著者
永井 義雄 関口 正司 下川 潔 山内 友三郎 有江 大介 音無 通広 姫野 順一
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

3年間にわたる本研究の最大の目標の1つは、功利(公益)主義の古典原典、それも出来れば未刊の草稿に遡って研究を拡大、深化させ、その成果を国際的に問うことであった。幸い、ベンサム草稿のマイクロ・フィルムを一括購入出来、ロンドン以外でこれを持つのは、日本が最初ということになった。永井、音無、有江、深貝、堀田、桜井、市岡、近藤、立川らは、これによって研究をすすめ、前6名は、その成果を第5回国際功利(公益)主義学会(ニューオーリンズ、1997年3月)で発表した。その後、研究協力を仰いだ坂井、奥野、児玉らがこの線にそって新たに研究を開始している。他方、いま1つの目標は、実践道徳として今日生きている功利(公益)主義が理論的、実践的にいかに機能しているかを確認し、今後さらに人類の福祉と地球環境の保護のために功利(公益)主義をいかに理論的、実践的に展開していくべきかを、考察することであった。この点でも、もちろん、国際交流は必要であって、山内は、オーストラリア国立大のシンガー教授と連携しつつ、生命倫理の問題で研究を深め、樫(研究協力者)もシンガー教授の著書を翻訳して、この面での功利(公益)主義的思考の意義を広めた。理論面では、永井、有江、深貝の3名は、1996年9月、ロンドン大学において、バリー教授の著書(Brain Barry,Justice as impartiality)をめぐっての、日英合同研究会に参加し、それぞれおよそ、1時間半の質疑応答をおこなった。これには、バリー教授自身が参加したのみならず、ローゼン教授、スコフィールド、ケリ-、クリスプ各博士など、約15名がイギリス側から討議に参加し、日本側には他5名が参加した。こうした研究会活動の結果、およそ、国際学会における日本からの発信については、国際的に一定の評価を受け、日英合同研究会の基礎も、一応固まったように思える。若手の研究者も、現れつつあり、今後の一層の理論的、実践的展開が期待される。1998年7月、待望の日本功利(公益)主義学会が旗揚げ出来るようになったのも、3年にわたる本研究補助があり、そのお蔭で研究会を継続できたからである。
著者
川崎 晴久 川﨑 晴久 (2013) ABADZHIEVA Emiliya EMILIYA Abadzhieva EMILIYA Abadzhieva
出版者
岐阜大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

ロボットハンドに適用できる高性能減速機の研究開発を狙い,ベベルギヤをヘリコン型と運動学的に同等の双曲面ギヤに変換できる数学モデルを構築した。ヘリコンギアドライブは, 特殊な最適な構造と幾何学的特性を選択することでシンセシスでき, CADでモデル化できた. このとき,重複する係数の増加に関連する問題の解を見つけ,相手歯車間のバックラッシュを制御するための前提条件を明らかにし、その数学モデル化,解析法や設計法の確立等に取り組んだ.開発した設計手法の新規性は,へリコンギア減速機がバックラッシュが殆どなく,小型に構成でき,かつ減速比を60:1と大きく取れることにあり,最適なシンセシスによるロボットハンドへの技術的な実現という挑戦的な課題に取り組んできたが、実証の段階に至っていない.今後,開発した数学モデルをロボットハンドの減速機構に実際に適用してモデルの有効性を示せるように,更なる発展に期待したい. さらには,ロボットの動的運動を確実に伝達する伝達モデルや交合歯の間の反発制御を含んだ実証的なCADモデルの開発の実現に向けた研究により, ロボットハンドの減速機構の開発に役立つことを期待している.
著者
城谷 一民
出版者
室蘭工業大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2001

