著者
奥田 裕規 久保山 裕史 鹿又 秀聡 安村 直樹 村松 真
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.144-150, 2004-05-16
被引用文献数
3

ボーダレスな資本と商品の移動は,地域の処置能力を超えてエントロピーを増大させ,身の回りの環境に重大な影響を及ぼす。この間題は,木材利用の分野に関していえば,地域で使う木材は地域で賄うという「住宅用木材の自給構造」を成立させることで解決できる。金山町では長伐期大径木生産を目指した林業経営により多様な金山杉製材品が安定的に供給され,町内の製材所,森林組合で生産された金山杉製材品を使い,金山大工の手で「金山型住宅」を建てる「住宅用木材の自給構造」が成立している。この成立要因として,金山町民の多くが「金山型住宅」の立ち並ぶ伝統的な景観を評価し,「金山型住宅」を建てたいと思っていること,金山町には住宅建築と金山杉製材品の地場利用を結びつける町民,金山大工,設計事務所,製材所,森林組合,森林所有者からなる「金山型住宅建築ネットワーク」が形成され,金山大工ができるだけ金山杉を使って「金山型住宅」を建てようとしていることをあげることができる。
著者
古川 智恵子 豊田 幸子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要 (ISSN:02867397)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.25-33, 1980-03-31

大裁女物浴衣及び袷長着の既製和服における,身丈・袖丈・裄丈のサイズ構成について調査し,次の結果を得た.1.身丈は10サイズ以上の分布がみられたが,若・中・高年ともに,155cmの構成が最も多く,次に160cm,158cmの順位であり,以上の3サイズで全体の約70%以上をしめている.低率を示したサイズは153cm, 156cm, 150cm, 152cmであった.既刊和裁書における身丈の割出し方は,身長と同寸法が体型に適合する身丈寸法として高率を示した.工技院資料による20才女子標準体格の身長は約155cmであり,既製和服での高率を示した155cmの身丈と同寸法で,妥当である.中・高年向においては,身長に対して約4〜5cm長の身丈155cmが高率を示した理由として,(1)若・中・高年の加令につれて,ローラー指数は大きくなる傾向を示し,中・高年の肩の厚みに要する寸法をアルファーとして身長に加算するため,若年と同寸法の身丈となると考えられる.(2)量産サイドからは,多サイズにわけて裁断する事は,手間がかかり,能率も悪く,裁断コスト高になる.以上の理由から,量産サイドでは広く不持定多数に適合する身丈寸法として, 155cmを多く採用しているものと考える.2.袖丈では49cmが最も多く,次に47cm, 50cm, 46cmに分散してみられた.既刊和裁書での袖丈の割出し方法は,身長との比率で計算する方式がみられ,体型適合寸法の若年向では身長/3,中年向では身長/3- 3〜4 cm, 老年向では身長/3〜5〜6cmが多くみられた.既製和服についての身丈・袖丈の関係では高率を示した155cmの身長/3は約52cmとなるが,袖丈49cmが最も高率を示した.これは中・高年向には妥当な寸法と考えられるが,若年向にはやや短かい寸法と考えられる.この理由として従来からの慣習サイズの袖丈は,1尺3寸(49cm)がよいという固定観念があるために,量産サイドもこの袖丈寸法を広く採用しているものと考えられる.3.裄丈は61〜68cmまでの11サイズの分布がみられた.最も高率を示したのは64cmで,次に65cmである.裄丈を構成する袖幅と肩幅の関係は肩幅より袖幅が2cm広いグループが最も多く26%,ついで1cm広いグループが21%であり,その他13グループに広く分布してみられたが,全体では袖幅を広くする方法が68%をしめた.既刊和裁書の調査結果では,肩幅より袖幅を1cm広くする方法が高率を示したが,既製和服の実態では肩幅より袖幅が2cm広いグループが最も多くみられた.この理由として,今日の若年層の体型を考慮し,裄寸法を長くかつ身幅を適合した寸法にする為には,袖幅を肩幅より広く設定した方が,袖付の傾斜も少なくて仕立ても容易であり,身幅には支障なく出未るために,量産側は一般向の既製和服寸法として,肩幅より袖幅が2cm広い寸法を採用しているものと考える.以上の理由からこの方に妥当性があるものと思われる. 本学学生の裄寸法計測値は, 66.5cmであり,既製和服寸法に高率を示した裄寸法の64〜65cmに対し1.5〜2.5cmの不足がみられた.以上今回は既製和服の丈寸法について検討したが,引続き次報では幅の構成寸法と体型との関連性について調査検索し,報告する.
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.39, no.465, pp.38-41, 1925-01-25
著者
堀内 成子 江藤 宏美 大隅 香 西原 京子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

