著者
髙垣 謙二
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.9, pp.1739-1744, 2014-08-20 (Released:2014-08-22)
参考文献数
22

日本紅斑熱とつつが虫病は,わが国に常在する代表的なリケッチア症であり,ダニに吸着された後,一定の潜伏期を経て,突然の発熱,悪寒戦慄,頭痛などで発症する.「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)では,ともに四類感染症全数把握の疾患として分類されている.発熱後数日以内に無症候性紅斑を生じるが,つつが虫病の発疹では躯幹に多い傾向があり,日本紅斑熱では四肢末梢に多く,出血斑を伴いやすい.いずれも,刺し口は認められるが日本紅斑熱のそれは小さい.早期に治療を開始すると良く反応することが知られているが,いずれの疾患も確定診断が手軽で確実にできるとはいえない状況である.臨床医は,発疹を有する熱性疾患の一つにリケッチア症もあるということを常に念頭において診療をし,疑い症例の確定診断のための手順と治療方法や,治療開始のタイミングをあらかじめ承知しておくことが大切である.
著者
吉田満著
出版者
文藝春秋
巻号頁・発行日
1980
著者
生野 公貴 北別府 慎介 梛野 浩司 森本 茂 松尾 篤 庄本 康治
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.485-491, 2010-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,脳卒中患者に対する1時間の末梢神経電気刺激(PSS)と課題指向型練習の組み合わせが上肢機能に与える影響を検討することである。【方法】脳卒中患者3名をベースライン日数を変化させた3種のABデザインプロトコルに無作為に割り付け,ベースライン期として偽刺激(Sham)治療,操作導入期としてPSS治療を実施した。1時間のSham治療およびPSS治療後に課題指向型練習としてBox and Block Test(BBT)を20回行い,練習時の平均BBTスコアの変化を調査した。さらに,PSS治療後24時間後にBBTを再評価した。【結果】全症例Sham治療後と比較して,PSS治療後に平均BBTスコアが改善傾向を示した {症例1:+4.9(p < ;0.05),症例2:+3.1,症例3:+5.7(p < 0.05)}。全症例の24時間後のBBTスコアが維持されていた。また,PSSによる有害事象はなく,PSSの受け入れは良好であった。【結論】1時間のPSSは課題指向型練習の効果を促進させ,24時間後もその効果が維持される可能性がある。
著者
山田 佳太
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.348-348, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
2

免疫グロブリンIgGとFc受容体(FcR;免疫グロブリンFc部位に対する受容体)の相互作用は,免疫応答を活性化あるいは抑制するシグナルを免疫担当細胞に伝える.IgG-FcRの相互作用の調節には,IgGのFc部におけるアスパラギン結合型糖鎖(N-結合型糖鎖)が関与している.したがって,同じ抗原を認識するIgGであっても,Fc部に存在するN-結合型糖鎖の構造により結合するFcRの分子種が変わるため,その後の免疫応答に与える影響が異なる.以上のことより,アレルギーや自己免疫疾患等の免疫異常や抗体医薬品等の作用機構を理解する上で,抗体Fc部のN-結合型糖鎖の構造が注目されている.今回,インフルエンザワクチンによって誘導される抗ヘマグルチン(HA)IgG抗体Fc部のN-結合型糖鎖が,ワクチンの効果発現に,重要な役割を担うことを明らかにしたWangらの論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Pincetic A. et al., Nat. Immunol., 15, 707-716 (2014).2) Wang T. T. et al., Cell, 162, 160-169 (2015).
著者
内田 博
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.78-87, 2011 (Released:2011-05-28)
参考文献数
24
被引用文献数
2 5

