著者
今村 律子 矢野 勝 綿貫 茂喜
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

健康な男子学生28名に研究協力を依頼し、10月〜11月にかけての4週間の間、夜間睡眠時に同一素材の肌着をパジャマとして毎晩着用してもらい、その間の皮脂成分の変化を測定した。皮脂の採取法は、有機溶媒を用いたカップによる抽出法とし、背部肩甲骨上部から皮膚表面皮脂を実験前、実験開始1,2,3,4週間後に採取した。供試肌着は、綿100%(吸湿率7.75%)、ポリエステル100%(同0.63%)および綿・ポリエステル・キュプラ混(同6.46%)のそれぞれ水分率の異なる3種類のものとした。肌着の洗濯は験者が条件を統一しておこなった。皮脂分析は、薄層クロマトグラフ法を用いた。皮脂は、スクワレン(SQ)、トリグリセリド(TG)、ワックスエステル(WE)、遊離脂肪酸、コレステロールエステル、コレステロールおよびセラミドの7種類に展開分離させた。展開後の薄層プレートは、デンシトメータ(島津、CS-9300PC)で読み取り、定量化した。皮脂は、皮脂腺由来成分と表皮由来成分に分けることが出来る。本研究では、皮脂の約9割を占める皮脂腺由来成分であるSQ、TG、WEに注目して解析をおこなった。グループ間のWE、TG、SQを平均値で、また着用前の値からの変化量で分析したところ、WEは、綿肌着着用群において、着用3週間目まで上昇し続け、平均162%となった。TGは、綿着用群は、1週間着用後132%まで上昇し実験終了時まで130%の値を維持した。ポリエステル着用群では、WEは、着用2週目まで一旦上昇したがその後低下し、実験終了時には78%であった。TGは、1週目にピーク値を取り、その後低下して最終的には80%であった。混紡肌着は、両者の中間になった。SQは、3種類の肌着間に一定の変化は認められなかった。
著者
渡邊 公一郎 米津 幸太郎 今井 亮 高橋 亮平 横山 拓史 中西 哲也 実松 健造
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

多くの鉱物・エネルギー資源を海外依存する我が国では、資源安定供給に向けて継続的に学術的な資源探査を行うことは必須であり、本研究では、レアメタル・金属・炭化水素資源を含む地下資源ポテンシャル評価のための新しい資源データモデル開発をアフリカ及び東南アジア各国の資源国で行った。結果、エジプト・シナイ半島の重希土類元素濃集帯、アルジェリア南部・ホガールでのレアメタル花崗岩体の発見、リビアでのリモートセンシングによる炭化水素資源の抽出を成し遂げた。東南アジア・モンゴルでは金、希土類元素、スズ、タングステン、モリブデンの新たな濃集地域の発見および既存鉱床の成因モデル開発を行い、探査・開発の指針を示した。
著者
梅村 晋一郎 吉澤 晋
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

生体組織の超音波加熱を促進するキャビテーション気泡の強力な超音波パルス照射による生成を,まず,高速度カメラを用いて研究した.そのために,生体に類似した超音波特性をもち光学的に透明なゲルファントムを作成し,実験を行った.強度10kW/cm^2程度以上の超音波パルスにより,目的の気泡をゲル中に生成できること,また,100μs程度以下の短いパルスを用いれば,超音波焦点付近に限局して生成できることを確かめた.次に,生成したキャビテーション気泡により,摘出生体組織を超音波加熱凝固するスループットを顕著に改善できることを確かめた.さらに,第2高調波重畳波を用いることにより,目的のキャビテーション気泡を発生するに必要な超音波強度を顕著に低下させ得ることを見出した.
著者
西崎 一郎 上田 良文 林田 智弘
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

(1) 耕種農業と畜産農業が混在する北海道十勝での耕畜連携型農業モデルの研究に対して,耕種農業者への便益,畜産農業者への便益,耕畜連携型農業を運営する組織の運営,環境への影響の4つの目的を有する多目的問題として定式化し,複数の代替案を構成し,比較する.(2) 日照時間の長い宮崎での太陽熱利用のハウス暖房による有機野菜栽培モデルの研究に対しては農家の満足度,地域農業の振興,環境への影響の3つの目的を有する多目的問題として定式化し農業ビジネスモデルの複数の代替案を構成し,比較する.
著者
谷 晋二 高木 俊一郎
出版者
大阪教育大学養護教育教室
雑誌
障害児教育研究紀要 (ISSN:03877671)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.127-138, 1984-03-31

