著者
神沼 克伊
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.205-226, 2000-07

西南極・サウスシェトランド諸島付近は南極プレートの中でも最も活動的なテクトニクスの地域である。その地域のテクトニクスやサイスモテクトニクスを調べ, 発展させるためには, そこに点在する各基地での地球物理学的な観測や研究の現状を把握し, そこでどんなデータが得られているかを確かめておくことが必要である。平成11年度(1999年)の南極条約の交換科学者としてキングジョージ島のチリ基地への訪問を希望したのは, 上述の背景とチリによる航空機での南極へのアクセスが可能だからである。幸いチリ南極研究所(INACH)は, 2000年1月に2週間, チリの基地への滞在を許可してくれた。筆者はチリ大学F. Herve教授の研究グループの一員として2000年1月5-19日, Base Frei/Escuderoに滞在した。筆者の活動はすべてINACHの傘下で行われた。南極に滞在中, 徒歩で行けるロシアのBellingshausen, 中国の長城, ウルグァイのArtigasの各基地を訪問した。湾を挟んで10km東の対岸にある韓国の世宗基地やさらに6km東にあるアルゼンチンのBase Jubanyへは, 世宗基地の好意により同基地のゾディアック(ボート)で行くことができた。Base Escuderoを除く6基地では, 気象観測を実施していた。Base Freiの地震観測はアメリカ・ワシントン州立大学によって行われている。地震や地磁気3成分の観測は世宗基地と長城基地とで地球潮汐はBase Artigasで実施されている。世宗基地は次年度からGPSや重力の連続観測を予定している。以上の他, 各国の1999-2000年の南極夏シーズンの活動状況や将来の共同研究に備えて, 各基地の設営関係の情報収集も行った。
著者
譲原 晶子
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.215-224, 2013-09
著者
明照 博章
出版者
松山大学
雑誌
松山大学論集 (ISSN:09163298)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.95-119, 2014-02-01
著者
杉本 渥
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.60-67, 1978-05-25
被引用文献数
3 12

久米島での不妊虫放飼実験のためのウリミバエ大量飼育法を設定するため,大量採卵法を検討した。<br>飼育個体群のとう汰を避けることに留意したが,野生の成虫は産卵開始が緩漫で,採卵能率上,とう汰して産卵前期間を短縮させることはやむを得なかった。しかし,従来は人工採卵器に適応させるためのとう汰も必要としたと考えられるが,筆者の採卵器はカボチャ果汁で濡らしたちり紙で内張りし,産卵孔を潤すことによって野生の成虫からもよく採卵できた。なお,この採卵器は内張り材料をポリエチレン網に変えることによって,使用方法を簡易化することができた。<br>成虫の飼料は蔗糖とたん白質加水分解物を分別給与するよりも,混合して与えるのが良いことを認めた。飼料のたん白分および飼育箱の収容虫数を多くすることは,成虫の排泄物による箱内の汚れを増して長期間の飼育採卵を困難にするが,短期間に多量に採卵する上には得策と考えられた。<br>試作大型飼育箱による採卵実験によって大量採卵の可能性を確認するとともに,小型飼育箱との比較から,飼育箱の成虫収容能力は箱の容積よりも内壁面積に比例すると推測した。この結果に基き,週450万個を採卵する方法を計画し,そのための成虫飼育箱を設計した。<br>今後の課題として能率面での改良のほか,個体群とう汰軽減の見地から成虫の液状飼料の使用方法を再検討すること,飼育個体群への野生虫の遺伝形質の補給手段,大量採卵用とは別に遺伝形質・習性保持のための飼育システムを設けることなどが重要と考えた。
著者
藤井 至 藤田 武弘
出版者
日本農業市場学会
雑誌
農業市場研究 (ISSN:1341934X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.41-47, 2015-06-30

Depopulation and Population Ageing in Japanese rural area are seriously progressing. In response, the concept of 'Social Capital (SC)' is attracting attention as the new means of facing these problems. The importance of SC is found in its potential for developing effects of the life of people and economy. Among of urban-rural exchange, 'Working Holiday in rural area (WH)' also carries out important tasks. WH means giving lodging and meals for city dwellers for free in exchange for working on a farm during busy seasons. It is said that farmers can get many opportunities to reappraise the value of their area seen through city dwellers eyes as compared to another urban-rural exchange on the basis of sharing time with the visitors, the so-called 'Mirror Effect' of WH. Therefore, this article conducted analysis of change of local communities from the point of view of SC using two questionnaire surveys and examples of WH in Tankou area, Iwate Prefecture, Japan. As a conclusion, four changes of local communities are confirmed as 'Mirror Effect' of WH. First, the potential of accumulating of SC in area and, second, vitalization of local communities. Third, expansion of new community activities and, finally, a reappraisal of the value of agriculture and rural area.
著者
宮田 圭悟 藤井 宏二 高橋 滋 竹中 温 李 哲柱 竹内 義人
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.3073-3076, 2001-12-25

