著者
菊地 成朋
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

五島列島のキリシタン集落は,明治以降も隠れキリシタンであり続けた集落と,明治期に名乗り出て教会に属しカトリックとなった集落とがある。隠れキリシタン集落「月の浦」の事例検討では,「クルワ」と呼ばれるキリシタン組織がもともとは血縁にもとづく属人的な集団であったと考えられ,その領域が父系の血縁集団ごとに定められ,その中で分家が展開されていったことがわかった。分家は本家を中心に放射状に展開しており,その際,段状に広がる耕地のエッジに屋敷を構えている。生産優先の原則と険しい地理条件との中で分家が慣行的に行なわれ,独特の村落景観が形成されたと解釈される。カトリック集落「大水」の事例検討では,隠居分家を基本とするイエワカレ慣行が一貫して持続され,その際,平等配分を原則とする分割相続が行なわれてきたことがわかった。ただし,明治から大正にかけてのイエワカレでは,集落エリアの外側に新たにイエと耕地をセットにして居住地を開発し,そこに分家を排出していったのに対し,後期のイエワカレは,屋敷近傍の耕地を宅地化することによって行なわれるようになった。そのため,集落景観は以前の散村的状況からやや集村的な状況へと変化してきている。両者の村落景観を比較すると,キリシタン集落は斜面に形成された段々畑の中に家々が散在する景観をもつのに対し,カトリック集落ではその焦点に教会を配した統合的な景観がみられ,空間構成は一見大きく異なっている。しかしながら,これらを領域モデルで比較すると,その構成は基本的に類似しており,さらに形成過程の分析によって両者は同じ原理で展開してきたことがわかった。五島キリシタン集落の独特の村落景観は,キリスト教徒という属性に直接起因するのではなく,斜面という立地特性をベースに,分割相続型のイエワカレ慣行とその具体的分与システムによって形づくられたとみることができる。
著者
田上 竜也
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶応義塾大学日吉紀要 フランス語フランス文学 (ISSN:09117199)
巻号頁・発行日
no.33, pp.1-14, 2001

上に掲げた「序説」という表題は、この小論のいわば射程の短さを示すものである。というのも、ヴァレリーにおける「空間」の問題を扱うにあたり、詩人としての、あるいは詩以外の文学的テクストの作者としてのヴァレリーの想像界へと話を展開していくことは、あまりに論点を拡散しすぎてしまう恐れがあるからである。ここでは、もっぱら理論面からヴァレリーの空間に関する思索を分析し、とりわけヴァレリーの思想と、彼が生きた当時の数学的、科学的思潮との関連という点に話を絞って進めていくことにする。それが、この論を序説と題する所以である。 本稿ではヴァレリーの『カイエ』における空間論を中心に考察していくが、その前に、19世紀から20世紀への転換点において、空間を巡る論議が、物理学的、数学的、哲学的、科学認識論的な領域にわたる中心問題であったことを強調しておく必要があると思われる。ごく大雑把に言って、19世紀以前、空間の概念は、数学的対象としても、物理的現実としても、素朴な形でユークリッド空間に結びつけられていた。すなわち、ユークリッド幾何学においては、空間概念を、論理的明証性と現実的かつイデアルな秩序を担った定義と公理の体系と見なしていた。また物理的空間は、知覚に基づく現実空間およびユークリッド空間と同一視されていた。周知のように、ニュートン物理学とカント哲学はユークリッド幾何学を具現するものだが、前者において空間は、物質がその中で自由に動きまわることのでき、またその内に幾何学図形を構築することができる、空虚な受容体としての絶対空間であり、後者は、空間概念の根拠を認識主体の側に引きつけたうえで、それをア・プリオリな感性の形式と定義づけるものであった。19世紀において、こうした空間観への疑義が呈されるようになったのは、言うまでもなくガウスやロバチェフスキーらによる非ユークリッド幾何学の発見に依るものである。19世紀末という時代は、一方にはア・プリオリの純粋直観というカント的空間論、他方には双曲線幾何、楕円幾何といった複数の幾何学、さらにそれに伴う複数の空間の存在を認める新しい空間論とが、哲学的、科学認識論的地平において対立していた時代と言うことができる。 このような時代状況下、ヴァレリーはその空間論の出発点において、ポワンカレの1895年の論文「空間と幾何学」2に大きな影響を被っている。論中ポワンカレは、空間を現実空間、すなわち視覚、触覚、運動感覚によって構成される知覚表象の空間と、幾何学空間(この場合ユークリッド空間)との2種類に大別している。このポワンカレの論を受けて書かれたごく初期の『カイエ』にはこう記される。「ポワンカレは、彼によれぽ連続的で、無限で、3次元で、同質的、同方向的な幾何学空間を、(視覚、運動等の)空間ないし表象空間と区別する。彼はおそらくこれらの空間が思考のなかで混ざり合っていることを忘れている。[_]彼が実に正当に指摘したように、表象空間については、それが3次元を持つとは言えない。表象空間は独立した神経網が与>xるだけの、すなわち独立変数の数だけの次元を持つ。」(C.int.,I,215)ヴァレリーはここで言及される2種類の空間、すなわち現実(表象)空間と幾何学空間の他に、さらに想像空間、つまり心像によって作られる空間の存在を主張し、それら3種類の空間が意識のなかで混在していると考える。初期『カイエ』における探究の大きな柱のひとつは、心像の連鎖の観察と操作を通じて、この想像空間の性格を明らかにすることにほかならない。「イメージの幾何学」と名づけられた一連の考察のなかで彼は、想像空間の特質を、現実空間、幾何学空間との比較から明らかにしようと試み、とりわけ、想像空間にどれだけ幾何学的法則を適用することができるか、という点を問題にしている。そうした試みのなかで、ヴァレリーは抽象的でイデァルなユークリッド幾何学空間と、感覚の多様さに応じて複数の次元を持つ現実空間、平面的で絶えず大きさの変化する想像空間を対立させている。以下では、現実、幾何学、想像空間という3分法に基づく枠組みを念頭にいれた上で、ヴァレリーにおける幾何学的認識および空間の起源と性格、さらに心的空間の表象と幾何学モデルとの関係について検討する。
著者
杉内 友理子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

