著者
秋山 純子 畑 靖紀 森實 久美子 鷲頭 桂
出版者
独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

彩色材料は当時の社会情勢や世界との交流の歴史を解明する上で重要な要素のひとつである。近年の分析装置の発展により非破壊で多くの情報が得られるようになったが、絵画の彩色材料の解明には、非破壊で簡便な「面」の広がりを持った総合的な判断要素となる科学分析が必要である。本研究では、赤外線撮影法が彩色材料の面的調査に有効な方法となりうるか検証した。その結果、赤外線画像の濃淡だけで顔料の種類を特定することは難しいが、同じ彩色材料の使用範囲や染料と顔料の組み合わせの様相など技法的な部分を面的に推察するのに有効であることが明らかとなった。
著者
宮城 靖 諸岡 健一 福田 孝一 岡本 剛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本人脳の完全連続標本を用い、3次元的整合性と高精細組織画像を両立させた。患者脳MRI画像をもとに最適に形状変形できる次世代型の定位脳手術用ヒト脳座標デジタルアトラスにより、難治性神経疾患のテイラーメイド外科治療に対応できる日本人版の定位脳手術支援システムを構築し安心・安全・精確な定位脳手術を実現する、そしてこれをもとに脳科学統合データベースの基盤を形成する。日本人脳の外表面3D形状モデルが完成し大脳基底核などの微細構造を抽出中、また形状の普遍性を担保するため120例の健常者MRIから脳の平均化処理、有限要素解析と機会学習を用いて実時間で最適な3D変形ができるパラメータを調整している。
著者
前川 貴史
出版者
北星学園大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

制約に基づく言語理論であるHead-drivenPhraseStructureGrammar(以下HPSG)の枠組みで、英語の節および名詞句の左端要素の語順に関する諸問題を扱った。英語の左端要素をめぐる諸現象が示すいろいろな特殊性が、HPSGの枠組みでは一般性を損なうことなく説明できるということが明らかとなった。
著者
高田 昌広 (2012) MORE Anupreeta
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

We successfully conducted two lens searches in Space Warps (SW, spacewarps.org) in FY2013. I led the first SW lens search and analysed the results. I made comparisons between the performance of humans vs robots and we find a fairly large number of lens candidates which were missed by previous robotic searches. Our work is summarized and presented in Paper I- http://arxiv.org/abs/1504.06148 and Paper II - http://arxiv.org/abs/1504.05587 (to be submitted to MNRAS).From the second lens search which was conducted live on BBC in FY2013, an intriguing lens candidate was discovered. We used several world class telescopes including Subaru (owned by Japan) to confirm that this truly a lens and studied the properties of the lensed galaxy such as the star-formation rate. I produced the lens mass model which calculates how magnified the lensed galaxy is in order to derive the true luminosity of the lensed galaxy and other such properties (http://arxiv.org/abs/1503.05824, MNRAS submitted).We also enabled mass modelling of the lens candidates for the citizens (Kueng et al. 2015) and found that citizens produce fairly similar results compared to experts in this task. This is encouraging because assistance from citizens on mass modelling will become crucial as we embark upon the discovery of thousands of lens candidates.The resources from SW have legacy value e.g. the simulated lens samples that we generate are useful for testing other lens finding algorithms as we did in Chan et al. (2014, http://arxiv.org/abs/1411.5398)
著者
北 泰行 土肥 寿文 藤岡 弘道
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

希少金属の使用減に役立つ環境調和型新反応や反応剤を開発し、持続可能な手法として有用物質の合成へと応用した。さらに超原子価ヨウ素反応剤を用いるメタル触媒フリー酸化的カップリング反応を、申請者らが培ったヨウ素や硫黄、さらに酸素(オキソニウム)などの性質を利用した合成法と組み合わせ、天然物やその類縁体、機能性分子などの合成研究を展開することで、創薬研究や物質化学の発展に資する有用な手法とした。
著者
野口 久美子
出版者
同志社大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究では、2カ年にわたる現地調査と文献調査の結果、19世紀末から20世紀初頭のトュール・リヴァー保留地において、複数部族からなる先住民部族集団が単一の政治形態を形成する過程と、それに伴う部族内経済格差の構築過程について歴史的分析を加えた。結果として、現代の部族社会と経済発展の基礎となる再組織法型部族政府(トュール・リヴァー部族政府)が、いかにして構築されたのか、その歴史的背景が明らかになった。
著者
米浪 直子 尾関 百合子 伊藤 知子
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

