著者
木曽 誠二 菊地 晃二
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.293-301, 1990-01-31
被引用文献数
1

窒素(N)施肥配分が,数種チモシー品種の年間および各番草の乾物収量に及ぼす影響を検討し,各品種の年間収量を最も高める配分法を明らかにした。チモシー品種として,年3回刈取りのクンプウ(極早生),および年2回刈取りのノサップ(早生),ホクシュウ(晩生)を用いた。1)N施肥量の増加により,各番草収量は高まった。しかし,その増収程度は1番草で大きく,2,3番草で小さかった。そのため,年間収量は,1番草に対して多く,2番草以降では順次少なくする配分が,各番草に対して均等配分する場合,あるいは1番草以降に順次多く配分する場合より高かった。これらの傾向は3品種とも同様であった。2)各番草に対して同量のNが施肥されたときの収量は,クンプウでは1,2番草が3番草より,ノサップ・ホクシュウでは1番草が2番草よりも高かった。また,牧草が吸収したN1kg当たりの乾物生産量は,どの品種でも,1番草が2,3番草よりも多かった。3)各番章収量に影響を与える再生茎の種類は,品種により異なり,クンプウの1,2番草およびノサップの1番草では有穂茎数の確保が,またホクシュウの1,2番草では無穂茎数の確保が重要であった。4)ノサップ,ホクシュウでは秋分施により,越冬前および翌春の茎数と茎葉重は増大したが,出穂期刈りの1番草収量は高まらなかった。5)以上より,年間のN施肥量が同一の場合,年間収量を最も高めるN施肥配分は,クンプウでは早春:1番草刈取り後:2番草刈取り後=3:2:1,ノサップ,ホクシュウでは早春:1番草刈取り後=2:1が適当であった。
著者
辻合 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, 1997-08-13

本研究では, タッチタイピングができるようなトレーニングシステムを構築するための評価部分の一考察である。タッチタイプは、タイピング練習用テキストを見て何度も打ちながら学んでいく。また、タイピングの練習ソフトを用いて、楽しくタッチタイプを学ぶ方法もある。学習の向上評価は、タイピング・スピードとミスの数である。その他の方法として、タイピング中の手の動きを画像入力し分析する方法がある。 本研究は、マルチメディア環境のある演習室などでタッチタイピングを効率よく教育する方法を検討する。
著者
山下 俊
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

様々な光機能材料の多くは固相状態での反応を活用しているため、高分子固相中での光反応論を確立することは基礎的に重要であると共にも応用的にも重要である。本研究では高分子ナノ自由空間におけるフォトクロミズムなどの化学反応の不均一分布を定量的に解明し、動的自由空間では光反応分子の律速段階のダイナミクスとマトリックスの緩和のダイナミクスの相関で反応性が決まることが明らかになったまた、材料のナノ空間を制御することにより巨視的な構造変化や相変化を誘起することに成功した
著者
五十嵐 泰正
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

2006年度は、年度内に発表した業績は非常に少ないが、本研究課題「重層的なヒトの移動と、都市コミュニティ・アイデンティティの再編成」の総まとめとしての単著『グローバル化時代の「下町」上野』(仮題)の執筆に専念した。同書は、2007年末に刊行予定であり、S書房からの出版企画が進行中である。その中で、国際シンポジウム「カルチュラル・タイフーン2006」において、「戦後の記憶、大衆の痕跡」という大規模なセッションを企画・コーディネイトし、自らも理論的な整理を提示する口頭報告を行った。同セッションは、昭和30年代を参照する近年のノスタルジー・ブームを批判的に検討しつつ、終戦後すぐの闇市の記憶を含む都市の歴史的重層性や、コミュニティの結節点としての大衆食堂・立ち飲み屋の視点から、労働や生活が切り離された消費的な都市空間が優越してゆく都市再開発の現状を再考するものであり、このセッションの準備過程(大阪市築港地区・世田谷区下北沢でのフィールドワークを含む)は、私の上野での実証研究の深化にきわめて重要な影響をもたらした。また、昨年度の米国出張における、シカゴに再移民した元在日不法就労パキスタン人への聞き取り調査をもとに、外国人支援NGOの機関紙に、「群馬経由、シカゴ行き」という研究ノートを寄せた。同小論は、まだ萌芽的なものではあるが、グローバルなエスニック・ネットワークに媒介された現代の移民現象を考える上で、今後の研究へと発展しうる重要な論点を提起した。
著者
馬場 悠男 鈴木 一義
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series D, Anthropology (ISSN:03853039)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-9, 2005-12

