著者
南雲 サチ子 松浦 成昭 河口 直正 森 誠司
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

癌細胞の形態学的異型性のうち、構造異型については接着分子インテグリン、カドヘリンの発現の変化が構造異型に重要な役割を果たすことを明らかにした。細胞異型、特に核の異型に関しては、細胞異型の高度ながん細胞にH3K9me3、HP1α(ヘテロクロマチン関連タンパク)の発現亢進が見られた。また、in vitroでH3K9me3の発現を亢進させると細胞遊走能、細胞浸潤能が増加する結果が得られた。核膜タンパク質LINC complex分子については癌細胞の異型度の著明なものにはSUN1、SUN2、Nesprin2の発現低下が見られた。
著者
所 浩代
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、雇用における障害差別の是正を実効的に行うための仕組みを考察した。雇用における障害差別については、障害差別を禁止する法律を立法し、差別の是正と予防を行うことが一般的である。もっとも、障害差別の規制方法は、国によって異なる。米と英は、障害に特化した差別禁止法を制定し、裁判所により司法救済を個人が求めることができるようになっているが、それとは別に行政機関が差別の苦情を受け付け、紛争の内容を吟味し、解決に向けたアドバイスを行う。本研究では、このような行政による支援の有効性を検証した。また、障害者の雇用機会の拡大という政策目標に、差別禁止法がどの程度貢献しているのかについても検討した。
著者
渡辺 雅彦 若林 敬二
出版者
就実大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

モンシロチョウに存在する分子量98,000の蛋白質、ピエリシン-1、は種々のがん細胞に対して細胞傷害活性を示す。そこで、in vivoにおけるピエリシン-1の抗腫瘍活性を調べる目的で、ピエリシン-1の実験動物に対する毒性の解析を行った後、移植がん細胞に対するピエリシン-1の抗腫瘍効果を調べた。ピエリシン-1を単回腹腔内投与した場合のBALB/cマウスに対するLD50値は約5μg/kg body weightであった。1x10^7個のHeLa細胞を6週齢BALB/c雌ヌードマウスの腹腔内に移植し、翌日、3μg/kg body weightのピエリシン-1を単回、腹腔内投与し、80日目にマウスを屠殺し解析した結果、ピエリシン-1非投与群では全例(10/10)に腫瘍が確認され、その平均重量は1.16gであった。一方、ピエリシン-1投与群では10例中3例に肉眼上腫瘍を認めなかった。また、1例では腹膜に2mmの小結節を認めたのみであった。ピエリシン-1投与群の平均腫瘍重量は0.56gであり、有意に低下していた。以上より、ピエリシン-1はHeLa細胞に対し、in vivoで抗腫瘍活性を示すことが分かった。続いて1,340頭のモンシロチョウさなぎからピエリシン-1の大量精製を行い、47.6mgの精製ピエリシンを得た。さらにピエリシン-1およびその酵素ドメインであるN末端断片の酵素的性質を解析したところ、C末端断片が存在すると、酵素活性が大きく低下する条件が認められた。N末端断片およびトリプシン活性化本酵素による転移反応のturnover numberは55および25、24時間反応における転移数は10^6レベルであり、単一分子によって細胞に致死レベルの付加体が生成し得ることを示した。
著者
松島 格也
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

不確実な状況における交通サービス消費行動をモデル化し,意思決定の自由度とコミットメントの価値を理論的に導出した.料金支払いのタイミングの違いに着目して,事前料金システムと事後料金システムの導入が家計厚生に及ぼす影響を分析し,事後割引料金システムの方が社会的厚生の観点から望ましい結果をもたらすことを示した.さらに,航空サービスの早割チケットのような通時的差別化料金システムの経済便益評価を実施した.
著者
福本 義憲 保阪 靖人 荻野 蔵平 岡本 順治 伏見 厚次郎 幸田 薫 重藤 実
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