右卵巣癌摘除後に発生した,左頸部転移および放射線照射後の上肢浮腫に対して,左胸肩峰動脈から鎖骨下動脈に向けて動脈注入用カテーテルを挿入し皮下リザーバーを留置,週1回4時間かけてグリセオール200mlを55回持続動脈注入したところ,左上肢は軟化し周径の縮小をみとめた.<br> ハドマー,マイクロ波照射にても軽快しない難治性上腕浮腫に対して,在宅グリセリン動脈注入療法は有用であった.
著者
岩田 修永 西道 隆臣
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.5-14, 2003-07-01
被引用文献数
1 6 5

アミロイドβペプチド(amyloid β peptide, Aβ)の蓄積はアルツハイマー病(Alzheimer's disease, AD)脳で進行的な神経細胞の機能障害を起こす引き金になる.しかし,ADの大半を占める孤発性ADにおいて,何故Aβが蓄積するのかは不明である.家族性ADと異なり,Aβ合成の上昇が普遍的な現象として認められないことから,老化に伴うAβ分解システムの低下が脳内Aβレベルを上昇させ,蓄積の原因となる可能性が考えられた.我々の研究室では,Aβの脳内分解過程をin vivoで解析する実験と分解酵素の候補になったプロテアーゼのノックアウトマウスの解析により,ネプリライシンがAβ分解の律速段階を担う主要酵素であることを明らかにした.ネプリライシンノックアウトマウスの脳では著しいAβ分解活性の低下と内在性Aβレベルの上昇が認められ,これにより初めて分解系の低下もAβ蓄積を引き起こす要因になりうることが実証されたのである.また,ネプリライシンは神経細胞のプレシナプス部位に存在し,正常老齢マウスを用いた実験で加齢に伴って貫通線維束と苔状線維の終末部位で選択的に低下することが分かった.このことは,海馬体神経回路の記憶形成にかかわる重要な部位で局所的にAβ濃度が上昇することを意味する.一方,ネプリライシンを強制発現した初代培養ニューロンでは細胞内外のAβが顕著に減少することより,分解系の低下を抑制することや分解系を操作して増強することが,加齢に伴うAβ蓄積を抑制し,アルツハイマー病の予防や治療に役立つことを示唆する.神経細胞におけるネプリライシンの活性あるいは発現は神経ペプチドによって制御される可能性が考えられる.神経ペプチドのレセプターはGタンパク質共役型であるので,薬理学的に脳内Aβ含量を制御できることが期待される.<br>
著者
森住 哲也 木下 宏揚 辻井 重男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.71, pp.97-102, 2008-07-17

この論文は,"多元的価値を持つ SNS 的な community (社会システム)" に組み込む情報フィルタ agent を設計する上で,なぜ哲学的考察が関与するのか,に関して述べる. agent は,covert channel を分析し,アクセス制御する. (1) セマンティック Web の情報検索やデータベース・スキームに使われる RDF (Resource Description Framework) は,『客体の存在の枠組みと,主体のアクセス行為の枠組みをグラフとして記述する"意味ネット"』 と見做せる. (2) 一方,主体の代理となってデータベースを管理する agent は 主体の認識行為,存在に対する主体の向き合い方が反映されなければならない. (3) しかし, agent は他の agent の意味ネット,即ち存在論と認識の規則が全て分かるわけではない.また, agent は自己自身に関しても世界の全てを意味ネットで記述可能ではない.(4) 従って, agent システムは,"RDF (意味ネット)で推論する agent の振舞い"に関して,存在論と認識論をオートポイエシス的なシステムの中で捉える必要がある.更に論文では,RDF をベースとするアクセス制御の哲学と,情報倫理との連関を指摘する.This paper describes why philosophical consideration takes part in designing information filter agent built into "SNS community (social system) with pluralistic value". Agent analyzes covert channel, and executes the access control. (1) RDF (Resource Description Framework) used for information searching and the data base scheme of semantic Web can be considered to be ' "semantic net" which describes the frame of the existence of the objects and the frame of the access act of the subjects as a graph'. (2) On the other hand, it is necessary to reflect the recognition act of the subject and the interpretation of existence by subject in agent which manages data base as deputy of subject. (3) However, agent doesn't understand all the semantic nets of other agent (that is, rule of existence and recognition).Moreover, agent cannot describe everything in the world with the semantic net for oneself. (4) Therefore, it is necessary to consider the agent system by ontology and epistemology in autopoietic system for "behavior of agent inferred with semantic net" And the relation between the philosophy of the access control based on RDF and information ethics is pointed out in this paper.
著者
井川 憲男 中村 洋 古賀 靖子 古城 真也
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.62, no.494, pp.15-22, 1997
被引用文献数
6 8