野菜類は細菌に汚染されていることが多く、水洗浄だけでは完全に取り除くことは難しいことが報告されている。食中毒を予防するためには、HACCPの考え方をできる限り取り入れ、各給食現場に応じた衛生管理を行うことが必要である。それゆえ、本研究では、(1)HACCPに基づいた野菜の調理作業工程と一般的な調理作業工程について、いくつかのポイントで細菌検査を行った。(2)酢の物の調理作業工程のモデル実験で、きゅうりの洗浄、加熱処理、食酢の添加による殺菌効果について検討を行った。(3)生野菜の細菌数に及ぼすマスタードドレッシングの効果について検討した。以上のことから中心温度75℃1分以上の加熱処理を重要管理点としたHACCPシステムに基づく衛生管理の重要性が確認された。
著者
川野 羊三
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

遠方クェーサーが視線上の銀河によって強い重力レンズ効果を受けているレンズ系が70以上報告されている。これまでの詳細な観測と理論的研究により、レンズ銀河が光で見える様にほぼ楕円形で矛盾がないことが分かっている。しかしながら、いくつかのレンズ系では単純にフィッティングしたのでは像の明るさがうまく再現できない。その原因については未だ決着ついていないが、ダストなどによる影響、銀河のサブストラクチャ、使っていたレンズモデルが単純すぎる等議論されている。そこで、私はより複雑なモデルを使いさらに詳細なフィッティングを4つのレンズ系に対して行った。天文学的な不定性により3つについては結論できないが、B1422+231はサブストラクチャによりレンズ効果がなくても銀河群の摂動をよりとりいれることにより説明できることが分かった。よって、これまでサブストラクチャレンズ効果とされてきたレンズ系もレンズモデルの見直しやさらなる詳細化が必要になる。また、他のレンズ系に対してもこれまで見落とされていたフィッティングの誤りを明らかにした。そして、その陥りやすい誤りについても簡単に起因を説明できることが分かった。また、PLFというモデルを使った線形方法を使うことで簡単にハッブル定数などレンズ系から算出できることも分かった。最近示された同様の方法との比較と改善案についても明らかにした。この結果については、2004年1月アトランタで行われたアメリカ天文学会で発表した。また、日本天文学会誌PASJにも受理され4月に発行される予定である。
著者
小澤 文幸 竹内 勝彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ピリジンを母核とするPNPピンサー型配位子は,遷移金属錯体上で,塩基の作用により脱プロトン化を起こし,脱芳香族化ピリジン骨格を有する配位子に変化することが知られている.この配位子は強い塩基性を示し, ルイス酸である中心金属との酸-塩基協同作用により種々の結合の不均等開裂を起こす.本研究では,遷移金属に対して強いπ受容性を示すホスファアルケンを配位子骨格に組み込み,錯体反応性の大幅な向上を試みた.その結果,アンモニアのN-H結合切断や二酸化炭素の触媒的ヒドロシリル化に高い反応性を示す錯体を合成単離することができた.
著者
大嶋 正裕 長嶺 信輔 引間 悠太 遊佐 敦 山本 智史 Wang Long
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

従来、高い空隙率で微細な孔構造をもつ発泡体を生産するには、超臨界状態のCO2やN2を発泡剤として利用する射出成形手法が採用されてきた。本研究では、 熱可塑性樹脂の内部にマイクロメータ・スケールの平均径の微細気泡を有する発泡体を製造するための工業的成形手法として、昇圧装置を使わずに、CO2やN2をボンベから直接射出成型機に導入し発泡剤として利用する、あるいは空気をコンプレッサーを使って成型機に直接導入し発泡剤として利用する、低装置コストで低運転コストな新規な射出発泡成形装置を開発した。
著者
鈴木 正康
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