埼玉県の標高約90mの丘陵と台地から成る地域の林でホトトギスの繁殖生態調査を行った.調査地ではホトトギスはウグイスだけに托卵を行っていた.宿主のウグイスの産卵は4月中旬から始まったが,ホトトギスは5月下旬に渡来して,6月初旬から托卵を始めた.ウグイスの全繁殖期を通した被托卵率は24%であったが,ホトトギスが托卵を始めた6月以降だけに限ると46%の高率になった.一方,ホトトギスの繁殖成功率は3%と低かった.調査地では高い捕食圧があり,ホトトギスの繁殖成功率の低さは,ウグイスの寄生卵の受け入れの拒否の結果ではなく,捕食に大きく影響を受けていた.ホトトギスの卵は赤色無斑で宿主のウグイスの卵に非常に良く似ているため,色彩では見分けられなかったが,卵サイズは宿主卵より大きかった.ホトトギス卵の孵化までの日数は平均で14日であり,宿主のウグイス卵より1から2日早く孵化した.ホトトギスの托卵行動は2例記録でき,托卵にかかった時間は18秒と19秒であった.宿主卵の捕食行動も記録できた.調査地ではウグイスの巣の卵が産卵期や抱卵期に1から数個減少することがあり,このような現象はホトトギスの捕食によるものと考えられた.ウグイスの巣からホトトギス卵だけが排除されることはなかった.巣が放棄される割合は托卵された巣で19%,されなかった巣で22%であった.ホトトギスは卵擬態の軍拡競争では,ウグイスに勝利していると考えられた.
著者
鵜川 始陽 信岡 孝佳 海野 弘成 湯淺 太一
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.3_143-3_156, 2012-07-25 (Released:2012-08-20)

ロックやメモリバリア命令の実行には多くのCPUサイクルを消費するため,並行GC(ごみ集め)では,書込みバリアからロックやメモリバリア命令を排除することが容易なインクリメンタルアップデートGCが使われることが多い.しかし,インクリメンタルアップデートGCの通常の実装では,マークフェーズ後にミューテータを止めて多くのオブジェクトをマークする可能性があり,実時間アプリケーションには向かない.本論文では,この処理が必要のないスナップショットGCを使った並行GCを提案する.提案するGCでは,ロックやメモリバリア命令の頻繁な使用を避けるために,ミューテータは書込みの履歴を溜めておいて,GCとハンドシェイクすることで,履歴をまとめてGCに渡す.このGCをDalvik VMに実装し,評価を行った.
著者
Andre Critsinelis Chitaru Kurihara Masashi Kawabori Tadahisa Sugiura Andrew B. Civitello Jeffrey A. Morgan
出版者
The Editorial Committee of Annals of Thoracic and Cardiovascular Surgery
雑誌
Annals of Thoracic and Cardiovascular Surgery (ISSN:13411098)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.211-214, 2021 (Released:2021-06-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Mechanical circulatory support may result in sufficient myocardial recovery to allow for explantation of the left ventricular assist device (LVAD). The duration of support associated with left ventricular recovery has generally been 6–12 months. In this report, we present a patient in whom the left ventricle recovered after 5 years of support with a LVAD. Our report demonstrates that long-term monitoring for left ventricular recovery is prudent and may allow for late device explantation.
著者
難波 憲二 植松 一真
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
動物生理 (ISSN:02896583)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.154-161, 1989-09-30 (Released:2011-03-14)
参考文献数
52
被引用文献数
2 1
著者
川名 明彦 工藤 宏一郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.429-436, 1999-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

