著者
望月 隆之
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.12, pp.195-204, 2018-03

2016 年7 月26 日未明,「津久井やまゆり園」にて元施設職員による殺傷事件が起きた。被害者は施設の利用者と職員であり,19 名の利用者が亡くなり,26 名が重軽傷を負うという大事件となった。事件後,報道機関により大きく報道され,専門家によるコメントや検証がなされた。しかし,事件の当事者である知的障害者の声は,ほとんど報道されてないという状況が続いた。「にじいろでGO!」は,横浜市在住の知的障害者の女性が,神奈川県内在住の知的障害者及び家族,支援者に呼びかけ,知的障害者のこれまでの人生や相模原障害者施設殺傷事件について,当事者が語る声を社会に伝えるために作られた当事者団体である。これまでの活動は,知的障害者の声として多くのメディアを通じて社会に発信されている。本報告では,「にじいろでGO!」の立ち上げの経緯及び事件後1 年までの活動について報告し,知的障害者が自ら事件について語ることの意義及び今後の課題と活動の展望まで述べる。
著者
孫 東芳
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
文化交渉 : Journal of the Graduate School of East Asian Cultures : 東アジア文化研究科院生論集 (ISSN:21874395)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.217-232, 2017-11-30

Shimoda Utako (1852-1936) and Tsuda Umeko (1864-1929) were pioneers and important representatives of Japanese women's education in the Meiji and Taisho eras. Both women were engaged in numerous educational activities, including writing and teaching. However both differed greatly in their styles. Shimoda Utako and Tsuda Umeko established 'Jissen Girls' School' (now Jissen Women's University) and 'Joshi Eigaku Juku' (now Tsuda University) respectively. Based on these two schools' educational principles and their process of establishment, this dissertation will compare the educational policies put forth by the Meiji government with the changes of thinking relating to social education, in order to investigate the relationship between women's education and the Meiji government. Namely, it will assess the degree of participation and the impact of the Meiji government on these two female educators' development and their educational causes. The relationship between these two female educators and the Meiji state shall also be analyzed. This dissertation will focus on the early period of the establishment of schools (the late 19th century), when female educators generally complied with the needs of the Meiji state.
著者
米澤 好史
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.159-169, 1994-08-20

本論では,認知心理学の学習観を紹介し,学習指導に認知心理学の知見をどう生かしていくかについて,次の6点から,その意義をまとめた。すなわち,結果ではなく過程を重視すること,方法としてではなく意味を重視すること,対人相互作用の中に位置づけられた学習として捉えること,教師に必要な知識とは何か,状況設定と適切な視点の必要性,メタ認知の効用である。こうした考察と具体的な指摘を通じて,学習者間の「やりとり」や学習者と教材との「かかわり」の大切さを指摘し,「立ち止まり」「気づく」営みとしての知的教育の必要性を指摘した。
著者
大森 秀之
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.31-37, 2007-03

近畿大学医学部附属病院メンタルヘルス科性同一性障害専門外来を受診した患者について中核群と周辺群(非中核群)に分類し,生活歴および生育歴を中心に検討した.中核群と周辺群の全体の比較では,家庭の問題,性的な問題および教育の問題で有意な差が認められた.中核群と周辺群の比較で生物学的女性では家庭の問題および性的な問題で有意な差が認められた.周辺群の生物学的男性と生物学的女性の比較では,性の問題といじめで有意な差が認められた.
著者
樋澤 吉彦
出版者
名古屋市立大学大学院人間文化研究科
雑誌
名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究 = Studies in humanities and cultures (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
no.32, pp.25-40, 2019-07

