著者
関場 武 高橋 智 佐々木 孝浩 住吉 朋彦 川上 新一郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本研究では、中近世期の東アジアに広く行われた辞書および類書につき、その社会的影響の基盤となった出版情況を明らかにすべく、和書班と漢籍班の二班に分かれて、関連する文献の書誌調査と研究を行った。和書班は、関場・川上新一郎(前半2年のみ・斯道文庫・教授)・佐々木の3名、漢籍班は高橋・住吉の2名によって組織した。関場は、『節用集』類の総合的伝本研究を行い、慶應義塾図書館主催の「辞書の世界-江戸・明治期版本を中心に」展を企画・立案し、解題図録を作成した他、特に「早引節用」類の書誌調査を行い論文を執筆した。川上は、版行された近世期歌枕書類の調査研究を行い、辞書的構造を持つ歌枕書とその他の文献との関係を整理し、解題書目「近世版行歌枕書一覧(稿)」を作成した。佐々木は、類書的な性格を有する『新類題和歌集』と『歌合部類』を取り上げ、伝本研究を行って、歌書をめぐる商業出版と社会的需要の関係を考察し、論文を執筆した。高橋は、中国明清時代に於ける音韻学書の書誌的調査を行い、特に慶應義塾大学言語文化研究所所蔵永島文庫と台湾師範大学所蔵趙蔭棠旧蔵書を集中的に調査し、各々の書目や解題を作成した。住吉は、中国元代成立の類書『韻府群玉』の東アジアに於ける普及を主題として研究を進め、東アジアとアメリカでの総合的な伝本研究を行い、その改編・版刻の経過を追跡し、その成果を書目や論文などの形で発表した。以上の成果の一部は、平成13・14年度の単独の研究成果報告書、及び平成15・16年度調整班(B)出版物の研究の成果報告書に発表している。
著者
若木 太一 高山 百合子 不破 浩子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

唐通事・異国通詞および周辺の唐話学者(稗官の徒、小説家)たちが編纂した唐話辞書の探索、書誌的調査、及び翻訳語彙の分析えを通して、日本近世文学・語学に及ぼした日中言語文化の顕著な相互影響を解明を目的とした4年間(平成9年度〜同12年度)の研究成果は次の通りである。1)唐話辞書、唐話学書の所在調査・書誌調査など基礎調査をカード化した。唐通事の諸家において編纂された唐話辞書、及び出版された唐話学書、あるいは翻訳書等の所在調査を行い、書誌をとり目録化した。(国文学研究資料館、東京大学図書館、慶応大学図書館、松平文庫、長崎県立図書館その他)2)「唐話辞書・通俗書略年表」をまとめた。「唐話辞書類従」(長沢規矩也解題)などに収載する唐話辞書・通俗書よび唐話学関係の文献・データなど既存の基礎目録を確認し、国文学研究資料館、国会図書館、国立公文書館等の唐話辞書の調査を基礎に、新資料を加えた目録「唐話辞書・通俗書略年表」を作成した。3)唐話辞書の語彙・内容の分析研究分担者の協力をえて辞書の翻刻、語彙の分析などを行い、索引を制作した。*『訳詞長短話』巻一の翻刻と解題*『東京異詞相雑解』の総合語彙索引4)『唐話辞書と翻訳語彙の研究-日中言語文化交渉史-』の報告書を制作した。これまで資料の発掘や収集の基礎調査と各辞書の図書館・文庫所蔵の唐話辞書、通俗書などの調査をふまえた「唐話辞書・通俗書略年表」、『訳詞長短話』の翻刻、『東京異詞相雑解』の総合語彙索引、唐通事の生活と文事等を収載。
著者
梅村 又次 中川 清 伊藤 繁 斎藤 修 熊谷 文枝
出版者
創価大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

