著者
大河原 良夫
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.169-177, 2006-09-25

法律が、患者の権利として、患者意思を尊重しその意に反する治療はできないとしているとき、患者はどの程度までの治療拒否ができるのか、生命に危険がある場合まで治療拒否ができるか。この問題は、フランスで最近まで未解決であった。2002年3月4日、患者の権利法が制定され、治療拒否権が新たな形で登場した。しかしその直後、これに抵抗するような形で、エホバの証人輸血拒否事件に関するコンセイユ・デタ2002年8月16日判決(命令)が、輸血断行は、説得など一定の要件を満した場合、自己決定権を侵害しないという判断を示した。これによって、同法制定以降も、患者の自己決定権は、「ハーフトーンの基本的自由」に留まるものとなったが、医業倫理法等との関係で、これらの規範抵触が、やはり医師を微妙な立場におくことに変わりはなく、2002年法は判例の流れを断絶しえなかった。しかし、フランス医事法(学)がこれまで積み上げてきた患者の諸権利を考慮するならば、この判決の射程は拡張されるべきでない。
著者
安田 八十五 白 永梅
出版者
日本マクロエンジニアリング学会
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.7-13, 2013

本研究の主たる目的は,レジ袋有料化政策による削減効果の有効性を実態調査によって明らかにし,さらに地域全体で有料化を実施するとレジ袋削減効果が高くなり,有効性が飛躍的に増大することをレジ袋の需要曲線が左下方にシフトするという「レジ袋需要曲線の構造変化」で明らかにすることである.安田は,レジ袋等の容器包装リサイクル問題の課題を容器包装リサイクル費用は一体いくらかかっているのかという問題と容器包装リサイクル費用は本来誰が負担すべきか,という二つの問題に設定し,諸外国の例も参考にして,拡大生産者責任(EPR)を明確にするよう提唱した.本論文ではレジ袋購入率を用いてレジ袋の需要曲線を推定し,レジ袋有料化政策が地域全体で実施されると削減効果が極めて高い結果,すなわち,「レジ袋需要曲線の構造変化」が示されることを明らかにする.
著者
楽木 章子 東村 知子 八ッ塚 一郎
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
no.25, pp.75-85, 2019-03-12

家族関係の多様化にも関わらず、今なお、大多数の日本人にとって、「家族とは血縁で結ばれた親子を基本にする」という直結規範(産むことと育てることを直結させる家族観)が、その根底にある。この家族観は、「血縁のない親子をも認める」という分離規範(産むことと育てることの分離を是認する家族観)と対立し、養子縁組家庭の存在を意識的・無意識的に疎外している。本研究では、圧倒的多数派(直結規範)による支配的言説と、これに対する圧倒的少数派(分離規範)の対抗言説を言説領域ごとに検討する。具体的には、(1)学校という空間における支配的言説とその対抗言説、(2)実父母に対する支配的言説とその対抗言説、(3)身近な人々による支配的言説とその対抗言説、(4)メディアによる支配的言説と対抗言説を取り上げ、これらを具体的な事例に即して検討する。
著者
中村 年子 遠藤 仁子 本間 恵美 平光 美津子 尾木 千恵美 片桐 晶子 鷲見 孝子 松尾 良克
出版者
東海学院大学・東海女子短期大学
雑誌
東海女子短期大学紀要 (ISSN:02863170)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.75-84, 1989-03-31
被引用文献数
1

1)漬け物を漬けている世帯は全体の80.8%であり,地域別では農村が最も多かった。高齢者のいる家庭では,いない家庭より漬けている比率が高かった。2)漬ける漬け物の種類は,塩漬けが78%と圧倒的に多く,ついで梅漬けであった。1世帯で漬ける漬け物の種類数は1〜3種類が過半数を占め,5種類以上漬ける家庭も33.8%あった。3)塩漬けにする食品は,きゅうり,白菜が最も多く,何れも60%以上の家庭で漬けられていた。漬けておく期間は1〜2日が71.4%と短期間のものが多く,長期間のものは僅かであった。4)梅漬けは毎年必ず漬ける家庭が60%前後あり,土用干しをする大梅・小梅が圧倒的に多かった。各年齢層別に梅を漬ける人の比率をみると61〜65歳が75.0%で最も高かった。高齢者がいる家庭のうち約70%は梅を漬けており,高齢者のいない家庭よりその比率が高かった。1回に漬ける梅の分量は,大梅・小梅ともに1〜4kgが多かった。塩分濃度は大梅・小梅(土用干し)とも,平均が約17%であり,塩分濃度の低いもの程焼酎を併用するものが多かった。5)漬け物を購入する家庭は全世帯の89.1%であり,漬ける・漬けないにかかわらず,ほとんどの家庭が購入していた。購入する漬け物の種類は,たくあん漬けが最も多く,ついで野菜類の塩漬け,福神漬け,梅干しの順であった。6)食事に漬け物が「必ず出る」は自宅で漬ける家庭では67.1%,漬けない家庭では31.2%であり,漬けているかいないかによって,その差が顕著であった。高齢者のいる家庭では,「必ず出る」が66.7%で,高齢者のいる家庭の方が漬け物が食事に出る頻度が高かった。7)漬け物の嗜好については「好き」と答えたものがほとんどであり,「嫌い」は僅かであった。年齢別では31歳以上はその70〜80%のものが「好き」で,30歳以下との差が顕著であった。8)食べる頻度は「毎日必ず食べる」と「1日1回以上食べる」とで全体の半数を占め,「全く食べない」は僅かであった。嗜好別では「好き」と答えたものは「毎食必ず食べる」41.8%,「1日1回以上食べる」32.5%で,好きでないものより圧倒的によく食べている。即席漬けにしょう油をかけるものが約70%あった。
著者
藤村 尚 坂口 雅範
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集 (ISSN:18848435)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.65-68, 2001

