著者
中村 真由美 三輪 哲 三輪 哲 朝岡 誠 麻生 奈央子 田中 規子 松田 松田
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

法曹と医師のワーク・ライフ・バランスとキャリア形成のジェンダー問格差の状況を明らかにするために複数の調査を実施した。法曹に対しては、日本女性法律家協会と日本弁護士連合会からのご協力をいただき、男女法曹を対象とした郵送質問紙調査を実施し(回収率30%、回収数1874票)、計量的分析を行った。医師に対しては、複数の大学関係者にご協力をいただき、インタビュー調査(および、パイロット的な位置づけの小規模な質問紙調査)を実施し、質的分析を中心に行った。分析結果は、冊子体の成果報告書(『医療・法曹職女性の研究』)として出版されている。本報告書には、7つの論文が収められているが、そのうち6つの論文で、法曹に対する調査結果の計量的分析を行い、男女法曹のキャリア形成と家庭役割におけるジェンダー間格差について様々な角度から検証した。また、1つの論文では、医師に対するインタビュー調査の結果に某づき、女性医師のキャリア形成と家庭役割の状況について質的分析を行っている。法曹(主に弁護士)に関しては、キャリア移動パターン、入職経路と地位達成、専門分野選択、育児休業やその他支援策と出産経験、辞めたくなった経験と性差別体験、家事時間の規定要因などの多くの側面から、法曹がおかれている状況やジェンダー問格差の現況を明らかにした。法曹(弁護士)のジェンダー間格差については、以下のことが明らかになった。(1) 入職経路と地位達成の関係では、学校関係のネットワークによる入職が男性には有利に働くのに女性には有利に働かないこと、しかし、親や配偶者等の血縁を通じて入職した女性は例外的に有利な状況にあること(2) 専門分野では、女性は個人を対象とした、所得の比較的低い領域(親族問題など)に集まる傾向が、男性は企業を対象とした、所得の比較的高い領域(会社法など)に集まる傾向があるが、渉外や工業所有権という一部の企業関連領域では女性が多いこと、(3) 辞めたくなった経験では、女性弁護士の方が男性弁護士よりはるかに多く、それは業務内容や仕事の配分における性差別が関係していること、(4) 家事・育児については、男性弁護士より、女性弁護士の負担がはるかに大きく、男性弁護士の家事時間は、年齢や収入といった要因の影響をほとんど受けていないのに対し、女性弁護士の場合は、未既婚の別、子供の有無や人数など、ライフスタイルや家庭環境によって、家事時間の割合が変化することなどがわかった。また、事務所に育児支援策があることが、女性弁護士の出産にプラスに働く可能性があることや、女性の法曹三者のキャリア移動パターンは、弁護と検事・判事で大きく異なること等も明らかになった。医師に関しては、女性医師の専門分野や働き方を偏らせるのは、女性医師本人の性役割観による選好や、卜司・患者の偏見からの差別からというよりは、誘因の差異あるいは構造的・制度的要因が幸な原因となっている可能性が高く、適切な制度設計で問題は改善可能であることがわかった。なお、法曹と医師の計量比較分析に関しては、21年度以降に医師についての質問紙調査を実施予定であり、その結果とあわせて、比較計量分析を行っていく予定である。
著者
和田 修 喜多 隆
出版者
神戸大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

光通信の大容量化の要求に伴って100Gb/s超の超高速化が必要となってくるものと考えられる。この際に光信号再生機能(増幅+波形整形2R,時間同期も含めた3R)は極めて重要となるが、簡単かつ実用的なものはまだ実現されてない。本研究では、我々独自の原子層制御量子ドットにより、単一の素子で超高速光信号再生機能を有する垂直構造光信号再生デバイスを目指して、研究を行った。本年度は、量子ドット成長法に関しては、単一ドットの透過電子顕微鏡測定(HAADF-STEM測定)を行って量子ドット構成原子構造の正確な観測に初めて成功し、ドット形状制御における多元パラメータ制御の重要性が確かめられた。また、量子ドットの光学的特性に関しては、多層化量子ドット構造における量子ドット間の電子状態の結合効果を発光特性測定によって検討し、スペーサ層の厚さ(10〜40nm)の制御によって発光波長、強度、減衰時間など光学特性制御が可能であることを明らかにした。さらに、半導体多層膜反射鏡構造と量子ドットを集積化した基礎的な光変調デバイス構造を作製して光学特性を評価して基本的な反射特性を確かめ、この構造が変調特性等の高度な特性の評価に適用可能であることが分った。これらの結果を総合的に考慮し、我々独自の多元制御量子ドットが面型光信号処理デバイスに適用できるものと考える。
著者
陶安 あんど
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、出土簡牘資料によって齎された秦代と漢代初期の二つの司法文書集成を整理・分析し且つ通常の行政文書と比較研究することを通じて、行政文書の書式、行政的な「裁き」の構造、文書行政による労働負担と資源の配分原理、及び文書集成による法的知の形成と伝承の解明に努めた。中国で中国籍以外の研究者が出土資料の整理を担当するのが史上初めての試みで、日本の法制史研究及び簡牘研究の成果を国際的に発信し、日中学術交流にも画期的な貢献をした。
著者
狩野 春一 神谷 六美
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.49, no.594, pp.27-37, 1935-01-05

