著者
加々美 寛雄 飯泉 滋 大和田 正明 濡木 輝一 柚原 雅樹 田結庄 良昭 端山 好和
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.44, pp.309-320, 1995-11-30
被引用文献数
10

瀬戸内・近畿地方の領家帯地域に分布する火成岩類の活動時期は, ジュラ紀初期-中期, 後期白亜紀, 中新世中期の3回である。最初のジュラ紀初期-中期に活動した火成岩類は領家花崗岩中に捕獲岩体として分布するはんれい岩, 変輝緑岩である。前者は下部地殻条件下 (6-8 kb) におけるソレアイト質マグマからの早期晶出相と考えられる。ノーライト, 角閃石はんれい岩, 変輝緑岩によるSm-Nd全岩アイソクロン年代は192±19 Maである。また, ノーライト, 角閃石はんれい岩中に不規則な形の産状を示す斜長岩質はんれい岩のSm-Nd全岩年代は162±29 Maである。後期白亜紀の火成活動は約110 Ma 前, 安山岩質マグマの活動で始まり, その後, 花崗岩の大規模な深成作用に引き継がれた。この深成作用は100-95 Maと80-75 Maの2つの時期に分けることができる。中新世中期の火成活動はユーラシア大陸から西南日本が分離, 移動したことにより引き起こされたものである。日本海形成(15 Ma)に関係した火成活動は, ユーラシア大陸東縁部の狭い範囲で始新世後期-漸新世初期に始まった。ジュラ紀初期*中期火成岩類の ^<87>Sr/^<86>Sr初生値, εNd初生値は後期白亜紀花崗岩類のこれらの値と似ている。このことは両火成岩類が似た起源物質から形成されたことを暗示している。一方, 中新世中期火成岩類のSr同位体比初生値, εNd初生値は以上の火成岩類の値とは著しく異なっている。中新世中期の日本海形成とともに, 西南日本弧の大陸性リンスフェアがフィリピン海プレート上にのし上げた。この出来事によって, 瀬戸内, 近畿領家帯地域下のリンスフェア・マントルはLILあるいはLREE元素に枯渇した化学組成をもつ様になった。中新世中期に活動した玄武岩はこの様にして形成された新しいマントルから形成された。高マグネシア安山岩は玄武岩を形成したマントルより浅い, 沈み込むプレートに由来する流動体相の影響を受けたマントルから形成された。安山岩, 石英安山岩は上部マントル由来のマグマと下部地殻の部分溶融によって出来たマグマとの混合物から形成された。それらのSr同位体比初生値とεNd初生値は, 下部地殻の部分溶融によって出来たマグマの寄与の程度により変わる。この下部地殻は苦鉄質化学組成をもち, 西南日本弧の後期白亜紀に活動した花崗岩類にとっても重要な起源物質である。
著者
濱尾 章二
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.71-76, 2008-03

2006年8月20〜25日に東欧,ブルガリアにおいて渡り時期の鳥相を調査したところ,13目35科129種が観察された.タカ目・チドリ目・スズメ目で多くの種が記録されたこと,多数のモモイロペリカンPelecanus onocrotalus・ヨーロッパコウノトリCiconia ciconiaが記録されたことは,当地が秋季の渡りの重要なコース上の中継地であることを示唆する.この調査は(財)科学博物館後援会の寄付金による補助を得て行われた.
著者
松井 寛二 森岡 弥生 竹田 謙一
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.3, pp.11-16, 2005-03

4頭の木曽馬の馬房内の夜間の姿勢と体温変化の特徴を明らかにし,姿勢および体温変化と睡眠の関連を考察した。姿勢と行動はビデオカメラを用いて,体温(膣温)はデータロガを用いて記録した。姿勢は,1)立位(歩行・摂食),2)立位(休息),3)伏臥および4)横臥の4型に区分して記録した。伏臥および横臥の出現パターンには個体差が認められた。4頭平均の伏臥持続時間は16.4分,横臥持続時間は4.2分,夜間11.5時間の横臥回数は6.1回であった。体温は17時の38.1~38.6℃から早朝の37.6℃前後まで漸減した。伏臥から横臥の姿勢変化時にノンレム睡眠からレム睡眠に移行し,横臥時にレム睡眠であることが推察された。
著者
斎藤 豊文 森 健策 鳥脇 純一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.1675-1685, 1996-10-25
被引用文献数
70

