著者
山田 剛二 小橋 澄治 草野 国重 久保村 圭助
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, 1977-09-15

飯山線高場トンネルは昭和45年1月22日午前1時頃地スベリによってトンネル延長の半分が崩壊した。このトンネルは古くより地スベリによる変状があり調査や, 対策工が数多く行なわれてきた。特に崩壊近くなってからは地スベリ計を中心とした測定がほぼ完全な体制で行なわれ, それによって, 地スベリ規模, 崩壊時期の予知を的確に行なうことができた。高場山トンネルは信濃川に突出した個所を貫く167 mのトンネルで, 粘土質ケツ岩, 砂岩の互層で, 昭和2年の開業より変状が認められ、多数のトンネル補強工が行なわれている。44年4月の雪どけ期に坑門付近の変状が進み8月の大雨によりノリ面の強化工事を行なった。9月以降も地スベリは進行し, ボーリングなどの調査測定, 排土工, 排水工の作業にかかったが, 翌年1月22日崩壊した。地スベリ計, パイプヒズミ計, トンネルの変位測定, 擁壁, 構造物の変状, 移動などの調査観測, 安定の検討を行なった。地表面移動速度による崩壊時期の予知を行ない, 相等の精度で予知することができ, 地スベリ対策, 測定法, 予知法について多くのデータを得た。
著者
垂水 祐二 伯野 元彦
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.p535-577, 1988-03
被引用文献数
2

土とか岩は,砂粒とか土粒子でできていたり,多くの割れ目があったりで,本質的には連続体ではない.勿論,通常の問題では,大変形が生じる訳ではないので,連続体としての解析で何ら支障はないのであるが,土砂崩壊とか液状化とか,大変形時には無理がある.非連続体の解析手法としては,現在までのところ,有限要素法に滑り要素を導入したものや,有限要素法を多少変えた川井のRBSM法(Rigid Body Spring Method),CundallのDEM法(Distinct Element Method)がある.どの手法にも一長一短があるが,有限要素法の流れを汲む前二者では,要素の辺に沿って滑る変形しかできないし,隣り合う要素と要素が離れてしまうなどということもできない.それは,要素の格子点は,隣り合う多くの要素に共有されているので,要素と要素が離れてしまい,今まで1つであった格子点が複数にならなければならないが,それが,全く不可能ではないにせよ,かなり面倒なのである.ところが,実際の現象では,岩石の崩壊の際には,岩塊と岩塊は離れるばかりでなく空中を飛ぶことだってある.一方CundallのDEM法は,要素は元々,バラバラのものとしての取り扱いである.そのバラバラの独立した要素一つ一つについて運動方程式をたてる.したがって,岩石が崩壊する時,岩塊同志が衝突したり,跳んだり,転がったりすることも可能である.現在まで,このDEM法による粒状体シミューショシは,粒体間の間隙に水が飽和している場合については,殆んど行われていなかったので,筆者らは,二次元粒体に水圧を考慮する事によって,地震時の砂の液状化と,大雨の場合の間隙水圧上昇によるQuick Sand現象をこの粒状体シミュレーションで解析することを試みた.そして,或る程度の成功を得た.しかしながら,粒径が砂のように小さくなり,間隙水の体積弾性率の大きい影響で,P波の伝播速度が大きくなり,その結果,計算の安定のため,計算時間刻みを100万分の1秒のように小さくとらねばならず,解析粒数を200個強しかとれなかった.実際の液状化を詳細に模擬するには,3次元解析か必要であり,これは,将来の計算機の高速化をまたねばならない.Various kinds of liquefaction analysis have been carried out in laboratory experiments and using the Finite Element Method (FEM). But, no numerical liquefaction analysis in which sand has been considered a non continuous material has yet been reported. In 1971, the Distinct Element Method (DEM) was introduced by Cundall; a numerical simulation used to analize the behavior of rock, based on the assumption that each individual rock element satisfies the equation of motion. We have developed a modified DEM using Darcy's law that takes into account the pore water pressure. We analyzed the liquefaction of saturated sand under seismic excitation and also the quick sand phenomenon due to water pressure. The assembly model consists of circular elements with log-normal distributed radii, and it is packed by dropping. We used the nonlinear spring in the normal direction between particles in order to express the "Dilatancy" in two dimensional treatment. The excessive pore pressure of the numerical result rose gradually due to the shaking effect. This result agreed with the results of the past laboratory tests. However, the contact of the neighboring particles was not easy to hide even under the high pore pressure, and resultantly, a complete liquefaction phenomenon could not be realized. The complete liquefaction can be analyzed only by the three dimensional analysis or a forced strain input. However, it needs much more computing time, and we have to wait for an advanced and faster computors. We also made the quick sand phenomenon occurr in the model assembly by applying the uplifting water pressure at the bottom of the assembly. A time history of the excessive pore water peressure was also obtained at the point near the bottom or the surface of the assembly.
著者
武上 成比古 橋村 隆介
出版者
崇城大学
雑誌
崇城大学工学部研究報告 (ISSN:13467867)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.101-110, 2005-03

