著者
野村 恭代
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.70-81, 2012-11-30 (Released:2018-07-20)

現在,精神障害者の地域移行が進められつつあるが,その実現には多くの障壁が立ちはだかる.その代表的なもののひとつが,精神障害者施設への地域住民からの反対運動などの「施設コンフリクト」である.精神障害者の地域移行を実現するためには,これらの問題を解決しなければならないが,精神障害者施設と地域住民とのコンフリクトに関し,現在,どこの地域で問題が発生しているのか,発生数はどのくらいであるのかなど,その現状を知る術はない.そこで,本研究では,1980年代および1990年代に実施された全国調査を概観するとともに,2000年以降の実態に関し,全国調査を行うことにより明らかにする.さらに,施設コンフリクトが発生した施設はどのような対処をしたのか,また,対処の結果どのような反応がみられたのかを検証し,コンフリクト発生から合意形成に至るプロセス(手段方法,要因)と合意形成との関連性について分析を行う.
著者
小河 脩平 矢部 智宏 関根 泰
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.68-71, 2018-02-20 (Released:2019-02-01)
参考文献数
7

豊富に存在する天然ガスの主成分であるメタン,化石資源を燃焼した後に出る二酸化炭素,次世代の二次エネルギーとして期待される水素,これらをとりまく触媒技術の動向についてまとめる。
著者
江上 美幸
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.80-92, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
25

本論文では,銀座や竹下通りといった外国人に対する著名地区ではなく,裏路地に極めて多くのインバウンド旅行者が回遊する裏原宿に着目し,その誘引性を考察した。結果は,裏原宿への最も多い来街者は中国からの旅行者であり,裏原宿独特のストリートファッションブランドに誘引されて訪れていることが分かった。また,これらのブランドは,近年まで日本のファッションの主軸として語られてきた百貨店やSCを中心に販売するブランド群とは異なるものであり,当該エリアならではのカルチャーを有するユニークなブランド,そしてオリジナリティーや希少性ある商品が評価され,推奨の対象となっていることが,Kotler5Aモデルを修正したカスタマージャーニーにより示された。
著者
古村 哲夫
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.48, no.555, pp.265-273, 2000-04-05 (Released:2019-04-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
松田 安弘
出版者
日本看護教育学学会
雑誌
看護教育学研究 (ISSN:09176314)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-5, 2016-03-31 (Released:2016-08-01)
参考文献数
17

病院で働く看護職者は、多くの場合、チームで看護を提供している。看護系大学の急増、社会人入試制度の導入、男性看護師の増加、外国人看護師の受け入れ等、わが国の看護職の社会は年々変化し、看護チームは様々な背景を持つ看護職者によって構成されるようになった。このような変化に伴い、同一の背景を持つ多数者と、多数者とは異なる背景を持つ少数者が協働して質の高い看護を提供することが求められる。そのためには、まず、多数者、少数者の両者が相互に理解し合う必要がある。そこで、本稿は、少数者の経験の理解に資する研究成果を紹介し、看護職者として豊かに職業活動を展開していくための示唆を提示する。
著者
ペンロッド スティーブン D 黒沢 香
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.36-62, 2008 (Released:2017-06-02)

この講演ではまず、記録文書研究と心理学者が行った実験研究を用いて、目撃者がおかす誤りの深刻さについての最近の研究を検討する。そして、人物同一性に関する目撃証言における間違いの原因についての最近のよく知られた実験研究およびメタ分析研究を展望する。ここで報告する研究が焦点を当てたのは、犯罪、犯罪者および目撃者のさまざまな特徴、それから犯罪後に起きたこと、警察が用いる同一性証言の聴取手続き、および裁判官や陪審員による目撃証言の正確さの評価である。とくに注目したのは、逮捕写真集、似顔絵と合成写真、単独面通し、ラインナップなどの使用、および目撃者に対する教示などの手続きが、証言の正確さに与える影響についてである。最後に、無実の人を有罪にしないため、米国の心理学者たちが提案した手続き上の変更と、その提案への警察・司法当局の反応について、考察したい。
著者
山下 衛 田中 淳介 山下 雅知
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.7, pp.273-287, 1997-07-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
88