言語構造・文法を抽象的な規則の体系とみなす近代の構造主義的言語理論と並んで、文法構造とコンテクストの不可分な関係を重視する言語理論がある。前者は構造言語学、生成文法と引き継がれて、意味構造・統語構造・音韻構造の一定の自律性を前提としているのに対し、後者は、コンテクスト・発話状況・日常知識・発話者の意図を出発点とし、文法(意味・統語・音韻)のコンテクスト依存性に着目する。だが、このふたつの観点は必ずしも互いに対立するものではなく、むしろ相互補完的な働きをしている。言語能力と言語活動の全体像を捉えるためには、他方を排除するのではなく、この相互補完的な観点に立脚する必要がある。この考え方は「文法と知識のインターフェイス」というキーワードに集約することができる。本研究では研究分担者がそれぞれ独自の領域を研究することによって、全体像を捉えようとするものであり、各研究者の成果は、個別の論文並びに、平成15年度に作成した成果報告集にまとめられている。細かな4年間の活動については成果報告書にまとめられているが、特に次のような活動を行ってきた。1.4年間にわたる、研究成果報告集の作成を行い、そのために2003年9月21日に研究分担者が集まる会合を都立大学で開いた。2.毎年研究分担者との会合を開くとともに、海外の研究者を招き、講演会並びに討論会を開催してきた。3.研究分担者の研究を進めるために、研究代表者並びに研究分担者がドイツ語圏(オーストリア・ドイツなど)へ資料収集並びに研究発表に出かけた。4.日本独文学会(年二回)で口頭発表並びにポスターセッションでの発表を行った。
著者
嶋田 奈緒子
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

EGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるイレッサ(ZD1839)は肺癌における分子標的治療薬として使用されているが、その副作用として急性肺障害・間質性肺炎の発症があり、この急性肺障害の発症機序の解明や危険因子を同定することは我々呼吸器・臨床医にとって急務である。我々は昨年までに、AKR/J系マウスにイレッサを投与しneutrophilの集積が肺胞壁のcapillary内に起きていることを確認した。Macrophageの集積はneutrophilに比べて顕著ではなかった。また老化促進マウス(senescence-accelerated mouse, SAM)にもイレッサを投与しその肺組織に及ぼす影響も検討した。SAMの元々のストレインはAKR/Jマウスであるにもかかわらず、SAMPlはイレッサ投与によってもAKR/Jマウスと比較してneutrophilの集積はみられなかった。今年度はマウス・ストレイン間のイレッサ感受性の違いを検討する為に、AKR/Jマウス、C57BL6マウス、NZWマウスにイレッサを投与して検討した。当初はマウス・ストレイン間でイレッサ感受性に違いのあることを予想していたが、今のところ3ストレイン間で炎症性細胞の浸潤などに大きな違いは認められていない。また肺組織での発現解析においても現在のところ、大きな違いは同定できていない。しかしまだマウスの実験匹数やイレッサの条件検討などが充分ではなく、今後はさらに検討を重ねる予定である。これら疾患モデルにおける遺伝子発現プロファイルの違いやgenetic variationを検討することは、今後イレッサ急性肺障害の危険因子・予測因子の解明の糸口につながる可能性があると思われる。
著者
川島 高峰
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

敗戦後、東アジア社会主義圏に抑留・残留を余儀なくされた邦人の帰還交渉が行われた。国際共産主義運動は抑留を政治的に利用し、抑留者の帰還をアクティブの入国手段とした「偽装抑留」や、引揚船を日ソ間の工作活動に利用するため船員等を組織化するといった非合法的な活動を展開した。1950年代の平和攻勢の下では、帰還交渉が社会主義陣営に有利に展開するよう様々な合法・非合法の活動を展開し、そこでは戦前のコミンテルン期の国際共産主義の活動家がシベリア抑留に際し、抑留者として民主化運動指導者層にいたことが認められた。
著者
本郷 一美 GUNDEM CanYumni GUNDEM Can Yumni
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究は、日本国内におけるプロジェクトとトルコにおけるプロジェクトの2つの部分からなる。日本国内のプロジェクトでは、日本の古代-中世の遺跡から出土したウマのサイズと形態に関するデータを収集し、日本への家畜馬の導入経緯や日本固有の品種の成立過程について明らかにすることを目的とした。関東地方と長野県の古代~近世の遺跡および関西地方(奈良、大阪)の古代~中世の遺跡出土のウマの歯および四肢骨の計測データを収集した。日本の家畜馬の体格の時代的な変遷を考察するための資料が蓄積されるとともに、ウマの生産地である長野県佐久地方出土のウマの形態やサイズと、古代、鎌倉時代、江戸時代にそれぞれ政治や経済の中心でウマが供給され仕様された地域との比較が可能になりつつある。また、多数のウマが出土している長野県、神奈川県、茨城県の4遺跡から出土したウマ遺体の歯にみられる異常な摩耗や、後頭部、脊椎骨、中手骨、中足骨にみられる骨増殖などの病変の有無を観察し記録し、ウマの用途について考察した。トルコの遺跡出土動物骨の資料収集プロジェクトに関しては、総研大に保管されているトルコ南東部の新石器時代遺跡から出土した動物骨の分析を行うとともに、トルコの中央部、南東部の遺跡出土動物骨の資料を収集する目的で海外調査をおこなった。特にトルコ中央部のテペジク遺跡では、野生のウマが出土しており、ユーラシア大陸に生息した野生馬の重要な資料を得ることができた。
著者
滝戸 次郎 中村 雅典
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