上丘は従来、急速眼球運動(サッケード)の生成に関与することが知られているが、サッケード開始の引き金となるメカニズムは長い間不明であった。一方、上丘の前方には固視機能に関与する部分があることが示唆されてきた。本研究で、上丘からのサッケードの発現機構と固視の発現機構は相互に抑制し合っており、この相互抑制が、サッケード開始の引き金に関与することが明らかとなり、眼球運動研究の歴史での長い間の謎が解明できた。
著者
北村 俊雄
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

種々の癌細胞株由来の発現型cDNAライブラリーをウイルスベクターを利用して作成した。これらのライブラリーをマウスIL-3依存性細胞株(Ba/F3、HF6、HF7)に導入し、IL-3非依存性の自律増殖を誘導する遺伝子の同定を試みた。この実験において、セリンスレオニン/チロシンキナーゼpim-1、pim-2、pim-3、転写因子PEPP2を同定したが、点突然変異などの活性型変異は認められなかった。このうち、PEPP2はノックダウンすると胃癌細胞の増殖を抑制した。PEPP2の下流で発現が増強あるいは減弱する遺伝子をDNAチップを利用した発現解析で探索し、興味深い遺伝子を複数同定した。シグナル伝達系を調べたところ、PEPP2の過剰発現はPI3K-AKTの経路を活性化することが判明した。種々のがん患者サンプルで調べたところ、肺がん、乳がん、胃がんなどで発現が亢進している症例が認められた。発現が高い患者と低い患者の予後を調べたところ、ある程度分化した癌でPEPP2高発現の症例が予後が悪いことが判明した。未分化癌ではもともと予後が悪いためか、差が認められなかった。一方、骨髄細胞に発現した場合にトランスフォームに関与しうるかをマウス骨髄移植系を利用して検討したが、単独では白血病などの発症を誘導しなかった。現在、MLL融合蛋白質などクラス2変異との組み合わせで白血病などの疾患を発症しうるか検討中である。
著者
山谷 修作 信澤 由之
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