研究者らは静電容量型加速度センサーを用いて、妊婦の腹部より胎動を記録する小型装置・自動解析システムを開発した。胎動監視装置FMAM(Fetal Movement Acceleration Measurement)は、(290g,77mmX27mmX140mm)で二つのセンサー(胎児・母親の体動をピックアップする)、生体アンプ、SDカードを内蔵し、40時間連続記録可能である。9名の健康な妊婦(29-39歳)の妊娠20週から36週の間の睡眠中の胎動変化を分析することができた。妊娠週数による胎動数の変化が把握できた。さらに胎動変化の個人差が大きかった。母親の呼吸運動がアーチファクトとして混入し、自動解析システムの課題が判明した。死産後の次子妊娠中の妊婦2名の家庭での胎動モニタリングを行い、コントロール妊婦の胎動の変動範囲に入っていることを確認した。睡眠中の胎動変動を見せることにより、妊婦の安心感を得た。こうした家庭訪問により、妊婦は不安を表出できた。妊婦は、胎動監視装置を用いて自分自身で簡単に胎動を記録することが可能であった。さらにデータを収集して、母親のアーチファクトを自動的に除外する解析システムに改善する必要がある。新胎動記録・解析システムは、胎児のwell-beingをみる妊婦による妊婦のための家庭胎動モニタリングとして期待できる。
著者
芦田 信之 竹村 匡正
出版者
甲子園大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

平成18年度、19年度に引き続き、認知症高齢者の専用フロアをもつ精神科病棟にて、認知症高齢者の意思決定代理人のインフォームドコンセントによる許可を得たのち、施設利用者および介護職員(フロア担当者等、昼夜交代あり)にICタグを装着して、行動観察を行った。居住スペース内のベッド、トイレ、廊下、いこいの場などにトリガー領域を設置し、長期間、昼夜24時間連続モニタリングを実施し、行動観察をおこなってきた。利用者の毎日のベッド内滞在時間、トイレ回数、歩行距離などの行動パターンと病態との関係を把握することが可能となり、徘徊行動のおこるパターン解析、徘徊行動をおさえるための介入研究をおこなった。また、1日の行動記録の自動化を試み、自動日報作成のための生活行動分類をおこなった。また、介護者の行動の記録をとるために、ICレコーダで介護行為を記録することとした。しかしながら、現在の音声認識技術では、会話文の自動テキスト化は困難であったので、介護者と利用者の会話を定型化することを考えて、介護現場で必要な「声掛け運動」を提唱し、いろいろな場面での会話を体系化した。このことは、単に、自動記録ができるだけでなく、介護者と利用者のコミュニケーション(必要な場面で、必要な言葉をかける)のに役立ち、さらに、介護者が質の高い介護を実践するための研修にも役立つことがわかった。
著者
鈴木 光太郎
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究では,月の錯視を両眼視および眼位の点から検討した。夜間に野外(新潟大学人文学部屋上)で,被験者から50度上方向と水平方向3mの距離にある2枚の平面鏡(80×80cm)上に実際の月を映し,被験者に上方向の月に対する水平方向の月の大きさ(直径)のマグニチュード推定を行なわせた。1.その結果,両眼視の場合には,月の錯視(直径比が1.5倍程度)が生じた。一方,被験者に最初に単眼視で観察させた場合には,月の錯視はほとんど生じなかった。2.しかし,最初に両眼視条件を行なわせたあとの単眼視条件では,月の錯視が両眼視条件と同様に生じた。3.上方向の月を観察する際に,頭を傾け目が月に水平になるようする条件(水平視条件)と頭を垂直に保ち目だけを上に向ける条件(仰視条件)も設けた。その結果,両眼視条件では,水平視条件に比べ仰視条件での錯視量のほうが有意に大きく,眼位の効果が観察された。しかし,この効果は,単眼視条件では観察されなかった。4.以上の結果は,これまで問題視されることの多かったTaylor & Boring(1942)の知見を支持した。以上より,両眼視では,動眼系の状態(レンズ調節,輻輳,瞳孔)が上方向を見る時と,水平方向(地平方向)を見る時とで異なり,その違いが月の錯視を生じさせている可能性が示唆される。一方,単眼視では,上方向と水平方向とでは動眼系の状態に差がないため,錯視が生じない可能性がある。5.しかし,なぜ両眼視条件のあとの単眼視では月の錯視を生じるのかについては,今後さらに検討を行なう必要がある。
著者
大岩 金
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.64-66, 1930-10
著者
恒松 栖
出版者
別府大学
雑誌
別府大学短期大学部紀要 (ISSN:02864991)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-11, 2005-03-29

