著者
立平 進
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.33-42, 2004-01-31

今から二千数百年前、中国大陸から直接、あるいは朝鮮半島を経由して日本列島にかなりの数の人々が渡来して来た。弥生時代が始まる頃のことである。日本文化の起源をこの時期に求める研究者は多く、それ以前の縄文文化とどのように日本文化をつくりあげてきたのか、根強い論争が続いでいる。いろいろな分野の研究者が諸説を展開して、夢とロマンに充ち溢れた研究領域ともいえる。筆者も、民俗学・民具学の研究を志す者として、歴史文化学の学際的研究から親近感をもって眺めてきた。近年、東シナ海の海流を知ることにより、「文化を運ぶ海流」として、九州が東アジアでどのような立場にあったのか、を考えている。本稿では、いくつかの実例を示しながら、文化の伝播について考えてみたのであるが、主体は徐福の東渡について取り上げた。日本国内には、徐福にまつわる伝説の地が30箇所以上もあるといわれ、佐賀市金立の徐福長寿館では、日本各地の徐福伝説の地として、21箇所を表示している。徐福の東渡については、中国の歴史書『史記』に記されている。中国思想史研究の福永光司によると徐福の東渡は歴史的な事実であると断言しているのである。さらに「徐福の出航は、文献実証学の立場から高い信憑性を持つ史書の記述によって検討考察するかぎり、その時期はわが国における弥生式文化の開始時期とほぼ重なり合う前三世紀の頃-正確には秦の始皇帝の即位二十八年目(B.C.219)後の数年間-であり、」と記す。これを東シナ海の海流の動きから見ると、どのような解釈ができるのか、ということを試みたものである。その結果、考古学的な成果と考え合わせて、ずれが生じていることも確認できるのであるが、伝説に歴史と考古学的な成果とを取り混ぜての論考で、学際的な試みとして、理解を得たいとするものである。
著者
福田 真二
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.317-332, 2014 (Released:2015-11-19)
参考文献数
88
被引用文献数
3 1

特異的言語障害の症状の最も顕著な特徴は、発話時にみられる屈折接辞や機能語などの文法形態素の脱落である。この文法障害の発現機構はまだ解明されておらず、さまざまな仮説が提唱されている。本稿では、これらの仮説の中で音韻処理障害仮説に属する2つの説を検証し、その妥当性について検討した。具体的には、1)急速な音の変化を伴う音の弁別過程の問題、2)音韻ワーキングメモリ・音韻短期記憶の能力の低下、で文法障害の諸症状を論理的に説明することができるのか検証した。今後の課題としては、横断的な研究をする場合には、言語特徴の異なるサブタイプの存在に十分に留意して適切に対象児を選択する、縦断的な研究をする場合には、対象児の年齢層に留意する、ことが重要であると指摘した。また、日本語において特異的言語障害の文法障害の言語特徴を明らかにするにあたって、言語学的な視点から今後の研究の方向性について提言をするとともに研究手法上の留意する点を指摘した。
著者
鈴木 敦 藤岡 和正 桑原 平吉 高崎 利夫
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.62, no.595, pp.1172-1177, 1996-03-25 (Released:2008-03-28)
参考文献数
3

This study describes the transient temperature distribution in a cooling apparatus for high-power semiconductor devices used to drive motors of electric rolling stocks. The cooling apparatus is composed of heat pipes. In the model for simulation, we substituted solid elements for heat pipes, and determined their thermal properties by experiment. Consequently, the heat transfer rate of heat pipes can be obtained by a heat conduction analysis. Calculations show that when heat generation in the device changes, the temperature of cooling apparatus changes more slowly than that of the devices. A comparison between calculations and experiments confirms the accuracy of the modeling and prediction method.
著者
橋本 翔 塩見 真衣
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成30年度大会(名古屋)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.25-28, 2018 (Released:2019-10-30)

クリーン環境への入室前に行う除塵対策として、エアシャワー、粘着ローラーが広く使用されている。これらの対策について、静電気により無塵衣に付着している粉じんの除塵効果について実験した。また、イオンによる除電との併用による除塵効果についても実験した。 結果として、エアシャワー、粘着ローラーはそれぞれ44.6%、67.5%の除去率であったが、これらの対策の前にイオンによる除電を行うことで、トータルで70~80%近くまで除去効果があがることが確認できた。
著者
蔦谷 大輔
出版者
弘前大学國史研究会
雑誌
弘前大学國史研究 (ISSN:02874318)
巻号頁・発行日
no.125, pp.31-33, 2008-10-30
著者
Seinen Chow Katsuyuki Hamasaki Kooichi Konishi Takashi Yanagimoto Ryota Wagatsuma Haruko Takeyama
出版者
Carcinological Society of Japan
雑誌
Crustacean Research (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.31-48, 2023-02-18 (Released:2023-02-18)
参考文献数
69
被引用文献数
1

