著者
船橋 利理 駒井 則彦 小倉 光博 桑田 俊和 中井 三量 辻 直樹
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.17, no.10, pp.917-923, 1989-10-10

I.はじめに 1982年,われわれは遷延性意識障害患者に対して意識の回復を目的に頸髄硬膜外刺激を試み著効を得たことを報告した7).その後,諸施設で追試が行われ,有効例がつぎつぎと報告5,12)されるようになってきた.しかし,いかなる部位の障害による遷延性意識障害が本法の適応になるかに関しては未だ議論のあるところである. 今回,大脳,脳幹など種々の障害による遷延性意識障害患者に対して慢性的に脊髄硬膜外刺激(Spinal CordStimulation以下SCSと略記する)を加え,治療効果を検討したので報告するとともに,本法の適応に関してもわれわれの考えを述べる.
著者
高橋 正雄
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.25, no.12, pp.1398, 1997-12-10

障害の受容を妨げる要因の一つに,障害者自身や家族の偏見という問題力がある.障害に対する誤解や偏見に満ちた社会のなかで暮らしている本人や家族は,しばしば,自らも障害に対する誤解や偏見を共有しているため,いざ自分が当事者になった時の混乱や絶望が大きいのである.しかし,1950年に発表されたパール・バックの『母よ嘆くなかれ』(伊藤隆二訳,法政大学出版局)には,当事者がそうした先入観を乗り越えて,自らの運命を受け入れていく過程が描かれている. 米国の宣教師の家に生まれたパール・バックは,元々「愚かなことや,のろまなことを黙って見ていられない性質」だった.しかし,精神遅滞の娘を養育する過程で,パール・バックは「娘の魂もまた,その魂として最大限に成長する権利をもって」おり,「人間の精神はすべて尊敬に値すること」を知る.彼女は,「人はすべて人間として平等であること,また人はみな人間として同じ権利をもっていることをはっきり教えてくれたのは,他ならぬわたしの娘でした.(中略)もしわたしがこのことを学ぶ機会を得られなかったならば,わたしはきっと自分より能力の低い人に我慢できない,あの傲慢な態度をもちつづけていたにちがいありません」と語るのである.
著者
水関 隆也
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.167-173, 1994-02-25

抄録:反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)の治療は理学療法から神経ブロックまで多種多様である.その発生には外傷後に生じる末梢神経系の血管調節系の不均衡と,交感神経系の過緊張が深く関与しており,浮腫や痛みを生ずるとされている.一方,凍瘡(しもやけ)の発症には寒冷侵襲に対する細動静脈の拡張収縮の不均衡,すなわち交感神経系の機能低下がその原因の一つとされている.両者とも,血管調節系の異常という点で共通点がある.地方によっては古くからしもやけの治療としてよく用いられていた温冷交代浴に着目,RSDの治療に試みた,その結果,23例中,19例に満足すべき除痛効果を得れた.RSDの早期認識,早期治療開始が良結果につながるという一般的法則を覆すものではないが,本法は安全で簡便な治療法で副作用はないのでRSDの治療の第一選択として勧められる.
著者
安藤 努
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.1137, 2018-12-15

本書を手にし,数ページに目を通した後,時を忘れ一気に最後まで読んだ.というより読めたというほうが正しい.それは読み進むに連れ私のこれまでの「体幹」に対するモヤモヤとしたものを一気に解体し再編し,そして確信をもたらすマイルストーンとなったからである. 冒頭部「トルソ」で,体幹は静止と動きのアンビバレンスであり,その両価性の謎はゲシュタルトあるいは運動モルフォロギーであると述べ,魅力的なプロローグとして本書の核心部分へ誘う.
著者
村尾 和俊
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.155-157, 2016-04-10

summary英国では,2014年に疣贅治療のガイドラインが発表された.疣贅にはさまざまな治療が行われているものの,有効性を示すエビデンスレベルの高い研究は多くはない.英国のガイドラインでは,最も推奨される疣贅治療はサリチル酸製剤であり,次いで凍結療法となっている.そして,これらが無効ならブレオマイシン局注や接触免疫療法,5-フルオロウラシルクリームなどを考慮する,ということになる.本稿では,この英国における疣贅治療のガイドラインについて概説した.
著者
川崎 敏生 荒川 芳輝 杉野 寿哉 光原 崇文 舟木 健史 菊池 隆幸 小柳 正臣 吉田 和道 国枝 武治 高橋 淳C 高木 康志 宮本 享
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1005-1010, 2015-11-10