本論文では,ユークリッド距離変換を用いた3次元ディジタル2値画像に対する薄面化および細線化手法を提案し,その性質について述べる.本論文の手法は従来提案されていた手法に対して,特に図形の回転依存性が大幅に改善されている.3次元画像の薄面化/細線化は2次元画像における細線化に対応する基本的な処理であり,図形の構造解析などに利用される.しかし,従来提案されていた手法は図形を主に6方向から順に削っていくというものであり,入力図形が回転した場合,薄面化/細線化結果が大きく変化していた.本手法ではユークリッド距離変換の結果を用いることにより,図形の回転依存性を改善した.
著者
山口 留美子 渡辺 昭則 佐藤 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OME, 有機エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.137, pp.57-62, 1999-06-24

ポリ酢酸ビニル(PVAC)をケン化反応させることによって得られるポリビニルアルコール(PVA)において、そのケン化度と液晶配向特性の関係について実験、測定を行った。すなわち、PVAC膜または種々のケン化度のPVA膜を用いて流動配向、またはラビング処理によるホモジニアスセルおよびTNセルを作製し、配向状態の観察と方位角アンカリング力の測定を行った。ホモジニアスセルでは、方位角アンカリングがケン化度の増加とともに増加すること、PVACや低ケン化度PVAでは時間経過とともに配向が液晶の相転移に対して安定し、アンカリング力が増加することが確認された。TNセルでは、PVACや低ケン化度PVA配向膜では、液晶注入から時間とともにねじれ角が減少することが確認された。このため、ホモジニアス配列とTN配列では異なるアンカリング力が現れる結果となり、高ケン化度PVAにおいても、TNセルではホモジニアスセルと比較し,低いアンカリング力が得られた。以上の結果から、液晶の配列が配向界面に及ぼす影響を議論した。
著者
齋藤 哲史
出版者
MEDICAL IMAGING AND INFORMATION SCIENCES
雑誌
医用画像情報学会雑誌 (ISSN:09101543)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.37-39, 2008

日本の医療体制は崩壊の瀬戸際にある, といっても過言ではありません. 政府による医療費抑制策が原因です. しかし, 医療費は本当に抑制し なければならないのでしょうか. 医療は, 健康・長寿を実現するのに必要なサービスです. また, 高齢化や所得水準の向上に伴って支出に占める割合が上昇するのは必然です . それは他の先進国の例からも明らかでしょう. それにもかかわらず, 政府は財政的見地から医療費抑制策を30 年近くも続けてきました. 現在の 状況は, その報いと言えるのかもしれません. 今回の講演では, 医療崩壊の経済学と題して, 「医療費抑制の是非」, 「後期高齢者医療制度」, 「将来の医療保険設計」の3 点について言及し ましたが, 内容を一部変更・省略しております. 何卒ご容赦ください.
著者
中尾 方人 一文字 里紗 山崎 裕 石橋 庸子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.70, no.598, pp.109-116, 2005
被引用文献数
7 9

This study is to clarify the shear resisting mechanism and establish a shear strength evaluation method for mud-plastered walls through shear loading tests of mud-plastered wall specimens. Since two failure modes were observed throughout the tests, two shear resisting mechanisms were established. Therefore, the minimum value among the strengths corresponding to these two mechanisms was taken as the shear strength of the mud-plastered wall. Taking into account the compressive and tensile strength of mud, the evaluation method based on the shear resisting mechanisms for mud-plastered walls provided a good estimation of the shear strength.