In the late Edo era, a human skeleton intended for medical education was carved from cypress wood by a craftsman, Ikeuchi under the supervision of a medical doctor, Banri Okuda in Osaka City. The model for the carving was based on a criminal's skeleton. The skeleton was beautifully made to be articulated and assembled by various methods, which reveals excellent craftsmanship. By and large, the wooden skeleton shows morphological characteristics usually seen in early middle-aged females of the Edo era. The wooden skeleton might have been used for the promotion of European medicine, which was emergent in the Edo era Japan, rather than for practical medical education.
著者
柴田 佳子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

カリブ海社会のアジア系、特に内外の研究で最も手薄な中国系に焦点を当てたことで、現地内外のカリブ海地域研究に貢献できるものとなった。具体的には、経済社会的に躍進を続ける現地生まれの中国系のジャマイカ社会へのコミットメントのあり方を、諸行事や生活などの参与観察と多数へのインタビューなどにより、到来150周年記念を契機にエスニシティが再活性化される様態を明らかにした。さらに80年代以降の中国の改革開放政策、ジャマイカでの自由経済政策への転換によるフリーゾーンへの若者労働者、また従来型の親族ネットワークによる移民、出稼ぎ労働者の五月雨式到来により、チャイニーズ・コミュニティは大きな転換期を迎えたが、その種々の側面と動態について調査した。なかでも政治経済的左傾化で大挙して海外逃避した70年代に廃墟と化し、長年の懸案だった民族共同墓地の再編は特筆すべきで、世代を超え、最新の技術や知識、資金を駆使し、内外のディアスポラ・ネットワークが動員されている。グローバル化のマクロなレベルとの連動やクレオール化には従来の主流派のアフリカ系/黒人系主体とは異なる位相がみられ、グローカル化、ディアスポラ研究、トランスナショナリズム研究へも重要な知見の提供が可能となった。現代の急速に変化するミクロなレベルの動態とグローバル化との関連、クレオール化の現代的位相において、ガイアナはジャマイカとは別種の展開をみせ、カリブ海社会の多様な変化の実態を証明できる。ガイアナのエスニック・コミュニティはインド系と中国系では全く異なる。中国系の旧移民はほとんどが国外居住し、共同体としては崩壊したが、90年代から参入増加が目立った新移民がとって代わりそうな状況にある。しかし、クレオール化した旧移民とのコミュニケーション回路がほとんどなく、言語、宗教、生活文化の差異は分断する決定的な影響を与えていることがわかった。
著者
永縄 浩 宮内 邦宏 大杉 啓治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSS, 安全性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.517, pp.37-42, 1999-12-17

交通事故統計によれば、近年交通事故による死者は1万人を下回っているものの、事故件数・負傷者は年々増加しており依然深刻な社会問題である。これに対し、エレクトロニクス技術を用いて車の知能化を図り安全性を高める取組みがなされている。現在までに車間距離警報装置やACCシステムが車に搭-載されている。この車間警報装置・ACCシステムを実現するためには、先行車を正確に検知するセンサか必要不可欠である。本論文では、車間距離警報・ACCシステムを成立させるために必要十分な性能を備えた2次元スキャン型レーザレーダを開発したのでその内容を紹介する。
著者
生田 英輔
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