本稿は、2016(平成28)年7月26日未明、神奈川県相模原市にある障害者施設「津久井やまゆり園」において発生した障害者支援施設入所者等殺傷事件(「事件」)を契機とした精神保健医療福祉の動向に関する第一報及び二報に続く第三報(最終報)として、精神保健福祉分野のソーシャルワーカー(精神保健福祉士)の職能団体である日本精神保健福祉士協会(協会)による、「事件」を経て2017(平成29)年2月8日に公表され、同28日、第193回国会に上程され結果的には継続審議の後いったん廃案となった精神保健福祉法改正法案(29年改正法案)に至るまでに発出された11の見解・要望の詳解を行うことを目的としている。29年改正法案「当初」案までの協会の一貫したスタンスは、(1)29年改正法案は「事件」の「検証」の場でなく、2013(平成25)年の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律改正(25年改正法)第41条第1項及び附則第8条に基づき2016(平成28)年1月7日に設置された「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」(あり方検討会)において議論すべき、(2)「社会防衛」、「再発防止」のための措置入院制度改革には反対、という2点に収斂させることができるが、(1)については当該スタンスを明示している見解公表より前に再開されたあり方検討会の場に、「事件」の「検証」目的のために厚生労働省内に設けられた「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」により2016(平成28)年9月14日に公表された「中間とりまとめ~事件の検証を中心として~」(「中間とりまとめ」)が資料として配布されている。また(2)のスタンスは措置入院制度の中身ではなくそれの名目上の提案趣旨(目的)のみに対するものであることが、29年改正法案「当初」案の趣旨の削除とその直後の見解によって顕在化する。29年改正法案「当初」案の提案趣旨は、参議院厚生労働委員会の場において(同様の事象の)「再発防止」に関する箇所が法案の中身の実質的な修正はなされないまま厚労相の「お詫び」とともに突如削除された。しかし法案内容自体は修正されず、当該委員会は、そもそもの根拠(立法事実)の存否をめぐって混乱し、廃案に至ることとなる。協会は以上の顛末に比して趣旨の削除プロセスに肯定的評価を示している。協会の肯定的評価の姿勢の背景には、法案における排他的職能の要望が示唆される。29年改正法案は25年改正法の附則に基づくものであるということを名目にしながら、実際は「事件」を契機として措置入院制度に焦点化されている。協会が本来この時点で行わなければならないことは、中身はそのままで外装のみ「社会復帰(の促進)」という趣旨へと転換された29年改正法案の本質的な趣旨の剔出とその批判的検証でなければならない。しかし協会は、この検証を「単なる批判」として切り捨ててしまっている。このことは29年改正法案「当初」案における本質的な趣旨―すなわち「再発防止」―を逆に補強する可能性があると考える。
著者
後藤 広史
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.31-42, 2007

本研究の目的は,前路上生活者が施設から「自己退所」する要因を探索的に明らかにし,路上生活者に対して,施設での援助活動を展開する際の指針をうることである.そのために,施設を「自己退所」した経験をもつ路上生活者15人に対して,(1)施設入所前の路上生活をどのように営み,それをどう意味づけていたのか,(2)そのような路上生活者が施策を利用するにあたっての目的は何だったのか,(3)そして,施設での生活はいかなるものであり,なにが「自己退所」のきっかけとなったのかという3点に着目し,インタビュー調査を行った.研究の結果,「自己退所」に関わる要因として,「路上生活への適応」「利用目的のずれ」「施設で直面する諸困難」という3つの要因が抽出された.このことから,「路上生活を尊重した援助」「ていねいなアセスメントの必要性」「住環境および処遇の改善」という援助の指針が得られた.
著者
佐藤 眞 SATO Makoto
出版者
岩手大学教育学部社会科教育科
雑誌
岩手大学文化論叢 (ISSN:09123571)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.107-111, 2009

学校から職業社会への移行パターンが大きく変容した現在,さまざまな角度から「若者と仕事」が論じられ,キャリア教育,フリーター・ニート論の隆盛はブームの感さえある。 「日雇い派遣」,「ネットカフェ難民(事実上のホームレス)」に象徴される,きわめて不安定な労働と生活を強いられている多くの若者たち。その実態がマスコミでも採り上げられ,「年越し派遣村」の報道が世論を喚起した。こうした失業・貧困をめぐる状況は若年層に限定された問題ではなく,すべての年齢階層にひろがる生活不安,深刻化するワーキングプア問題として,その実相が明らかになるにつれ,何らかの政策的対応をせまる諸運動が随所で形成されつつある。 小論は,いま「未曾有の危機」にあるとされる日本経済のもとで,不安定雇用の動態をスケッチするための基礎的作業を試みたものである。
著者
岡田 英己子
出版者
首都大学東京
雑誌
人文学報. 社会福祉学 (ISSN:03868729)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-46, 2002-03-25

都の重度障害者政策の転機となる療護施設の設立経緯を通して、ケア(介護)・援助の当事者性と専門職性の相互補完性を検討する。具体的には救護施設での「永久」介護拒否宣言と、府中療育センター「闘争」での二つの問題提起から、女性障害者が主導する障害者の権利運動論の形成過程をみる。また自立に向けた療護施設での条件整備と施設職員の1970年代の自己の職業像の変化を辿りつつ、基礎構造改革で見直しを迫られる療護施設の限界にも言及する。
著者
速水 融
出版者
日本学士院
雑誌
日本學士院紀要 (ISSN:03880036)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.285-309, 2008-03