スクッテルド鉱型化合物LnT_4X_<12>(Ln = lanthanide, T = transition metals, X = P, As, Sb)は超伝導、金属一絶縁体転移、強磁性や反強磁性など多様な物性を示すうえ、熱電材料など実用面からも注目される興味深い化合物である。これらはスズフラックス法を用いて合成されるのが普通であるが、我々は高圧合成法を用いて多くの新スクッテルド鉱型化合物の開発に成功し、大きな成果を上げている。しかし単結晶の作製は行っていなかった。精密な物性研究には単結晶が不可欠である。スズフラックス法では単結晶の育成は可能であるが、大きな単結晶を造るのが難しい。中性子回折や超音波の測定には大型の単結晶を必要とするので、スズフラックス法は適当でない。我々はすでに黒リンの大型単結晶を高温、高圧下で育成させることに成功している。この技術を用いれば、スクッテルド鉱型化合物の単結晶の育成ができると考え、比較的単純で融点も低いCoP_3を取り上げた。CoSb_3は熱電材料としては最も研究されており、当然のことながら同族のCoP_3にも注目が集まっている。キュウビックアンビル型高圧装置を用い、CoとPを化学量論的にとり、高圧装置にセットして、3.5GPaまで加圧する。その後、温度を1100℃まで上昇させて、CoP_3をまず合成する。再び加熱して1600℃まで上昇させてCoP_3を融解した後、1分に約1℃の割合でゆっくりと温度を低下させる。約1000℃になった所で急冷した。取り出してみると大型単結晶の育成が認められた。ラウエ写真でも単結晶のスポットが見出された。スクッテルド鉱型化合物の高温高圧下における単結晶の育成は世界で初めて行われたものなので、現在特許を申請中である。CoP_3の熱起電力、電気抵抗率、熱伝導率なども測定し、熱電特性を評価し興味深い結果を得ている。
著者
加藤 滋子 脇 嘉代 中村 禎子 長田 早苗 藤田 英雄 李 花映 小林 春香
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2型糖尿病患者を対象に、基準となる料理画像を見て、料理単位で栄養素等摂取量を推定するマニュアル(主食料理)を開発した。基準量や料理リストなどいくつかの修正が必要であるが、有用性ならびに有効性が示唆されたさらに、スマートフォンアプリ(DialBetics)で撮影した料理画像を用いて、管理栄養士によるアプリの栄養素等摂取量の推定の有効性についても検討した。アプリを用いた料理名およびエネルギー・栄養素等摂取量の推定は料理グループとして有効であることが示唆された。
著者
光延 聖 白石 史人
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

海底下微生物は活性が著しく低いことなどから、その解析が地球上で最も困難な生態系と言われており、基礎的な代謝反応ですら未解明である。この現状を打開するために、本研究では、2つの最先端分析法(走査型透過X線顕微鏡と蛍光in situハイブリダイゼーション法)を組み合わせることで、海底下微生物の分析に特化したシングルセル(1細胞)レベルでの金属化学種分析法を確立した。
著者
浅井 史敏
出版者
麻布大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

新規の糖尿病モデル動物であるWBN/Kob-Lepr^<fa>ラットを用いて病態の特性およびヒト糖尿病患者において血管リスクの大きな要因である血栓機構について検討した。このラットでは生後2~3ヶ月の早い時期から肥満・インスリン抵抗性・膵β細胞の傷害および血栓バイオマーカーの変動などヒトの2型糖尿病と類似性が高い病態が発現することが明らかとなった。WBN/Kob-Lepr^<fa>ラットは糖尿病研究に有用性が高いと期待される。
著者
西山 浩司
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,玄海灘からの海風進入に伴って気温,水蒸気,風向風速の変化と局地雷雲発生との関係を明らかにすることを目的に3年間観測を行ってきた.即ち,水蒸気の観測網を充実させることで,局地雷雲の発生を捉えようという試みを行ってきた.しかし,水蒸気量の変化と雷雲の発生を関連づけることが一部可能であったが,多くが不明瞭であった.このことは,観測期間中に,夏型の典型的な雷雲発生が不活性な気象状態が多かったことにも起因する.よって,統計的に明瞭な結果を導くために,科研研究期間終了後も観測は継続する予定である.今後は,水蒸気観測ネットワークとその他の気象情報を組み合わせた情報に基づいて,雷雲発生との関連性を抽出する.以上不明瞭な観測結果であったが,次に述べる数値実験及び解析を通じて,この研究における課題を認識することができた.最初に,局地気象モデルを用いて地表面状態の違いを考慮した鉛直安定度の時空間推移を計算した.その結果,海風の鉛直循環が水蒸気と熱を再配分し,鉛直安定度に強く影響していた.また,夏季の気象場をパターン認識アルゴリズムを利用して分類した結果,夏季の雷雲発生パターンと関連性する気象場が大まかに認識できた.以上から,大規模な気象場から得られる特徴,局地循環の特徴,地形の影響,時々刻々変化する日射と斜面との関連性をパターン化して,水蒸気ネットワークから得られる情報(気温と水蒸気量によって推定される鉛直安定度の推移)を組み合わせることによって,局地雷雲の発生と捉えることが有効であると考えられる.
著者
水田 惠三 清水 裕 西道 実 田中 優 堀 洋元
出版者
尚絅学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

