著者
築地 真也
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.136, no.1, pp.9-16, 2016-01-01 (Released:2016-01-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

Synthetic small-molecule ligands that control the intracellular location of proteins would be powerful tools for regulating cellular systems. However, the creation of such molecules has long remained unexplored because of the lack of a design methodology. Here, we introduce a new type of synthetic ligands, self-localizing ligands (SLLs), which spontaneously localize to specific subcellular regions in mammalian cells. We show that SLLs bind their target (exogenously expressed and endogenous) proteins and relocate them rapidly from the cytoplasm to their targeting sites. SLL-induced protein translocation is applicable to manipulate diverse synthetic/endogenous signaling pathways. These results validate the utility of SLLs in the spatial control of intracellular protein localization and signaling processes, opening a new direction in the design of small-molecule-based chemical tools or drugs for cell regulation.
著者
鈴木 由美 沼澤 広子 森越 美香
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.50-67, 2021-10-01

目的:自然災害が女性に対する暴力にもたらす影響を明らかにし,課題および支援策を検討する.方法:2020 年 8 月,国外文献検索サイト PubMed を用いて過去 10 年,2000 年以降の閲覧可能な full text に限定し Intimate partner violence,Gender based violence,domestic violence に対してキーワード disaster,hurricane,earth-quake,landslide,flood damage,typhoon,cyclone,forest fire とそれぞれの AND 検索を行った.結果:27 文献を対象とした.自然災害後に女性に対する暴力は増加したが,その背景に災害前からの暴力の激化,複雑化があった.個人属性では女性の脆弱性がハイリスク要因であり,貧困や安全でない避難所の居住環境なども要因となったが,基盤にジェンダー不平等やコミュニティ規範があった.また調査の限界として想起バイアスRecall bias)や羞恥心などがあり,潜在化した被害者がいることが推察された.災害から時間が経過しても,PTSD などメンタルヘルスへの影響が懸念された.災害により利用できるリソースやアクセスに限界もあった.自然災害では女性の脆弱性が暴力の引き金になることが示唆された.結論:災害時は女性への暴力は悪化すると予測して支援策を考える必要がある.
著者
Hiroyuki Kabasawa Shigeru Kiryu
出版者
Japanese Society for Magnetic Resonance in Medicine
雑誌
Magnetic Resonance in Medical Sciences (ISSN:13473182)
巻号頁・発行日
pp.rev.2022-0114, (Released:2023-02-07)
参考文献数
54
被引用文献数
3

The liver moves with respiratory motion. Respiratory motion causes image artifacts as MRI is a motion-sensitive imaging modality; thus, MRI scan speed improvement has been an important technical development target for liver MRI for years. Recent pulse sequence and image reconstruction technology advancement has realized a fast liver MRI acquisition method. Such new technologies allow us to obtain liver MRI in a shorter time, particularly, within breath-holding time. Other benefits of new the technology and the higher spatial resolution liver MRI within a given scan time are improved slice coverage and smaller pixel size. In this review, MRI pulse sequence and reconstruction technologies to accelerate scan speed for T1- and T2-weighted liver MRI will be discussed. Technologies that reduce scan time while keeping image contrast, SNR and image spatial resolution are needed for fast MRI acquisition. We will discuss the progress of MRI acquisition methods, the enabling technology, established applications, current trends, and the future outlook.
著者
吉村 佳樹
出版者
北海道大学大学院文学院
雑誌
研究論集 (ISSN:24352799)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.15-32, 2021-03-31

T・M・スキャンロンの契約主義は,非功利主義的な体系的理論として大きな影響力を持ち続けている。彼の理論は,元々,道徳の本性を説明することを目的としたある種のメタ倫理学的理論として提示された。彼は,そのような理論としての自身の理論の主要な目的を①道徳の主題と②道徳的動機づけに適切な説明を与えることとしていた。特に後者に関しては,前者の説明をする際の基礎となっていたり,スキャンロン自身が契約主義を受け入れる大きな理由となっているなど,大きな重要性を持つものである。しかし,この道徳的動機づけの契約主義的説明に対しては幾つかの批判が投げかけられている。また,その批判の中にはスキャンロンの主張が私たちの日常的な感覚に反すること含意しているという批判もある。スキャンロンは自身の理論の妥当性の一つを私たちの感覚との整合性のようなものに求めているため,仮にこうした批判が妥当なものであれば,契約主義にとって重大な問題となりうる。本稿では,そうした道徳的動機づけの契約主義的な説明に投げかけられている批判に応答していく。まず,スキャンロンが道徳的動機づけと呼ぶものとその契約主義的説明を明確にすることで,投げかけられている批判がスキャンロンの議論のどのような部分に対してのものなのかを明確にする。その後,道徳的動機づけの議論一般に投げかけられている批判と派生的な議論に投げかけられている批判とを検討していく。その検討においては,批判の多くはスキャンロンの議論に対する誤解に基づくものであることを示すとともに先に述べた私たちの感覚に反した含意を持つとされる部分はそもそも契約主義にとって中核的な要素ではないため,仮に本稿での応答が失敗していたとしても契約主義にとって批判者達が考えている程重要な問題ではないことを示す。
著者
瀬之口 潤輔 小畑 崇弘 酒本 隆太 倉橋 節也
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.71-89, 2020-07-15 (Released:2020-07-15)
参考文献数
27