本研究は、第1報で提起した問題の1つである保護抑制に関する実験報告である。実験は4名の自閉児を被験児として行ない、刺激に対する反応としてGSRを用いた。実験要因は、実験室要因(プレイルーム、シールドルーム)と刺激強度要因(1000Hz-80db, 1000Hz-20db)である。各実験要因のGSRに対する影響を個人内で比較したところ、4名の被験児で一貫した傾向はみられず、保護抑制の関与を推測させるものが3名あった。結果を条件反射学の立場から考察し、今後の研究の方法論についても論じた。This report is experimental report about central defensive inhibition, which is one of some works we proposed to study hereafter in our 1'st report. deffensive inhibition is preventative of exhaustion of central nerve cell. In this report, Experiment was conducted with 4 autistic children as subject, and GSR is used as measures of responses to stimuli. Experimental factors are Experimental Room Factor (playroom or sealedroom) and Stimulus Strength Factor (80 horn or 20horn). Effects, each experimental factor have upon GSRs, were compared with intra-subject. That effects were not consistent among 4 subjests. In 3 subjects, defensive inhibition was speculated, but, a kind of stimuli, caused defensive inhibition, was not same. We discussed these findings based on Pavlovian Conditioning Theory and speculated about Physiological Bases of Autism.
著者
宮下 和久 吉益 光一 森岡 郁晴 福元 仁 竹村 重輝 宮井 信行 坂口 俊二 寺田 和史
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、(1)高濃度人工炭酸浴による下肢の末梢循環促進効果をもたらす条件(温度,CO_2濃度)を淡水温水をコントロールとして検証し、(2)その上で、高濃度人工炭酸浴による下肢痛の改善効果を検証した。最終的に介護施設および家庭における高濃度炭酸浴による下肢痛改善のためのQOL評価を行ない、介護予防のエビデンスに基づく健康事業としての位置づけを試みた。有症者を含めた介護施設入所者で検討した結果、皮膚温は浸漬前後で両群とも上昇していたが、群間の差は見出せなかった。ただ1.5ヶ月の長期間でSF-8の「全体的健康感」が、刺激群で高い傾向があったことは評価できると考える。疼痛に対する効果としては、同意・協力が得られた下肢疼痛の有症者が少なく、統計学的な評価が出来なかったが、個人内では炭酸水浸漬群、淡水浸漬群ともに浸漬の前後で低下していた。レーザー血流画像化装置で末梢循環促進効果を検討すると、足背皮膚血流変化量は浸漬後に対照と比較して有意に高値であった。高齢者でも高濃度人工炭酸温水浴による血管拡張による症状改善効果が期待できた。
著者
趙 豊年 折戸 洪太
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
アジア經濟旬報
巻号頁・発行日
no.937, pp.13-23, 1974-06-01
著者
山下 一也 松本 亥智江 橋本 道男
出版者
島根県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

魚摂取を増やす介入(魚料理教室)がうつ状態に与える影響について検討した。対象者は高齢者22名で、月1回の料理教室の開催を1年半行った。75歳以下の群ではツング自己評価式抑うつ尺度37.4±6.1点(前)から31.7±7.7点(後)へと減少傾向がみられた(0.05<p<0.1)。75歳以上の群では変化は認められなかった。魚摂取は前期高齢者では、うつ状態の改善効果が期待できることが示唆された。
著者
原 圭一郎 林 政彦 塩原 匡貴 橋田 元 森本 真司
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