破骨細胞は、単核細胞の融合により形成される多核細胞であり、その機能は骨を分解することである。その細胞融合に関与する構造として、我々は新規のアクチン超構造体を報告してきた。本研究では、その構造の構成タンパク質の空間配置を決定し、前駆体であるPodosome beltとの違いを明らかにした。また、その構造保持に関与するシグナル伝達経路を解明した。アクチンの動態を観察し、超構造体内で内向きのアクチン流動が起きている事を発見した。これらの知見を統合し、破骨細胞間の接着に働く力の釣り合いを考察した。本研究により、アクチン超構造体は、破骨細胞同士の融合時の接着に寄与することが示された。
著者
池側 隆之
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究においては、結果あるいは成果としての情報を如何にして共有するのか、という議論にとどまらずに、個人が抱くアイデアが他者に伝達されるプロセスそのものにおいてどのような工夫が成されているのかを中心に分析を行った。そして異分野をつなぐ情報共有の一つの手段として、視覚情報の連続的提示が有効であるという結論に至った。創造的プロセスの解析を足がかりとして、今後はアニメーションや映像によるシークエンシャル・デザイン(時系列を意識したデザイン手法)が情報共有において果たす役割を考察し、産業-教育-社会での応用を導き出す初期モデルの構築を行いたいと考えている。
著者
御幸 聖樹
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は、行政行為に対する議会拒否権の合憲性を考察するとともに、そのような考察を通じて立法機関と執行機関との抑制・均衡のあり方を問うものである。行政行為に対する議会拒否権の合憲性を検討するための判断枠組みを提示した後、アメリカ及びイギリスの法制度及び議論を参考にしつつ、日本への導入可能性の有無を明らかにした。
著者
左近 幸村
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

4月10~13日にアメリカのコロラド州デンバーで開催されたWestern Social Science Association 55^<th> Annual Conferenceに出席して、"Russian Transatlantic Liners after the Russo-Japanese War : Pssport Issues of Jewish Immigrants"と題する報告を行った。また6月1日に東京大学本郷キャンパスで開催された社会経済史学会第82回全国大会において、「ロシア東亜汽船社と義勇艦隊―20世紀初頭のユダヤ人移民問題との関連から」と題する報告を行った。これら国内外での報告を通じて、ユダヤ人移民問題との関連からロシア海運史研究の意義を広くアピールするとともに、多様な専門分野の研究者から今後の研究方針についての具体的なアドバイスを得ることができた。平成25年度は、9月15日と16日に早稲田大学で行われた社会経済史学会の次世代研究者育成ワークショップの開催に、受入教官である矢後和彦教授とともに尽力し、その中で自身も「帝政期ロシア極東における移民と民族問題」と題する報告を行った。本ワークショップを通じて、自身の研究課題の改善点を見出すとともに、組織者としての能力に磨きをかけ、さまざまな先生方や同世代の研究者たちと交流を深めることができた。出版物としては、拙稿「帝政期のロシア極東における『自由港』の意味」が掲載された『東アジア近代史』16号が刊行された。その末尾で示した20世紀初頭の東アジアとバルカンの東西比較の問題は、今後取り組むべき大きな課題である。現地調査は、8月20日~30日にウラジオストクの国立極東歴史文書館で行い、ロシア極東の海運に関する公文書を閲覧した。閲覧した史料は、上記9月のワークショップの報告で用いたほか、今後の研究発表に活かしていく。
著者
易 平
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