挿図あり
著者
恒松 栖
出版者
別府史談会
雑誌
別府史談
巻号頁・発行日
no.20, pp.53-65, 2007-03
著者
神山 かおる 早川 文代 安岡 利一
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

高齢社会においてニーズが高まっている物性を調整した食品の開発に資するため、食品を実際に咀嚼する条件で、口腔内にかかる圧力を直接計測することにより、口腔感覚を簡便かつ正確に評価する手法開発を目標とした。口腔感覚粘度を測定する簡易なデバイスを設計し、口腔内で検出された力学的性質の食品による差異や健常者と摂食機能障害者との差異を解析することができた。
著者
趙 衍剛 小野 徹郎 井戸田 秀樹 平野 富之
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.66, no.546, pp.31-38, 2001
被引用文献数
1 12

1.序 構造信頼性解析では、外力や抵抗に含まれている不確定性は一般に確率変数として表され、確率変数の分布形を仮定・決定することは構造信頼性解析および構造信頼性設計の肝要なステップとなる。確率変数の分布形を決定するために、観測データにフィットする予想分布として幅広く用いられる正規、対数正規分布などの分布形はほとんど平均値と標準偏差の二つのパラメータで決められる。一旦平均値と標準偏差が決定すると、分布形の高次モーメントも決められ、分布形の重要な特徴としての歪度などは自由に選択できないことは大きな欠点である。本研究では統計データを精度よくフィットするために平均値、標準偏差、歪度の三つのパラメータで決められる分布形を提示することを試みる。2.三つのパラメータを有する分布形の提示 三つのパラメータを有する分布形を式(1)の累積確率分布関数(CDF)および式(2)の確率密度関数(PDF)で定義する。この分布形を有する確率変数χと標準正規確率変数μの関係は式(4)と式(5)のように得られ、χの3次までのモーメントは式(6)と式(7)のように求められる。式(6)と式(7)より、χの平均値と標準偏差はそれぞれパラメータμとσ,に等しいことが分かる。歪度には平均値μと標準偏差σ,を含めず,歪度はパラメータλだけの関数である。即ち,式(1)(2)の分布形は平均値,標準偏差および歪度の三つのパラメータで決められる。パラメータλの絶対値が小さいときλと歪度α_1の間には式(8)の簡単な線形関係で表わされる。式(8)を前節の各式に代入することにより式(9)と式(10)の分布形が得られる。χの3次までのモーメントは式(14)のように求められ、χの平均値,標準偏差および歪度がそれぞれパラメータのμ,σ,α_3に等しいことが分かる。α_3>0およびα_3<0のときの標準型の確率密度関数はそれぞれFig.3とFig.4に示す。式(9)と式(10)の分布形はは直接平均値μと標準偏差σおよび歪度α_3で定義されており,パラメータを決める手間も必要としない。本研究では式(9)と式(10)を三つのパラメータを有する分布形として提示する。この分布形はα_3が0に近付くことにつれて正規分布の分布形に近付く。3.応用と考察 3.1実測データによる分布形の考察 H型鋼の断面積に関する718個のデータ及び残留応力に関する320個のデータをフィットする正規、対数正規分布および本提案分布の確率密度関数をFig.5とFig.6に示す。提案分布は正規、対数正規分布より明らかにこれらのデータをよくフィットすることが分かる。正規、対数正規分布および本提案分布に対する検定の結果をTable 1及びTable 2に示す。