著者
茂木 信宏
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

平成19年4-8月雑誌論文(Journal of Aerosol Science)の執筆この論文では、レーザー光散乱法で従来では不可能であった、蒸発性粒子の散乱断面積を計測するための新たな手法を発表した。この方法を応用することにより、大気中のブラックカーボンの被覆状態を定量的に計測することを可能にした。平成19年9-11月学位論文(理学博士)の執筆平成19年12月-平成20年2月従来のレーザー白熱による煤エアロゾル測定器の信号処理回路、計測ソフトウェアを独自に発案、設計、製作し、従来よりも検出粒径範囲を大幅に拡張した。このことにより、レーザー白熱法による煤エアロゾルの検出粒径範囲の広さで世界一を達成した。平成19年3月上記の改良した世界最高性能の煤エアロゾル測定器がNASAの北極での航空機観測プロジェクトARCTASに採用されたため、この期間渡米し、NASAの航空機(DC-8)内において測定器のメンテナンス・オペレーションに携わった。この観測を通じて最先端の航空機観測技術、世界最大規模の共同観測研究がどのように進められるかを学んだ。また、この観測により、地球上で最も温暖化の著しい北極域における煤の気候影響を評価するための詳細なデータを取得した。
著者
大谷 進
出版者
神奈川歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

アミノ酸のラセミ化反応を利用し、従来より正確な歯からの年齢推定法を確立するため各種実験を行った。1.pHによる影響:pH9の環境下で象牙質のラセミ化反応速度がもっとも速く、ついで水、pH4の順で、アルカリ性で速く、酸性で遅いことが認められました。しかしながら、実際のラセミ化は僅かで、年齢推定にはほとんど影響がみられず、死亡時の年齢が算出されるようでありました(環境温度15℃の場合)。2.固定液の影響:正確な年齢推定を行うには、鑑定資料の他に年齢既知の数本の同顎同名歯の対照歯が必要です。このため対照歯を95%エタノール、10%ホルマリンおよび10%中性ホルマリンの固定液に保存された場合について検索しました。その結果、象牙質アスパラギン酸のラセミ化反応速度は、10%中性ホルマリン>10%ホルマリン>95%エタノールの順に速く認められました。しかし、ラセミ化反応は歯を15℃(室温)の固定液に保存された場合、ほとんど促進されず、10年から20年程経過した歯でも抜去時と変わらない結果が得られました。3.ピンク歯について:実際の鑑定例では歯がピンク色に着染している現象が時々見られます。この場合、通常の方法では、年齢が低く算出されることがあります。しかし、資料を粉末化し何回か洗浄すると実際年齢に近い値が算出される知見が得られました。4.加熱の影響:ラセミ化反応は環境に左右され、とくに温度に強く影響されます。しかし、焼死体で加熱された歯でも非コラーゲン性蛋白質を用いると、ほぼ正確に年齢を求められることを明らかにしました。以上、歯からの年齢推定に関する数々の所見が得られ、ラセミ化法の信頼性をさらに高めることが出来たものと考えます。
著者
齋藤 久美子
出版者
日本精神分析学会
雑誌
精神分析研究 (ISSN:05824443)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.46-51, 2000-02-25
被引用文献数
1
著者
今井 勝 島辺 清志 田中 健一 川名 健雄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.345-351, 1994-06-05
被引用文献数
7