Ⅰ.はじめに もやもや病は,両側内頚動脈終末部に慢性進行性の狭窄を生じ,代償的に脳底部に異常血管網が形成される原因不明の疾患である11).一方,川崎病は乳児および幼児において原因不明の系統的血管炎を主体とする疾患であり6),活動期に稀ながら脳梗塞を合併する4,7,12,15,17).川崎病活動期のもやもや病合併の報告はないが,川崎病罹患歴のあるもやもや病の報告がある1,3,8,9,13,14).今回,川崎病の既往があるもやもや病3例を経験したので,文献的考察を交えて報告する.
著者
三羽 兼義 萩原 三夫 高橋 堅太郞
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.3, no.12, pp.474-476, 1948-12-20

緒言 重篤なる瓦斯壞疽症,身體各部の化膿炎衝,或は廣汎なる火傷等に續發する全身中毒症状の發現に際して,私共1)は積極的に病竈部よりの主幹靜脈を結紮して甚だ滿足すべき結果を得,既に屡々報告して批判を乞ふた。 茲に報告する症例は,濃硫酸の爆發によつて殆ど全身に亙る腐蝕性熱傷を蒙り,最初から豫後不良を想はしめた症例である。果して受傷の翌朝から全身中毒症状が漸次甚しくなり。午後になつてからは,高熱と共に尿閉,意識溷濁,譫語等の重篤症状が相次で起り,脈壓遽かに衰え,橈骨動脈の搏動を辛うじて感ずる程度となつた。これに對し輸血,その他の強心法を試みるも殆ど見るべき效を奏しなくなつたので,腐蝕程度の最も高度である全下肢よりの毒素吸收を遮斷する目的を以て,兩側鼠蹊靱帶直下に於て大薔薇靜脈を含む股靜脈根部を完全結紮することによりて,奇蹟的に病勢を好轉せしめ得たものである。爾後の經過は極めて順調となり,生命の危險を脱したのみならず,創傷治癒の經過も亦極めて良好となつた。
著者
山田 一郞
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.7, no.8, pp.415-416, 1952-08-20

体表の80%以上の火傷で10日間の生存中種々の興味ある経過をとつた例を報告する. 症例.神○正○ 男子.花火師 40歳 昭和26年9月15日仕掛花火及び打上げ花火を自宅居間に於て点檢中誤つて之に引火して爆発し消火に務めた.当時衣服は丸首シャツと猿股のみの着用として全身に火傷を受けた.他に3歳女子(收容1時間後死亡)妻弟等6名も同時に火傷を受けた.火傷後数時間を経て来院したものである.
著者
中泉 行正
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.19, no.8, pp.1057-1063, 1965-08-15

世にシーボルト事件として医師土生玄碩及天文方高橋作左衛門両氏に関する事件は有名なものである。たまたま医史学会長小川鼎三博士が見えられ、談シーボルト事件の二三の事に及び、呉秀三先生の名著「シーボルト先生其生涯及功業」という大冊を見ていた処、当所所蔵の前記土生、高橋両氏等の裁判の判決即当時の申渡書の記載が異なる点があり、又必ずしも全文をつたえていないという事に気付き、当所所蔵の天保元年(一八三〇)庚寅六月に下山要人氏により書かれた実秘録と題する申渡書文書と相違がある為にこれを充分に解読せんとしたが、仲々難解な為、医史学会同人中最も故実に通ずる羽倉敬尚翁をわずらわす事となり同氏の研究解読により次にかかぐる様になつた。これが本文の成立で呉先生の御本との比較等は末尾に付記しておいた。研学の方は本書を通読されると共に必ず呉先生の本をも併読される事をお願いする。
著者
岡田 慎一郎
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.278-279, 2010-03-25

抱っこで肩を痛めてしまったお母さんから,「どうすれば肩を痛めないで抱っこができますか」と質問されました。そこで答えたのは「腕をもっと長く使いましょう」ということでした。そのお母さんはきょとんとしていました。腕の長さに限りはあるし,突然伸びるものでもないのですから当然でしょう。 実は,腕は思っている以上に「伸びる」のです。通常の腕の使い方では,腕本来の長さが使い切れていないことが多くあります。今回は腕本来の長さを十分に引き出し,肩や背中に負担がかかりにくい腕の使い方を紹介します。
著者
相田 潤 近藤 克則
出版者
医学書院
雑誌
保健師ジャーナル (ISSN:13488333)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.1038-1043, 2007-11-10

歯科疾患の社会への負担は,一般に思われているよりも大きい。おもな生活習慣病の国民医療費(2004年度)の金額1)をみると,悪性新生物や糖尿病の医療費はそれぞれ2兆3306億円,1兆1168億円に上る。しかしながら,歯科疾患の医療費(2兆5377億円)は,それらをも上回っている。がんや糖尿病と比較して生命に関わる重篤度は低いが,罹患率が非常に高いため社会にとっては大きな負担となっている。 この歯科疾患にも,社会経済的あるいは地域的な格差がある。そして,科学的根拠があり,健康格差の抑制効果が期待できる予防方法もすでに確立している。 そこで今回は「『健康格差社会』への処方箋―番外編」として,「歯科疾患における健康格差とその対策」を取り上げる。ここでは歯科疾患のなかでも,「う蝕(虫歯)」を中心に話を進めていく。その理由は,歯が抜ける原因を調べた最新の調査結果2)で,う蝕とその続発症による抜歯が43.6%と,歯周病の37.1%よりも多いからである。
著者
山本 圭一郎 伊吹 友秀
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.471-475, 2017-05-10