蛍光センサ色素や生体由来の分子識別素子を複数回重ねてマイクロコンタクトプリンティングすることで、一つのチップ上に複数種の極微小オプティカルバイオケミカルセンサを構築すると共に、作製したオプティカルバイオケミカルセンサを用いて化学物質の2次元的な分布の経時変化を画像化することに成功した。
著者
本間 毅
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

目的:一般に、トラクタで牽引車両を牽引する場合は、旋回時にトラクタ走行軌跡と牽引車両の走行軌跡に内輪差が生じることが避けられない。この内輪差が作業に影響を与え、時には事故の発生にもつながり安全性の面からも改善が求められている。本研究では、トラクタ前輪の操舵角度に合わせて、ヒッチ点位置を横方向に移動制御する方式によって内輪差の減少させることすなわち牽引車両の追従性の向上を図ることにより、トラクタの牽引作業の作業性、安全性の向上を目的としている。これまで試作機を製作し追従性向上のための実験を行ってきたが、更なる追従性の向上のため作動部分およびプログラムを改良して実験を行った。研究方法:農林技術センター所有のトラクタで牽引車両を牽引して、トラクタ後輪車軸中心部および牽引車両車軸中心部から水滴をたらしながら走行し、水滴跡をそれぞれの走行軌跡とし、軌跡差を計測した。試作機ぞを作動させずヒッチ点を中心に固定した状態(以後、非作動時)とヒッチ点を移動させた場合(以後、作動時)の軌跡差を比較した。研究成果:トラクタ前輪操舵角度を一定に保ち旋回のみを行った結果、操舵角度30度での軌跡差は非作動時の最大64cmに対し、作動時は最大5cmと大幅に減少した。次に、実作業時にも頻繁に行われるU字ターン行った。U字ターンでは、これまでの実験からトラクタの速度に応じて作動の時間を遅延させることにより軌跡差が減少することが解っているため時差をつけた作動試験を行った。また、本試作機では、最大ヒッチ移動量が60cmであるが操舵角度30度で最大移動量を超えるため、操舵角度25度と最大移動量を超えた操舵角度33度の軌跡差を測定した。その結果、非作動時では、ターン頂点とターン終了の中間付近の軌跡差が最も大きく70cmほどであった。操舵角度25度作動時では、最大軌跡差がターン開始付近の6cm。操舵角度33度作動時では、最大軌跡差がターン終了付近の11cmとなった。8の字にターンを行った場合もほぼ同様の結果となり、それぞれの操舵角度で最大軌跡差が2cm大きくなった程度であった。以上の結果から、本方式により追従性が確実に向上することが確認できた。これにより、作業性・安全性の向上が図られるものと考える。
著者
岡谷 貴之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

カメラで撮影した画像を元に,撮影対象の3次元形状をはじめとする幾何学情報を推定する問題について,その理論上最も高精度な方法を探求し,その応用を開拓した.研究成果は,行列因子分解の数値計算法,プロジェクタカメラシステムの校正法,高精度平面追跡法,車載カメラを用いた市街地の時空間モデリングと可視化の方法,車載ステレオカメラの校正法,光学的方法との融合に基づく高精度形状計測,マルコフ確率場の最適化計算法等である.
著者
熊本 卓哉
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

昨年度に引き続き,各種グアニジン誘導体より,窒素上にアリル置換基を有するアジリジンを合成し,熱的,および光条件による環化付加反応を検討した.しかしながら,いずれの場合も目的の環化体を得ることができなかった.一方,四酸化オスミウムを用いるジヒドロキシル化については,アリル置換基上でのみ酸化が進行した所望のジヒドロキシル体を与えた.今後,ここで生じたジオール部位に対して更なる変換を行い,C3単位ををアジリジンに組み込んだヘテロ環合成へと変換する予定である.また,アジリジン環に対する反応性を調査する上で,有機銅試薬による開環反応,有機ホウ素試薬によるシグマトロピー型反応などの検討を行ったが,所望の環化付加体を得ることはできなかった.その検討の過程において,塩化インジウムを用いた場合にtransアジリジンからcisアジリジンへの異性化反応が効率よく進行することを見出した.この異性化はこれまでに例がなく,特にcisアジリジンを部分骨格に有するマイトマイシンCなどの天然物合成への展開が期待される有用な反応であり,これらの事項についてHeterocycles誌に投稿した.一方,アジリジンを一旦フェニルゼレン試薬で開環してβ-ゼレノアミンとした後,アリルスズ試薬を用いたラジカル型炭素-炭素結合反応によりアリル基の導入に成功した.今後このアリル基を足がかりとした環化反応に展開していく予定である.
著者
永渕 昭良
出版者
熊本大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