日本の河川流域は山林に覆われているから、降雨はすべて地下浸透し、これが浅層地下水帯を形成し、河川流況を維持している。この考え方は、降雨と流出の時間遅れ、低水時の流況維持、大雨後の豪雨による土石流発生等の、日本の河川の流況特性によく照合している。この山地浅層地下水帯の水源涵養の水理は、平地における浅井戸揚水の水理と同じであるが、ただ急勾配斜面のため、上流側が地下水面に、下流側が河川への流出となる地下水帯全体の流動といえる。流出モデルの場として考えた場合、雨水は、まず地下水面を形成し、地下水流動の領域を作り、下端の湧水放流となる。この境界条件に囲まれた領域では、流れの関数は地層の浸透係数にそのポテンシャル勾配を乗じたポテンシャル流となる。運動式は層流としての一次関数であり、連続の式と連立して解けば領域の流速分布の解が得られる。有限要素法においては、要素別の重心点の流動ベクトルとして解を求めている。この報告ではその計算手法を発展させ、まず要素別のポテンシャル値分布から等ポテンシャル線を分級別に検索し、次に、その上、下流一組のポテンシャル線間での浸透流量計算から、ポテンシャル線群それぞれの等流量点を検索し、結果として、領域での地下水流動の連続条件を満たす、流線網図を描く手法を開発した。
著者
本多 〓
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.19-24, 1968-12-29

公園緑地の存在によつて、大気汚染とくに煤塵に対して、その遮断効果または捕捉効果を把握するために、都心部にある大緑地として皇居内及び皇居外苑について、その外囲より内部に至る樹木の築上に附着する煤塵量の推移と、その附着のの状況について調査測定を行つた。(1)皇居外苑に比べて、坂下門内宮内庁舎前では1/6に減少し、その内部の乾道では1/41に、最も内部の吹上御苑の中では実に1/40に減少し、緑地の存在による煤塵防止効果は顕著であつた。それは緑地のもつ空間のひろがりに由来する効果と、その上に存在する樹木群の防波堤としての機能の相乗的なあらわれであると考えられる。(2)葉面気孔閉塞度よりみれば、外苑のクロマツの葉は、平均80%以上の気孔が閉塞されていたが、それより1km以上内部に位置する吹上御苑の中では、全く閉塞されないかまたは極めて僅少にとどまつた。(3)本年生葉に比べて前年生葉は場所により約3割増より3倍以上多く附着し、気孔閉塞度においても同様の傾向を示した。(4)クロマツの葉面で最も煤塵の附着しやすいのは、葉緑の極めて微細な鋸歯のある部分で、湾曲面、平坦面では粗に附着している。1本の葉上では葉の先端より中央部にかけて多く、基部に行くに従つて粗になる。(5)大雨直後にも葉上の煤塵はかなり残存するので、樹木の生育悪化を防ぐためには、自然の降雨のみによらず、煤塵の固着化の進まないうちに度々洗滌を行うことが望ましい。
著者
加藤 由美子 豊瀬 恵美子
出版者
帝京短期大学
雑誌
帝京短期大学紀要 (ISSN:02871076)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.21-24, 2004-03-31

