著者
木村 明生 峯川 好一 北浦 敏行 中野 宏秋 後藤 郁夫 池田 長繁 阿部 久夫 小野 忠相 中林 敏夫
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.789-796, 1987
被引用文献数
1

大阪空港検疫所において帰国時に下痢を申告した海外旅行者の腸管寄生原虫検索を行った. 1983年と1984年の2年間 (第1期) 及び1985年7月から1986年6月までの1年間 (第2期) に分けて検索を実施して, 次の成績を得た.<BR>1) 第1期調査は, 旅行期間が5日以上の1,256名についての検索を行ない, Giardia lamblia (39例) をはじめとして7種の腸管原虫を検出した (検出率3.9%).<BR>2) 陽性者の旅行期間は, 98%が10日以上であり, 30日以上の長期滞在者は全体の67.4%であった.<BR>3) 検出率には季節的変動が認められた.<BR>4) 第1期のG.lamblia陽性者39名中36名 (92%) がインドへ旅行しており, ついでタイ25名 (64%), ネパール16名 (41%) であった.インドまたはネパール旅行のG.lamblia陽性者中の70%以上は, それぞれの国で10日以上滞在していた.<BR>5) 第2期ではインド・ネパールへ10日以上旅行した者の178名について検索を行ない, G.lamblia 25例 (14.0%) をはじめ3種の腸管原虫を検出した.<BR>6) 両期間のG.lamblia陽性者64名のうち29名 (45.3%) から, 病原細菌や他の腸管原虫が同時に検出された.<BR>7) 第1期でのインド・ネパール10日以上滞在者中のG.lamblia陽性率は, 1983年12.9%, 1984年12.2%で, 第2期 (14.0%) とほとんど変りなかった.
著者
八杉 悦子 中西 和子 梶本 雅俊 大島 美恵子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.361-368, 1996

神奈川県横浜市在住中国人の男性41人 (平均年齢58.2±19.1歳), 女性48人 (50.4±15.9歳) の血清中の脂質 (総コレステロール, HDL-コレステロール, トリグリセリド), リポプロテイン (a), 脂肪酸を測定した。<BR>横浜市在住中国人の実測値と, 北京, 台北, シンガポール在住中国人の血清脂質量 (文献値) を比較すると, 居住地により差がみられた。横浜市在住中国人の総コレステロール量は, 北京在住中国人 (男女) や台北 (女性) より高く, シンガポール (男女) より低かった。横浜市在住中国人のリポプロテイン (a) 濃度分布は, 文献値による北京, 台北, シンガポール在住中国人と類似しており, 居住地による違いはなかった。横浜市在住中国人の血清脂肪酸組成については, <I>n</I>-6系多価不飽和脂肪酸であるリノール酸が最も多く含まれ, 次いでパルミチン酸, オレイン酸であった。特にリノール酸が34.7±4.3%(男女の平均値) と日本人と比較して非常に多いのが特徴であった。また, S/M/P比は1/0.73/1.6, <I>n</I>-6/<I>n</I>-3比は6.7±2.3で, <I>n</I>-3系の多価不飽和脂肪酸を多く含む日本人の血清とは異なっていた。
著者
山田 博之 小木曾 力 寥 健源
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.473-479, 1986
被引用文献数
3

歯の大きさ,とくに歯冠近遠心径ならびに頬舌径に関する研究はこれまで数多く報告されている.しかし歯の大きさに関する相関係数は歯冠近遠心径と頬舌径が別々に記載されているか,あるいはある特定の歯群について報告されているもので,歯冠近遠心径と頬舌径の相関係数をすべての歯種について表記したものは少ない.<br>今回,日本人と福建系中国人の男性と女性について歯の大きさの基本統計量と相関係数とを将来の比較資料として掲載した.これらの資料は日本人については山田(1977),小木曾(1982),福建系中国人については廖(1984)の上下顎石膏模型による歯冠近遠心径と頬舌径のデータである.なお,第3大臼歯の計測値は含まれていない.ここに掲載した基本統計量と相関係数行列は上記に示した歯の大きさの28計測項目すべてを含んでいる個体を対象に算出したため,すでに報告された結果と多少数値を異にしている.
著者
山下 明博
出版者
広島大学平和科学研究センター
雑誌
IPSHU研究報告シリ-ズ (ISSN:13425935)
巻号頁・発行日
no.42, pp.213-234, 2009-03

松尾雅嗣教授退職記念論文集 平和学を拓く
著者
松本 暢子 平野 あずさ
出版者
大妻女子大学
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 (ISSN:13417843)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.157-168, 2005

