著者
與倉 豊
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.158-177, 2012-09-28 (Released:2012-09-28)
参考文献数
50
被引用文献数
2

本稿では,研究会や異業種交流会などへの参加によって構築されるインフォーマルネットワークが,イノベーションや知識創造において果たす役割を考察した.事例として取り上げたのは産業支援機関による研究会への支援体制が整っている静岡県浜松地域である.当該地域における研究会参加主体のデータベースを構築し,インフォーマルネットワークが有するポテンシャルを社会ネットワーク分析を用いて検討した.そしてインフォーマルネットワークの関係構造と,共同研究開発に基づくフォーマルネットワークの形成との関連性について考察した.その結果,特定の主体が複数の研究会に参加することによって,新奇的な知識を異なる研究会の間で伝達し,イノベーションや知識創造において重要な役割を果たしていることが明らかになった.そのような主体は,フォーマルネットワークの形成において主導的な役割を果たし,先端的な知識や市場情報を流通させる可能性が高いことが示された.長年にわたり開催される研究会では参加主体が同質的になり,多様な主体との接触が抑制される傾向にある.しかし,浜松地域の場合には県外からの参加主体や,複数の研究会に流動的に参加する主体によって,新奇的な知識を獲得するチャネルが確保されることにより,信頼を基にしたフォーマルネットワークが形成され,「認知的ロックイン」が回避されうることが示唆された.
著者
雨宮 怜 坂入 洋右
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.16225, (Released:2017-09-30)
参考文献数
46
被引用文献数
3 6

This study investigated the relationship between athletes’ mindfulness and future decrements in performance. Participants were 116 university athletes (male = 63, female = 53, unknown = 3, mean age = 19.25, SD = 0.98). The participants completed a questionnaire comprising a few questions related to socio-demographic variables, the Athletes Mindfulness Questionnaire (AMQ), and the Athletes Performance Decrement Questionnaire (APDQ) at time 1 and time 2 (4–7 months after time 1). The results of a cross-lagged effects model revealed that AMQ score at time 1 was positively associated with AMQ score at time 2 and negatively associated with APDQ score at time 2. However, APDQ score at time 1 was positively associated only with APDQ score, but not AMQ score, at time 2. This study’s results indicated that athletes’ mindfulness is unidirectionally associated with decrements in performance. This implies that increasing mindfulness may be an effective method for preventing impairments in athletic performance arising from psychological factors.

4 0 0 0 OA 中外医事新報

著者
日本医史学会 [編]
出版者
日本医史学会
巻号頁・発行日
no.430, 1898-02
著者
遠山 日出也
出版者
日本女性学研究会
雑誌
女性学年報 (ISSN:03895203)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.21-39, 2018

本稿では、中国で2012年に活動を開始した「行動派フェミニスト」がおこなってきた公共交通機関における性暴力反対運動について考察した。その際、香港・台湾・日本との初歩的比較もおこなった。<br> 中国における公共交通機関における性暴力反対運動も、実態調査をしたり、鉄道会社に対して痴漢反対のためのポスターの掲示や職員の研修を要求したりしたことは他国(地域)と同じである。ただし、中国の場合は、自らポスターを制作し、その掲示が断られると、全国各地で100人以上がポスターをアピールする活動を、しばしば1人だけでもおこなった。この活動は弾圧されたが、こうした果敢な活動によって成果を獲得したことが特徴である。<br> また、中国のフェミニストには女性専用車両に反対する傾向が非常に強く、この点は日本などと大きな差異があるように見える。しかし、各国/地域とも、世論や議会における質問の多くは女性専用車両に対して肯定的であり、議会では比較的保守的な政党がその設置を要求する場合が多いことは共通している。フェミニズム/女性団体の場合は、団体や時期による差異が大きいが、各国/地域とも、女性専用車両について懸念を示す一方で、全面否定はしてないことは共通している。中国のフェミニストに反対が強い原因は、政府当局がフェミニストの活動を弾圧する一方で、女性に対する「思いやり」として女性専用車両が導入されたことなどによる。
著者
米地 文夫
雑誌
総合政策 = Journal of policy studies (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.349-367, 2004-02-10

