著者
久保 尊洋 瀬在 泉 佐藤 洋輔 生田目 光 原井 宏明 沢宮 容子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.173-182, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
27

本研究の目的は、動機づけ面接の中核的スキルはスマートフォン使用についてのチェンジトークを引き出すかどうかを明らかにすることであった。実験参加者50名に対し、スマートフォン使用の問題を標的行動にし、OARSと呼ばれる動機づけ面接の中核的スキルを用いるOARS条件と、標的行動に関する思考、感情、そのほかの行動について共感的に聞く非OARS条件を設定し、1回の面接で交互に条件を変えて介入を行うABABデザインで実験を行った。実験参加者の発言の頻度に対するチェンジトークの頻度の百分率(以下、チェンジトーク(%)とする)を条件ごとに算出し比較した。結果、OARS条件のほうが有意にチェンジトーク(%)が高かった。同条件では、問題改善の重要度が高いとチェンジトーク(%)も高いことがわかった。動機づけ面接の中核的スキルは、スマートフォン使用についてのチェンジトークを引き出すスキルであることが示唆された。
著者
藤城 孝輔
出版者
学校法人 加計学園 国際教育研究所
雑誌
国際教育研究所紀要 (ISSN:13437119)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.32, pp.41-53, 2021 (Released:2022-08-04)
参考文献数
33

本論文は、映画『ハナレイ・ベイ』(松永大司監督, 2018)におけるジェンダー表象を検討する。同作は2005年に発表された村上春樹の同名の短編小説の映画化作品である。短編集『東京奇譚集』(2005)に収録された小説「ハナレイ・ベイ」は女性主人公の主観を中心的に据えた「女性の物語」として認知されている。これに対し、映画では物語における若い男性の役割を原作よりも拡大し、中年女性である主人公は男性の庇護のもとに置かれた存在として描かれる。作中の会話に盛り込まれた劇的アイロニーに注目すると、主人公がハワイで出会う男子大学生が彼女の事情を理解し、暗黙のうちに彼女を助けていることに彼女が気づきそこねていることが明らかになる。また、登場人物の視線を表現する古典的手法であるアイライン・マッチを意図的に逸脱するかのような編集スキームは、主人公の認識の限界を強調している。これは、村上の原作においてあらゆる事物や出来事が主人公の目線を通して描かれるのとは対照的である。短編小説から映画へのアダプテーションに見られるこれらの改変を「ヤンキー」と呼ばれる1980年代以降の不良文化の表象における男性性のイメージの系譜に位置づけることを通して、本論文は家父長制に基づく日本の保守的なジェンダー役割意識が映画化に際して物語に加味されていることを示したい。
著者
近藤 哲男
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.107-115, 2008-05-25 (Released:2008-05-28)
参考文献数
41
被引用文献数
16 16

最近のナノテクノロジーの著しい進歩は,さまざまな材料創製の概念を変えてきた。天然素材においても,その影響は大きい。植物体の骨格を形成しているセルロースや昆虫や甲殻類の外皮の主成分であるキチンなどのいわゆるバイオマス資源は,もともとナノファイバーから高次の構造へと天然ビルドアッププロセスにより,その構造が構築されている。そのような構造ができあがっている天然素材を,有効に用い,しかも自然にやさしいプロセスでナノ機能素材へと変換する試みが21世紀に入って急速に展開してきた。本稿では,最近のセルロースナノファイバーの潮流について,その基礎から展開までの概略を述べる。また最近,著者らも,トップダウン的加工法として,天然セルロース繊維を表面から分子やナノレベルの分子集合体を引き剥がすことにより微細化し,最終的にナノ分散水化させる水中カウンターコリジョン法を開発した。この手法についても併せて紹介する。
著者
井上 創造 ロペズ ギヨーム
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.146-148, 2023-02-15