幼児を体格指数で3群(正常群、やせ群、肥満群)に分類し、その食事状況とTC・TGとの関連を比較、検討し以下の様な知見を得た。1)総コレステロール・中性脂肪値は、正常値よりやせ、肥満群が高く、正常群と肥満群の中性脂肪値には有意差が見られた(p<0.05)。2)食物摂取頻度で、やせ群は正常群に比べ野菜ソテーの摂り方が有意に少なく(p<0.01)、肥満群は正常群に比べ野菜、野菜ソテーの摂り方が有意に少なかった(p<0.05/p<0.01)。3)よく食べるおやつで、やせ群はスナック菓子、プリン・ゼリー類、チョコレート、煎餅が多く、肥満群は菓子パン、キャラメル・飴類、饅頭・羊羹類が多く有意差が見られた(p<0.001)。4)よく食べる夜食で、やせ群は菓子パン、キャラメル・飴類、饅頭・羊羹が多く、正常群は煎餅、チョコレート、プリン・ゼリー類が多く有意差がみられた(p<0.001)。5)総コレステロール・中性脂肪値は、正常群が最も低く、3群間の野菜、おやつ、夜食の摂り方に関連があると推論された。
著者
中島 暢太郎
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.61-63, 1986-09-30
著者
奥田 穣
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, 1980-09-15

豊富な気象資料に基づいて, 地すべりと崩壊のうち, 特に崩壊に関係する降雨特性について論じている。11年間に及ぶ全国の山くずれ発生件数の年変化, 神奈川県と鹿児島市内における50年ないし3年間に及ぶ崩壊発生事例, 北陸地方での地すべりの発生などに関するこれまでの研究報告を参考として, 崩壊現象と降雨量との間に存在する巨視的な因果関係について述べている。同時に, 1時間雨量, 24時間雨量, 10分間降雨量との関係から, 崩壊と降雨量との関係を具体的に論じている。すなわち, 24時間雨量では200mm, 1時間雨量では20mm以上になると崩壊が激増すること, 崩壊は1時間最大雨量の出現直後から3時間までの間に多発すること, 10分間降雨強度で5mm以上の強い雨が長時間集中すればするほど崩壊発生数が増大すること, 降雨強度はパルス状に20分程度の小変動が繰返し継続するもので崩壊はその第2波ないし第3波の山で発生し, 特に, 第3波以降に多いとしている。以上のように, 崩壊に関する降雨の影響は時間とともに変化して動的であることが理解される。
著者
桐谷 圭治
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.506-513, 2005-12-25
被引用文献数
3