志賀重昂の著書『日本風景論』(1894)の中心的な位置を占める火山に関する記載部分の分析検討のうち、中部日本の火山等に関する志賀の記載をとりあげ、彼の剽窃や改竄の諸相をさらに明らかにした。特に高頭式編『日本山嶽志』(1906)のなかに志賀の訳読として掲載されている"Handbook for Travellers in Central & Northern Japan"の記事と『日本風景論』における記事とがほとんど同一の内容であることを明らかにし、剽窃の実態を検証した。また、志賀の郷里三河についての記載の不自然な比重のかけかたに、彼の強い愛郷心がみられることを示し、さらに大槻磐渓の語句の改竄が愛郷心と愛国心とを結び付けるための志賀の強引な操作であることを論じた。これら志賀が行った剽窃や改竄および不自然な構成などは、読者の愛郷心を、他国に冠絶する日本の風景を説くことによって愛国心を高めるための、確信犯的意図によるものであった。
著者
元木 泰雄
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1995

論文博第275号
著者
上原 雅江 佐野 文子 鎗田 響子 亀井 克彦 羽毛田 牧夫 井出 京子 永井 啓子 高山 義浩 西村 和子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.205-209, 2008 (Released:2008-08-09)
参考文献数
21
被引用文献数
6 5

2006年本邦において,タイ人AIDS患者の血液培養よりPenicillium marneffei が分離された.本菌種による感染報告例は本症例が3例目となるが,培養に成功した例はわが国では初めてと考えられる.患者は,41歳,タイ東北部出身の女性で,約10年前に来日.その後もしばしば一時帰国していた.AIDS治療中に発熱のために行った血液培養より,培養初期に白色,やがて暗赤色となる集落が分離され,菌学的および分子生物学的手法によりP. marneffei と同定され,患者はマルネッフェイ型ペニシリウム症と診断された.アムホテリシンBおよびミカファンギンの投薬により患者は回復し,引き続き通院し経過を観察された.分離株をサブロー・ブドウ糖寒天平板培地にて25℃で培養した集落は,初め白色フェルト状で,次第に黄色から黄緑色となり,さらに培地内に深紅色色素を拡散した.分生子頭は散開性で,その先端に分生子の連鎖を形成していた.ブレイン・ハート・インフュージョン寒天斜面培地にて35℃で培養すると,細かい襞のある灰白色膜様集落を形成し,顕微鏡的には短菌糸より構成されていた.なお,本分離株のリボゾームRNA遺伝子internal transcribed spacer領域の配列は,既知株と100%一致し,DDBJにAB298970として登録されている. 臨床検査分野においては,今後HIV感染症の拡散と人々の移動のグローバル化に伴い,病原性輸入真菌症に遭遇する危険性が高まることが予測され,専門機関との連携を含め,初期対応が可能となるような体制作りが必要であると考える.
著者
橋本 治 三橋 博巳
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第23回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.129, 2012 (Released:2013-07-08)

資源化施設では、火災予防を目的とした不燃ごみの散水、水噴霧による湿潤化が行われている。湿潤化された不燃ごみ中に含まれる廃棄リチウム電池は、水濡れによる発火危険性が増すことが考えられる。本研究は、湿潤不燃ごみ中のリチウム電池が処理工程で破損した場合の危険性について、処理工程を模擬した破断、衝撃試験を行ない危険性の評価を行った。試験結果から、湿潤不燃ごみ中で水にぬれたリチウム電池の危険性は、乾燥状態に比べ高くないことがわかった。
著者
沼崎 誠 小口 孝司
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.42-49, 1990-02-20 (Released:2016-11-25)

The present study tried to make a Japanese self-handicapping scale and examined the scale to measure the individual differences in self-handicapping behavior. Subjects were 428 university students. In Study 1, the self-handicapping scale (Jones et al., 1986) was translated into Japanese. The self-handicapping scale was analyzed, its items and structure were checked for reliability, and so on. As a result "SH23" that consists of 23 items was made "SH23" was negatively correlated with self-esteem scales as predicted. In Study 2, the predictive validity was confirmed. Also two factors that are the "can't" factor and the "wouldn't" factor which were extracted in Study 1 were contributed independently to predict self-handicapping behaviors.