昭和9年9月21日の關西風水害に際し、著者等は田邊平學、勝田千利の兩氏と共に東京工業大學より出張を命ぜられ、兼ねて建築學會の調査委員を委囑されて、9月22日より約1週間に亘り主として京、阪、神及び境の諸市並にその郊外に於ける小學校及び工場等の木造建築物の被害状況を視察した。前記の實地調査の結果に就いて見るに、木造建築物の被害の主なる原因が過去に於ける此種の災害と同じく全く從來の木造構造法の欠陷によるものにして、若し己に諸先輩によつて提示されたる補強又は改良法の忠實に施行せられたらんには其の程度は頗る縮減せられたりしものならんことを痛恨事とするものである。本文は著者等の視察報告であるが、特に從來の木造構造法に於ける欠陷の根本が、其の繼手、仕口及び部材の配列等が靜止時に於ける應力(主として壓縮)に對してのみ安全なる如く作られてゐること、換言すれば從來の木造建築物の構造法が全く積木式にして風又は地震力をうくる場合其處に生ずる引張應力に對する準備の乏しきことにあることを今囘の被害實例を以て指摘し、更に之に對する繼手及び仕口の補強法並に部材の配置或ひは用法等に就きて二三の考察を試みんとするものである。
著者
須永 修通
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

学校施設の環境配慮型転換を進めるには,環境配慮型施設としての目標値を設けること,また,その目標値を達成するような新たな設計基準・指針を策定することが必要である。本研究の目的は,その第一段階として,実態や効果が皆目不明なエコスクールモデル事業認定校の実態を把握し,エコスクール化のための各手法の効果や問題点を明らかにすることである。そこで,本研究では,省エネルギー型のエコスクール認定校を中心に,アンケート調査と実測調査を行い,建物の特徴やエネルギー消費量,夏期の室内環境を気候区分ごとに検討した。平成18年度までのエコスクール認定校609校のうち省エネルギー型を中心に246校にアンケート調査を行い,147校分のデータを得て解析した。また,全国の主要都市で実測調査も行った。以下に得られた知見の一部を示す。1)省エネ手法には,太陽光発電,省エネ型設備,雨水利用などが全地域において数多く採用されているが,エコスクール認定校であるにもかかわらず,校舎に断熱の無い学校が約2割あり,窓は一重ガラス,アルミサッシの学校がほとんどを占め,断熱性の向上が大きな課題であることが示された。2)エコスクールの方が一般小学校よりも,エネルギー消費が多い傾向がみられた。IV地域では,エコスクール27校の平均が540MJ/m^2,一般校3校の平均は390MJ/m^2であった。この原因として,一般校の施設水準が低いままであること,また,エコスクールはオープンスペース型であることから校舎の奥行きが深くなり照明などの設備が増加することなどが原因と考えられた。3)夏季の教室は35℃程度にもなるが,下校時に窓を閉め切ることが教室温度の高温安定を助長していることが明らかになった。また,暑さ削減対策として行われている植栽による日射遮蔽,夜間通風は効果のあることが示された。
著者
小野田 恵介 土本 正治 勝間田 篤
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.9, pp.669-673, 2004-09-20
被引用文献数
1

神経サルコイドーシスにおいて水頭症を呈することは比較的稀である.水頭症を呈し,急激な増悪後,死亡に至った症例を経験し剖検を施行したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は18歳男性(ブラジル国籍), 2003年9月10日より頭痛があり,9月12日近医入院となった.9月16日軽度意識障害,両側外転神経麻痺も加わり当科紹介となった.来院時,髄膜刺激症状を認め,髄液検査を行ったが,初圧9cmH_2Oで,細胞数160/3(リンパ球優位),蛋白(750 mg/dl)は上昇しており,さらにanaiotensin converting enzyme(ACE)活性は2.6 1U/l と高度上昇していた.細菌培養は陰性で,結核菌群もDNA/PCRにて陰性であることが示された.CT,MRIでは水頭症を呈し,造影される肉芽腫性病変は認めなかったが,神経サルコイドーシスを強く疑った.入院後ステロイド投与を開始するも効果なく,けいれん,運動障害の出現,意識障害の進行を認めた.9月22日右脳室-腹腔シャント施行,脳室内髄液ACE活性は3.1 1U/lであった.重症肺炎の合併も認め,敗血症にて10月2日死亡された.同日剖検を施行した.頭蓋底髄膜に多発性のサルコイドーシス結節が確認された.原因不明の髄膜炎,水頭症を呈する例においては神経サルコイドーシスも鑑別診断に挙げるべきであり,また本例のように急速な増悪を呈する例があることを念頭に置く必要があると思われた.
著者
高嶺 豊 KHAN Imran Ahmed BALARAJU Kasupa DAS D.K.Lal REDDY Sudhakara MURTHY Krishina PRATAP Kumar Raja
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