仙台市、新潟中越両地区に防災意識に関するアンケート調査を行い、両地区の比較を行った。ランダムサンプリングにもかかわらず仙台、新潟中越両地区の回収率は5割近く、両地区ともに防災への意識は高い。両地区とも防災の主体は50歳代以上の方である。両地区においては災害伝言ダイヤルへの関心は少なく、さらに携帯電話が通じない場合の家族との連絡方法、集合場所を確認していない。発災後の情報源のほとんどはテレビであり、停電した場合(ワンセグは除いて)のことがほとんど想定されていない。仙台市民は家具の安定や自宅の耐震強度など防災のハード面に力を入れていたのに対して、新潟中越は地震に関する情報、家族での話し合いなど防災のソフト面に力を入れていた。仙台市民は地震による津波の被害はほとんど想定していなかった。
著者
尾田 正二 久恒 辰博 三谷 啓志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

亜致死線量の放射線照射よりも拘束ストレスの方がメダカ成魚の心拍により大きな影響を及ぼしたことから、低線量の放射線照射が脊椎動物の自律神経に与える影響も極めて小さく誤差レベルと結論する。ただし低線量率での慢性的な放射線の影響は未検証であり今後の課題である。マウス頭部への高線量放射線照射によって認知機能の一過的な低下を確認した。メダカ稚魚、成魚の遊泳を自動追尾して軌跡を数値化する手法を開発し、首都圏ホットスポットでの空間線量に相当する極低線量率にてメダカ胚、稚魚、成魚を慢性照射し、その高次脳機能への影響を検証・評価する手法を開発した。低線量慢性曝露実験の実施が将来のタスクとして残された。
著者
山田 昌弘 開内 文乃
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

国内での結婚が減少する中、海外で日本人女性と外国人男性、特にアジア人男性との結婚が増加している。その理由と実態を明らかにするため、国際結婚をしている日本人女性約79人にインテンシブなインタビュー調査を行った。グローバル化している中、海外に出ていく日本人が増えることが背景にある。そして、彼女たちの語りの中で、日本企業での女性差別体験、そして、日本人男性が恋愛に消極的であることが、繰り返し述べられた。日本社会での女性が活躍できない環境、そして、日本の不活発な恋愛状況が、女性を海外に活路をもとめさせ、そして、国際結婚を増加させる要因となっていることが推定できる。
著者
本村 裕之 今西 衞
出版者
日本文理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

既存研究においては、海外旅行の準備期間において数次のプロセスを経るものとの考えがあった。しかし今回の研究において、東アジア、特に中国から九州エリアへの渡航観光客に関しては即時性を伴った意思決定・行動が行われ、従来型の観光需要モデリングがそのままでは適応しづらい状況を発見することが出来た。この現象が、東アジア・九州間で特有の現象なのか、他地域にも適応できる現象なのか、新たな視点の提供を行うことが出来た。
著者
武田 誠郎 田邉 修 有木 政博 碓井 裕史
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

ヒト赤血球に、当教室で新たに見い出したタイプ2Aプロテインホスファターゼはα_1β_1δ_1のサブユニット構造を持ち、α(34kDa)が触媒サブユニット、β(63kDa)とδ(74kDa)が調節サブユニットである。本年度は74kDaδサブユニットの機能解析のための基礎的実験を重点的に行った。純化したα_1β_1δ_1からδとα_1β_1をヘパリン・セファローズカラムを用いて分離した。δとα_1β_1を0.5M NaCl存在下で混合し、α_1β_1δ_1とα_1β_1を完全に分離し得る条件でスーパーデラックス200のゲル濾過を行うと、一部α_1β_1δ_1が再構成された。一方、δはA-キナーゼまたはC-キナーゼでリン酸化されることを当教室で明らかにしているので、δとα_1β_1の結合に及ぼすδのリン酸化の影響を見た。その結果、A-キナーゼによるδのリン酸化が、δのα_1β_1への結合を促進することを見い出した。現在、再構成されたα_1β_1δ_1の性質を詳細に調べている。他方、δの組織分布やcDNAクローニングのために、δに対する抗体を作製した。上述の方法で単離したδをリビ・アジュバンドシステムを用いてマウスの腹腔に投与し、δに特異的な抗体を得た。この抗体はラットの70〜72kDaのタンパク質と特異的に反応する。ウエスタンブロット法で、これらのタンパク質の組織、細胞内分布を解析中である。一方、この抗体を用いてヒト骨髄cDNAライブラリーからこの抗体と反応するタンパク部分に対応するDNA断片を含むクローンをスクリーニング中である。δのcDNAのクローニングによる一次構造の決定、δのcDNAをプローブとしたノーザンブロット法によるδのmRNAの組織分布、δとα_1β_1の解離、再構成によるδのリン酸化の意義を明らかにし、δの機能を解明する。
著者
桐山 勝枝 柳 奈津子 戸田 美紀 橋本 三智重 柴田 明子 時田 潮
出版者
群馬大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、ヒーリングタッチによって生じる生理的・主観的効果を検証することであった。生理的反応では、ヒーリングタッチを施術する者のバイタルサインや唾液アミラーゼの数値が上昇し、ヒーリングタッチを受ける者の数値が下降する傾向がみられた。主観的反応では、ヒーリングタッチによるリラクセーション効果の他にも様々な反応がみられた。生理的反応と主観的反応を確認することにより、ヒーリングタッチは数値では測定できない反応が多くあることが示唆された。
著者
山辺 弦
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