平成20年度にはカドヘリン分子と相互作用せずにPAR-3複合体とのみ相互作用する特殊なβカテニン・カドヘリン融合タンパク質の作製に成功した。本年度はこの融合タンパク質の性質とこの分子がPAR-3複合体とカドヘリン・カテニン複合体の相互作用を阻害するドミナントネガティブ因子として機能できるかどうか、解析を進めた。先ずこの融合タンパク質はカドヘリン非存在下でも内在性のαカテニンの発現増強を行うことを明らかにした。野生型のβカテニンではこの発現増強は見られず、融合タンパク質内のカドヘリン細胞質領域、特のそのC末端領域がαカテニンの発現状況であることも明らかにした。次ぎにこの融合蛋白質を通常の培養細胞に発現させたところ、目立った異常は見られなかった。しかし、上皮分化誘導をかけると上皮細胞接着装置複合体形成に微妙に影響を与える可能性が示唆された。より高い発現状態で上皮組織構築における影響を調べるために、ニワトリ初期胚においてこの分子の過剰発現を試みた。その結果、神経管上皮組織構築に異常が見られた。現在これが融合タンパク質によるドミナントネガティブ効果であるかどうか、詳細な検討を進めている。miRNA依存的な遺伝子発現抑制をカドヘリン、PAR-3などについて試みた。しかし用いたF9細胞では有効な発現抑制効果が見られなかった。miRNAの発現量が低い可能性が考えられるが、発現量を上げる手だてがなく、この計画は中断している。
著者
上野 孝行
出版者
鹿児島工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

研究目的多くの高専において"ものづくり"が教育目標として掲げられており,もの作りの教育方法について講義や実習などで多角的に検討されている.本校においても,学生のモチベーションをいかに向上させ,維持させるかということが問題視されている.近年,学生の成長過程での周辺環境がIT技術の発展により劇的に変化している.このような背景から,日常生活環境から機械装置が電子装置に置き換わりメカニカルな装置が身の回りにないため,分解してメカニズムを知る楽しみを知らない学生が増えてきている.機械工学科の学生にいたっても,そのようなことに興味を持たない学生も少なからず存在する.このことは創造力の養成に対する動機にも影響している.そこで4輪バギーの操舵部分を対象とした分解組み立ての実習を取り入れる.実用車であるため機械工学科の学生の興味を惹く題材を用いることで,その教育効果を検討する.研究方法(1)現有の4輪バギーを分解し,構造について特にサスペンションのアライメントの理論を学習するための方案を洗練するとともに,他の教科との関連や実習の効果を検討する.(2)また,学生への動機付けの成否を,アンケートや実習を通した学生からの聞き取りで行う.(3)効率よく実習を行うために,実習用のバギーを1台追加する(購入申請).(4)毎実習終了後にアンケートを取り,実習の内容の改善点についてフィードバックを行いながら更に適したテキスト,サブノート,教材の開発を行う.(5)その教育効果をさらに高めるために,補助教材の製作を行う.(6)以上に加えて学生の意識調査を聞き取り方式で行い,実習方案の完成度を高めていく.研究成果(1)4輪バギー保有台数が増えたことにより少人数教育を行うことができた.(2)(1)の結果,実習時間にゆとりが生まれ,新たな分野について授業で取り上げることができた.(3)学生からの聞き取り調査により、すべてにおいて教育効果が高まったことが確認できた.
著者
馬場 敦
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