南インドのアンドラプラデッシ州における障害者の自助グループとその連合体の構築の取り組みが、開発途上国の農村部における障害者のエンパワメントと貧困削減に効果的であることが検証された。この取り組みは、さらなる研究が必要であるが、今後、この取り組みが、他の開発途上国においても障害者の貧困削減のための重要な解決策となることが期待される。
著者
佐藤 哲彦
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は、我が国における犯人特定技術、すなわち捜査技術の近代化過程において、どのような技術が適用されてきたのか、それによってどのようなことが行われてきたのかということを、実際の資料に即して、批判的アプローチの観点から検討することにある。昨年度に引き続き本年度も、主として明治・大正・昭和初期の捜査技術資料、捜査関係者の手記などを収集、またこれらに加えて特に捜査技術の基礎を構成した医学的・心理学的文献を収集、これらをディスコースの観点から分析した。それによると、まず当初の予測通り、捜査技術の近代化-それは一面では捜査技術の西洋化あるいはその輸入ともいえるものであるが-において、医学的・心理学的知識が重要な役割を果たしているということが挙げられる。それはたとえば、「性」という考え方の周辺に捜査対象者を位置づけようという努力に結実する。しかしながら昨年度の研究で示唆されたように、それは単なる技術の輸入あるいは翻訳ではない。それはむしろ、近代化(西洋化)に伴う社会変動と同調し、その表出として位置づけられる一方で(輸入・翻訳の側面)、過度な社会変動を抑制すべく配置された統治技術の一端として位置づけられるものである(統治性の側面)。この場合、過度な社会変動とは、常識カテゴリーの混乱を含意する。たとえば、放火や殺人において、犯罪者の語りは、いずれにしても、捜査員の語りの間接話法として位置づけられるべく捜査上の仮説が提起される。このような仮説は、捜査上合理的とされる価値に基づいて編成される。すなわち、「認知上の平常な価値」(H・ガーフィンケル)による合理性である。したがって、近代的捜査技術は、その「価値」に見合う形で西洋の科学的知識を目的論的に摂取したものと位置づけられる。すなわち、近代的捜査技術は従来の秩序の輪郭を自己言及的に再生産するための技術として位置づけられるのである。
著者
田和 俊輔
出版者
鳥取大学
雑誌
鳥取大学教養部紀要 (ISSN:02874121)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.15-48, 1984-09
著者
黒澤 香
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.英国および米国を視察し、両国における目撃者による人物同一性確認手続きについて、最新の情報を入手し、帰国後にそれを学会や研究会などで発表した。とくに、英国におけるビデオを用いた確認手続きについて、手続きが行われるところを傍聴し、その利点や問題点などを担当者から聞いた。そして弁護士からも、この手続きに関する意見や感想を聞き取りした。また従来の、実物による同一性確認手続きについても視察した。さらに、米国においては、独自のガイドラインを導入したニュージャージー州の司法省を訪問して担当者と面談し、この改革についての解説と、経過やその後の進展について、聞き取りを実施した。カリフォルニア州における、写真を用いた同一性確認手続きについても、作成の実際を見学し、地方検察庁の担当検事から意見を聴取した。2.ビデオを用いた確認手続きを実施するための、基礎的研究を実施した。具体的には、画像の形態を検討し、映像となる対象者の動きを決定した。また、服装の影響をなくすため、同一の衣装などを検討し、対策を決定した。以上の準備をふまえて、200人弱のビデオ画像を収録した。この作業に際して、どのような形で映像対象者の同意を得るかを検討し、研究者の誓約書と協力対象者の同意書の様式を決定し、十分な同意手続きを実施した。収録された画像については、今後に継続される研究において、ビデオ確認手続きの構築のため、活用される。具体的には、記録保存されている画像をデータベース化して、キーワードを用いて検索するシステムを構築するための研究が継続される。3.以上の研究をもとに、法と心理学会における目撃供述ガイドライン案作成に参画し、とくに人物同一性確認手続きに関する部分の主要部を担当執筆した。
著者
山口 直也
出版者
山梨学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、普遍的に採択されて国際人権基準として重要な意味を持っている「国連子どもの権利条約」(=子どもの人権論)の観点から少年司法手続におけるデュー・プロセスの保障を明らかにした。まず、デュー・プロセスの保障を検討する前提作業として、子どもの人権が、憲法上および国際人権法上、どのような意味を有しているのかを分析した。その結果、子どもは大人とは違って精神的にも肉体的にも成長発達の途上にあるということは誰もが認める疑いのない事実であり、その子どもが、人間として、個人として尊重されるということを当然の前提として、子どもが未成熟な子どもとして尊重され、成長発達していく権利(=子どもの成長発達権)を固有に保障されていることを明らかにした。そのうえで、そのような子どもの成長発達権を根拠にした少年司法におけるデュー・プロセスの保障の目的は、権利条約が成立した今日的状況に鑑みると、人間としてかつ子どもとしての尊厳を認める形で扱われることで、自己の人間としての成長を成し遂げて、将来、社会の中で建設的な役割を担うことができるようにすることにある。そしてその方式は、あらゆる段階での子どもの主体的な手続参加を確保して、自由に意見を述べることができる環境を提供すると同時に、流山最高裁決定で団藤補足意見が指摘したように、子ども自身が手続に参加したことで納得できるものでなければならないということを明らかにした。最終的に本研究では、子どもの成長発達権の観点から見た少年司法手続における適正手続の保障が重要であると結論づけている。特に、少年が、自分のために援助をしてくれる弁護人(=付添人)および親・保護者との健全な人間関係(=成長発達権を否定しない人間関係)の中においてこそ、少年自らの司法手続参加および意見表明が可能になると主張した。そしてその手続参加(=意見表明)は、権利保障および権利放棄における自己決定を認める「小さな大人」論を認めるものではなく、関係論的子どもの成長発達権に支えられたものであることを明らかにした。
著者
森際 康友
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