農業生態系をこれまでの短期的・局所的(作物別)視点から脱却して、長期的・広域的視点からながめる必要がある。そのためには土地利用の変化、害虫管理を含む作物管理手法、さらに気候変動も考慮にいれなければならない。害虫あるいは希少種といわれるものも、長期的にはそれぞれの地位が逆転する場合も起こる。これらは害虫管理と生物多様性保全を包括したIBM、すなわち総合的生物多様性管理の必要性を示している。戦後の「コメ1俵増産」連動に動員された一連の耕種技術が予想外のニカメイガの低密度化をもたらした。なかでもイネの早植えがその減少開始の動機となり、韓国、台湾、中国でも日本より数年ないし10数年のおくれを伴って起こっている。また発生ピークから最少になるまでに12-14年を要している。現在、カメムシ類が水稲と果樹の最大の害虫となっている。斑点米カメムシの多発生は減反にともなう休耕地などの繁殖場所の増加が要因となり、果樹カメムシでは1960年代の拡大造林により増加したスギヤヒノキの人工林が、その結実年齢をむかえ、球果で生育するカメムシ類の増加をもたらした。夏の高温は翌年の球果の豊作をもたらす。さらに地球温暖化が、カメムシ類の冬期死亡率の減少、年間世代数の増加、繁殖の活性化を通じて、両者の同時多発をもたらしている。カメムシとは逆に、夏の低温・多雨がニカメイガの大発生をもたらすため、地球温暖化はニカメイガにとっては不利に働く。減反が行われなかった韓国ではカメムシ類によるイネの被害は顕在化しなかったし、果樹カメムシ被害は日本に遅れること20年の1990年半ばに報告されだした。希少種の絶滅は、その生息地の崩壊によることが多いが、ニカメイガの生息地は現在も広大な面積で存在する。ニカメイガの絶滅を防いでいると考えられるのは、密度依存的に働くメイチエウサムライコマユバチであろう。カメムシ問題は土地利用政策の変化に根ざしたものであり、通常の害虫管理の範囲を越えたものである。また縦割り組織のため、稲と果樹カメムシは別個に扱われてきた。カメムシの戦略的害虫管理のためには、従来の枠を越えた「大規模・長期」的視点が不可欠である。ここでは密度の代わりに病害虫発生予察情報による警報数を、「実験」の対照区としては韓国を考えた。現在、日本では減反も限界で、地球温暖化が発生を助長するとしても斑点米カメムシによる被害は現在をピークに下火になると予想される。他方、人工植林面積は過去30年間漸減しているが、針葉樹林面積は減少せず樹齢の老齢化が進んでいる。したがって果樹カメムシによる被害は、なお漸増の傾向にあるといえる。
著者
干場 秀雄 梅津 一孝
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.47-52, 1999-11-10
被引用文献数
4

馬場牧場に設置された搾乳ロボットはオランダL社製の一搾乳ストール式であった。乳牛が連続して搾乳ストールに入室した時の平均搾乳能率は毎時9.5頭であった。しかし、一日24時間では総搾乳頭数は156頭で、それによる平均搾乳能率は毎時6.5頭で、その稼働率は72%であった。搾乳牛43頭の一日の搾乳回数は1回から6回迄あり、その平均搾乳回数は3.63回であった。その内、一日3回以上の多頻度搾乳牛は全体の93%を占めていた。乳牛の搾乳間隔は牛毎の期待乳量により規定されていたが、6回搾乳牛では平均4.0時間、5回搾乳牛では平均5.0時間、4回搾乳牛では平均6.3時間、3回搾乳牛では平均8.3時間であった。当場では今後さらに60頭に増し一日180頭の搾乳を目指している。日本家畜管理学会誌、35(2) : 47-52、1999 1999年9月受付1999年9月受理
著者
佐藤 嘉晃 石川 博之 中村 進治 脇田 稔
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.177-192, 1995-06
被引用文献数
16

矯正力を加えた際の圧迫側歯周組織の経時的変化について, 組織反応ならびにそれらの三次元的な分布の推移から検討を加えた.成ネコの上顎犬歯を100gの初期荷重で遠心方向に傾斜移動し, 荷重開始から7日, 14日, 28日後の組織標本を作製した.これらの組織像, ならびに連続切片からコンピュータにより構築した三次元画像の観察を行った結果, 以下の知見が得られた.1. 7日間例にみられた無細胞帯および内変性帯からなる変性領域の分布は, 14日間例では三次元的に縮小しており, この過程ですでに変性領域の組織の修復が進行していると考えられた.14&acd;28日にいたる過程では, 変性領域の分布はさらに縮小しており, 大部分は修復されていた.しかし, 遠心側歯頚部の歯槽骨頂付近には依然として変性領域が残存していた.2. 14日間例において変性領域に面する歯槽骨に活発な吸収像が認められ, この部位からも変性領域の修復が進行することが示唆された.3. 上記の吸収形態は, 変性領域に面する歯根膜腔への骨髓腔の開口部に独立してみられたため, 従来の背部骨吸収は, (1) 歯槽骨内骨髓腔開口部に近接して出現する浅部での背部骨吸収と, (2) 歯槽骨内深くの骨髓腔に出現する深部での背部骨吸収に再分類することが妥当であると考えられた.4. 変性領域と破骨細胞の種々の骨の吸収形態には明瞭な位置関係が認められ, これらは歯根膜に分布する圧の程度と密接に関連していることが示唆された.