「新潟県100年の生活史」研究は、日本人の生活構造の諸側面には、都市と農村との間に多大な格差が存在するとの仮定のもとに出発したものである。「地方の時代」といわれる現在、各地域の社会・経済構造の基礎ならびに、その影響を様々な角度から分析することは、各地域の今後の発展の方向づけをする上で極めて重要であると考えられる。新潟県は、その地理的、地形は、歴史的現況等から、細分化して考える必要がある。そこで、本研究では、西日本型とも言われる佐渡地域、最も新潟県らしい湛水田稲作単作地帯満原地方の新潟市、そして山村の豪雪地帯にある漁沼の三地域に焦点を当てた。そして、研究成果として以下四点の論文を中心に報告書をまとめた。1.初等教育の普及と教育の成果(梅村又次)2.新潟県における食生活の変遷(熊谷文枝)3.人口変化の歴史的パターン(斎藤修・中川清)4.戦前期新潟県経済の位置(伊藤繁)これらの論文により、生活史の分析が、歴史的横の側面と、地域的縦の側面の双方からのアプローチが同時になされなければならないことがわかっている。そして、分析結果をもとにして、地域の住民が、幸せであると感じつつ余生を過ごせるような環境作りに励むことが必要である。それは、この研究の対象地域である新潟に対してのみ言うのではなく、日本全域に対して言えることである。その様な点に生活史研究の意義があろう。換言すると、多角的に生活水準の諸側面の歴史的推移を研究することにより、その生活史のダイナミズム分析が可能となる。地域社会を歴史的、かつ総合的に分析することは、日本の他地域・全体との係りの中で把える事を可能にし、地域社会の将来の総合的システム構築への施策となろう。
著者
吉成 直樹
出版者
法政大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

1. 四国、静岡、伊豆諸島(三宅島)などのカシュウイモとニガカシュウの分布状況、利用状況を調査した結果、カシュウイモは基本的にブナ林帯において栽培、利用されているものの、一部照葉樹林帯(高知県北川村、三宅島など)に及んでいることが明らかになった。特に高知県の北川村ではカシュウイモとニガカシュウが存在し、ともに栽培遺物であるものの、両者の違いを認識し、カシュウイモを食用として用いている状況である。2. 高知県におけるカシュウイモの消失過程を集中調査したところ、山間村落においてカシュウイモが利用されなくなったのは、戦後、コウケイ35号と呼ばれるサツマイモの品種が導入されたことが契機であることが明らかになった。それ以前のサツマイモは、収量が多くなかったとされ、依然としてカシュウイモの優位が続いていたという。また、カシュウイモは痩せた土地でも栽培でき、連作しても障害を起こさないものであった。3. イモ類の年中行事における儀礼的利用を全国的にみれば、西日本のサトイモ類に対して東日本のヤマノイモ類という構図を描くことができるが、西日本においては、標高の高い山間村落においてカシュウイモなどを中心とするヤマノイモ類を儀礼的に利用していることが明らかになった。このことは、西日本でも標高の高い地域や東日本などの比較的寒冷な地域では、恐らく初期に導入されたサトイモ類は充分に育たないため、カシュウイモやヤマノイモなどのヤマノイモ類をサトイモ類の代用品として利用したことを示すものと考えられる。
著者
寒川 恒夫 石井 浩一 安冨 俊雄 瀬戸口 照夫 宇佐美 隆憲
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では,(1)日本の民族スポーツの実施状況を地方誌など主に文献資料によって把握し,次にその基礎の上に(2)47都道府県について各1〜2事例を選んで現地フィールドワーク(参与観察と聞き取り調査)をおこない,個々の事例の変容過程を明らかにした上で,変容の諸傾向を抽出することに目的が置かれた。研究目的の(1)については,対象事例が年中行事化しているものに限ったが,(a)実施頻度に地域差がみられること,(b)日本列島全体に実施が及ぶ種目と特定地域に実施が限定される種目があり,種目間に分布差がみられることが明らかにされた。研究目的の(2)については,観光化変容,行政公共化変容,簡素化変容,競技化変容の諸傾向が抽出された。観光化変容とは,民族スポーツが地域の経済振興のための観光資源としてその内容を変化させられてゆく現象という。行政公共化変容は,従来特定の集団に伝承されてきた民族スポーツが諸種の理由から主催権を市町村など行政当局に委譲したことによる変容を指している。簡素化変容は,人口減や経済的負担の増加などの理由から,主催集団が民族スポーツの規模や内容を簡略化する現象をいう。競技化変容は,それまで競争の形式をとっていなかった民俗行事が競技の体裁を取ってゆく現象をいう。これら4つの傾向は,それぞれを独自に生起する場合もあれば,その中のいくつかが複合する場合もある。
著者
倉田 せつみ
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.39-45, 1937-09
著者
上原 啓吾
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医科大学雑誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.161-167, 2005-10