経口中毒物質の吸収を阻止することは中毒治療の基本原則である。活性炭投与,催吐剤投与,胃洗浄などの方法が古くから行われているが,いずれの方法が経口中毒物質吸収阻止に最も効果的であるかについては議論のあるところである。1980年代までは活性炭の投与方法やその吸着効果について十分検討されなかったことが,その原因のひとつである。この10年間に,活性炭の効果的な投与方法や投与量についてヒトを使って研究され,活性炭投与が中毒物質吸収阻止のために最も重要であり,そのなかでも頻回活性炭投与法が効果的であることが明らかになってきた。この論文では催吐や胃洗浄の方法を説明し,活性炭の中毒治療への重要性について述べる。
著者
岡倉 由三郎
出版者
ビクター
巻号頁・発行日
1930-06
著者
斎藤 清二 北 啓一朗 桜井 孝規
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.587-590, 1991-10-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

A long-term course of physical and psychological treatment on a patient with laxative abuse was described in this report. A 52-year-old woman was referred to our hospital because of chronic diarrhes, hypokaremia, and general weakness with unexplained cause. Laboratory data showed hypokaremia and high value of plasma renin, angiotensin and aldosterone, which indicated pseudo-Bartter syndrome. Multiple diagnostic procedures on digestive organs including endoscopy and barium study revealed no organic abnormalities. A room search showed a package of laxative tablets (containing bisacody1), and the diagnosis of surreptitious laxative abuse was confirmed. Guide lines of management for this patient were introduced as follows; (1) The target of treatment should not be diarrhea but constipation and abdominal distention. (2) Confrontation regarding laxative use should be avoided until good physician-patient relationship would develope. (3) Psychotherapy would be introduced in a regular shedule. The patient could stop laxative use during the first admission. After laxative withdrawal, severe constipation and idiopathic edema developed. Supportive treatment fron both physical and psychological aspect was continued throughout several admissions and at the outpatient clinic. The patient has been free of laxative and diuretics ato the time 5 years after initial admission. Diagnosis and treatment of laxative abuse are usually difficult because patients often deny their laxative use. Another difficulty is to manage water retention and constipation after withdrawal of laxative. Long-term energetic support from both somatic and mental aspect seem to be essential help the patient give up laxative abuse.
著者
深尾 篤嗣 高松 順太 小牧 元 呉 美枝 槙野 茂樹 小森 剛 宮内 昭 隈 寛二 花房 俊昭
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.643-652, 2002-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
26
被引用文献数
2

バセドウ病甲状腺機能亢進症において,患者の自我状態と,抑うつ傾向,アレキシサイミア傾向,および治療予後との関連について前向き検討を行った.対象は73例の本症患者で,抗甲状腺剤治療開始後euthyroidになった時点で,TEG(東大式エゴグラム)によって調査したAが50パーセンタイル以上のhighA群(44例),50パーセンタイル未満のlowA群(29例)に分け,治療開始3年目までの予後およびSDSやTAS-20の得点との関連を調べた.次いでFCがACより高いFC優位群(40例)と,逆のAC優位群(33例)に分けた2群でも同様に検討した.寛解率はlowA群(10%)がhighA群(41%)より有意に(p=0.0048)低かった.また,AC優位群(18%)がFC優位群(40%)より有意に(p=0.0432)低かった.SDSおよびTAS-20総得点は,いずれもAC優位群のほうがFC優位群に比して有意に(p=0,0001,p<0.0005)高かった.TAS-20の因子1および因子2もまたAC優位群のほうがFC優位群に比して有意に(p=0.0022,P<0.0001)高かった.以上の結果より,合理的判断力や感情表出力が低い自我状態のバセドウ病患者では,抑うつ傾向やアレキシサイミア傾向とも相まって,甲状腺機能亢進症が難治化する心身相関の存在が示唆された.
著者
今野 真二
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.17-38, 2023 (Released:2023-08-19)
参考文献数
6

中国語をあらわすための文字である漢字は,中国語に対しては「表語文字」として機能している。しかし日本語の文字化に際しては,漢字は「表意文字」として機能することが多い。本稿では,そのことを確認した上で,12世紀半ば頃に成立したと目されている3巻本『色葉字類抄』,室町期に成ったと目されている『節用集』,江戸時代に出版された『書言字考節用集』を具体的に観察し,同一の漢字列が和語も漢語も文字化しているという状況を整理しながら示した。こうしたことをふまえて,明治期に整版本の草双紙として出版されている『賞集花之庭木戸』と,同一のタイトルで,「ボール表紙本」として活字で印刷されて出版されているテキストとを対照し,漢字列を軸として,連合関係が形成されていることを指摘した。そうであれば,漢字列は非音声的に,連合関係を形成していることになり,そのことは日本語における特徴といってよいと考える。
著者
西城 卓也 菊川 誠
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.133-141, 2013-06-25 (Released:2015-07-06)
参考文献数
36
被引用文献数
11