阪神・淡路大震災における調査から、倒壊を免れた家屋内でも、家具転倒等による負傷者が発生している。このような被害を防止するために、その危険度を定量的に評価する手法を開発した。大腿骨骨折に焦点を当て、実験とシミュレーションによる危険度評価を試行した。実験に関しては、より現実に近い環境を想定し、多様な条件下での家具転倒実験を実施した。また、実際の被災状況を想定するため、アンケートを実施し、防災意識や家具の状況を把握した。
著者
落合 啓二
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.ニホンカモシカの生息密度,なわばりサイズ,食物条件,成獣メスの繁殖成功率の相互関係を明らかにするため,青森県下北半島(標高0-240m),山形県朝日山地(標高500-1100m),長野県上高地(標高1500-2000m)の3地域で調査を実施した.2.生息密度は,下北で14.2±2.5頭/km^2,朝日で7.4頭/km^2,上高地で1,6頭/km^2であった.成獣メスの年間なわばりサイズは,下北で10.5±3.6ha,朝日で29.8±3.6ha,上高地で49.8±31.6haであった.3.繁殖成功(成獣メスが出産し,かつ生後1年までその子が生存した場合)率は,下北で38.1%,山形県朝日山地で29.6%,長野県上高地で15.8%であった.4.雪上のトレース調査に基づき,冬顛の食物量指数(FAI:採食対象木本の幹の雪面断面積合計)と採食効率を調査した.平均FAIは,下北で1871.4mmm^2/10m^2,朝日で1236.2m^2/10m^2(下北の66.1%),上高地で869。8mm^2/10m^2(下北の46.5%)であり,地域間で有意差が認められた.採食効率は,下北で59.1個/10m^2,朝日で38.2個/10m^2(下北の64.6%),上高地で10.4個/10m^2(下北の17.6%)であり,同様に3地域間で有意差が認められた.5.なわばりサイズと生息密度の間,冬期食物量指数と冬期採食効率の間,冬期食物量指数となわばりサイズの問,及び冬期食物量指数と繁殖成功率の間で,それぞれ相関関係が認められた.即ち,海岸沿いで標高が低く,積雪量の少ない下北半島では,好適な食物条件に支えられる狭いなわばりサイズと高い繁殖率が高い生息密度をもたらしていること,反対に標高が高く,気象条件の厳しい亜高山帯の上高地では,低質な食物条件に起因する広いなわばりサイズと低い繁殖率が低い生息密度をもたらしていることが示された.
著者
武井 協三
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

「与論十五夜踊り」は予想以上の型の崩れがあったため、なお分析研究を残すことになったが、沖縄県立芸術大学教授の板谷徹氏や元日本学術振興会特別研究員鈴木博子氏の協力のもとに、新出の文献資料に注目できたこと、さらに「登場の演技」と「笑いをよぶ演技」という視点を導入することによって、17世紀後半の野郎歌舞伎の演技・演出研究の実態解明を進展させたことが本研究の主たる成果であった。
著者
倉田 せつみ
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.39-45, 1937-09
著者
笹原 亮二
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

南九州から薩南諸島・吐喝喇列島を経て奄美諸島に至る地域には、数多くの民俗芸能が伝わっている。それらの中には、この地域が沖縄とヤマト(沖縄・奄美以外の日本)の境界領域に位置し、双方から政治的・社会的・文化的な影響を歴史的に様々なかたちで蒙ってきたことと呼応して、沖縄あるいはヤマトとの関係が様々なかたちで認められる、琉球系及びヤマト系の民俗芸能が少なからず存在している。従来、この地域の民俗文化については、吐喝喇列島と奄美大島の間にヤマトと沖縄・奄美を分かつ境界があり、奄美大島以南では与論島と沖縄本島の間に沖縄と奄美を分かつ境界があり、奄美諸島内においても他の2つ程明確ではないが、徳之島と沖永良部島の問にも境界があって、大きく3領域に分かれることが指摘されてきた。この地域の琉球系・ヤマト系両系統の民俗芸能も、南九州から吐喝喇列島までは、ヤマト的な芸能をベースに、沖縄的な趣向や特徴が異国・異人的なイメージとして現地の人々によって意識的に演じられている琉球系の芸能が見られ、奄美大島・喜界島・徳之島では、沖縄的・ヤマト3的それぞれの趣向や特徴が現地の人々によって意識的・無意識的に演じられている両系統の芸能の混在.が見られ、沖永良部島以南では、全般的には琉球系の芸能が優越する中で、ヤマト的な趣向や特徴が異国・異人的なイメージとして現地の人々によって意識的に演じられるヤマト系の芸能が見られるというように、ほぼ3領域の区分に沿ったかたちで整理することも可能である。しかし、各領域内を見ると、吐喝喇列島以北では、同じ琉球系芸能でも南九州に比べて薩南諸島は沖縄的な特徴や趣向が異国・異文化イメージとして過剰に演出されていたり、奄美大島・喜界島・徳之島では、奄美大島で見られないヤマト的な特徴やイメージの表出が、喜界島・徳之島それぞれ別のかたちで見られたりというように、より狭い地域や個々の島々の問で民俗芸能のあり方に類型的かつ明確な違いが存在していた。このことは、この地域の民俗文化の理解においては、従来の3区分に基づく境界論では必ずしも十分ではなく、外界との交流と域内での滞留の相互作用によって文化的な独自性が歴史的に醸成されてきた諸地域・島々の集合といった、より複雑な地域構造を想定する必要性を示唆している。
著者
新城 郁夫
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