【目的】門脈内に分泌されたGLP-1が肝門脈域における迷走神経感受機構を介してインスリン分泌を促進するか否かを明らかにするために,ラットで生理学的量のGLP-1及びグルコースの門脈内注入による血中のインスリン濃度を選択的肝迷走神経切断および非切断の条件下で測定した。【方法】Wistar系雄性ラットを用い,1)摂食時の動脈血GLP-1濃度を測定,2)摂食後のGLP-1血中濃度に相当する注入量を決定,3)選択的肝迷走神経切断あるいは非切断を行い無麻酔無拘束下に門脈内にグルコース10mg/kg/minを10分間投与,続いてグルコースに加えGLP-1 1.0pmol/kg/minまたはvehicleを10分間並行投与しインスリン濃度を測定した。【成績】摂食15分後の血中GLP-1濃度の上昇は8.6±2.4pmol/lであり,GLP-1 1.0pmol/kg/min門脈内注入はこの変動に相当する上昇をもたらした。グルコース注入中,グルコース濃度はGLP-1注入の有無,迷走神経切断の有無で差を認めなかった。非切断ラットではGLP-1注入3分後からインスリン濃度は有意に増加,GLP-1注入10分間のarea under the curve (AUC)はvehicle注入の約5.4倍であったが,選択的迷走神経切断によりAUCは40%に減少した。【結論】生理学的量のGLP-1門脈内投与は血糖上昇に対するインスリン分泌を増大させたが,選択的肝迷走神経切断によってこの作用は大きく減弱した。摂食時GLP-1の示すインスリン分泌促進に迷走神経機構が関わることが示唆された。
著者
名木田 恵理子 田中 伸代 板谷 道信 小林 伸行 WATERBURY David H. 小林 香苗
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

川崎学園内の3大学においてESP(English for Special Purposes)の考え方に基づいて「医学用語(英語)」と「医療英文」のe-learning用教材を自主制作し、学園内サーバを利用してイントラネットで運用した。「医学用語(英語)」コースは、2002年の運用開始から2007年現在まで933名の学生が利用している。「医療英文」コースは、公開から2年を経て114名の利用があった。これらの実践において経年的に集めた学習データの分析から、さらに効果的な運用方法を考案、試行している。主なLMS(学習管理システム)はInternet Navigwareである。「医学用語(英語)」コースについては授業に導入してブレンディッド・ラーニングとした。講義のみの授業形態のときに比べ、学習到達度の向上は明らかであった。また実践していく過程で、意識調査、医学用語の基礎知識テスト、コンピュタリテラシ測定、到達度テストなどを実施し、教材改善に役立てると同時に、e-learning導入においてのデータとして蓄積している。これらの分析結果から学習者特性を考慮に入れて、新たにLMSとしてMoodleを利用したe-learningを構築し、協調学習も導入した。当該科目におけるe-learningの可能性はより広がっている。「医療英文」コースはセルフラーニングとして提供した。「基本単語」、「文法20」、「長文読解」をESPの観点から整えた。音声付教材の「基本単語」は医療に特化しているため、他の語彙学習サイトとリンクさせることによって充実を図った。「文法20」、「長文読解」も素材となる英文はすべて医療系であり、主に4年制大学への編入学を目指す短大学生に利用された。
著者
萱村 俊哉 井関 良美
雑誌
武庫川女子大学紀要. 人文・社会科学編 (ISSN:09163115)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.53-59, 2009-03-31