今回私たちが主催したThe 4th ABC(Activity and Behavior Computing,行動とふるまいに関する国際会議)を,主催者の視点から報告する.著者のうち井上は,東ロンドン大学のAtiqur Rahman Ahad氏とともに実行委員長を,ロペズはアールト大学のStephan Sigg氏とともにプログラム委員長を務めた.
著者
山本 進
出版者
北九州市立大学国際教育交流センター
雑誌
北九州市立大学国際論集 (ISSN:13481851)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-14, 2020-03

朝鮮の倭銅鑞輸入は世宗の鋳砲・鋳銭政策に伴う青銅需要に刺激されて増大し、需要が低下した後も日本の朝鮮産綿布需要に押されて輸入圧力は続いた。政府は羈縻政策の観点から倭銅輸入を継続し、余剰銅は鍮器などに加工された。16世紀になると一転して倭銅鑞輸入は低下した。
著者
村上 克尚
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.65-80, 2012-11-15 (Released:2017-06-01)

This paper attempts to interpret Takeda Taijun's Shinpan (The Judgment, 1947) as a novelistic demonstration of Taijun's effort to overcome issues arising from his prewar work, Shiba Sen, (Sima Qian, 1943). The first section of the paper points out the commonalities between two works published around the same time, Shiba Sen and Koyama Iwao's Sekaishi no tetsugaku (The Philosophy of World History, 1942), and shows the limitations of discussing pluralism on a metaphysical level alone. The second section argues that the cosmopolitan nature of the city of Shanghai and the narrative polyphony in Shinpan function as tools to help overcome the shortcomings of Shiba Sen. The thirdand the fourth sections argue that the polyphony of the narrative in Shinpan casts strong doubt on the uniqueness of individual self-awareness, and propose to find in the story the hidden theme of violent animalistic nature seen in human history. Thus the paper opens up the possibility of finding animalistic themes in postwar literature.
著者
小関 玲奈 山本 正太郎 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.47-58, 2022 (Released:2022-07-20)
参考文献数
34

災害常襲国である日本において,土地利用マネジメントを含めた事前復興計画の推進は急務であるが,土木史的な視座を踏まえて,危険地帯への市街地進出要因を考慮した制度設計がなされているとは言い難い.そこで本研究では,東日本大震災,西日本豪雨で被災した5都市の都市形成史と災害後の都市計画的対応を比較分析し,各都市で甚大な被害を生むに至った空間的要因とその経緯を解明することを目的とする.近代以降の交通基盤整備や土地区画整理事業等の都市基盤整備が実施された位置や規模を,分析の視点とする.次の災害への備えとしての災害防御インフラの整備と,土地の利便を逓増させる交通基盤・都市基盤整備とが連動して行われたかどうかが,災害後に減災型都市構造へ転換する分岐点となったことを明らかにした.
著者
中野 良顯
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.172-177, 1996-08-15 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

「実践研究の方法と課題」で論ずべき主題を考察した。実践研究の概念を分析すると、臨床心理学の訓練の理想的範型、サイエンティスト・プラクティショナー・モデルに到達する。このモデルが目指すのは、消費者・評価者・研究者の3役割を統合する生産的研究者、分析的実践家の育成である。個体分析法によって臨床実践の実験科学化を可能にした応用行動分析は、このモデルの使命を実現する最も正当な継承者である。それは実践の科学化を可能にするための7指令に、社会的妥当性と効果的処遇を受ける権利という新しい次元を加え、研究者と実践家の行動指針とした。これらの指令は、研究者はどうすれば実践の問題に関連深い研究を展開できるか、実践家はどうすれば科学的方法論を駆使して伝達可能な情報を生み出せるか、科学に基づく実践を受益者に好かれる実践にするにはどうすればいいか、そして緊急に解決すべき問題を持つ人々が問題の改善に有効な介入を受ける権利をどうずれば保障できるか等の基本的課題への試案的回答として提出された。それらは日々の実践研究において反復検討され、十分吸収活用され、一層発展させられなければならない。
著者
川口 真一
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.131-147, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
8