Suitable standard data on daylight and solar radiation are absolutely prepared and offered for the excellent energy saving interior environmental design. The first step of the modification of the data by real measurements into the useful standard data is to classify the sky, conditions when the data were gained. A proposal of a means is stated in this paper in order to divide the sky conditions into ordered categories. The sky conditions when the data were measured are arranged based upon the comparison with the sky, luminance distribution data obtained by sky scanning and the theoretical results on CIE(Commission Internationale de l'Eclairage) Standard Clear and Overcast Sky and Intermediate Sky by one of the authors. The sky conditions are finally classifred into Clear, Near Clear, Intermediate, Near Overcast and Overcast Sky. This Research work is deeply related to the IDMP(International Daylight Measurement Programme) promoted by CIE. Its result convinces authors of its great contributions to the progress IDMP and development of interior environmental design.
著者
太田 耕人
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:21873011)
巻号頁・発行日
no.129, pp.125-140, 2016-09

英国初期近代演劇の手紙の演劇的用法に迫るため,英国演劇の黎明期から17 世紀末までに英語で書かれ,テクストが現存して入手できる劇を調査し,手紙の用いられた例を収集した。この序論では15世紀までの用例を分析した。中世の典礼劇,サイクル劇などでは,当初"letter" は神の力や奇跡をしめす「文字」の意で使われ,やがて布告,令状など「公文書」の意味で用いられた。しかし,手紙を「差出人が(その場にいない)特定の受取人(たち)にたいして,何らかの情報を個人的に通信するため送る書面」と定義すると,「手紙」と呼べる"letter"の用例は見当たらない。識字率が低かった中世の民衆の劇に,手紙が現われないのは当然であろう。また,単純明快な寓意的図式を好む道徳劇には,手紙を利用した複雑な筋立ては必要なかった。 「手紙」が初めて現れるのは,1497 年の『フルゲンスとルクリース』であった。ルネサンスの人文学の洗礼を受けて,ギリシア・ローマ演劇を知る知識人が,ある程度の複雑さをそなえた劇を書いて,手紙が英国演劇に現われたと考えられる。
著者
三善 勝代
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.1-12, 2003-03-31
被引用文献数
1

有職既婚女性が夫の海外派遣に同行する場合、就労ビザ等との関係では職の断念が避けられない。途切れたキャリア(職業経歴)は、どう繋がれるのか。就業面を中心に帰国者のライフコースを辿り直し、併せて、現求職者の今後を展望してみた。2001年10月、帰国子女支援団体等を介して、在外期間1年以上で帰国後1年以上10年未満の配偶者に対し質問票を送付。有効回答票152部を郵送にて個別回収した(回収率50.2%)。回答者の平均年齢は43.5歳で、夫は46歳。夫婦1組あたりの平均子供数は2人である。派遣地域は北米、アジアが共に3割台を占めており、派遣元企業の業種では製造業が最多(35.5%)となっている。得られた知見は、次の通り:(1)結婚前には大多数が職を持っていた。(2)しかし、出国前3か月頃までには、結婚や出産・育児でそれを手放しており、有職者は2割未満に減少する。(3)さらに在外時には9名となり、現在に至って4割近くに回復する。(4)主要な就労形態と職種についても、前者は正規雇用から非正規へ、後者は事務職から専門・技術職へと推移していた。(5)この趨勢に基づけば、現在「適職なし」ゆえに無職となっている、いわば「求職者」(無職者の2割強)の就職はおそらく、就労形態としては非正規で、職種としては専門・技術職で、より容易に叶うと推測される。(6)現有職に至る職の有無歴として大別された3タイプの一つ「有職継続型」の存在からも、高度の専門性を身につけ働き方を工夫すれば継続就業が不可能ではないと示唆された。(6)とはいえ、自由記述欄を通しては、この型においてさえ、夫の後方支援と自身のキャリア形成を両立させるのは容易でないと読み取れた。
著者
佐藤 聡彦
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本マネジメント学会全国研究大会報告要旨集
巻号頁・発行日
no.64, pp.43-47, 2011-10-29

本稿では,専門経営者における「プロフェッショナル」に着目し,協働から人間や仕事における分業・分離の過大な重視,短期的な成長志向に基づく企業の極大(資本・企業)利潤の追求が行われ,専門経営者においては,粉飾や虚偽報告,高額報酬問題などに起因する社会を斯く不祥事が起こされている。かかる背景から,専門経営者における「プロフェッショナル」とは何か考察する必要があるのではないかといった問題提起を行った。筆者は,専門経営者の「プロフェッショナル」とは,「社会結合の専門化」として「人間」と「仕事」の両面を統一していくことであり,かかる両面の統一とは「精神」であると考えた。その「精神」とは,人間・社会への応答可能性を持って,社会的欲求に応える事業の遂行に対して「経営利潤」をあげる「企業家精神」である。すなわち,「企業家精神」のなかでも,事業を企業や経営を通じて歴史的社会的に作る「事業経営家精神」であるという結論に至った。