現在,多くの自治体では安全で利用しやすい公共トイレの設置が進められているが,実際の公共トイレは「危ない,臭い,汚い,暗い」といわれ,女性や子どもをはじめとして高齢者,障害者などは利用しにくい。そこで,本稿は,東京都新宿区の公共トイレのなかから公衆トイレ(26ヶ所)に注目し,現地観察調査を実施し,高齢社会において求められる多様なニーズに応える公共トイレのあり方を考察している。現地観察調査は,出入り口や施設構造,バリアフリーなどの施設条件,人目があるか,死角がないかなどの周辺立地環境,洗面台やブース内の設備・備品状況,清掃が行き届いているか,臭気はないかなど衛生状態についての把握を行っている。調査結果では,(1)すべてのトイレが不潔で危険なわけではなく,一部の問題のあるトイレでの管理方法を見直す必要があること,(2)不潔で危険なトイレの多くは施設や設備条件に問題があり,その改善が大きな課題であることが明らかになった。その結果にもとづき,(1)立地特性を踏まえ,商業施設等のトイレを含めた公共トイレ全ての配置を検討することと,(2)利用特性を配慮し,バリアフリー化や多目的な利用に応える施設設備条件の改善を進めること,(3)管理業務内容やその方法の見直しを行うことが必要であることを結論としている。さらに,施設設備条件の改善に取り組む際の問題として,施設設備の設計者と管理業務担当者の間の情報交換が不十分な現状を指摘し,情報の共有やフィードバックの必要性に言及している。さいごに,公共トイレの整備および管理の現状をとおして,公共空間の整備・管理の課題である「公共性の醸成」について考察し,住民参加による整備・管理が鍵となることを示唆している。
著者
郡司 尚樹 左近 さくら 上西 恵史 岡田 至弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, no.2, 1997-03-06
被引用文献数
3

パノラマ画像を生成する手段として多くの手法が考案されてきた。パノラマ画像の取り込みにはスリットカメラなどの特殊なカメラが従来は必要だったが、最近では分割撮影した画像を接合することによってパノラマ画像を生成するアルゴリズムが研究されている。しかし、大半は撮影時に制限を与えて生成する手法であり、制限なしに撮影した画像から生成する手法はあまり考えられていない。そこで本手法では、画像の位置解析手法としてオプティカルフローを用いたパノラマ両像生成法を示す。
著者
長田 龍介 頭川 峰志 木村 友厚 永原 詩乃
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.431-434, 2015
被引用文献数
1

A 45-year old male patient suffered mutilation of his fingers except for the thumb in the right hand, and a crush injury of the whole left hand simultaneously while operating a rolling machine. The right hand was reconstructed with a double 2nd-toe implantation. After training his pinch motion in the right hand, a myoelectric prosthesis was attached to the left hand. He used his right hand for pinching task and the left hand for grasping task. His DASH score was 173 before functional reconstruction of the bilateral hands, and it was 84 at 5 years after treatment. A comparison was made concerning the functional results between the right hand reconstructed with the toe transfer and the left hand with the myoelectric prosthesis in order to discuss the prognosis for each treatment.
著者
河内 秀樹
出版者
新潟大学
雑誌
現代社会文化研究 (ISSN:13458485)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.221-236, 2001-11

Three kinds of accent systems exist in the Tochigi prefectural area. One is the "No-pattern accent system", which can be seen in general all over the prefecture. The second is the "Tokyo accent system" which is most noticeable in the prefecture's Ashikaga city. The third, which is the "Ambiguous accent system", has characteristics of both the above mentioned accent systems and is mostly found in Sano city. This study investigates the characteristics of the present accent of the Tochigi prefecture which possesses all these three kinds of accent system. It also considers the influence which "the phenomenon of doing the common becoming the word" exerts.
著者
石川 恭 加藤 玲香
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 The journal of the Organization for the Creation and Development of Education (ISSN:21871531)
巻号頁・発行日
no.3, pp.19-25, 2013-03-31

本稿は、小学校低学年において、学習指導要領の目標を基準に、体育科の授業に伝承遊びを導入することの効果を、現代社会の子どもたちが直面している様々な問題との関わりから考察することを目的とした。また、日本古来の伝統文化である伝承遊びの意義についても考察した。これらは、今の子どもたちが抱える社会問題を解決する方策となり得る可能性をもつと思われるからである。先行研究を調べてみると、伝承遊びについては、幼児教育における伝承遊びの意義や導入、民俗学や社会学あるいは文化人類学などの分野で伝承遊びの特質や分類などが研究されている。また、日本における伝承遊びの実態などの調査研究はある。これらから、本課題について取り組む意義があるといえる。研究方法は、文献研究によった。平成20年改定の小学校学習指導要領解説・体育編と伝承遊びに関する様々な文献をもとに、学校体育、文化、遊びに関する文献などを加えて考察を行った。その結果、以下の考察に達した。学習指導要領にある改訂の基本方針と体育科の6領域について検討した結果、伝承遊びの導入がいずれにおいても可能であるといえた。体つくり運動では「けんけんずもう」、器械・器具を使っての運動遊びでは「馬のり」、走・跳の運動遊びでは「けんぱ」、水遊びではプールの中での川づくり、ゲームでは「たすけ鬼」、表現リズム遊びでは「電車ごっこ」が、学習目標に照らしてみた場合、有効であると考えられた。これらは、現代社会を生きる子どもたちが直面している様々な問題を解決する手だてとなり得る。また、伝承遊びの実践は、日本の伝統文化の保存・伝達、和の精神的価値を顧みる契機ともなる。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.957, pp.47-50, 1998-09-14