上気道に定着した潜在的病原菌を誤嚥することが細菌性肺炎の主要な原因とされている. われわれは, 上気道からこれらの菌を除去するのにポビドンヨード (Povidone-iodine: PVP-I) 経鼻吸入が有用ではないかと考え検討を行った. 対象として, 気道に通常は常在しない菌, すなわち緑膿菌や腸内細菌科に属する好気性グラム陰性桿菌, およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (以下潜在的病原菌と略す) が無症候性に咽頭から繰り返し検出される外来患者63人を選択した. これらの症例にPVP-I含嗽を2週間施行し, 対象菌を除菌できなかった30例を無作為にPVP-I経鼻吸入・PVP-I含嗽併用群 (以下併用群と略す) とPVP-I含嗽単独群 (以下単独群と略す) とに分け, 2週間の処置の前後で咽頭の細菌学的検索を行った. 併用群は16人で, うち9人 (56%) は慢性的な肺合併症 (気管支拡張症, 慢性気管支炎など) を有していた. 単独群は14人で, うち6人 (43%) は同様の肺合併症を有していた. 治療期間終了時に, 併用群では44%, 単独群では14%で咽頭から潜在的病原菌が消失した. 特に, 肺合併症を有さない患者においては, 併用群では86%で除菌し得た. PVP-I経鼻吸入と関連した有害事象はみられなかった. 上気道から潜在的病原菌を除去するのに, PVP-I経鼻吸入は安全で, 特に肺合併症のない症例において有用な方法と考えられた.
著者
小泉 恭子
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
no.78, pp.61-80, 2011-01-31

The purpose of this paper is to examine the mediated musical culture through the keywords of "emotiveness", "ritualizaion" and "symbolization" as the characteristics of media extracted from the symposium 2 on July 4^<th>, 2010. This paper is based on my fieldwork through observations and interviews with middle-aged and elderly male guests of folksong pubs [foku sakaba] and gig venues in Kyushu, Kansai, Aichi and Tokyo areas since 2007. I focus on elder amateur guitarists because baby boomers [dankai sedai] reached to 60 years old, at the retirement age from regular companies in Japan, in 2007 and they started coming back to their interests of their younger days, which singing folksongs to their own guitar accompaniment [hikigatari]. This paper on the folksong community presents the changing role of music bound to the specific generation in the process of generalization. It is revealed that the folksong community in larger city (Fukuoka City) tends to be pastime. In contrast, in the folksong community in smaller cities (Saga and Imari City), folksong are used as a trigger to vitalize the local communities as music is the bond between the parents' and children's generations. In the previous fieldwork on Japanese high school pupils, I found the tripartite layer of categories in popular music-personal music, common music and standard. Therefore, in this paper, how middle-aged male amateur guitarists pass their generation's music to the next generation as well as how they sympathize with each other through folksongs is investigated. It is found that the crossroad of the woof (contemporaneity) and warp (succession) of Japanese folksong creates a new category of popular music such as 'empathy music' or 'entrustment music'. Through this new category, the parents' generation entrusts their passion of youth to children's generation.
著者
飯島 敏文
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第4部門, 教育科学 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-10, 2014-09