●ヒト受精胚を対象とするゲノム編集技術利用には,基礎研究,治療を目的とする臨床応用,エンハンスメント的な臨床応用の各段階で倫理的な課題がありうる. ●基礎研究の段階では,ゲノム編集研究に用いるヒト受精胚の入手のあり方,余剰胚利用の是非,ヒト受精胚への人為的操作などが倫理的課題となる. ●治療およびエンハンスメントの段階においては,安全性や有効性,責任の所在,優生思想ないし優生学,諸々の格差や差別の助長,世代や地域を越えた不可逆的な影響などに関する倫理的課題がありうると予想される.
著者
笹川 正二 古谷 達孝 佐藤 允康 花井 定彦 小田切 久夫 石原 文之 千木良 吉睦 鳥居 ユキ
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚泌尿器科 (ISSN:21886156)
巻号頁・発行日
vol.13, no.12, pp.1287-1291, 1959-11-01

ハイドロコーチゾン軟膏が急性及び慢性湿疹,小児湿疹,アトピー性皮膚炎,接触皮膚炎等に優れた効果を示すことは周知の事実で,現在盛んに使われているが,これら疾患は何れも掻痒がはげしく,掻破により二次的化膿菌感染を伴い易く,殊に夏期は発汗と相侯つて膿痂疹性湿疹の状態を見ることは屡々である。又一方貨幣状湿疹,感染性湿疹様皮膚炎,耳後間擦疹,自家感作性皮膚炎乃至播種状細菌疹等は湿疹或はその類症でありながらブドー状球菌又は連鎖状球菌がその発生に原因的役割を演ずると解され,これら何れの場合にもハイドロコーチゾンの抗炎症作用の他に殺菌剤として抗生物質を加えることによつて治療の完壁が期待されるところである。かかる目的にかなつたものとして今回興和化学より強力レスタミンコーチゾンコーワ軟膏が新たにつくられ,提供され東大分院皮膚科外来患者に使用したので,その治療成績について報告する。 本軟膏の組成はその1g中に 酢酸ハイドロコーチゾン 10.0mg
著者
土屋 ふとし 滝沢 明利 岩崎 晧
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.299-300, 2011-04-05

Q 精巣外傷の症例。出血はかなりの程度だったようだが,今は止まっている。保存的に様子をみてよいか。 [1]概 説 精巣外傷のうち最も多いのは挫傷である。受傷原因としては,喧嘩,スポーツ外傷,交通事故,落下事故などがある。 精索血管(精巣動脈,蔓状静脈叢など),陰囊に分布する血管が損傷することにより陰囊内出血をきたす。陰囊皮膚は薄く伸縮性があるため血腫,浮腫により大きく腫脹する。また出血が下腹部,陰茎,肛門にまで及んで変色を伴う場合もある。鈍的な精巣外傷は通常,局所の激しい疼痛,吐き気,嘔吐,下腹部痛などを伴いショック症状をきたす場合もある。 大きな外力が働いたり,恥骨,大腿骨に強く押しつけられた場合に,精巣白膜が損傷して,精巣実質が脱出した精巣破裂に至る。精巣の鈍的外傷の約48%に破裂が起こるとされ1),破裂後3日以内が手術のゴールデンタイムとする報告は多い。受傷後3日以内に手術を行うと精巣温存率は90%であるが,3日を過ぎると45%に激減するとの報告がある2)。 精巣破裂の診断に関して,超音波検査は簡便で損傷の概要をつかむには適している。精巣の輪郭の不整像,白膜の連続性の消失,実質内の低エコー領域の存在などを観察する。超音波検査の精巣破裂に対する診断の感度は64%,特異度は75%とする報告がある3)。MRI検査はT2強調画像もしくは造影T1強調画像が白膜の描出に優れている。MRI検査は超音波検査よりも高い診断率で再現性も高いが,検査時間が長く診断までの時間を要する。 血腫が存在すると画像的診断が難しくなり,精巣破裂は80%で血腫を伴うことから4),血腫の存在のみでも早期の手術が好ましいとの意見もある5)。血腫の大きさにより手術適応を決めるという意見もあるが,エビデンスはまだない。 血腫を伴う精巣破裂を保存的治療で経過観察することにより,感染,壊死,精巣の萎縮,精子形成能や内分泌機能の低下などの危険性が指摘されている。保存的治療により経過観察が可能であった報告例も散見されるが,いずれもretrospectiveなものにすぎず,その適応については決まったものはない。
著者
白土 修 遠藤 達矢
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.28, no.11, pp.957-962, 2015-11-25