まず、2007年11月に出版した『到来する沖縄 沖縄表象批判論』(インパクト出版会、全246頁)において、本研究の全体像を公刊できたことが、当該研究の最大の成果と言える。この著作に明らかな通り、本研究においては、戦後沖縄文学を、主に次の3点において考察し、その考察を通じて、戦後沖縄文学を総合的視野から把握し、その可能性を広範な表現史的かつ思想的パーススペクティヴにおいて開示しえた。まず、1点目に、戦後沖縄の文学表現そして思想史的展開を考察するさい最も重要なテーマとであるところの、一九七〇年前後における反復帰・反国家論について、その文学的意義を明らかにした。次に2点目に、「日本語」の規範の脱中心化あるいは脱構築的可能性を、戦後沖縄文学の具体的テクストへの緻密な読解と分析を通して明快に論証した。そして3点目として、戦後沖縄文学におけるジェンダー的特質および身体の政治性を、具体的なテクスト分析と思想史考察を通じ論証した。そして、この三点目において、戦後沖縄文学に表出された男性の身体性がどのような性政治的特質を内在化させていたかを明証した点と、「従軍慰安婦」という存在の表出が果たす歴史的意義を戦後沖縄文学のなかにおいて明らかにした点は、本研全体においても、特に重要な成果と言い得る。以上の3点をもって本研究成果の柱と言うことができるが、この3点の明証を通じて、ポストコロニアル文学として瞠目すべき独自性と特異性を内在する戦後沖縄文学の総合的内実を本研究において明らかにすることができたことをここに報告する。
著者
狩俣 繁久 BAKSHEEV Evgeny Sergeevich BAKSHEEV Evgeny Sergeevic
出版者
琉球大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

N.ネフスキーが80年前に宮古島を訪問して得た資料に基づき現代との変容の有無などを現地で確認、検証した。琉球文化圏における村落祭祀を行なう御嶽(聖地)を中心に宮古、八重山、沖縄、奄美の民間信仰・民俗文化の比較研究・調査を行なった。聖地およびその祭祀の記録として映像資料を作成した。そのために、宮古、八重山、奄美、沖縄の各地で国内調査研究旅行をした。宮古サニツ(久松)、ナーパイ(砂川)、桟橋ニガイ(佐良浜)、ダツマス(伊良部)、スツウプナカ(高野)、旧八月十五夜(狩俣)、世乞(伊良部)、豊年祭(友利)、ヤーマスプナカ(来間)、正月行事(平良)、御葬式・三日目供養・開眼行事・四九日目供養(友利)、聖地・その年中行事並びにミャーカ墓などの墓制調査(平良、久松、狩股、来間、池間、下地、伊良部、上野、城辺)。沖縄島旧正月(糸満)、遺跡・聖地・門中墓などの墓制(糸満、浦添、西原)。八重山旧盆・アンガマ(西表祖納・星立)、十六日祭・洗骨(与那国)、聖地・墓制(祖納・星立;与那国)。奄美ショチョガマ・新節(龍郷町秋名)、柴差し(喜界島、宇検村阿室);ノロ祭り(宇検村阿室);聖地・ノロの祭祀・墓制(名瀬、龍郷、笠利、宇検;喜界;加計呂麻)。ネフスキー資料の調査採取・記録の状況を現地宮古島各地で調べた。宮古・沖縄にかんするネフスキーの論文ならびにネフスキーについての資料のカタログ・データベース作り始まった。ネフスキーの未発表の論文・資料の翻訳および公開のための準備を行っている。日本人言語学者との共同作業の結果で「宮古方言ノート」の大部分を解読して、日本語の翻訳をした。「N・ネフスキー『宮古方言ノート』の民俗学的考察」等の解説をまとめている。これから「宮古方言ノート」をもとに「宮古方言辞典」が完成されて、発行する予定である。
著者
坂本 要
出版者
筑波学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この研究は平成11年から14年にかけて行った科研「身体表現から見る念仏芸能・民間念仏行事の調査および成立過程の研究」の発展として行った企画である。この科研の目的は本土の盆踊りに関係すると見られる、南島や韓国南部にひろがる輪踊り、巻き踊り等の身体表現の比較、盆に現れる来訪神の研究である。平成15年は沖縄南西諸島の輪踊り、手招きという身体表現のある類似を、16年には韓国南部に残るカンカンスオレーという輪踊り行事の調査を行った。最終年度の17年はこれらの行事以外の豊年祭の巻き踊り、ユークイ(世乞い)奄美諸島の浜下りの踊り、徳島県の盆踊り、神事踊りを調査した。いずれも神迎えとしての輪踊り、手招き等の身体動作がともなってこれらの行事がなりたっていることが分ってきた。これらの踊りを通して、従来風流踊りから盆踊りが成立したという説に対して南西諸島から沖縄にひろがる八月踊り、豊年祭の巻き踊りがアジア的なひろがりを持って、盆踊りに連続していく可能性を証明できた。具体的にいえば豊年祭として神迎えの輪おどり、ユークイの手振り、豊穣を願う男女の掛け歌等が盆踊りのベースにあり、仏教の影響によって供養踊りに転化していくと考えられる。本土の風流踊りと盆踊りが日を別にして同じ踊りを踊る所のあることからもそれは伺える。8月15日の豊年踊りと7月15日の盆踊りは元を同じくするといえる。調査箇所82ヶ所の撮影ビデオのアーカイブ化と平成11年からの科研とあわせ念仏踊り関連調査455箇所の一覧表作製をしている。
著者
斎藤 晃 多田 裕
出版者
鶴見大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