現在,企業財務の健全化という観点から,同族会社の留保金課税は減税の方向に向かっている。このような留保金課税改革の流れに対して,本稿は節税目的による内部留保の蓄積を抑制することが重要であり,留保金課税のさらなる縮小や廃止を推し進めるべきではないことを,租税の公平性の観点から主張するものである。 本分析では,同族的な企業ほど節税を目的として内部留保する傾向が強いことを明らかにするため,「内部留保率は,財務状況が悪い企業だけではなく,同族色の強い企業ほど高い」という仮説を立て検証することにした。その結果,同族色の強い企業ほど内部留保率が高いという仮説が支持された。これにより,留保金課税が適用される同族会社であっても留保控除額が大きいことから,留保金課税が十分に機能していないことが指摘できるとともに,同族会社とそれ以外の会社との間で,租税の公平性が保たれていないことが明らかとなった。
著者
千葉 悦子 飯塚 友子 市川 まりこ 鵜飼 光子 菊地 正博 小林 泰彦
出版者
日本食品照射研究協議会
雑誌
食品照射 (ISSN:03871975)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.23-36, 2016 (Released:2017-03-01)
参考文献数
11

「香辛料は,照射殺菌に比べて過熱水蒸気殺菌では香りが減少し色調が変化する」ことを,官能検査により種々の条件で確かめた。加熱調理のカレーであっても,照射殺菌品は過熱水蒸気殺菌品より「試食前の香り」や「試食しての辛味」が統計的な有意差を伴い強かった。料理でなく香辛料自体で比較し,赤唐辛子,白・黒コショウは,照射殺菌品の方が,風味や辛味がより強い傾向であった。さらに,赤唐辛子やターメリックの過熱水蒸気殺菌品は,未処理品との色の違いが非常に大きく,照射品は小さかった。そこで,色と風味の比較を2次元マップに表すと,照射品は未処理品に近いことが一目瞭然で,放射線殺菌の長所が納得しやすく,リスクコミュニケーション推進に効果的であると分かった。また,香辛料は水に浮沈するので,香辛料の量を厳密に揃える比較には,香辛料の分散が必要と分かった。それには,ポタージュや介護用とろみ剤が有効であろう。とろみ剤を水に溶かして香辛料を分散させると,白コショウの辛味は,統計的な有意差を伴い,照射殺菌品の方が過熱水蒸気殺菌品より強かった。ただし,照射品の風味の方が好まれるとは限らず,風味は強弱だけでなく質的な違いも感知される場合があると考えられた。
著者
永田 栄一郎
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.303-306, 2018 (Released:2018-12-25)
参考文献数
3

Migraine is a chronic, disabling, and recurrent neurological disorder. The guideline published by Japanese Headache Society, based on evidence–based medicine data, is a useful source of guidance, especially for acute and preventive therapies of migraine (Japanese Clinical Practice Guideline for Chronic Headache 2013). At present, migraine therapy can be classed as acute therapy and preventive therapy. In acute therapy, we give migraineurs NSAIDs or triptans for abortive medicines. We have five triptans (sumatriptan, zolmitriptan, eletriptan, rizatriptan, and naratriptan) in Japan. Notably, sumatripotan has three dosage forms (oral tablet, inhalant, and injection). They are used appropriately by the type of migraine attacks. In general, we firstly give an oral tablet. However, when patients have nausea and vomiting, they cannot take oral medicines. At that time, we use inhalant or injection, especially using injection for a severe attack. It's best timing to take a triptan just after the attack to get the most effective treatment. On the other hand, we usually use calcium blockers, anti–epileptic drugs, anti–depressants, and β–blockers for preventive therapy. Among them, lomerizine, verapamil, valproic acid, amitriptyrine, and propranolol have insurance adaptation in Japan. In preventive therapy, you should not change another preventive drug at least two months. Moreover, you should choose appropriate preventive drug with individual patients. As for the trick of acute treatment, we sometimes give a migraineur both triptan and NSAIDs when a migarineur has a severe attack.

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出版者
プラトン社
巻号頁・発行日
vol.9(6月號), 1926-06