著者
阿部 耕也
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.103-118, 2011-06-10 (Released:2014-06-03)
被引用文献数
1

本稿は,幼児教育における相互行為を分析する視点・枠組みを検討することを目的とする。 幼児教育は,家庭での初期的社会化の段階と学校教育段階の間に位置し,両者と密接に関連している。幼稚園での教育は,集団を媒介にした指導が軸となっており,学校における社会化に先行する雛形が観察される。 幼児をその相互行為の様式として観察─分析しようとするさい,注目されるのは種々の非対称ルールである。幼児─大人間でやりとりされる問いかけ─応答,人称─呼称のあり方など,いくつかの局面で非対称ルールは見出されるが,それらを介して大人と子どもの相互行為が構成され,社会化場面が立ち上がっていく。 遊びや指導場面では,子どもの集団においても非対称な関係があり,集団活動への参与資格にかかわる非対称ルールは,集団あるいは社会が成立し,存続するために不可欠の契機となる。幼児教育とはその意味で,非対称ルールを手がかりに対称ルールの習得を目指す,子どもへの働きかけといえる。 社会化は,集団を構成することと参与者が構成員となることを相即的に成就させる過程を示す。本稿では,具体的な相互行為場面をそうした過程が進行している場として観察し,分析する視点・枠組みを準備する。
著者
前田 青広 福永 雅喜 中越 明日香 山本 洋紀 山本 謙一郎 田中 忠蔵 恵飛須 俊彦 梅田 雅宏 江島 義道
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.39, pp.13-18, 2003-05-02

Kanizsa型輪郭錯視では、パックマン型誘導刺激のエッジ間を補完するように主観的輪郭線が形成される.本研究では、Kanizsa型輪郭錯視図形を観察している被験者の脳活動をfMRIを用いて測定した。実験は、パックマン開口部の同期を制御し、局所的な輝度変調のないブロックデザインで行った。主観的輪郭線に対する脳活動は、実輪郭線に対する脳活動と高い類似性を示した。また、脳活動は従来示されてきた線条外皮質だけでなく、線条皮質においてもロバストに観察された。さらに、錯視輪郭を形成しない誘導図形を用いた場合でも、同様の傾向が見られた。上記の結果を、レチノトピー、輪郭形成過程、形態形成過程の観点から考察した。
著者
水本 武志 粟野 皓光 坂東宜昭
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.810-815, 2012-07-15
著者
斉藤 了文 サイトウ ノリフミ Saito Norifumi
出版者
名古屋工業大学技術倫理研究会
雑誌
技術倫理研究 (ISSN:13494805)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.129-135, 2012

大石敏広『技術者倫理の現在』と比屋根均『技術の知と倫理』の二つの著書の批評を通じて,技術者倫理について考えていく. 3 つの方向で論じて行く. まず第一に,この 2 著の感想,もしくは概観を通じて,技術者倫理の研究の方向性について,そして各著作の論点の幾つかについて取り上げる. 第二に,新たな現代的事例に対して,新しい技術者倫理の著者たちは,どう応えるのだろうか.ここでは,東電の福島原発の吉田所長の事例を提示してみる. 第三に,補足的ではあるが,私自身このごろまた考えている技術論,技術の知識に関して,比屋根さんの論点から触発された論点や議論を提示してみたい.
著者
エバンズベンジャミンルカ 棟方 渚 小野 哲雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.11, pp.1-4, 2014-05-30

作曲者は何か意図をもって作曲する.その前提のもと,我々はリスナーが楽曲に対して抱く印象と,楽曲の作曲者が持つ意図とを比較し,それらの印象について調査してきた.リスナーは一般に作曲者の意図と似た印象を抱くものの,音楽の知識や経験などのリスナーの特性に応じて,異なる思考を持って楽曲を聴いていると考えられる.そこで本稿では,リスナーの音楽経験が楽曲印象に与える影響に着目し,リスナー特性ごとに,その楽曲印象を作曲者意図と比較した.作曲者とリスナーそれぞれが楽曲を聴いている際の生体信号(皮膚温,皮膚電気抵抗)計測データや,アンケート調査の結果を比べ,考察を行った.Composers composer with specific intentions in mind. Based on this assumption, we have conducted research, comparing the impressions listeners feel towards music they listen to and the intentions composers have behind those songs. We have seen, in general, listeners have similar impressions to the intentions of composers. However, we believe listeners listen to music in different ways based on their characteristics (e.g. musical experience,) which would result in a difference of impression within listener groups. In this paper, we have focused on the difference of listener impressions caused by difference in musical experience, and have compared those impressions with composer intentions. We discuss different findings we have made from the physiological data (skin conductance response, skin conductance level and fingertip temperature) and survey data obtained from our experiment.
著者
有川 宏幸
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.265-275, 2009-11-30

応用行動分析学に基づく自閉症児への介入法は、有効性が認められてはいたものの、米国心理学会臨床心理学部会が示した「十分に確立された介入法」としての基準を満たしていなかった。しかし、それに準じる介入法として注目されていたのがUCLA早期自閉症プロジェクト(UCLA YAP)であった。Lovaas(1987)は、UCLA YAPを4歳未満の自閉症児に週40時間、2〜3年にわたり行ったところ、47%が標準範囲のIQに達したことを報告した。この結果は前例のないものであったことから、多くの研究者に精査され、自閉症からの「回復」という表現の問題や、無作為割付けの有無といった実験手続き上の問題などについて批判を浴びることとなった。そのため追試・再現研究は、可視的に、科学的な厳密さをもって実施されており、こうした批判への反証データも示されるようになっている。しかしながら、この成果については依然として不明な点も多く、「証拠」(evidence)に基づく継続的議論が必要であろう。
著者
Masashi Goto Takashi Kawamura Takuro Shimbo Osamu Takahashi Masahiko Ando Koichi Miyaki Takahiko Nohara Hidetsuna Watanabe Isamu Suzuki Mitsuru Aono for the Great Cold Investigators-II
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.46, no.15, pp.1179-1186, 2007 (Released:2007-08-02)
参考文献数
17
被引用文献数
5 10