正規、対数正規分布より、本提案分布の適応度かなり小さい、提案分布は正規,対数正規分布より明らかにこれらのデータを良く適応していることが分かる。3.2鋼構造信頼性解析における構造特性の分布形 鋼構造信頼性解析における構造特性として、降伏応力、極限応力、ヤング率、伸び率、ポアソン比、断面積、残留応力などの統計データについて、3次までのモーメントおよび検定結果をTable 3に示す。正規分布,対数正規分布はそれぞれヤング率と伸び率の統計データによく適応し、提案分布は降伏応力、ポアソン比、断面積、残留応力などの統計データによく適応していることが判る。3.3二つのパラメータを有する分布形との比較 既存の二つのパラメータを有する分布形との比較により提案分布形の一般性を検討する。変動係数が0.1,0.2,0.3と0.4の4ケースのGamma, Weibullおよび対数正規分布の確率密度関数と提案した確率密度関数の比較をそれそれFig.7,Fig.8,Fig.9に示す。Fig.7,Fig.8,Fig.9により,ほとんどの場合では細い実線と太い破線はほぼ重なっている。即ち,α_1が大きくないとき,提案分布は既存分布を含む一般的な分布として使うことができる。3.4モーメント信頼性指標としての応用 式(12)を限界状態関数Z=G(X)の標準正規化関数として取り扱い、3次モーメント信頼性指標β_<TM>は式(21)のように得られる。式(24)の1層1スパン骨組の終局限界状態関数に対して、限界状態関数の3次までのモーメントは容易に計算でき、3次モーメント信頼性指標は2.6145として得られ、この結果が精算値にかなり近いことが判る。3.5分布形が分からない確率変数の取り入れ 分布形が分からない確率変数に対してその統計データから必ず平均値、標準偏差、歪度等のモーメントが計算できる。分布形の変わりに、式(12)と式(13)のx-uとu-x変換を用いれば、分布形が分からない確率変数をFORM/SORMに取り入れることができる。されに、式(13)のχはuの簡単な陽的関数なので、標準正規確率変数uの乱数を利用して、χの乱数も容易に発生でき、MCSにも適用できる。式(25)の限界状態関数には、χ_1,χ_2の分布形が未知であり、統計データからその3次までのモーメントが得られている。χ_1,χ_2の分布形が未知であるものの、式(12)と式(13)のχ-uとu-χ変換を用いて、FORMの解析結果はP_1=0.1032のように得られる。式(13)によりχ_1,χ_2の乱数を発生し、サンプル数が10,000で得られたMCSの結果はP_1=0.1012となる。4.まとめ 1.提案分布形は予想分布として応用することができ、二つのパラメータを有する分布形より統計データをよく対応することが判る。2.歪度が小さいときの既存のGamma、Weibull、対数正規分布などの二つのパラメータを有する分布形を代表することができる。3.三つのパラメータを有する分布形より、3次モーメント信頼性指標が容易に得られる。4.提案分布形に基づく標準正規化手法を用いて、分布形が分からない確率変数をFORM/SORM及びMCSに取り入れることができる。5.構造特性の不確定性を表す確率変数は一般に正的歪度を有する。提案分布は降伏応力、ポアソン比、断面積、残留応力などの統計データによく適応している。6.提案分布形の適用範囲は|α_3|$le;1である。
著者
阿部 なつ江 馬場 聖至 荒井 章司 富士原 敏也 杉岡 裕子 鈴木 勝彦 山野 誠 平野 直人 中西 正男 道林 克禎 石川 正弘 町田 嗣樹 志藤 あずさ 伊藤 亜妃 仙田 量子 水上 知之 清水 健二 森下 知晃
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