高等生物は管腔様構造の臓器ネットワークを有しており、形成過程での破綻はヒトにおいてもよく見られるが、その原因は遺伝的要因と環境的要因とが交差しており不明な点が多い。申請者はCelsr1欠損マウスが生殖器系管腔様構造の形成不全を呈し、この表現型が糖転移酵素Fringeの欠損マウスの表現型と酷似することを発見した。Celsr1蛋白質は2箇所のEGF-like motifにおいてO-フコシル化かつFringe修飾され、細胞内分布が制御された。以上の結果から「翻訳後の糖鎖修飾がCelsr1蛋白質の局在を制御する」ことが明らかとなり、管腔様構造の形成に特異的な、糖鎖修飾による制御機構が明らかとなった。
著者
立石 洋子
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

フルシチョフ期のソ連における自国史像の変遷を分析課題とした。なかでも歴史家の関心を集めた1)北カフカース史の描写をめぐる議論と、2)歴史家の論争の中心となった学術誌『歴史の諸問題』誌の活動を中心に検討を進めた。1)に関する研究成果まず、同時期の政治改革の過程では共産党史だけでなく自国史の解釈も大きな論争点となったこと、特に北カフカースを中心とする非ロシア人地域の歴史とロシア史との関係が歴史家の議論を集めたことを明らかにした。そのうえで、19世紀の北カフカースで起こった対ロシア蜂起であるシャミーリの反乱について、1953年のアゼルバイジャン共産党第一書記バギーロフの逮捕が歴史家の論争の始まりの契機となったこと、また1957年のチェチェン・イングーシ自治共和国の再建が、この史実に対する公式見解の方向性を決定づける重要な要因となったことを明らかにした。2)に関する研究成果『歴史の諸問題』誌の活動を、1953年に編集長となった歴史家パンクラ―トヴァの活動を中心に分析した。まず、1953年の編集部の改組が科学アカデミーの決定に基づくものであったことを指摘し、そのうえで同誌編集部が、読者会議の開催や討論用論文の掲載を通じて歴史家と社会の論争を促していった過程を分析した。これに加えて、共産党中央委員であり、最高会議代議員でもあったパンクラートヴァのもとには、スターリン時代に政治的抑圧を受けた多数の知識人の名誉回復と釈放を求める市民からの訴えが多数寄せられていたことを明らかにした。さらに、社会に対して公的歴史像の変遷を説明する役割を担った彼女が、スターリン期の歴史学の役割に対する社会からの批判と、政治指導部に対する市民の批判の高まりを警戒した党指導部による統制の狭間で苦悩するさまを跡付け、従来の研究が着目してこなかったソヴィエト体制下の知識人の一側面を指摘した。
著者
DETHLEFS H・J
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究はレオナルド・ダ・ヴィンチの草稿を中心とし、彼が北ドイツ、特にゲーテ時代のドイツにおける芸術理論に及ぼした影響をテーマとした。当初は1810年のゲーテの色彩論の中に、レオナルドの光の理解が受容されかつ変形されているという考えだったが、研究を進める中でレオナルドの草稿に自ら目を通して研究したヴァザーリの重要性が私の目にはっきり見えて来た。以来、ヴァザーリの伝記に散見する色彩理論的発言と並び、これまで一般に蔑ろにされて、2006年にようやくドイツ語に翻訳された「建築、彫刻、および絵画論序論」に焦点を当てた。ヴァザーリは、レオナルドの文献に時折見られる一つの概念を取り上げた最初の著作家である。
著者
千足 昇平
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

単層カーボンナノチューブ(SWNT)のデバイス応用に向けた,光学物性の解明を目的とし,レイリー散乱分光計測システムを設計し構築を行った.液中に分散したSWNT,スリット構造に架橋したSWNTなど様々な形態のSWNTサンプルに対し,レイリー散乱スペクトルの取得やレイリー散乱イメージング計測に成功した.SWNTはその直径が1nm程度しかないが,十分強いレイリー散乱光強度を得ることができ,今後のSWNTデバイスの評価・分析にレイリー分光計測が有効であることが明らかとなった.