20年度において、申請時の研究計画通りに、東アジアにおける国際法受容過程をめぐり研究を進めていた。昨年度の研究実績を踏まえた上で、そのうち最も基礎に当たる部分--戦争観の受容過程に重点を据えて考察を展開していた。本研究は、幕末から明治末期にかけて日本に舶来した欧米国際法書物に示された戦争観を整理した上で、日本国際法学における戦争観の形成過程を辿り、十九世紀末頃から二十世紀初頭にかけての戦時国際法研究の概況を解明した。取り上げる人物は、東京大学、京都大学、早稲田大学、一橋大学などで国際法講座を担当する専門国際法学者-有賀長雄、高橋作衛、中村進午、寺尾亨、千賀鶴太郎の五人-を中心に据えた一方、大学や専門学校で国際法を教える専任教師ではないが、国際法を専攻したことがあり、かつ国際法的戦争観に関する研究書や学術論文を公刊した広義の国際法学者も視野に入れた。研究素材としては、当時の国際法教科書・専門研究書・講義録、そして国際法関連の学会誌や専門誌に掲載された学術論文・時論・講演などを網羅的に取り上げた。暫定的結論として、欧米からの戦時国際法知識の受容は、国家政策に奉仕し、緊迫した国際情勢に活用しなければならないという形而下なる目的に動機付けられることが多く、実用主義的な態度が顕著に現れた。他方、1890年代を境として、輸入された欧米国際法学的戦争観に大きな転換が見られる。それ以前に翻訳された国際法体系書は、戦争原因追究論に立脚する形で説いているものが多かったが、それ以降は、原因不問論や戦争法外視の主張が主流となった。しかし、欧米から受容した国際法知識は、日本の国際法学者の学説形成において重大な意義を有するにもかかわらず、彼等の法観念を完全に規定したものではなかった。専門国際法学者と広義の国際法学者は、自国の状況に応じて欧米学説を解釈し修正を施しながら自らの学説を練り上げていくことが多かったのである。
著者
辻 麻衣子
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

当該年度に実施した研究の主な成果は、以下の2点である。1. 『純粋理性批判』(以下、『批判』)超越論的演繹論(以下、演繹論)において統覚概念と並んで重要である構想力概念を、以下の2つの側面から詳細に考察した。(1)『批判』刊行の直前期の形而上学講義や草稿を用いて、構想力概念についての分析および『批判』第1版との比較を行った。当時のカントにとって構想力概念は、経験心理学の中で語られる能力であったが、超越論哲学という新たな軸を打ち出した『批判』に至って、この概念の性格もまた変更されざるをえなかった。このような移行の中で、構想力概念もまた両者の狭間で揺れ動いていることを、上記テキストおよび『批判』の精査を通じて明らかにした。(2)能力論における「カントの先駆者」と呼ばれるヨハン・ニコラウス・テーテンスによるテキストを精査し、カントの構想力概念に与えた影響に関する発表を行った。両者が考えた構想力概念の体系には確かに相違点も多くあるが、同時代の他の哲学者には見られないような、特異な共通点もまた存在する。この共通点を両者のテキストから析出し、これまで省みられることの少なかった構想力概念におけるテーテンスとカントとの関係に焦点を当てた。2. 『批判』演繹論における、統覚を中心とした自己意識論から強い示唆を受けて成立したフィヒテの知識学講義を精読し、そこでの自己意識論をカントによるものと比較した。1790年代末に行われた講義をまとめたものである『新たな方法による知識学』を基本テキストとし、そこで「五重の総合」という名称で展開されるフィヒテの自己意識論に着目した。フィヒテがカントの統覚概念をさらに発展させ、理論的認識という側面においてのみならず、実践的側面においても自己意識の統一を第一原理としたことを明らかにした。
著者
西村 聡
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

戦後の舞台利用の変遷を番組に基づく能楽史年表を作成して明らかにした。また文献資料及び聞き取り調査により、各地の能楽関連施設の沿革や利用実態に関する最近の傾向を把握した。従来の地方能楽史研究には他地域との関係が視野に入っていないことを指摘し、それらを補う多くの資料を発掘した。能楽史研究の成果を同時代の文学作品の成立にどう関わらせるか、という視点で両者の融合のモデルを『歌行燈』論で作り上げた。
著者
亘理 陽一 三浦 孝 永倉 由里 鈴木 章能
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、平成21年3月告示の高等学校学習指導要領「外国語」の方針に則り、普通科高校における英語授業の改革の具体的モデルを示すことである。多くの普通科高校で行われている訳読と文法説明一辺倒の授業を克服して、本来のコミュニケーション能力を育て、なおかつ進路選択のニーズにも対応でき、しかも英語という教科の特徴を生かして生徒の知性を高められる授業のモデルの開発である。改革モデルは教材・授業運営法・言語活動の3領域にまたがって開発し、実際に高校の授業において学習効果を確認した上で、その成果を出版物や研究発表会を通して広く全国に還元した。
著者
可部 明克
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