海洋プレートの非活動域に発見された新種の火山「プチスポット火山」海域において、地球物理学的・地質学的調査および岩石試料採取を実施してきた。同試料・データは、東北沖日本海溝に沈み込む前の海洋プレートそのものであり、陸側プレートに与える影響や島弧における火山および地震活動を評価する上で、重要な試料・データをもとに、海洋プレートとその下のマントル構造について総合的な研究・調査を行った。
著者
渡辺 健次 江頭 広幸 岡崎 泰久 近藤 弘樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.536, pp.93-98, 2003-12-12

小学校算数で学習するかけ算九九の学習について、音声合成により出題し、学習者の発話した答えを音声認識により認識する、学習支援システムを開発した。本システムは、小学校での学習単元や学習方法に従うように設計されており、学習者が九九の表を見ながら音で聴いたり(「おぽえる」モード)、自分の声で発話して九九を覚えたり(「れんしゆう」モード)、テストにより評価を行う機能(「テスト」モード)を備えている.
著者
宇田 泰三 一二三 恵美
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

「スーパー抗体酵素」とは、抗体として抗原に特異的に結合するだけでなく、抗体そのものが抗原を酵素的に破壊する事ができる画期的な分子を言う。本研究では現在、花粉症やアトピーなどに的を絞り、この治療を目的とした「スーパー抗体酵素」を作製する事である。これまでにヒトIgEをマウスに免疫し、細胞融合によりいくつかマウス型抗IgEモノクローナル抗体を作製し、その中で5H5抗体の遺伝子配列を決定し、この抗体に触媒三ツ組残基様構造が存在する事を明らかにした。さらに5H5抗体によるヒトIgEに対する分解活性を調べた。今年度は、5H5の抗体酵素としての性質をより深く検討することと、5H5抗体以外にも抗体酵素になり得るクローンがないか探索した。1,5H5抗体によるヒトIgEの切断箇所を調べたところ、ヒトIgEが肥満細胞などに結合するbinding siteの少し上流(N末端側)で切断していることが判明した。2,「スーパー抗体酵素」5H5のペプチド基質TP41-1の分解速度(kcat)は0.09min^<-1>であった。3,5H5抗体軽鎖以外の「スーパー抗体酵素」を探索するために1E3,4C4および5H10のモノクローナル抗体について重鎖、軽鎖の遺伝子解析を行った。その結果、1E3には重鎖、軽鎖共に、また,4C4および5H10軽鎖には触媒三ツ組残基様構造が存在すると推定された。4,上記抗体を重鎖と軽鎖に分離して、それらの酵素活性能をペプチド基質TP41-1を用いて検討した。その結果、1E3および5H10には重鎖、軽鎖共にペプチダーゼ活性が存在した。4C4重鎖には酵素活性は存在しなかったが、軽鎖についてははっきりした結果が得られなかった。今年度の研究で5H5以外にもペプチダーゼ活性をもついくつかの有力な「スーパー抗体酵素」が見つかった。この中の最もkcat, Kmの良いものを見つけ出して行けば、I型アレルギーの原因物質であるヒトIgEの機能を消失させると思われる抗体酵素が作成可能である。