この研究の目的は、法科大学院における授業科目としての「法曹倫理」を支える理論的な基盤を打ち固めることにあった。法曹養成機関における法曹倫理教育についてのイギリス・フランス・ドイツ・アメリカ・中国などの取り組みを調査し、それぞれの特徴をその背景にある歴史と法理論との関係で明確にした。すなわち、立法府中心の法体制と思想によって運営されているフランスと司法府を重視したアメリカとを両極におき、ドイツ、イギリスなどをその中間に属するものと位置づけ、司法府を担う法曹に要請されるエートスとその実現を促進・担保する諸制度を取り上げ、それらを運用するためのいわばソフトウェアとして、そこでの倫理規定や原理を解釈した。研究期間の3年で上記5カ国とわが国の法曹倫理教育の現状把握を行った。とくに、司法府の役割が国際的にますます注目されつつ現在、公的イデオロギーとは別に、法曹倫理教育現場では実質的にどのようなエートスが法曹に要請されているかを、日本に焦点を当てつつ見極めるよう努めた。ここ得られた成果を、実践面そして理論の面で活用した。まず実践面では、法科大学院におけるカリキュラム策定作業の中で成果を活かした。配当年次の決定について、各国の比較を行うことなどにより長短を検討し、名古屋大学法科大学院では第三年次後期とした。第2に、私が主催する、地域の法科大学院での法曹倫理担当者および法曹倫理に関心を持つ実務家・研究者からなる愛知法曹倫理研究会での研究活動を軸にして、わが国法科大学院における標準的法曹倫理教育のモデル教育内容を提示すべく、教科書編纂に励んだ。その成果は、名古屋大学出版会より『法曹の倫理』として近刊の予定である。また、法科大学院における法曹倫理の教育方法の開発にも力を注ぎ、その成果は、16年12月、「法曹倫理教育の理念と課題」シンポジウムにおいて発表した。その理念として、実務の場で尊敬を呼ぶ法曹像の確立とその教育的実現、その課題として、理論的基礎の充実、国際的視野の確立、そして現場の葛藤が伝わる教育手法の開発、が提起された。また、実務家と研究者の協働がなければ、法曹倫理学の樹立とそれに基づく教育方法の確立は困難であることが強調され、地域およびインターネットを利用した全国的ネットワークの確立の必要性が浮彫となった。理論面では、弁護士倫理について、多面的な考察ができ、その成果は教科書に盛り込まれた。また、裁判官倫理研究の面で大きな進展があった。同じ16年12月、ドイツの裁判官アカデミーでの講演が好意的に受け入れられた。法曹倫理の要は、よい法解釈が提供できる法曹が持続的に社会に供給されること、という観点からドイツの法曹史と日本のそれとの比較などを行い、「法の欠缺は存在しない、あるのは法律の欠缺だけである」とのテーゼを展開したものである。こういった研究成果のわが国への還元に取り組みたい。
著者
矢田 喜美雄
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.72, no.842, pp.2-6, 1957-01-20