Lithodoid and paguroid crabs are morphologically assigned to the superfamilies Lithodoidea and Paguroidea, respectively. Molecular analyses, however, have revealed closer genetic proximity of the lithodoid crabs to the family Paguridae than to other families of Paguroidea, provoking a long debate. We investigated the length and nucleotide sequence variation of the nuclear ribosomal DNA internal transcribed spacer 1 (ITS1) in lithodoid and paguroid species. Uniquely short ITS1s (215–253 bp) were observed in seven lithodoid species. In contrast, ITS1 length varied considerably in 13 paguroid species belonging to the families Coenobitidae, Diogenidae, and Paguridae. Short-to-long ITS1s (238–1090 bp) were observed in five species of the family Paguridae, and medium to long ITS1s (573–1166 bp) were observed in eight species of the families Coenobitidae and Diogenidae. Considerably different size ITS1s coexisted in individual paguroid species. Nucleotide sequence analysis indicated that the short ITS1s observed in the family Paguridae were descendants of longer ITS1s and were homologous to the short ITS1 of lithodoid species. ITS1 sequences of the families Coenobitidae and Diogenidae shared no nucleotide elements with lithodoid and pagurid species. These molecular signals indicate that the short ITS1 in pagurid lineage was passed on to lithodoid lineage, strongly supporting the “hermit-to-king” crab hypothesis.
著者
樋口 太重 宮坂 典利
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.427-432, 2013 (Released:2014-02-07)
著者
大田 伊久雄
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.88-98, 2011 (Released:2011-06-22)
参考文献数
15

1947年にJournal of Forestry誌に掲載されたリチャード・ヴァーネイ氏の論文「日本における林務官の地位」は, 終戦後間もないわが国の国有林野の現状を鋭く捉えている。そこで本論文では, ヴァーネイ論文の邦訳を中心に, そこから学び取れる問題点を考察した。彼の論文では, 林野行政における特権的高級官僚制度こそが最大の問題点であるとの指摘がなされているが, それはわが国の林野行政にとっては現代にも相通じる警鐘であった。
著者
鄭 惠先
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.82-92, 2005-09

本研究の目的は,日本語と韓国語の「役割語」を対照することによって,よりリアルな日韓・韓日翻訳に役立てることである.本稿では,漫画を分析対象とし,一つ目に,意識調査で見られる日本語母語話者と韓国語母語話者の意識の差について,二つ目に,対訳作品で見られる両言語の役割語の相違点について考察した.その結果,つぎの7点が明らかになった,1)韓国語に比べ日本語のほうに役割語としての文末形式が発達している.2)日本語母語話者の場合,訳本では日本語の役割語の知識が十分生かせない.3)韓国語母語話者の場合,役割語への刷り込みが弱く,翻訳による影響を強く受けない.4)対訳作品から受けるイメージは,両言語の間で必ず一致するものではない.5)日本語役割語では性別的な特徴,韓国語役割語では年齢的な特徴が表れやすい.6)日本語でも韓国語でも,方言は人物像を連想する重要な指標となる.7)時代を連想する言語形式は訳本の中で現代風に訳される傾向が多い.
著者
松下 和彦 松本 浩 鳥居 良昭 仁木 久照
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.327-332, 2018-04-25

黄色ブドウ球菌は骨芽細胞内に侵入できる! これまで,黄色ブドウ球菌は骨基質やインプラントの表面に定着してバイオフィルムを形成するなど,宿主(ヒト)の細胞外のみで増殖できる細胞外寄生菌とされてきた1).しかし,黄色ブドウ球菌はヒトの細胞内でも増殖できる細胞内寄生菌でもあるとのin vitroの報告が散見され,骨芽細胞内にも侵入し増殖することが確認されている1-4).一方,セファゾリン(CEZ)などのβ-ラクタム系薬は,細菌の細胞壁の合成を阻害することで抗菌作用を発揮する.したがって,ヒトの細胞は細胞壁がないため,β-ラクタム系薬はヒトの細胞には作用せず安全性が高いとされてきた.その反面,β-ラクタム系薬は細胞壁のないヒト細胞内への移行が不良で,細胞内寄生菌に対する抗菌活性は劣るとされている5).黄色ブドウ球菌が骨芽細胞内に寄生できるとすると,黄色ブドウ球菌による骨感染症では骨芽細胞内移行性がよい抗菌薬を選択する必要がある.骨芽細胞内への移行性を考慮した抗菌薬の選択について解説する.
著者
上出 健 樋山 恭助
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.29, no.71, pp.286-291, 2023-02-20 (Released:2023-02-20)
参考文献数
7

In energy saving operation of buildings, it is important to understand the energy consumption characteristics of university campuses in order to formulate specific energy saving plans. Due to COVID-19 expansion, it is assumed that infection prevention measures such as behavior change of students and ventilation are affecting the energy consumption characteristics. It is necessary to understand the energy consumption characteristics that have changed from the conventional ones. In this study, we analyzed energy consumption data on Meiji university campuses for the three years from 2019 to 2021. we clarify the energy consumption characteristics that have changed due to COVID-19 expansion.
著者
下川 瑞貴 江頭 孝幸 野口 大介
出版者
Japan Society for Science Education
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.127-130, 2023-02-23 (Released:2023-02-21)
参考文献数
17

「炭酸アンモニウム」は不安定な物質であり,市販品は炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムの混合物とされる.炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムには結晶構造が知られており,最近では炭酸アンモニウムについても一水和物の結晶構造が報告された.こうした結晶構造データを効果的に用いれば,高校化学の無機物質分野におけるより魅力的な授業を展開できるかもしれない.すなわち,簡易型アンモニアソーダ法の生徒実験を湯煎および氷冷による二通りで実施すれば,高温と低温で生じる違いを事前に予想させつつ,観察に目的意識を持たせることができる.そして反応温度により生成物が異なることに気づかせ,思考を深めさせることも期待できる.結晶構造を立体的に表示すれば,視覚的理解に基づくさらに発展的な学習も可能だろう.

3 0 0 0 OA 日本行政法

著者
美濃部達吉 著
出版者
有斐閣
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1940

3 0 0 0 OA 会津藩庁記録

著者
岩崎英重 編
出版者
日本史籍協会
巻号頁・発行日
vol.文久3年 第1, 1926