計量モデルを用いた株価予測は多くの研究者や実務家によって行われているが,計量モデルによる株価予測が可能かについては依然として結論は出ていない.予測変数が持つ長期的な情報と短期的な情報がそれぞれ株価に反映される可能性があること,株価と多くの予測変数の関係は単純な線形ではないことなどにより,株式市場の構造をモデル化することが困難であることが理由として挙げられる.本研究では,このような株式市場の複雑な構造を捉えるために,多重解像度解析により複数の要因で異なる周波数特性の変化を抽出したものを説明変数とし,非線形非連続な関係を表現できるxgboostをモデル作成手法として株価予想モデルを作成し,比較的高い予想精度が示されることを確認した.また株価予想モデルが株式市場の局面変化に合わせて変化している様子を示すことにより,大局的な株式市場の構造変化を認識することも可能にした.
著者
藤井 博之
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of Culture in our Time (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
no.143, pp.1-27, 2021-09-30

私は臨床医として診療と教育・研究の二足のわらじを履き,地域医療,農村と都市はどう連帯するかを考えてきた.新型コロナ禍の中で「命か経済か」のどちらを優先するかという議論がある.これは社会福祉と保健・医療が地続きの分野であることに関わる問いを改めて突き付けている. いくつかの教育実践を取り上げて振り返ることで,この問いについて考えたい.①社会福祉学部や経済学部で「医学概論」を担当してきたが,この科目で医学について何を学ぶよう学生に求めるかを問い直す必要がある.②コロナ禍の下で 2020 年度は編成を変更し,ふくしの論理に医療の論理をつなぎ病気の社会的側面について考えるなどの試みを行う機会になった.③医師である教員として学生が医療の現場を訪ねる機会を作ることも,大事な役目である.在任中は,専門演習 5 クラス,地域研究プロジェクト 3 クラスを担当し,9 回の合宿と 14 回のフィールドワークで,フィールド 24 箇所を訪ねた.④卒業論文では 6 年間に 5 つの専門演習クラスを担当し,52 人全員が論文を提出して卒業した.インタビュー調査 25,事例検討 11,量的調査 6,統計研究 6,参与観察 2,インタビュー調査と事例検討の混合研究 2,テーマは多彩で,保健・医療や病いは 10 数本に過ぎなかった.卒業後社会人 2 年目に自ら生命を絶った者があった.大学教員は学生が就職・進学しただけで役割を果たしたとは言えず,生きぬく力を伝える責任がある.⑤講義科目リハビリテーション医学(2015 ~ 2020 年)では,リハビリテーションという言葉を本来の意味で使うべきだと伝えてきた. 保健医療と社会福祉を含む多職種連携について,本学では教育と研究,地域での実践の機会を豊富に与えられた.在任中に私としては 2 つ目の博士論文(社会福祉学)を提出し,数冊の書籍を出版できた.研究成果には,多職種連携の基盤となる 4 つの共通理解,多職種連携に影響する要因,職場の連携状況評価尺度の開発,response shift の指摘などがある.IPE の学習過程での専門分野間の対立,多職種連携の暗黒面を上手に乗り越えることは教員の援助のポイントである.日本の現状では,医療系と社会福祉学部が参加する IPE は限られている一方で,各職種の国家試験で多職種連携に関する出題が増加しつつあり,中でも社会福祉士では 33.3%(2020 年)と高比率である.日本福祉大学の IPE では,幅広い学部構成という強みを活かすために,教員が履修学生の中で起こる学びや葛藤を学部を超えて共有し,教員同士の多職種連携の経験知を高めるなどの課題に取り組むよう期待する.
著者
北原 白秋[作詞]
出版者
コロムビア(戦前)
巻号頁・発行日
1928-11
著者
包 啓安
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.9, pp.658-663, 2000-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9

中国の酒造りの歴史は大変古く, 日本の酒造りも当然その影響を受けている。現代中国では, 穀類を原料とする醸造酒を黄酒と称しているが, その中国黄酒の酒母について, 現代の製造方法と歴史的な製造方法について解説していただいた。最近の製造技術には, 日本の影響が見られることがわかる。
著者
常深 祐一郎
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.J51-J54, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

白癬菌抗原キットは,白癬菌の細胞壁に存在する多糖類に反応するモノクローナル抗体を使用してイムノクロマト法の原理で検体中の白癬菌抗原を検出する.臨床研究から本キットは爪白癬診断において利用価値が高いが,足白癬診断ではあまりメリットがないことが判明したため,爪白癬の体外診断薬として開発を進め,体外診断用医薬品として承認された.本キットの抽出液は爪検体から短時間に効率よく抗原を抽出できる.爪白癬を疑うも鏡検で菌要素をみつけられないときに,本キットによる検査を行って陽性であれば,再度鏡検を行うことで見落としを少なくすることができる.また,鏡検ができない現場でも本キットで陰性の場合は白癬治療を行わないようにすれば,無駄な治療や医療費を減らすことができる.本検査法はあくまでも従来の真菌検査法を補完するもので,最終的には鏡検による形態学的確認を要する.鏡検と本キットを組み合わせることにより爪白癬診断の精度が高まることが期待される.