南極で出現するヘイズの物理的・化学的特性、空間分布、出現頻度に関する知見を得るために、昭和基地において、エアロゾル・ガスの同時観測を実施した。得られた観測データと過去のデータの再解析から、強風下で起きる海氷域からの海塩粒子放出がヘイズ現象の主要因であることが示された。ヘイズの出現頻度は7-9月に増加しており、海氷面積の季節変化との対応が確認された。ヘイズ層は主に地上近傍~2kmの高度で観測されることが多かったが、4kmまでエアロゾル層が広がった例も確認された。極夜明け時期(8-10月)のヘイズ現象時にオゾン濃度も確認されたことから、ヘイズ現象は大気化学過程と密接に関連していることが示唆された。
著者
瀧 一郎
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 1 人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.39-51, 2009-02

ベルクソン美学を霊性主義(スピリチュアリズム)の観点から「直観の美学」として捉へようとするとき,注目すべきは「類比(アナロジー)」である。「類比(アナロゴス)」といふ経験をその論理(ロゴス)とするベルクソン的直観は,認識論的には「類比の理」である<自即他>の「共感」として,存在論的には「還帰」即「発出」といふ垂直的な<一即多>の二重運動として,論理学的にはロゴスを包越してレンマへと展開すべき「超知性的」な論理として性格づけられる。この霊的直観に基づく美学は,西洋的な「存在の類比(アナロギア・エンティス)」と東洋的な「無の類比(アナロギア・ニヒリス)」との中間に位置する「形像の類比(アナロギア・イマギニス)」によつて,<存在の創造>ではなく<イマージュの生成>を解明する。Jusqu'à maintenant, l'esthétique bergsonienne a été, le plus souvent, considérée comme 《esthétique de la perception pure》d'un point de vue matérialiste, mais nous essayons ici de la prendre pour《esthétique de l'intuition》sous l'aspect spirituel. Nous mettons surtout en avant le thème bergsonien de l'analogie, qui est décisif dans la méthodologie de Bergson, mais qui n'a pas reçu le traitement qu'il aurait mérité de recevoir. L'intuition bergsonienne est d'abord caractérisée en épistémologie comme《sympathie》, c'est à dire《raisonnement par analogie》, qui unit le sujet avec l'objet sans les confondre. Elle est ensuite regardée ontologiquement comme conversion (epistrophê) qua procession (proodos), où la voie ascendante de l'homme à Dieu ne fait qu'un avec la voie descendante de Dieu à l'homme. Si l'intuition bergsonienne nous semble ainsi illogique, elle a néanmoins son propre logos, analogos, qui, en dépassant la logique formelle, consiste à associer l'unité et la diversité, le même et l'autre pour viser le milieu entre l'un et le multiple. Une telle analogie, en tant que logique qua expérience, annule la dichotomie de la transcendance et de l'immanence ainsi que l'alternative de l'analogia proportionalitatis et de l'analogia attributionis. On peut trouver, dans les ouvrages de Bergson, de nombreuses analogies, dont l'une des plus importantes est l'analogie entre《la fonction fabulatrice》et《l'émotion créatrice》; la première, infra-intellectuelle, imagine et fabrique l'art statique, alors que la dernière, supra-intellectuelle, crée l'art dynamique et présente une analogie finale avec le《sublime amour》qui est l'essence même de Dieu. Au lieu de concevoir la création de l'être en termes d'espace, Bergson perçoit, en appelant à l'analogia imaginis, le devenir de l'image sub specie durationis. Entre l'apparition des images en《extension》et leur disparition en《tension》, l'intuition bergsonienne se meut, et ce mouvement est l'esthétique implicite de l'analogie.
著者
猪熊 壽 田村 和穂 大西 堂文
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.225-228, 1996-03-25
被引用文献数
2