2008年度は予定通り、三次資料の読み込みを基に研究計画を発展させ、その成果の一部を発表することを主眼に置いた。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻の学術雑誌『年報地域文化研究』第12号に掲載を許可された論文はその具体例である。ビルヒリオ・ピニェーラの小説『圧力とダイヤモンド』を「デイストピア性」というキータームを軸に論じた本稿は、文学テクストを具体的歴史状況に照らして分析するという研究意図を実現しつつ、先行研究において欠如していた新鮮な論点が見える点を高く評価されまたレイナルド・アレナスの小説『襲撃』における同様の特徴を論じた私の過去の論文と相神的な形で両者の文学的類縁性を明らかにした点でも、本研究の予想以上の進展を示すきわめて重要な成果であった。「デイストピア性」という概念は研究計画における出発点の一つであった「自己転覆性」という概念と結びつくものであるが、同様にレサマニリマとの比較、あるいは「分裂症的横断」という他の論点についても様々な形で有益な論の発展を見ることができた。2009年3月に実施したスペインの研究旅行では、ピニエーラ研究の第一人者であるMercedes Serna氏と面会しそれまで入手が困難であった希少な資料の提供および有益な助言を得た。同様に現代キューバ研究において最重要な雑誌Encuentro de la Cultura Cubanaの編集長Luis Manuel Garcia氏、ならびにキューバ文学関連書に強い出版社Verbumの主催者であるPio Serrano氏といった重要な人物と面会を許され。多数の資料提供を受けたことも、特別研究員制度が与える経済的支援及び学術的信用の帰結した研究活動の成果として特筆されるべきものである。その他の活動としては、数多くの読書会や研究会に出席してキューバ文学の精読と研究発表を精力的に行った。上記の論文もこのうちの一つでの口頭発表に基づいて執筆されるなど、これらの活動も研究成果に直結する有意義なものであった。
著者
小島 尚人
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、同時多発型・斜面崩壊危険箇所評価支援を目的として、リモートセンシングを導入した誘因広域逆推定アルゴリズムを構築し、その活用方法を示したものである。研究成果は以下の2つの項目に大別される。①平成24年度:斜面崩壊形態別(表層崩壊、深層崩壊、地すべり)・誘因逆推定アルゴリズムの構築、②平成25年度:源頭部斜面崩壊危険箇所評価支援を目的とした誘因逆推定アルゴリズムの構築。構築したアルゴリズムを通して得られる「誘因影響図(誘因逆推定図間の差画像:感度分析)」を用いれば、複数の崩壊形態間の誘因影響を同時に分析でき、同時多発型・潜在危険斜面の広域推定支援策の一つとして寄与できることを示した。
著者
赤松 利恵
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,行動科学の観点を取入れた子どもの食育の確立と普及を目指し,発達段階に応じた子どもの食行動の検討と食育の教育内容および教材の開発を目的に研究を進めてきた。特に,本研究の主目的である行動科学を取り入れた食育プログラムについては,幼児を対象とした偏食の改善プログラムと小学生を対象とした給食の食べ残しに関するプログラムを教材と共に開発し,研修会等を通じ,教材およびプログラムの普及啓発も行った。
著者
齋藤 彬夫 大河 誠司 熊野 寛之
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ダイナミック型氷蓄熱システムにおける,細氷貯蔵時の氷充填層の透過率変化と圧縮に伴う特性変化について検討を行った.試料には,削氷機で細かくした後,ふるいで選定した氷粒子を使用した.0.5〜1.0mm,1.0〜1.7mm,1.7〜2.8mm,2.8〜4.0mmの4種類の氷粒子を,円筒管に充填し,0℃の貯蔵層内に24時間保持し,貯蔵前後での充填層の透過率の測定を行った.貯蔵前の空隙率と透過率の関係は,Kozeny-Carmanの式により表されること,また,貯蔵後の空隙率は減少するものの,透過率は逆に増加する傾向にあることを明らかとした.これらの傾向を評価することを目的として細氷形状の顕微鏡観察を行うことにより,貯蔵により透過率が増加した原因は,Kozeny-Carmanの式中に使用される試料層中の流路のねじれに関係する係数であるKozeny-Carman定数が減少したためであることが分かった。さらに,氷水充填層では浮力に伴う圧縮力が氷に作用することから,細氷充填層に荷重をかけることにより,その充填層の圧縮特性と透過率変化について検討を行った.その結果,荷重有無に関わらず,いずれの粒子径においても,空隙率に違いはあるものの空隙率と透過率の関係が同じ係数を用いたKozeny-Carmanの式と良い一致を示していることから,貯蔵後の透過率は,荷重の有無に依存せず,空隙率で決定されることがわかった.以上の結果を踏まえ,荷重の大きさによる空隙率の変化と,その空隙率から貯蔵前後の透過率変化が予測可能であることがわかり,貯蔵直後では空隙率の減少により透過率が減少するものの,貯蔵後半に氷粒子の形状変化などに伴い透過率が増加する特徴的な現象を把握することができた.さらに,実機における貯氷タンクを想定してシミュレーションを行い,貯蔵に伴う細氷充填層の特性を把握を行った.
著者
椙村 益久 大磯 ユタカ 笹井 芳樹 長崎 弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