本研究の最終目的は「『郷土教育の現代化』をめざした郷土教育モデルの構築」であり,郷土教育モデルの構築にとって必要な諸ファクターを見いだし,研究テーマをそれらファクターによって焦点化して記述し,それらファクターがいかに機能するかを解明することは研究の一段階である。これまでは主として学校教育における「授業」のレベルで郷土教育を考察してきたが,それ以前の子どもの人間形成空間として「自己」や「家庭」の考察を省くことはできない。本稿においては「家庭」が郷土教育にとってどのような意義を持つのか,また家庭教育が果たす役割は何かを明らかにすることとする。筆者は身近な地域に存在しあるいは生起するあらゆる事物や事象が学習材となり得るという仮説を持っており,さらに日常生活におけるあらゆる経験が教育的意義を持つと考えている。成長期の子どもにとって学習と無縁の経験はないのである。この経験の特定の側面を評価し,サポートするタイミングを見計らうことは家庭や学校における指導者の役割である。本稿では日常生活における2つの局面において,経験の教育的意義を考察した。一つは奈良市界隈の寺社への子どもの興味関心から生じた寺巡りが表現を伴った活動として認知された事例である。この対象は奈良市近郊の児童にとっては地域学習に位置づけられるものであり,小学校中学年の地域史の学習に位置づけられ,小学校高学年以上の子どもたちにとっては日本史学習あるいは日本古代史もしくは考古学の対象となり得るものだからである。学習者の発達段階に応じて必要な相貌を見せてくれる学習材というものは実に貴重である。その対象を学ぶ児童の活動や表現物を分析することによって,身近な地域の歴史を学ぶ際に獲得可能な諸知識と諸能力,諸態度を明らかにすることとしたい。二つ目は子どもが日常生活の中で直面した切実な問題に対応すべく調べ,考え,考察する事例である。教科学習ではなかなか機会を得にくい「いのち」に関わる経験を取り上げた。筆者が研究仮説として考えていることは,学習主体にとって身近な地域から学習材を見いだし身近な地域で学習活動を実現することが,個性的な学びを保証するのみでなく地域的な特殊の学習が個別具体の学習にとどまらず諸領域の学習において普遍的な有効性をもつものであるという見解である。身近な地域にある事象や事物を対象とした学習は直接的かつ具体的であり,現代の子どもが日常的に得ている間接的な経験とは質が異なると筆者は考える。ペーパー上に記述可能な「知識」なるものは間接的な経験のみによって獲得されうるものであろう。その中には多数の事項のみではなく広く知られているような「定型的な論理」すら含まれる。記憶の対象として「論理」が意識されるようになると学習主体にとって価値ある学びは実現されなくなる。社会的な通説を反復記述するだけの人材を育てるだけでは教育の社会的意義も希薄にならざるを得ないであろう。本来は,学習者にとって身近な空間における活動が深化してのち,空間的・時間的に拡大され,対象を観察しあるいは対象を考察し,さらには観察内容・考察内容を言語表現する活動のプロセスの中に多様な教育的契機が存在していると考えている。一般的・普遍的な内容の学習はその発展の過程において実現するものであろう。本稿では,特殊の事例に関わる学習活動において見いだされた教育的諸契機が,より普遍的な教育モデルとして提案可能かどうかを提案するための検証評価をおこなっている。A construction by using only a ruler without scale and a compass is very interesting. There have been a lot of construction problems from ancient Greece era. In 1796, C. F. Gauss discovered how to construct a regular heptadecagon. His idea had joined to the Galois theory. Now, almost books introduce the construction of a regular heptadecagon by using the Galois theory. In this paper, we study how to construct a regular heptadecagon without using the word "Galois theory".
著者
河塚 悠
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.95-110, 2019-01-17 (Released:2019-01-17)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

本研究の目的は,製品リニューアルにおけるパッケージ・デザインの変更が,消費者の製品購買に及ぼす影響を明らかにすることである。そこで,変更されたデザイン要素ごとに影響を測定し,その影響に差異があるのかを探索的に検証した。検証には,複数のペットボトル入り茶系飲料ブランドの購買実態に関するデータを用いた。これらのブランドでは,製品の成分や抽出法による中味の改良に伴うパッケージの「ラベルデザインの変更」もしくは「ラベルデザインとボトル形状の変更」と,中味の増量に伴う「ラベルデザインとボトル形状の変更」が行われていた。分析の結果,中味の改良に伴うパッケージ・デザインの変更の効果は,変更されたデザイン要素によって,また,変更されたデザイン要素は同じであっても,中味の改良が伴う場合と増量が伴う場合では,消費者の購買に及ぼす影響が異なることが明らかになった。
著者
Tooming Uku
出版者
Critica
雑誌
Critica: Revista Hispanoamericana de Filosofia (ISSN:00111503)
巻号頁・発行日
vol.53, no.157, pp.127-150, 2021-04-30
被引用文献数
1

Enticing food photography which stimulates its viewers' cravings, often given a dismissive label "food porn," is one of the most popular contents in contemporary digital media. In this paper, I argue that the label disguises different ways in which a viewer can engage with it. In particular, food porn enables us to engage in cross-modal gustatory imaginings of a specific kind and an image's capacity to afford such imaginings can contribute to its artistic merit.