感性刺激で脳を鍛えることにより認知症の予防などに役立てることを目的として、人間の生活空間の中で使用するロボットシステムを開発した。特にスヌーズレンと呼ばれるヒトの五感を刺激するデバイスを使用したことに加え、そのデバイスと連動しながら、ユーザとのコミュニケーションを行う赤ちゃん型ロボットやパンダ型ロボットを試作開発した。さらに展示会に出展して幅広く公開し(2009国際ロボット展、2011国際ロボット展等)、市場のフィードバックにより機能を評価した。
著者
永井 良三 MOHAMMED RAMADAN MOHAMMED Ramadan
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では、酸化修飾・変性の評価法を開発し、病態解明ならびに新算法の開発を行う計画である。生活習慣病に代表される経年的な変性病態において、蛋白質の酸化修飾・変性は中心的な役割を果たす。蛋白質は酸化修飾を受けると16Daの質量増加を示すが、微細な変化のため従来検出不可能であった。しかし、最近の質量分析技術により、酸化修飾をはじめとする翻訳後修飾による蛋白質の微量な質量変化の検出、測定が可能となった。本研究では、質量分析計を使用した蛋白質の酸化修飾・変性の測定法を開発する。さらに、その臨床的意義を検討し、さらに臨床応用が可能な診断法を確立することを目的とする。具体的なワークフローは、(1)患者から血液を採取し、(2)蛋白質の酸化修飾を質量分析計で検出し、(3)酸化蛋白質を包括的に解析するとともに、特定の疾患蛋白質(リボ蛋白質LDL,HDL等)の酸化修飾を.検討する。次に、(4)疾患病態発症のメカニズムを解析し、酸化修飾の臨床的意義を動脈硬化性心血管疾患患者(虚血性心疾患、心不全)で検討し、(5)病態における役割の解明ならびに診断測定系としての臨床応用を図る。平成21年度は、ELISA法を用いて血液中の酸化LDLの代表的な構造の一つであるMDA-LDL(マロンジアルデヒド修飾LDL)濃度の測定法を確立した。ELISA法によるLDLのMDA化の定量は、後にプロテオミクスによる酸化修飾・変性を解析する際の指標となる。ELISA法確立の後、実際の患者および健常人血清を用いた検討を行った。基本的には患者(心血管疾患)対健常人の差を疾患別に解析した。冠動脈形成術後の再狭窄、虚血性心疾患、心不全等の動脈硬化性心血管疾患患者とMDA-LDL値との相関解析を中心している。まだ、解析開始後数ヶ月程度であることから十分なサンプル数が得られていないが、次年度に継続することにより、疾患との相関関係が明らかになる。
著者
井ノ上 寛人
出版者
東京電機大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

近年の高画質ディスプレイの普及に伴い, 映像コンテンツの需要は今後も拡大する傾向にある. このような市場の動向から, 生産者側には映像コンテンツの効率的な制作が求められており, その対策の一つとして, 3DCG(三次元コンピュータグラフィックス)の分野では, カメラの自動制御技術に関する研究開発が進んでいる. しかし, 従来までに提案されているシステムは, (A)小画面で観賞した際に迫力感を与える動的カメラワークを構成したが, その動きを大画面で観賞すると酔いや疲労感を生じさせる可能性がある, (B)反対に, 大画面で観賞した際に迫力感を与える動的カメラワークを構成したが, その動きを小画面で観賞するとつまらなくなる可能性がある, といった課題を抱えており, 安全面と品質面において更なる検討を必要としているのが現状といえる, 本研究は, 観賞時の視距離や画面サイズ(画角)をCGカメラの制御パラメータとして取込み, 「観賞条件」と「映像表現上の意図/目的」に応じて, CGカメラを最適に自動制御できるアルゴリズムの開発を目的とする.本年度は, 当初の計画通り, 「演出効果」を高める制御方法を開発するため, 運動知覚に関する評価実験を行った. その結果, (1)映像コンテンツの「演出効果」を高めると考えられるベクション(視覚誘導性自己運動感覚)は, 思考を伴う注意によって阻害されること, (2)中心視付近では, 周辺視付近に比べ, 実際の微小な運動及びフレーザー・ウィルコックス錯視群の錯覚運動のどちらも知覚され難いこと, を明らかにした. また, 当初の研究計画に加えて, (3)映像コンテンツの字幕の適切な表示方法は, 画面サイズに応じて異なることを見出した.
著者
白石 三恵
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

ヘルスビリーフモデルを活用した妊娠中期の栄養指導介入により、介入群ではたんぱく質、ビタミンB6、ビタミンB12のエネルギー調整栄養素摂取量が妊娠中期から妊娠末期に増加する傾向が見られ、n-6系多価不飽和脂肪酸は減少する傾向が見られた。しかしながら、妊娠中期から妊娠末期の栄養素摂取に有意な変化が見られた栄養素はなかった。一方で血中濃度については、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、葉酸、25-ヒドロキシビタミンDが、介入群では対照群に比べ、妊娠末期に有意な増加が見られた。今後は、栄養素摂取量・血中濃度の向上に最も効果的である介入時期、介入回数を検討する必要がある。