食用カンナは温・熱帯地域における生産力の高い作物の一つである. その高生産力の基礎として, 生産構造の個体発生に伴う変化を明らかにするために畦間1m, 株間0.5mとして4月下旬から11月中旬まで筑波大学の実験圃場で食用カンナを栽培した. その間, 個体群各層における光の分布を測定すると共に, 層別刈り取りを行って, 葉面積および植物体地上部の乾物の分布を調べた. 食用カンナの草高は9月中旬に最大値を示した後, 生育後期までほぼ同じ高さを保った. 葉面積指数は同時期までに10を越え, 11.2の最大値を示した後, 植物体の成熟に伴って漸減した. 群落の吸光係数は, 生育の初期に広葉型の1.34であったが, 生育の後期には0.4-0.5とイネ科型の値へと変化した. それは, 食用カンナが生育初期の葉面積指数が小さい時には太陽光を有効に利用するため, 水平葉を展開し, 個体発生に伴って草高と葉面積指数が大きくなると, 次第に直立的な葉を形成するためであった. また, 植物の生育に伴って発生する茎の位置および葉の方位角分布は, 葉群が光を最大限に受容するためのものと考えられた.
著者
荻原 寛
出版者
日本イスパニヤ学会
雑誌
HISPANICA / HISPÁNICA (ISSN:09107789)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.52, pp.1-20, 2008
被引用文献数
1
著者
杉浦 浩子
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.精神障害者の「生きる能力」を構造化構造化を試みるために,精神科デイケア利用者に面接調査を行った。調査内容は勝田モデルの枠組みに従い,(1)生産の技術に関する能力(2)人間の諸関係を統制したり調整したり変革したりする能力(3)自然と社会についての認識の能力(4)世界の状況に感応し表現する能力を調査した。デイケア利用者では,(2)の能力不足を感じる人が多く,この能力の向上が社会復帰意識を高めると考えられた。2.一般の人々の精神障害者の「生きる能力」評価一般の人々が精神障害者の「生きる能力」をどのように評価しているかを明らかにするため,4つの能力を細分化し,質問紙を作成した。一作成した質問紙を用い,M大学1年生138名と中高年層94名に調査を実施した。(1)精神障害者の「生きる能力の評価」:全体で評価の低かった能力は,人間関係の能力の中の「協調性がある」「リーダーシップがとれる」「トラブル時の対応」であった。また,生産技術の能力の中の「新たな技能や資格の習得」「長時間の勤務」も低かった。逆に高かったのは,表現する能力の中の「芸術への関心」「芸術的表現」であった。中高年層と大学生を比較すると,中高年層の評価の方が有意に低かったのは,認識の能力の中の「学力」「知能」,生産の技術の中の「家事労働」であった。学生の評価の方が有意に低い項目はなく,中高年層の方が偏見が強いことが明らかとなった。(2)精神障害者との社会的距離と「生きる能力」の関連:「生きる能力」の評価の低い人は,社会的距離の多くの項目で「受け入れにくい」と答えていた。また,人間関係の能力の評価の低い人は,社会的距離の友人・職場で「受け入れにくい」と答えた人が多く,社会的距離での受け入れと「生きる能力」の評価には,関連性がみられた。
著者
落合 昇 櫛引 理 松嶋 智子 寺町 康昌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.957-968, 2003-09-01
被引用文献数
39