自治体アンケート調査を通じて、全国市町村の有料化実施状況、ごみ減量効果、併用施策の実施状況、不法投棄の発生・収束状況を詳細に把握・分析した。大部分の有料化自治体においてごみ減量効果が維持されており、リバウンドが発生するのは手数料水準が低いケース、超過量方式の料金体系できめ細かな制度設計がなされていないケースにほぼ限定されることを明らかにした。またレジ袋を全市で有料化した伊勢市において市民アンケートを実施し、支払意志額(WTP)の計測、有料化の有効性検証、環境行動の誘発効果などに関する新たな知見を得た。
著者
河野 孝太郎 江澤 元
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

研究初年次となる平成20年度は、南米チリ北部のアンデス山脈中にある極めて乾燥した高地(アタカマ高地、標高4860m地点)に設置した大口径(直径10m)の最新鋭サブミリ波望遠鏡ASTE(国立天文台、東京大学、他国内およびチリの大学が共同して運営)に、マサチューセッツ大学等のグループと協力して、ボロメーターカメラAzTEC(画素数144、ASTE望遠鏡への搭載時の視野約8分角、角分解能約30秒角)を搭載する。そして、かつてない広域かつ深い1.1mm帯撮像サーベイ観測を行い、初期宇宙にある形成されたばかりの若い銀河を新たに数100個規模で発見することを目標とした。AzTECカメラを用いたASTE望遠鏡での観測は極めて順調に始まった。今年は特に現地の天候が例年にも増して安定しており、極めてよい大気条件の下、非常に効率的に高品位の高赤方偏移天体探査が進行している。現在までに、既に10個以上の天域で、150平方分角あるいはそれ以上の広さでの、深さ1mJy(1σ)以下という感度を持った観測が進んでいる。観測はもちろん、データ処理はまだ途上であるが、それぞれの天域における予備的な解析から発見されつつある天体を合計すると、新たに発見された天体は既に100個程度に達していると思われる。他の波長のデータとの比較から、これらは多くが赤方偏移1以上の初期宇宙に存在することが示唆されている。従来の可視光・赤外線では見出せなかった、初期宇宙にある若く質量の大きい星形成銀河について、新たな展開を得ることができると大いに期待される成果であると言える。
著者
吉田 久
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の主な目的は、1.Renyiのα次拡張ダイバージェンスを用いた統一的な新しい等価帯域幅のクラスの提案とその理論構築、2.非定常過程における瞬時等価帯域幅の新たな提案とその推定法に関する研究の推進、3.本研究で提案する解析法を心音などの実際の生体信号解析へ応用し、新たな知見を得ることであった。当該研究期間に得られた研究成果は以下の通りである。1.Renyiのα次拡張ダイバージェンスを用いることによって、音声処理分野でスペクトルの広がりを表現するときによく使われるSpectral Flatness Measureを包含するような等価帯域幅の表現を得た。また、従来から提案している等価帯域幅との比較を行った。2.統計学におけるCopulas理論を援用して非定常確率過程の正値の時間-周波数分布を推定する方法を検討し、非定常確率過程に対する等価帯域幅の拡張を行った。3.非定常信号の等価帯域幅に関する理論構築において、時間-周波数分布の時間周辺分布の推定法、および周波数周辺分布の新規な推定方法の提案を行った。4.提案する非定常性解析法を実際の生体信号である脳波に適用した。その結果、覚醒維持の努力をしている区間の脳波は非常に帯域が広く、脳の活動が活発化しているように見えることを明らかにした。これは覚醒と睡眠の中枢である視床下部と能動的行動を司る前頭部の関係を知る上でも大変興味深い研究成果である。眠気に逆らって覚醒維持を続けるといった状態の脳波解析はあまりなく、こうした脳波の生理学的知見を得ることは、仕事の効率を定量的に検討する場合に大変有用であると考えられる。こうした関係をより詳しく調べる上でも、前頭部に混入する瞬きや眼球運動によるアーチファクトの除去法などの信号処理における課題を今後解決していく必要がある。
著者
杉本 敬子 砂川 洋子 河野 伸造
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.144-153, 2005