【目的】本研究の目的は早産児の行動特徴が生後1年間の母子相互交渉とアタッチメント形成に与える影響を検討することにある。母子相互交渉に特に影響を与える児側の要因として啼泣しやすさとなだまりやすさ等の情動反応が挙げられる。この特徴はブラゼルトン尺度(NBAS)と心拍変動分析によって予測することが可能である。心拍変動のスペクトル成分中,低周波成分は交感神経と副交感神経に,高周波成分は副交感神経によって変調を受けていることは既知の事実である(Akselrodら,1981)。【方法】被験児: 早産児の母親105名にNBASを依頼し,32名(男児18名の女児14名)の協力を得た。このうち,1年間の家庭訪問とアタッチメント実験の協力を得られたのが25名である。平均出生体重は1664.8g(SD512.16),平均在胎日数は224.1日(SD23.58)であった。手続き: (1)NBAS: 退院前1週間,退院後1週間,1,2,3ヶ月に1名の認定評価者がNBASを行った。(2)心拍変動: NBAS施行日と同一日で,児の深睡眠時に心拍変動の測定を行った。(3)母子相互交渉: 退院後1週間,1,2,3,6,9,12ヶ月に家庭訪問を行い,行動観察を行った。(4)アタッチメント実験: 退院後12〜13ヶ月に母子分離再会の実験を行った。【結果と考察】NBAS値をLester(1984)に従って素点変換し,これを児の行動特徴とした。ただし,慣れ群は欠損値が多いので分析から除外した。心拍変動値に対してはスペクトル分析の一種である自己回帰要素波分析を行い,3種類の周波数成分が抽出された。総パワー中に占めるこれら3周波数成分のパワー比を独立変数に,NBAS値を従属変数として重回帰分析を行った。交感神経によって変調される成分であるPWR1「なだめ」を有意に予測し,なだめやすさは単に副交感神経だけによるものではないことが示唆された。交感神経と副交感神経の働きを意味するPWR2は「状態向上迅速性」と「易刺激性」を有意に予測した。これは交感・副交感神経が優位な児は外部刺激が累積的に増大しても啼泣しづらいことを意味する。また,PWR3は「易刺激性」と「抱擁」を予測した。PWR3が高いほど,啼泣(ぐずりを含む)しやすく,かつ抱きづらいことを示している。これは交感神経が関与している可能性があり,高周波成分であっても単に副交感神経だけの作用とはいえないことを示唆した。児の新生児期の行動特徴であるNBAS項目と心拍変動値を独立変数とし,アタッチメント実験時における児の近接・接触維持,抵抗,回避,遠隔相互交渉の各行動を従属変数として重回帰分析を行った。その結果,CV-RRとPWR2両者の値が高いほど,再会時の近接・接触維持傾向が低く,回避傾向が高いことが示された。CV-RRは副交感神経系の活動を表す指標であり,PWR2は副交感神経の影響を大きく受けている領域である。実験時における児の行動は単に母子相互交渉だけではなく,児が新生児期の行動特徴にも影響を受けることが示された。