男性向けのかつらで成長してきたアデランスが、女性用かつら市場の開拓に3年前から本格的に取り組み始め、事業の新たな柱にしつつある。 アデランスは、「かつら」の製造販売のほか、直営店で顧客の地肌の洗浄をしたり頭皮のマッサージを行う「育毛サービス」や、顧客の頭皮に残った髪の毛に人工毛を結び付けて毛髪量を多く見せる「増毛サービス」などの事業を中核にしている。
著者
市田 泰弘
出版者
大修館書店
雑誌
言語 (ISSN:02871696)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.94-100, 2005-02
被引用文献数
1
著者
張 念中 河合 祥雄 岡田 了三
出版者
Japan Atherosclerosis Society
雑誌
動脈硬化 (ISSN:03862682)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.1185-1191, 1987

Mental stress from one's occupational circumstances is considered an important risk factor in the occurrence of myocardial infarction. However, because of difficulty in quantitative evaluation of such stress, this issue has not been fully studied. In the present work, we investigated the relationship between deaths from acute myocardial infarction (AMI) and occupation using data from the series of the Annual of the Pathological Autopsy Cases in Japan, in which autopsy cases throughout Japan are described. With regard to the 56, 268 persons who died at the age of 15 or older in 1973, 1974 and 1975, i. e., the year of economic depression due to the first oil shock and the years before and after the oil shock, we compared (I) the mortalities from AMI and frequencies of such deaths among all autopsy cases in Japan in relation to the occupational group in the three years and (II) the mortalities from AMI according to the occupation among 3, 241 randomly selected deaths in the three years. The mortality from AMI for 1973, 1974 and 1975 was 2.6%, 3.7% and 3.0%, respectively, showing a significantly higher value for 1974 (p<0.001). Among persons who died from AMI, the proportion of mental workers, particularly executives and managers, and unemployed/retired individuals was significantly higher (p<0.05) in 1974. As for randomly selected autopsy cases, the mortalities from AMI among mental workers in 1973, 1974 and 1975 were 7.8%, 17.0% and 6.2%, respectively, and the corresponding rates among physical workers were 2.0 %, 1.8% and 2.6%. Thus, the mortality among mental workers was significantly increased in 1974 (p<0.05), whereas there were no such variations among physical workers. In addition to the corroboration with the previous experience that deaths from AMI are more frequent among mental workers, particularly executives and managers, than among physical workers, we noted an increase in moratlity from AMI in the period of economic depression. It seems that stress derived from occupational circumstances rather than limited physical activities is involved in the occurrence of AMI.
著者
伊藤 セツ 姉歯 暁
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.725-730, 1995-08
被引用文献数
1

1993年に,フィレンツェで開催された第49回国際統計学会において,ジェンダー統計に関するセッションが設けられた.そこでは,家計・消費統計の分野でのジェンダー統計あるいは,ジェンダー明示的統計の作成とその重要性と可能性が議論された.本論文は,まずはじめに,ジェンダー統計あるいはジェンダー明示的統計とは何かを,国際統計学会の文献をもとに考察した.次に,家計・消費面でのジェンダー明示的統計の日本における現状を日本の総務庁統計局の「1989年全国消費実態調査」を用いて検討した.その結果,収入に関しては,不十分ながらジェンダー統計は得られるが,消費に関しては単身男女の場合しか得られないことが明らかになった.最後に,ジェンダー明示的家計・消費統計作成のための,総務庁に提言すべき最も容易で明白な改善点を示した.
著者
辰巳 憲一
出版者
学習院大学
雑誌
學習院大學經濟論集 (ISSN:00163953)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.147-162, 2004-07

フローター(変動利付き債)は,事前に定められたリセット日と呼ばれる期日毎に金利が更改され,この事前に定められた小期間内だけはクーポンが一定である証券である。更改される金利が参考とする国債利回り,地域連銀指定の貸出金利(米国の場合),などの金利はインデックスあるいは参照レート(reference rate)と呼ばれる。フローターのクーポン・レートは参照レートに依存して決められるが,一般に,上限などが定められ非線形である。米国では,プライシング・モデルや数多くのスプレッド概念など,フローター分野で用いられる様々な特殊な分析概念・技法が,既に存在し,活用されている。その多くはディーリングなどの画面上で数値として見られる。わが国では,漸く,2000 年6 月から15 年物変動利付国債が発行され,2003 年3 月からは個人向け変動利付国債が売りに出され,また2004 年6 月には機関投資家向け10 年満期物価連動債が初めて発行され,変動金利商品は広く知られるようになった。フローターのプライシングとスプレッドの分析体系のひとつを,金利やイールドカーブの理論を用いて,詳しく展開しよう。辰巳[10]では,基礎的な概念やプライシングの基礎などについて展開しているので,本稿はその本編に相当する。なお,証券化証券のフローターはさらに複雑であり,本稿では割愛する。