本研究の目的は, 中高年女性の主観的睡眠評価とそれに影響する関連要因を明らかにすることである.住民健診において調査協力の得られた342名の女性を対象として, ピッツバーグ睡眠質問票(The Pittsburgh Sleep Quality Index : PSQI)を含む質問紙による調査を行った.その中で, 回答が有効であった292名(有効回答率: 85.4%, 年齢: 30〜80(平均51.2)歳)を, Pre更年期群(40歳未満), 閉経前更年期群(閉経前で40歳以上60歳未満), 閉経中更年期群(閉経中で40歳以上60歳未満), 閉経後更年期群(閉経後で40歳以上60歳未満), Post更年期群(60歳以上65歳未満), 老年期群(65歳以上)の6群に分類し, 群間による比較を行ない以下の結果を得た.老年期群は, 最も要介護家族を抱えていたが, 昼寝を習慣としていた.心身の自覚症状総合得点は閉経中更年期群が最も高かった.睡眠の量的面において, 「実睡眠時間」は, 閉経後更年期群(平均6.0時間), 閉経中更年期群(平均6.2時間)の順に短く, PSQI要素の「睡眠時間」においても閉経後更年期群(p<.01)と閉経中更年期群(p<.05)が, 老年期群とPre更年期群より, 有意に得点が高かった.一方, 睡眠の質的面において, PSQI総合得点は閉経中更年期群・閉経後更年期群の順に高く, PSQI要素得点は, 「睡眠の質」「入眠時間」「睡眠効率」「睡眠困難」「日中覚醒困難」においては閉経中更年期群が, 「眠剤の使用」においては老年期群が, 最も高かった.さらに, 睡眠評価に関連する要因においては, 精神神経系症状を中心とする「心身の自覚症状」が, 最も強い関連要因として抽出された.これらの結果は, 更年期女性が, 量と質の両面において, 睡眠の悪化を強く自覚することと, 中高年女性の心身の自覚症状が主観的な睡眠評価と強く関連することを示唆する.
著者
横山 幸満 石井 紘 鈴木 将之 上野 勝利
出版者
宇都宮大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

1.大谷石の間隙は全体の40%で、間隙中の水と気体の挙動が強度に影響を及ぼす。岩というより超過圧密土としての性質が卓越する。2.地下水面下にある大谷石を地上で自然状態に放置すると、急速に脱水が進行する。これを吸収させても飽和度は80%にしか戻らない。3.完全飽和及び完全乾燥状態の大谷石の一軸圧縮強度は共に100kgf/cm^2程度で大きいが、上記の乾燥履歴を受けたものは強度が50%以下になる。4.大谷石は多孔質材料であるコンクリートと同様にクリープ挙動をする。50年以上安定している残柱の応力状態を考えると、応力比70%がクリープ破壊のめやすとなる。5.深い陥没は、残柱の逐次クリープ破壊に起因するもので、広い範囲の支持体を失った天盤が曲げ破壊することによって生じるものである。6.浅い陥没は、残柱破壊を必ずしも伴わず、地下水位上で風化を受け易い天盤の曲げ破壊によるものである。7.天盤のドーム状崩落やせん断破壊は曲げ破壊より起こりにくい。8.陥没・落盤等の事故の時系列解析の結果、これらのイベントは地球潮汐応力の球テンソル成分が圧縮の時に起こり易いことが分かった。限界状態にある天盤に対して、地球潮汐応力がトリガー効果を与えたものと考えられる。9.陥没前の地盤振動を解析した結果、約15日の卓越周期を得た。これも地球潮汐応力の影響を示している。10.実際の空洞直上のボーリング孔に高感度ひずみ計を埋設して計測を続けているが、地球潮汐力によるひずみを明確に捉えている。付近の地震計の動きとの相関を追っている状況である。
著者
中谷 正生 飯尾 能久 小笠原 宏 佐野 修 山内 常生
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