Objective: To investigate whether loxoprofen, one of the nonsteroidal anti-inflammatory drugs, prolongs the recovery process of naturally acquired upper respiratory tract infections (URTIs) in the clinical setting. Methods: A double-blind, randomized, placebo-controlled trial was conducted in 23 outpatient facilities in Japan. Patients aged 18 through 65 years suffering from URTIs were randomly assigned to receive loxoprofen or its placebo. The primary outcome was duration of illness in days. Results: A total of 174 patients were available for the analyses. Duration of illness was 8.94 ± 3.20 days in the loxoprofen group compared to 8.39 ± 3.39 days in the placebo group (P=.19). The number of days with limited daily activities was fewer in the loxoprofen group than in the placebo group (2.12 ± 2.05 days vs. 2.68 ± 2.54 days, P=.17). Although severe symptoms were less frequent on days 1, 2, and 3 in the loxoprofen group (27%, 33%, and 29%, respectively) than in the placebo group (32%, 39%, and 37%, respectively), symptoms were more frequent on days 6 through 12 in the loxoprofen group (difference, 5-13%). Adverse events were more common in the loxoprofen group (9.5% vs. 1.1%, P=.051). Conclusion: Loxoprofen did not significantly modify the recovery process of URTIs except for a slight tendency to delay.
著者
上尾 真道
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 = The Zinbun Gakuhō : Journal of Humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.65-87, 2012-03

本論は, フロイトにおける人間と必然性の関係をめぐる問題を, フロイトの「レオナルド・ダ・ヴィンチ」論の読解に基づき考察したものである。フロイトは, 人間に否応なく立ちはだかる必然性について, しばしばアナンケーという言葉で論じながら, 人間は宗教的錯覚を捨てて, それに対峙していかなければならないと述べ, その態度を科学的態度としている。本論は, 晩年の文化論に見られるこうした問題系をフロイトが先取りしていたものとして, 彼の論文「レオナルド・ダ・ヴィンチの幼年期の思い出」を取り上げる。レオナルドは, 第一に, 宗教的錯覚を排し, 自然のアナンケーに知性を通じて対峙した人物として描かれている。しかし, レオナルド論を丹念に読むならば, 父性的影響を排することで可能となった知的な自然探求は, すぐさま, 常に幼年期の母との強い情動的関係に裏付けられた神経症的な思考強迫と境を接するものであることがわかってくる。知的探求と自然崇拝が結び付くようなこの母性的影響について, フロイトのほかのいくつかのテクストを参考にするならば, それは, 偶然的な現実を覆い隠そうとする錯覚のひとつであるという見方が可能となる。そこで, レオナルド論のうちに, この母性的錯覚に裂け目をもたらすものとしての偶然をめぐる主題を探すと, 自然に湛えられた潜在的な原因の闊入として構想された偶然の概念を見出すことができる。この偶然は, 必然性のうちに主体を埋没させる強迫的探求に対して, 主体が自らをひとつの作用因として世界へ介入させる行為と創造の側面から理解されるだろう。こうした必然性に参与する偶然への配慮こそがフロイトの科学的世界観の鍵であり, アナンケーを人間の変容の舞台として理解するための鍵である。
著者
安川 慶治
出版者
関西外国語大学
雑誌
研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.169-182, 2014-03

R.シューマンの音楽には、音楽そのものの異常さの喩であるような、なにか異常なものがある。ロマン主義の他の作曲家たちと異なって、シューマンの作品の中心にあるのは、主観的な語りではなく、主観的なものの成立そのものを、たえず音楽によって捉え返そうとする強迫である。シューマンの最良の作品の多くに感じ取られる独特の感興-主観的なものの無根拠=深淵を垣間見せる凄みとでも言うべきもの-は、蓋しそこに淵源する。 本稿は、こうしたシューマンという特異点において「音楽とは何か」という問いを問うための予備的な試みとして、彼のピアノ曲の傑作のひとつ《幻想曲》(op.17)の第1楽章を取り上げ、簡単な作品分析によってその異形性を明らかにし、そこに露呈されるものを考察する。

3 0 0 0 OA 西洋替シ碁

出版者
歌川国松
巻号頁・発行日
1888
著者
矢代 寿寛 宮澤 彰
雑誌
研究報告情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.7, pp.1-6, 2011-11-15

博物館資料と図書館資料の機械的な Linked Open Data 化を行うために,展覧会カタログに着目し,実際のメタデータが機械処理に適しているか分析・評価を試みた.展覧会カタログメタデータ作成機関として主要な役割を担っている博物附属図書室のうち,NACSIS-CAT 参加機関の WebOPAC の書誌レコード約 4 万件について,記述率や一貫性を分析した.JAPAN/MARC および独自フォーマットの書誌レコードと,サンプルにおける正確性を比較し,Linked Open Data 化に適しているか,評価した.Exhibition catalog metadata have the potential to mediate library resources and museum resources, because of the specialty. we tried to analyze and evaluate metadata, with the aim of generated of linked open data. Analyzed the completeness and consistency of about 40,000 bibliographic records from a museum Libraries WebOPAC, that uses the NACSIS-CAT format. Compared the metadata with original format and JAPAN / MARC format in sample bibliographic records, evaluate the suitability for automatic linked open data generation.