●教授法や学習方法の選択においては,教育目標の分類との整合性や将来目指すべき学習者像との一貫性を図る必要がある.●目指す学習者像として,成人として主体性のある学習者,自己主導的学習者,成熟したメタ認知を持つ学習者,省察的実践家,協同的学習者がある.●海外の教育理論を応用するにあたっては,文化的差異を考慮するとともに,自らの柔軟な学習観と順応性にも焦点を置く.●講義・小グループ討議・一対一教育が学習方法の基本である.それぞれの長短所を考慮した組み合わせを通じて学習方略が構成でき,唯一無二の学習方略はない.●学習者は,より多様な学習方法への暴露と,学びに適した学習環境での学びを好む.
著者
れいのるず秋葉 かつえ
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.178-195, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
18

明治維新は、社会組織の基盤をひっくり返すような革命的な変革であった。階層や職業によって人がタテに配置されその上下関係の価値だけがことさらに強調される歴史のなかで発達した言語は、自由と平等の民主主義を理念とする欧米型の近代社会では機能しない。英語を国語にしようという考えが持ち出されるほど、日本語は混乱した。日本語をどうするか? それが維新の子供たち―維新を担った武士たちの子供の世代に属する文学者たち―にとっての第一の課題であった。欧米のような近代文学の伝統をつくりあげるために、言文一致運動がはじまった。幕末の勤王運動の思想的リーダー、吉田松陰を維新の子供の一人夏目漱石と比較すると、連帯原理の自称詞「僕」が、漱石時代の自称詞の主流になり、そこを定点に「言文一致体」が出来上がったことがわかる。Auto/Biographical Researchの考え方にしたがって漱石の書簡の文体を観察していくと、漱石がイギリス留学に際して「言文一致の会話体」を宣言し、実践した事実が見えてくる。

3 0 0 0 OA 龍涎香の香り

著者
駒木 亮一
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.141-148, 2013-03-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
6

アンバーグリス(龍涎香)は,フランス語の「灰色のアンバー」という言葉に由来する.昔から薬として香水の素材として利用されてきた.その由来は,近年になるまで不明であった.20世紀初頭に烏賊の嘴が含まれていたことが分かり,マッコウクジラPhyseter macrocephalusの体内に生じた病的なものであるらしいことが知られた.このアンバーグリスを分析すると,アンブレインとエピコプロステノールの成分が含有されていた.香水原料としは,エチルアルコールに溶解させ少なくとも6ヶ月以上熟成させ使用する.このアルコールチンキにはテトララブダンオキサイドやアンブレインという香気成分が生成している.
著者
庄垣内 正弘
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.124, pp.1-36, 2003-11-25 (Released:2007-10-23)
参考文献数
21

The author found fragments of Chinese texts in Uighur script at the St. Petersburg Branch for Oriental Studies of Russian Academy of Sciences and identified their corresponding Chinese originals. The phonological system of the Chinese written in Uighur is basically the same as that of the northwestern dialects of Tang and Five Dynasties. Although the fragments were composed later during the period of Yuan Dynasty, its phonological system is undoubtedly quite different from that of colloquial Chinese used in Yuan Dynasty. As a result of detailed examination of the texts, it has become clear that the phonological system behind the texts is well reflected by the Uighur inherited reading of Chinese characters similar to the Japanese Ondoku system, i.e., Chinese reading of Chinese characters.On the other hand, it is occasionally observed that Chinese characters are sporadically inserted between Uighur lines in the above texts. These inserted Chinese characters must have been read in Uighur. These Chinese characters appear not only as words, but also as phrases and sentences. An interesting fact is that in some bilingual texts such as ″Thousand Character Essay″the Uighur inherited, reading of Chinese is followed by its corresponding Uighur translation. Furthermore, in other texts represented by ″Abhidharmakosabhasya-tika Tattvartha″, it is recorded how Uighur speakers read Chinese texts in Uighur pronunciation, translating the contents into the Uighur language. Taking these facts into consideration, a conclusion is inevitable that Uighurs had their own way of reading Chinese texts which is typologically comparable to the Japanese Kundoku system, i.e., Japanese reading of Chinese characters.Japanese is known as a language in which Ondoku and Kundoku are well developed. It is extremely difficult to understand the contents of Chinese texts merely by listening to Ondoku reading, where a large number of homonyms are created by the loss of many phonological distinctions. Japanese Buddhist monks recite Chinese Buddhist texts following the Ondoku system, but at the same time they understand the contents by Kundoku reading utilizing ideographic nature of Chinese characters. The author would like to argue that Uighur monks of the Yuan dynasty period employed the same kind of method when reciting Chinese texts.