In this research, we carried out the autism spectrum disorder(ASD) screening questionnaire(ASSQ-R)for 119 child nursing institutionalized children of three places in K city in order to examine inter-rater reliabilityof ASSQ-R and search problems existed in this type of screening in child nursing homes. As a result,it revealed that although ASSQ-R showed an appropriate inter-rater reliability, it had a difficulty of distinguishingASD from reactive attachment disorder. On the basis of these results and the results of a more detailqualitative analysis of the questionnaire, we pointed out that the neuropsychological tests of motor and perceptualdevelopment were indispensable to distinguish between ASD and reactive attachment disorder.
著者
岡田 則子 土肥 名月 岡田 秀親
出版者
名古屋市立大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

1。ラットの種特異的補体制御膜因子である5I2抗原を発見し、そのcDNAもクローニングすることができたので、腫瘍細胞膜上への5I2抗原の発現を抑制し、自己(同種)補体の反応を許すようにさせる方法して、5I2抗原の遺伝子を特異的に攻撃するリボザイムの開発を試みた。5I2抗原のcDNAの塩基配列を解析し、ハンマーヘッド型のリボザイムの標的とするのに適当と考えられる塩基配列を探索した。それに基づきリボザイムの合成を行った。5I2抗原cDNAのin vitro transcriptを作り、このリボザイムを作用させたところtranscriptのmRNAを特異的に切断することが確かめられた。2。マウスのDAF (decay accelerating factor)のcDNAもクローニングすることができたので、発現組織についての検討を行ったが、精巣に強い発現が認められた。モルモットのMCP (membrane cofactor protein)のcDNAもクローニングし、その発現組織を検討したが、この場合には、より強い精巣への限局が認められた。一方、マウスの腫瘍細胞を用いて解析するため、マウスの強力な補体制御膜因子であるCnyに対するモノクローナル抗体を用いて腫瘍細胞膜上のCrryの機能をブロックしたときの補体反応性の解析を行った。その結果、Crryをブロックするだけでは不十分で、腫瘍細胞に対するIgM抗体などの反応を起こさせると強い補体反応を起こし、C3の沈着等を起こせることが分かった。3。5I2抗原リボザイムは、in vitroのtranscriptを特異的に切断するので腫瘍細胞の細胞内で作用させて、5I2抗原蛋白の細胞膜への発現をどの程度まで抑制するかを検討中である。
著者
田中 秋広 河野 昌仙
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

多体系の低エネルギーの振る舞いを記述する有効作用に「ベリー位相項」が存在すると、統計力学的な平均操作を行う際には配位間の量子位相干渉効果が生じて、新奇な挙動、特に新しい量子臨界現象に導く可能性がある。このシナリオが実現するケースとして、磁場中の反強磁性体の磁化プラトー間転移、トポロジカル絶縁体の量子相転移などについて詳しく調べた。
著者
小田 匡保
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤地理 (ISSN:0454241X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.37-64, 2001-03
被引用文献数
1

In 1998 a kokumin shukusha (people's inn) in Yoshinoyama, Nara Prefecture, discontinued its business, though the number of tourists there has not decreased so much. The kokumin shukusha is one of the Japanese local public enterprises. This paper makes clear details of its establishment and business closure, and searches for reasons why it had to give up its business. The "Yoshino-sanso" Inn was established in 1970. During about ten years since the establishment it went well, but after about 1975, especially after 1994, the management became worse. Three reasons can be pointed out; the high rate of personnel expenses, the decrease of the guests and the decrease of the usage by local residents as a wedding parlor and a banquet room.