異的蛋白の同定を目指し、MALDI/TOF-MS質量分析計への解析に供するに必要な実験システムの更なる構築を行った。昨年度より引き続いて本年度得られた上記の成果は、マウスのみならずヒト胚のqualityの非侵襲的評価システムを確立するうえで、重要な基盤データになると考えられる。
著者
鈴木 亜夕帆 杉崎 幸子 寺嶋 敦子 郡山 真由美 土橋 昇 渡邊 智子
出版者
千葉県立衛生短期大学
雑誌
千葉県立衛生短期大学紀要 (ISSN:02885034)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.15-18, 2000

The study was undertaken to determine the effects of ginger on the boiled mackerel used dark yellow type miso. Boiled mackerels were added ginger each of 0 %, 3 %, 5 %, 10% and 20% of mackerel weight. The evaluation on appearance of meat, appearance of the whole, color, aroma, flavor, taste of first, taste of after and overall acceptance were best in 5 % ginger group. Salt content volume decreased along with the addition ginger content.
著者
長谷川 浩二 尾野 亘 森崎 隆幸 米田 正始 平家 俊男 森崎 隆幸 米田 正始 平家 俊男
出版者
独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

心不全のより根本的治療を確立するためには、心筋細胞情報伝達の最終到達点である核内の共通経路を標的とした治療法を確立する必要がある。我々は内因性ヒストンアセチル化酵素(HAT)活性を有するp300とGATA帳写因子群の窃力(p3O0/GATA経路)が心不全発症における遺伝子発現調節に極めて重要であることを示した(Mol Cell Biol 2003; 23: 3593-606、Circulation 2006: 113: 679-90)。本研究においては、p300によるGATA4のアセチル化部位を同定し(J Biol Chem. 2008;283:9828-35)し、またp300の特異的アセチル化阻害作用を持つクルクミンが心不全の進行を抑制することを高血圧性心疾患ならびに心筋梗塞後の2つの慢性心不全ラットモデルにおいて証明した(J Clin Invest 2008;118:868-878)。一方、心筋細胞の脱落が激しい末期心不全の根本的な治療には心筋再生療法が必須である。我々は、多分化能と無限増殖能を持つ胚性幹(ES)細胞において、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)による刺激が、ヒストンや転写因子GATA4をアセチル化し、心筋分化効率を著名に上昇させることを見出した(J Biol Chcm 2005; 280: 19682-8)。本研究においては、マウス胚性幹(ES)細胞においてCyclin dependent kinase (CDK) 9が転写調節因子GATA4と結合し、その分化に関与していること(2007年11月, American Heart Association にて発表)、ES細胞の分化過程で発現が上昇するmiRNA-1がCDK9の翻訳抑制を通じて心筋分化を負に制御しているという新たな知見を得た(Circ J in press)。ES細胞と同様の多分化能と無限増殖能を持つ人工多能性幹(iPS)細胞において心筋分化システムを確立し、iPS細胞の株間には大きな分化効率の差異が存在すること、心筋分化効率が極めて低いiPS細胞株でもTSAにより、著明に心筋分化が亢進することを見川した(2008年Rcgenerative Medicine & Stom Collで発表)