申請者は最近、プロテオミクス解析などの手法を用いて病態の詳細が未だ不詳であるリンパ球性漏斗下垂体後葉炎(LINH)の新規病因自己抗原候補76kD蛋白を同定した。本研究では、LINH における76kD蛋白の自己免疫機序への関与、及び76kD蛋白のバゾプレシン(AVP)分泌機構障害への関与を検討した。76kD蛋白をマウスに免疫し、下垂体の炎症を示唆する所見が得られた。また、マウスES細胞よりAVP産生細胞(ES-AVP細胞)を選択的に分化誘導し、ES-AVP細胞で76kD蛋白を発現が認められ、76kD蛋白のAVP分泌への関与が考えられた。
著者
荻野 弘之 早川 正祐 佐良土 茂樹 波多野 知子 三浦 太一 荒幡 智佳 桑原 司 赤堀 愛美 ロウ クリストファー チャールズ デイヴィド ヴォルフ フランシス フェラーリ ジョン ロング アンソニー
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

1980年代の「徳倫理学」の復興以来注目されているアリストテレス倫理学を、従来のように、単に『ニコマコス倫理学』だけで解釈するのではなく、『エウデモス倫理学』『大道徳学』『徳と悪徳について』といった(参照される機会が殆どなかった)複数の著作やヘレニズム時代の偽作との比較検討を含めて、成立史、影響史を立体的に考察する。この作業を通じて、「善美」「思慮」「幸福」「友愛」などの諸概念をめぐるアリストテレス倫理学を単なる一枚岩の体系としてではなく、複雑な可能性の芽を孕んだ思想の培養基として理解する道を開く。これによって最近の英米でのアリストテレス研究の水準に追いつくことが可能になった。
著者
彭 國義 清水 誠二 TRYGGVASON Greater 小熊 靖之 西方 博紀 石﨑 賢至 岡田 邦宏 伊藤 隆之 和久井 彩香
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

福島第一原発など廃炉に決まった原子炉の解体作業に水中構造物の切断工法が不可欠となるが,強力なアブレシブ・サスペンション・ジェット(以下,ASJ)を水中切断に用いた場合,スタンドオフ距離の増加に伴ってその加工能力が急激に衰えることが課題になっている。水中ASJ の性能向上を図るため,本研究では,通気鞘付きノズルを用いて気泡流被覆水中ASJの生成手法を確立し,流れの構造解析および水中切断実験によって通気鞘の寸法と通気流量等の使用条件を検討した。