はじめに 首下がり症候群(dropped head syndrome:DHS)は,頸部伸筋群の筋力低下が主因である頸部の垂れ下がり症状(chin-on-chest deformity)が発生する後弯変形の特殊病態である1).症状としては,飲み込みの悪さからくる摂食困難や洗面の不自由があり,頸部痛を訴える場合も多い.前方注視困難により歩行に支障が生じるなど日常生活にさまざまな困難をきたし,QOLを大きく低下させる. DHSに関する報告は,1886年Gowersの重症筋無力症例が初めてである.原因疾患として,運動ニューロン疾患,多発性筋炎,筋ジストロフィー,多系統萎縮症,パーキンソン症候群,頸椎症,Machado-Joseph病,甲状腺機能低下症,進行性核上性麻痺,脳梗塞など多岐にわたる5,9,17,21).そのため,DHSを診察する場合,その鑑別を行うことが必要である.背景に治療可能な種々の疾患が存在することを考慮して専門医の判断を仰ぐことも必要である. 原因となる基礎疾患がある場合,その治療が必須である.特に神経内科的疾患の場合,内科的コントロールがとれていることが重要である.外科的介入も報告がみられているが,効果は報告によってさまざまであり,統一した結論に至っていない22).頸椎症によるDHSに対しては,手術療法が有効であったという報告も散見されるが,限界があるという意見も多い.しかし,手術による頸椎alignmentや頸部不安定性の改善は,患者の生活の質の向上に有益である場合もある4,16,18,24). 保存療法・観血的療法のいずれも,リハビリテーション(以下,リハと略す)がADLやQOL向上,姿勢改善に有効である場合がある.本稿では,DHSの報告例を再検討し,病態や姿勢の特徴を踏まえリハの可能性について述べる.
著者
倉恒 弘彦
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.11-18, 2018-01-01

本稿では,プライマリ・ケアを担っている医療機関において利用されることを目的に厚生労働科学研究班より2016年3月に改訂された筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)臨床診断基準を紹介するとともに,ME/CFS診療が行われている代表的な医療機関において現在実施されている治療法やその予後についても解説する。
著者
志村 哲祥 田中 倫子 岬 昇平 杉浦 航 大野 浩太郎 林田 泰斗 駒田 陽子 高江洲 義和 古井 祐司 井上 猛
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.783-791, 2018-07-15

抄録 2015年から義務化され運用されているストレスチェックでは,標準的な問診票では「仕事のストレス要因」「周囲のサポート」「心身のストレス反応」を測定し,これに基づいて産業医面談の対象となる「高ストレス者」を抽出している。一方で,ヒトの心身に影響を与えるのは職業上の要因だけでなく,特に睡眠は,さまざまな経路を介して心身の健康に影響を与えることが知られており,業務以外のストレス要因として重要である。本研究で,睡眠とストレスチェックの各指標の関連を分析したところ,睡眠は心身のストレス反応に対して強い影響を与えており,仕事のストレスと同等かそれ以上である可能性も示唆された。

2 0 0 0 代償月経

著者
玉田 太朗
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.892-893, 1973-11-10

I.症状 思春期あるいは性成熟期の女性にみられる,子宮以外の場所からの周期的な出血と定義できるが,これは月経出血とほぼ同時におこるもののほかに,月経出血をともなわないが周期的に1ヵ月に1回くらいの割合でおこる性器外出血の意味に用いられていることもある。 しかし診断上のまぎらわしさをさけるためには前者のみを代償月経とよぶべきであろう。
著者
川口 義樹 石 志紘 島田 敦 大石 崇 磯部 陽 松本 純夫
出版者
日本内視鏡外科学会
雑誌
日本内視鏡外科学会雑誌 (ISSN:13446703)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.215-219, 2012-04-15

◆要旨:慢性腹痛の原因と考えられた移動性盲腸に対して腹腔鏡下盲腸固定術を行い良好な結果を得たので,報告する.患者は26歳,女性.右下腹部痛を主訴に受診したが,CT検査,上部内視鏡検査,大腸内視鏡検査では特に異常を認めなかった.小腸造影で移動性盲腸と診断され,腹痛の原因である可能性が高いと考えられた.その後も症状が持続,増悪したため,インフォームドコンセントのうえで腹腔鏡下盲腸固定術を施行したところ,腹痛は消失しQOLも改善した.移動性盲腸で自験例のように腹痛を伴い,内科的治療が困難な場合には腹腔鏡下盲腸固定術は低侵襲かつ有効な術式と思われた.