2000年10月6日午後1時30分頃, 鳥取県西部鎌倉山北西の地下約10kmでM7.3の地震が発生し, 日野町、境港市で震度6強, 鳥取市, 震度4, 倉吉市震度3を観測した (気象庁発表)。<BR>本報告では, この地震による被害のうち液状化被害について述べる。そこで、以前に行った地盤のデータベースと液状化のゾーニング結果を示し, これらの地盤情報と今回の平成12年鳥取県西部地震による西部地区での液状化地点の比較を行う。
著者
杉本 直樹 多田 敦子 黒柳 正典 米田 祐子 尹 永淑 功刀 彰 佐藤 恭子 山崎 壮 棚元 憲一
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.56-62, 2008
被引用文献数
5

グレープフルーツ種子抽出物(grapefruit seed extract: GSE)は既存添加物名簿に収載されている天然添加物である.最近,GSEが食中毒の原因ウイルスとして重要なノロウイルスに対する不活化効果を有することが報告されて以来,食品業界で注目されている.一方,海外において,GSE中に合成殺菌剤である塩化ベンゼトニウム(BZT-Cl)または塩化ベンザルコニウム(BZK-Cl)が検出されることが報告されている.そこで,われわれは,わが国に流通しているGSE製品の実態を早急に確認するため,食品添加物(6社13製品),化粧品配合剤(10社16製品),GSE配合健康食品(4社5製品)および除菌・消臭スプレー(7社7製品)中のベンゼトニウム(BZT)およびベンザルコニウム(BZK)の存否についてNMRおよびLC/MSにより調査した.その結果,41製品中38製品よりBZT(食品添加物からBZT-Cl換算で最高39.1%)またはBZK(食品添加物からBZK-Cl換算で最高13.9%)が検出されたことから,わが国に流通するGSE製品の多くがBZTまたはBZKを含有している可能性が高いと考えられた.
著者
金山 剛 大平 雄一 新井 由起子 小園 広子 千代 憲司 植松 光俊
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.F3P3581-F3P3581, 2009

【目的】高気圧・高濃度酸素セラピー(以下、酸素セラピー)は、溶解型酸素を効率よく体内へ吸収し、毛細血管まで酸素供給が可能なことから、疲労回復など様々な効果があることが知られている.実際にアスリートからモデルなど数多くの人に実施されており、その効果がメディアなどで報道されている.しかし、これらを定量的な指標を用いて検討した報告は少ないのが現状である.本研究では、酸素セラピーによる血圧、脈拍、視力の変化について検討することを目的とした.<BR>【方法】対象は当センターにて酸素セラピーを実施した88名(男性45名、女性43名)、平均年齢42.3±13.5歳とした.平均実施期間は11.3±35.3日、1ヶ月の平均利用頻度は1.2±2.8回であった.事前に十分に説明を行い、同意を得た上で実験を開始した.<BR> 酸素セラピーには、高気圧・高濃度酸素カプセル(Take Heart社製CocoonO2)を用いた.1回の実施時間は60分とし、実施肢位は背臥位とした.開始より10分かけてカプセル内の気圧を1.2気圧まで上昇させ、終了5分前から5分かけてカプセル内の気圧を通常気圧まで減圧した.評価項目は収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍、視力とした.測定手順は、酸素セラピー開始前は血圧及び脈拍数、体組成(体重、体脂肪率、基礎代謝量)、視力の順に計測し、酸素セラピー終了後は視力、体組成、血圧及び脈拍数の順に計測した.測定においては特に休息時間などは設けなかった.<BR> 統計処理は、1~5回目の酸素セラピー実施前後比較にpaired t-test、Wilcoxon signed rank testを用いた.また、1回目の酸素セラピー実施前と5回目の酸素セラピー実施後の比較も同様の処理をした.各指標における酸素セラピー実施前の値と酸素セラピー実施前後での変化量の関係についてピアソンの相関係数を用い、有意水準は全て5%とした.<BR>【結果】収縮期血圧は3回目のみ、酸素セラピー実施後に有意に低下した.拡張期血圧は全てにおいて有意な変化は認められなかった.脈拍は1,2,4,5回目において、酸素セラピー実施後に有意に低下した.視力は1回目の酸素セラピー実施後と、1回目と5回目の比較において有意な改善が認められた.酸素セラピー実施前の値と酸素セラピー実施前後での変化量の関係については、全ての指標において有意な負の相関関係を認めた.<BR>【考察】脈拍数は酸素セラピー実施後低下することが明らかとなり、酸素供給の増加やリラクゼーション効果によるものと推察される.視力においては1回目の実施で改善し、その効果が5回目まで維持されていた.この事は、眼は脳とならんで毛細血管に富んでおり、酸素セラピー実施での溶解型酸素の増加による効果であると考えられる.また、血圧及び脈拍は実施前の値が高い者程低下しやすく、視力は実施前の値が低い者程改善しやすい事がわかった.
著者
髙木 健志
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学学術情報 (ISSN:21894825)
巻号頁・発行日
no.12, pp.89-96, 2019-03-29

本稿は、農山村の状況を概観した上で、先行研究と照らしながら、農山村の生活とその福祉的課題について検討していくことを目的とした。農村社会学をはじめとした社会学における先行研究からの知見では、農山村に暮らす人口そのものは減じているものの、人口還流などの現象によって、集落が持つ節目節目の催しや集落の維持管理のための作業が行われていることがあきらかとされている.しかし、農山村をはじめ中山間過疎地域における福祉的課題に関連した研究においては、高齢者に注目した研究が多く、子どもから成人や老人までが生活している生活実態にそった研究状況とはいえない側面があることが明らかになった。