光CDMAシステムの一つとして,EWO信号方式が提案されている.この方式は,1組のユーザに互いに直交する等重みの二つの符号語を割り当て,伝送情報に応じて一方を選択して拡散符号化に用いる方式である.基本的な光CDMA方式であるOOK信号方式と異なり,復号時のしきい値を動的に推定する必要がない点で優れている.EWO信号方式はOOCやPSCをシグネチャ符号とする非同期システムにおいて評価されており,その誤り率特性は適用する符号などによって多少異なるが,OOK信号方式に比べて大きな改善はなく,条件によっては劣ることが報告されている.本論文では,EWO信号方式を同期システムに適用した場合の誤り率特性を評価する.シグネチャ符号としてはMPSCを用い,他チャネル干渉以外の雑音要因を無視できる理想的なリンクを仮定し,解析的な評価及び計算機シミュレーションを行った.その結果,EWO信号方式はOOK信号方式に比べて非常に優れた誤り率特性をもつことが示された.特に,符号語の各ユーザヘの割当てを工夫することにより,EWO信号方式は多重者数にかかわらず誤り率が常に0となるという結果が得られた.
著者
渡邉 裕樹
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成20年度は,(1)計算機代数を応用した形式的検証手法および(2)高信頼なデータパスジェネレータに関する研究を平行して実施し,それぞれ以下の成果を得た.(1)大規模な算術演算回路に対する効率的な機能検証手法の実現を目指し,まず,重み数系と整数方程式を用いて算術演算回路を統一的に表現可能なデータ構造を提案した.このデータ構造に対する検証手法として,グレブナー基底や多項式簡約など計算機代数の手法に基づく手法を提案した.また,従来の形式的検証手法との比較し,算術演算回路の種類に応じて提案手法と従来手法を切り替えることで,検証時間を大幅に削減できることを明らかにした.(2)提案手法に基づく検証系を組み込んだモジュールジェネレータを開発した.本システムは,多入力加算や積和演算などの多様な算術アルゴリズムをライブラリとして有し,その組み合わせで900種類を越える演算器モジュールを自動生成することができる.また,計算機代数に基づく形式的検証を適用することにより,64ビットの演算器であれば数分以内に検証することができる.本システムを公開したWebページ(http://www.aoki.ecei.tohoku.ac.jp/arith/mg/)は,平成20年度末までに12万件以上利用されている.以上の研究により,計算機代数に基づく算術演算回路の形式的設計手法を提案し,その有効性を示すとともに,実用性の高い演算器モジュールジェネレータを実現した.
著者
原島 秀吉 小暮 健太朗 秋田 英万 山田 勇磨
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本年度は、アジュバントのトポロジー制御の観点からアジュバント搭載型ナノ構造体の構築とその機能評価を行った。まず認識受容体の局在が異なる2種類のアジュバントを搭載したMENDの構築を行い、細胞性免疫誘導効率への影響を調べた。polyI:Cはエンドソーム内のTLR3及び細胞質中のMda5により認識され、CpG-ODNはエンドソーム内のTLR9によって認識される。それ故、細胞への取り込み後に認識されるように、MENDの内部に抗原と共に内封した。polyI:CもしくはCpG-ODNを内封したMENDをマウスに皮下免疫し、CTL活性を測定した結果、polyI:C内封MENDを免疫したマウス群では、CpG-ODN搭載MENDを免疫した群と比較して著しく高いCTL活性の誘導が認められた。次にpolyI:C搭載MENDとpolyI:C/R8複合体のCTL活性誘導能を比較した。その結果、polyI:C搭載MENDを免疫したマウス群の方が高いCTL活性及び抗腫瘍活性を示した。MEND内にpolyI:Cを内封することで、効率良くTLR3及びMda5に認識され、強力な細胞性免疫が誘導されたと考えられる。このことからアジュバントの機能を十分に発揮させるためには、そのトポロジーを考慮することが重要であることが示唆された。またpolyI:CをMEND内に内封することでアジュバント投与時の炎症等の副作用が軽減されるかを調べた。polyI:C搭載MEND及びpolyI:C単独をマウス尾静脈から投与し、2時間後の炎症性サイトカインIL-6の産生を調べた。その結果、polyI:C搭載MEND投与群では、polyI:C単独投与群と比較してIL-6産生の著しい抑制が認められた。以上の結果より、効率的な細胞性免疫誘導及び副作用の軽減には、アジュバントのトポロジーを考慮したワクチン設計が重要であることが明らかになった。
著者
向井 友花
出版者
青森県立保健大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

妊娠高血圧症候群の病態の軽減に対する植物性ポリフェノールの有効性を見いだすため、妊娠ラットに一酸化窒素(NO)合成酵素阻害剤を投与あるいはフルクトース(果糖)を過剰摂取させ、アズキポリフェノール摂取が血圧、酸化ストレス、糖・脂質代謝に及ぼす影響を検討した。その結果、アズキポリフェノール摂取はNO欠乏妊娠ラットに顕著な血圧上昇抑制効果は示さなかったが、腎臓のMn-SOD発現を増加させた。またフルクトース摂取妊娠ラットに認められた肝臓の脂質合成転写因子の発現上昇を一部抑制した。
著者
土江田 奈留美 中川 有加 土屋 円香 永森 久美子 小林 紀子 堀内 成子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.33, pp.85-92, 2007-03

本稿は,聖路加看護大学看護実践開発研究センター主催,日本助産学会東京支部中央区分会の後援により2004年9月に開設した,ルカ子母乳育児相談室の2年間の事業報告である。本事業の主な内容は,病院,助産院などで勤務経験がある助産師で,大学院生と教員による,地域での母乳育児支援である。毎週金曜日に来室相談および随時訪問相談を行っており,2年間での総相談者は母児54組,総相談件数は289件であった。そして,主な相談内容は,「母乳分泌量の不足」「乳房のトラブル」「断乳・卒乳」「吸わせ方や抱き方」「哺乳拒否」であった。また,利用者の感想は,「不安が解消された」「子育てに自信がついた」「また利用したい」などであった。そして今後のルカ子母乳相談室の役割として,以下の3点を継続,拡大していきたいと考えている。1.授乳期全期にわたり悩みが尽きない母親たちの支援を行う場2.資源が少ない地域への貢献の可能性3.病院だけでは補いきれない育児支援を継続していく場