断層の滑り摩擦の絶対値を知るために、来るべき地震の断層のすぐそばに精密温度計のアレーを設置するという世界で初めての観測を行った。南アフリカの金鉱山に、地下3kmでの採掘活動が大規模な地質断層のそばで行われているところがある。我々は、この地点で長さ30m程度の多数のボーリングを行い、コアと、孔内ビデオ映像の詳細な解析により、厚さ20mを超える複雑な断層帯の構造を三次元的に描きだした。その結果、断層帯の片側と母岩の境界の厚さ10cm程度の部分だけが、損傷が激しく、際だった弱面になっていることが見出された。この構造は面をつらぬくボーリング孔がカバーする全範囲(10x10m程度)にわたって連続しており、また、相当に平面的であった。この面を中心に、距離1m以内に多くの温度計を設置することができた。断層帯は、主に母岩の砕屑物が固結した岩石でできていたが、その中で面構造を示す部分はごくわずかであった。数センチの厚みで、剪断の集中による葉状構造が観察される所は他にも数カ所あったが、先に述べたものだけが、ぼろぼろの状態で、全ての掘削孔で、この面を通る部分だけ、壁の材質がリング状に失われていた。連続観測された温度データは非常に安定で、この鉱山で発生が期待されるM2-3クラスの地震が、上述の弱面で起こった場合、その滑り摩擦強度が、実験室から予想される値の1/10程度でも、測定することができるほどである。これは、いわゆる地殻応力問題で取りざたされている断層強度の範囲の全域をカバーできていることになる。地震によって起こった発熱による周辺岩盤温度の時間変化をみるこの観測では、地震後1ヶ月ほどのデータが必要だが、地震の被害を受けやすい断層直上での観測であるため、地震後に観測機器にアクセスできなくなる可能性もある。そのため、データの収録、伝送、電源供給方法は無線を含めた多重化を行った。
著者
北浦 賢一
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

高張力鋼HT590材で製作された平滑ならびに環状切り欠き(応力集中係数Kt=1.7、2.4、3.2)を有する丸棒試験片に対して主に低サイクル疲労には落重式衝撃引っ張り疲労試験機を用い、中サイクル疲労には回転式衝撃引っ張り疲労試験機を用いて試験を行い次の結果を待た。1)低サイクル領域では平滑材、切り欠き打=1.7の破壊形式は断面収縮型の疲労破壊を示す。2)断面収縮型の疲労破壊を示す残留ひずみの挙軌は応力の大きさによらずクリープ初期領域、残留ひずみの増加量Δε_c(=dε/dN)がほぼ一定のクリープ安定領域およびクリープ加速領域の3段楷に分けることができる。また塑性ひずみ速度Δε_cはΔε_c/Tの値である。ここで、Tは最大応力持続時間である。3)Δε_cと衝撃応力δの間には次の関係がある。δ/δn=S・(Δε_c/ε_f)^β (a)ここに、S、βは試験片形状によって定まる定数4)Δε_cと衝撃引っ張り疲労寿命N_fの間には次の関係がある。(Δε_c/ε_f)・N_f^m=C (b)ここに、m、Cは材料定数5)破断繰り返し数N_fが5000回以上の場合の形式は平滑材および切り欠き材ともにすべてクラック型の疲労破壊である。6)落盤式疲労試験と回転式疲労試験の衝撃疲労強度は次式により表わすことができる。δ(N_f・T)^n=D (c)ここに、n、Dは試験片形状によって定まる定数
著者
小杉 康 佐々木 亨 橋本 雄一 鈴木 正章 瀧川 渉 山崎 京美 富岡 直人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

「噴火湾北岸縄文エコ・ミュージアム」の基本計画を作成し、小幌洞窟遺跡、有珠6遺跡の発掘調査による学術成果に基づいて、それぞれの遺跡をサテライトとして整備して、コア・ミュージアムを開設した。
著者
小林 正彦 真浦 正徳 前川 秀彰 藤原 晴彦 島田 順 黄色 俊一
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