岡山県の一犬舎において発生したクリイロコイタマダニの季節消長を観察した. 8月下旬にマダニ駆除を行った後, 寄生マダニ数は急激に減少したものの少数の若ダニおよび成ダニは10月まで認められた. 平均気温が15℃未満となる11月上旬には寄生マダニは認められなくなったが, 平均気温が11℃を越える3月下旬には再びマダニ寄生が認められた. 次に本マダニの定着性を確認するため, 産卵と発育に及ほす温度の影響について検討したところ, 23から37℃の範囲内では温度の上昇に伴って産卵および発育の速度は上昇したが, 14℃では産卵は著しく遅延し発育は認められなかった. 4℃では産卵も発育も認められなかった. また, 9月から3月まで未吸血成ダニを屋外犬舎内のケージに飼養された家兎に耳袋法にて寄生させたところ, 11月には吸着するが飽血には至らず, 12月から2月までは吸着も認められなかった. さらに, 低温条件下における未吸血成ダニの生存性を検討したところ, 12℃湿度50%で140日あるいは12℃湿度50%で40日, 続いて4℃湿度50%で100日保存しても, 家兎からの吸血が可能であった. 以上の所見から考えると3月に岡山県内の犬に寄生していたマダニは当該犬舎内で越冬していた可能性が高いと考えられた.
著者
河野 一郎 清水 和弘 清水 和弘 赤間 高雄 秋本 崇之 渡部 厚一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,唾液中のヒートショックプロテイン70(HSP70)が競技選手および高齢者のコンディション評価指標としての有用性について検討した.一過性高強度運動で唾液HSP70が増加することを示した.また継続的な高強度運動で安静時のHSP70は顕著な変動はしないが,その原因として高強度運動に対するHSP70応答の個人差が考えられた.さらに継続的な運動で高齢者の安静時HSP70が高まり,さらにHSP70がT細胞活性経路の亢進メカニズムに関わる可能性が示された.以上より,唾液HSP70によるコンディション評価は,競技選手では個々の変動が異なるため検討が必要であり,高齢者では有用である可能性が示された.
著者
鮫島 満
出版者
日本古書通信社
雑誌
日本古書通信 (ISSN:03875938)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.11-13, 2008-04
著者
諸橋 憲一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

核内受容体型転写因子であるAd4BP/SF-1は副腎皮質における各種遺伝子の転写を通じ、細胞の分化と機能維持に重要な機能を担っている。この因子の機能を通じ細胞が分化するにあたっては、クロマチン構造の制御を通じ、機能するエンハンサーが選択ならびに変換されるはずである。本研究では副腎皮質を対象として、Ad4BP/SF-1ならびにヒストン修飾を認識する抗体を用いたクロマチン免疫沈降法と大容量シークエンスをおこなった。その結果、Ad4BP/SF-1が遺伝子近傍または内部に存在するエンハンサーに結合することで解糖系遺伝子を制御していることが明らかになった
著者
亘 悠哉
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では,外来捕食者と生息地改変の複合的な影響を明らかにすることを目的とし,21年度はデータ解析と論文執筆を主に実施した.以下に概要を述べる.1.外来捕食者根絶後の生態系の回復外来捕食者の根絶後の在来生物群集の回復が,環境要因によって異なるかどうかを調べるために,年度の後半はパリ第11大学に滞在し,フランス領ニューカレドニアのサプライズ島で,生物群集の調査を行った.この島の生息地は,木本パッチと草本パッチからなり,外来種クマネズミ根絶後の在来生態系の回復の異なる生息地間での違いを明らかにするのに適している.根絶前後での在来種群集の生息データと比較すると,ウミドリ類,トカゲ類,植物,無脊椎動物類のすべてで顕著な回復が見られた.また,この回復の度合いは環境間で異なり,開けたパッチほど回復が顕著であった.これは,開けたパッチは,外来種の捕食圧の軽減の効果だけでなく,植生もより大幅に回復しており,これが在来生物の隠れ家や餌を提供するという,相乗効果が見られたと考えられた.環境の違いによる復元の違いを示したのは本研究が初めてであろう.これらの成果をカナダでの国際学会で発表し,外来種の根絶についての論文集に受理された.2.外来種対策が引き起こす想定外の現象の総説良かれと思って実施した外来種対策が,想定したほど効果がなかったり,時には逆効果になってしまうことがある.こういった事例は個々に報告されてはきたが,その概観がまとめられたことはなく,現場の担当者が生じている現象を正しく診断し,適切な対処法を講じていくのは難しい状況にあった.今回はこうした想定外の事例について,潜在する生態学的プロセスとそれに応じた対処法をまとめた.これは,今後,より効果的な外来種対策を実施していくのに役立つであろう.