著者
中野 浩司 佐藤 真弘 津田 綾子 關谷 悠 森 勝伸 板橋 英之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.829-837, 2010 (Released:2010-11-11)
参考文献数
39
被引用文献数
3 6 3

The speciations of heavy metals (Cu, Zn, Pb, Cd and Cr) in bottom sediment soils collected from Kusaki dam-lake in Gunma Prefecture were considered to be in the solubility with the type of ligands, by a sequential extraction procedure with five fractionations. Through these procedures, a large amount of Cu in Kusaki dam-lake sediment was in a fraction bound to organic matter ; those of Zn and Pb were in an oxide fraction bound to iron and manganese oxides, and those of Cd and Cr were in the exchangeable fraction and in the residual fraction, respectively. The composition of species in a heavy metal was almost the same without any regard to the collection periods for two and a half years, the particle size of the sediment soils and the collection points. The total concentrations of heavy metals in the sediment soil at Kusaki dam-lake was still high at this stage, compared with those at Kanto loam and Black soil (Kurobokudo). From the distributions of each fraction for analyte heavy metals, the ratios of heavy metals with long-term leaching were estimated.
著者
大谷 正幸
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.95-118, 2004-06-30

「角行系宗教」とは、角行藤仏という富士山を信仰するユニークな行者を始祖とする宗教を包括して指す、筆者の造語である。この中に富士講という団体が含まれるが、彼らが栄えて地域に土着していく過程で、角行系宗教全体の起源と考えられる、ある名前のない宗教の存在が埋没してしまった。ここ数十年で発掘されてきた資料を元に、できるだけ富士講による伝統的な説を排除していくと、おぼろげながら彼らの姿が浮かび上がってくる。角行系宗教は全体を大きく五つに分けることができる。その始原は十七世紀初頭にまで遡るが、民間から発生した独特の教義を持ち、しかも伝統的な宗教には一切属さない。彼らは従来伝統的な山岳信仰と考えられてきたが、厳然たる創唱宗教にして富士信仰の伝統的な立場とは明らかに一線を画す。そのことが日本宗教史上でいわれる所謂「新宗教」の概念とどのように関わるのか問いかけたいと思う。
著者
大澤 麦
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、ピューリタン革命の後半期(1653-59 年)に成立したオリヴァ・クロムウェルの護国卿体制の歴史的かつ思想的意味を、宗教改革に淵源をもつピューリタニズムと古典古代の政治的伝統に由来する古典的共和主義という二つの思想的潮流に着目することで明らかにすることにあった。この体制は従来の研究の中では短命に終わった軍事独裁として、過少評価される傾向にあった。これに対し本研究は、護国卿体制こそピューリタニズムと共和主義の理念をを取り入れ、これらを総合することによって、「自由な国家」としての共和国を基礎づける原理を形成せんとしていたレジームであることを見出した。
著者
堀田 昇
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.461-464, 1996-08-01
参考文献数
8
著者
中林 和重 山崎 邦典 斎藤 伸芳 飯泉 正 島根 茂雄
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.479-484, 1990-10-05
被引用文献数
5

メロンのロックウール栽培における培養液の組成と培養液の供給方法について検討し,以下の結果を得た.1)ネット出現後期から窒素の供給を制限した方がよい:ネット発生期以降の培養液中の窒素濃度を,1/2にした場合には,ネットの太さにばらつきがなく外観が美しかった.この制限を始める時期はネット発生期よりも遅い時期がよいと思われた.2)収穫直前の給液制限はしない方がよい:収穫の20日前から給液を制限した場合には,果肉の糖度も低くなり,果実も小さくなる傾向があった.このことから,メロンのロックウール栽培では,培養液の供給量を栽培の全期間にわたって,制限しない方がよいと考えられた.3)培養液への腐植酸の添加は有用:培養液に腐植酸の添加(50 ppm)を行った場合には,果皮色が明るくなった.今後,さらに検討を要する.
著者
花井金蔵 著
出版者
興文社
巻号頁・発行日
1914

3 0 0 0 OA パレアナ

著者
エレナ・エチ・ポーター 著
出版者
教文館出版部
巻号頁・発行日
1926
著者
丸木 恵祐
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.24-44,129, 1986-06-30 (Released:2009-11-11)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

人間の日常経験の形態とその意味を社会的状況との関連で考察する人びとにとって、E・ゴッフマンのドラマツルギーは、きわめて刺激的である。ドラマツルギーは演劇の比喩を用いて、社会的相互作用の主観的事実と客観的事実を同時に記述するアプローチである。それは、舞台上の「人物」が劇場外の広い世界と何のかかわりもなく既成の台本の産物と見なされるように、「自己」を劇場、つまり社会的状況という閉鎖的体系の中に呈示された人工物と見なす。本稿では、行為者が状況適合性のルールにふさわしく自己を呈示し、自己の行為を他者に有意味なものにするために利用する「形態」に注目する。そのことによって、ゴッフマンが行為者の創造的主観性を強調するシンボリック相互作用論の流れをくみながら、なぜ禁域とされてきた状況の客観的側面にふみこみ、社会的事実の拘束性を説くデュルケムの偏見に染まって行ったのかが明らかにされる。その際、外見上の個々の経験の背後に潜み「形態」に意味を付与する「構造」が確認できよう。
著者
戸嶋 巌樹 青木 茂明 平原 達也
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.244-254, 2006-03-01
被引用文献数
15