1.精細胞の移植について、飼育条件による有核精子と無核精子の割合の変化を調べた。その結果、低温暗催青した非休眠性幼虫では無核精子の割合が休眠性幼虫に比べて多いことが明らかになり、現在使用しているB系統に二化性の遺伝子を導入し低温暗催青することにより、より効率のよいドニーの系統をえられることが判明した。2.カイコの分散型反復配列BMCI多重遺伝子族をベクターとし、クロラムフェニコールアセチル化酵素遺伝子をマーカーとし、熱ショック蛋白質遺伝子のプロモーターをもつプラスミドpBmhscatを構築し、カイコの培養細胞にリン酸カルシュウム共沈法により導入した。その結果、比較的効率よくゲノムDNAと組換えを起こしていることが明らかになった。これを精細胞に応用し、組換え精細胞および組換え体カイコが得られる高い可能性が示唆された。3.カイコの前胸腺刺激ホルモン遺伝子と休眠ホルモン-PBAN遺伝子について多型を検索し、それぞれ遺伝子座位を決定した。カイコの前胸腺刺激ホルモン遺伝子は第22連関群の2.7に占座し、精細胞移植法によりホモ致死個体が救出されたskuと同一の連関に属し、移植の指標に使えることが明かになった。4.異種間細胞の移植のため、エリサンの精巣をカイコに移植し移植適性を調べた。その結果、移植された精巣は体液中では消化されるが、精細胞の移植では細胞が健在であることが明らかになった。5.種間雑種を作り出すため、カイコの培用細胞とマウスの培養細胞の融合条件を検索した。その結果、400v/cmの至適の条件では効率よく融合細胞が得られることが明らかになった。6.遺伝子導入と細胞融合に用る電気細胞穿孔法の精原細胞への影響を調べた結果、300v/cm以下では精細胞まで分化し移植が可能であった。
著者
原 卓志
出版者
広島大学文学部
雑誌
広島大学文学部紀要 (ISSN:04375564)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.p1-33, 1984-12

It is probable that the Kojisho (古辞書) compiled in our country were subject to the influence of the so-called Ruisho (類書) which were brought into Japan from China. It has been indicated that the Irohajiruishō (色葉字類抄), one of the Kojisho, is an example of this influence. It has relation to Ruisho in its method of classifying definitions.In this paper, I went a step farther and approached the study of the acceptance of Ruisho in the Irohajiruishō, by analysing not the classification of definitions but the vocabulary entries themselves.The data discussed in this paper suggest that words noted as '—名', namely Betsumjō (別名), contained in the Irohajiruishō-jōjimon (色葉字類抄畳字門), are closely connected with Jitsui (事対) in the Shogakuki (初学記). The data also suggest that the Kōzanjibon-Itsumeiruisho (高山寺本佚名類書) may be regarded as the Ruisho retaining the style considered most resemblant to that of the Ruisho not now in existence but probably the authority for these Betsumjo.
著者
中野 照男 西川 杏太郎 内田 俊秀 西山 要一 尾立 和則 増田 勝彦 三浦 定俊 川野辺 渉 青木 繁夫 中野 照男
出版者
東京国立文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

この研究は、展示や保管における日常的な地震対策に関する研究、地震発生時における緊急措置に関する研究の2本の柱から成る。両研究とも、阪神淡路大震災の折に被災した博物館等の機関、社寺、所蔵家をはじめ、文化財の救援活動に携わった諸機関、諸団体及び個人の協力を得ながら遂行した。震災直後に諸機関や諸団体が行った被害状況調査の報告、被災博物館等による被害の具体的状況に関する調査報告、震災後に博物館等が文化財や試料の収蔵、保管、公開、展示のために実施した改良や工夫に関する情報を、基礎的情報として、可能な限り収集し、それらを解析することによって、新しい防災対策策定のための指針を導き出そうと努めた。その上で、免震装置や吊金具、固着剤など、震災後に大いに着目されている装置や材料、防災対策にとって重要と思われる事項については、それらの有用性や問題点の所在を、実験や分析を踏まえて検討した。さらに、万一災害が発生した場合の文化財等の保全方法、被害を最小にとどめるための緊急措置、文化財等の救出や救援活動などについては、阪神淡路大震災やその他の災害の折の研究分担者、研究協力者の経験をもとにし、諸外国での研究成果を取入れて研究を進めた。また、災害に対応するための博物館や美術館、地方公共団体等のネットワークの形成に関しては、多くの機関に協力を呼びかけ、意見を交換しながら研究を行った。また、資料や参考文献等を多数収集したが、これらは、神戸市立博物館内の文化財防災資料センターにすべて移管し、今後の新たな研究や防災対策の策定に活用する。