頭部形状を再現したダミーヘッドを静粛かつ滑らかに頭部運動に追従動作する音響テレプレゼンスロボット,テレヘッド弐号機を構築した。ダミーヘッドと実頭との形状の差は最大5.7%で,頭部伝達関数(HRTF)の振幅スペクトル差は4.6dBであった。テレヘッドは頭部運動に120msの遅れで安定して追従した。頭部運動追従時のライン混入雑音レベルは1〜4kHzの帯域で24dB SPL以下となった。音像定位実験の結果,使用者の頭部運動を再現すれば,他人のダミーヘッドを用いても,水平面音像定位精度が向上することを確認した。しかし,正中面音像定位においては,頭部運動を再現する効果は必ずしも認められなかった。
著者
田村 惠一
出版者
淑徳大学短期大学部
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.19-31, 2007-02-25

今日、高齢化社会の到来とともに、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」の問題がクローズアップされてきているが、特に、在宅介護に於ける様々な問題の中でも、とりわけ、ストレスが強く集中する介護者への、身体面、精神面のフォローの問題は多く取り上げられるようになってきた。一方、自分自身が障害を持ちながらも高齢化した親族を介護している、いわゆる「障老介護」の事例も多く見られるようになったが、まだまだ顕在化していない。今回、高齢化した親を、障害者自身が介護している事例を面接調査し、障害者の生活状況と日々の介護生活の実情を把握・検証する中で、そこに内在する問題点や課題を模索した。この結果、「障老介護」も「老老介護」も共通して社会福祉各法による福祉サービス対象者"別"の制度ではなく、家族員総体を包括し援助できる法体制の整備と、制度を繋ぎ合わせマネージメント出来る資質を持った専門職の創設・養成が急務であるということが分かった。
著者
高橋 秀俊 小林 謙二
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.179-194, 1985-03-05

「人間にとってふさわしい研究は人間である」 (The proper study of mankind is man) と英国の詩人アレキサンダー・ポープは言っているが, 科学の窮極の目的の一つは矢張り, 思惟する能力をもつ「人間」というものを理解することであると言えるのかも知れない. 科学も所詮は「人間」が作り上げた文化の一形態であり, 「人間」なしには科学も存在し得なかったのである. その意味で, 教科書の中の科学だけではなく, 実際に研究に従事した科学者の語るなまの「人間の言葉」も聞いてみる価値が大いにあろうかと思われる. 1977年が日本物理学会創立100年にあたることを記念して, 『日本の物理学史』(上)-歴史・回想編-; (下)-資料編-が日本物理学会編集により1978年に東海大学出版会から発行され, 日本の物理学界の指導的立場にあり, すぐれた業績をあげられた先生方の回想録が収められている. 物性理論に関連したものとしては, 久保亮五先生の「日本における統計力学の成立」, 永宮健夫先生の「物性論の発展のなかで」, 伏見康治先生の「日本における物理学の成立」という大変興味深い回想録があり, 我が国における物性理論の発展の様子を可成りの所まで窺い知ることができるが, 十分とは言えないように思われる. そこで, 上記の回想録を補足するという意図も含めて会誌の編集委員の末席につらなる小林謙二が幾人かの物理学者にインタビーーし, 「我が国における物性論の草創時代」というテーマで, 御自身の研究の動機や当時の物理学者群像などを回想して頂き, ここにまとめた次第である. 1回目として, 我が国における物性論の草創時代 (1940年代) に活躍された東京大学名誉教授で慶応大学客員教授でもある高橋秀俊先生 (1962年度と1967年度の日本物理学会会長で, 1980年度の文化功労者にも選ばれている) の回想談をしるすことにしよう. 何分にもインタビュアーの非才のために質問の拙なさから重複するところがあったり, 余り意を尽していないような所もあるかとも思われるが, その段は読者諸賢の御海容をたまわりたい.
著者
冨山 清升
出版者
茨城大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

メダカを用いて、近親交配実験を行った。その結果、野生メダカは、飼育条件下では、近親交配によって、集団の遺伝的多様性のみならず、個体の遺伝的多様性も急速に低下することがわかった。集団の遺伝的均質化がいったん失われると、外部から新たな個体を導入しても容易に回復しないことも明らかになった。また、個体内の遺伝的多様性が失われた個体は、繁殖能力が著しく低下することも判った。RAPDプライマー法を用いて、直接、野生動物種の遺伝的多様性の検出を行い、集団のサイズやその集団が置かれている環境状態と関連性を調査した。調査対象としては、メダカ、オナジマイマイ、ウスカワマイマイを用いた。RAPDプライマー法の結果を用いて、メダカの野生集団、飼育集団、近親交配集団のDNAの多形の程度を数値化した。その結果、多形の程度は野生集団が十分の大きく、近親交配集団では、ほとんど多形が検出されないことがわかった。また、RAPDプライマー多形の程度は近親交配の程度を反映していることが裏付けられた。さらに、DNA多形の失われている個体は、形態においても左右対称性がゆがんでいることがわかった。以上の事実から、RAPDプライマー法を用いることによって、野外集団の近親交配の程度=絶滅の可能性の高さを推定することができることが判り、さらに、形態的な特徴である程度の推定が可能でことも示唆された。