著者
山本 まき恵 森脇 あき 谷口 敏代
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.117-124, 2018-03-12

【目的】中堅以上の介護福祉士が講師を担うことに関連した「やりがい」の要因を明らかにする。【方法】担当業務の独力遂行が可能な介護福祉職経験5 年以上を中堅介護福祉士とし、介護福祉現場での本務の傍ら、研修会の講師を担っている中堅以上の介護福祉士9名を対象とした。50 ~ 60分程度の半構造化面接を行い、SCAT(Step for Cording and Theorization)法を用いて分析した。【結果】「受講生が現場で頑張る姿や成長している姿に触れると、後継者育成に貢献出来た自負がある」「講師をすることで、自分の現場での指導の質が上がり、全体のスキルアップにつながる。担当講義内容は、自身の介護福祉技術向上の機会となる」「外部講師の役割を担うことへの上司や職場などから理解ある環境がある」などの17項目の理論記述が抽出できた。【結論】講師役割は中堅としての自負や存在価値を実感していた。上司や職場管理者の理解ある環境がやりがいにつながっていることが明らかになった。[Purpose] This study attempted to elucidate factors related to worthwhileness among professional care givers ranked mid-level and above who experienced being an instructor.[Method] The present study examined nine certified care workers ranked mid-level and above who teach training workshops in addition to their regular job at care facilities. Mid-level was defined as persons with five years or more of work experience who are capable of discharging their duties independently. Semi-structured interviews lasting about 50 to 60 minutes were analyzed using the Steps for Coding and Theorization method.[Results] Analysis produced a total of 17 theoretical description including the following items: "I feel proud of my ability to contribute to the development of successors when I see my students working hard and growing in the workplace;" "being an instructor enhances the quality of my supervision of my workplace and my overall skills, and the contents of my lectures provide an impetus for improving my own care techniques;" and "my superiors and workplace express understanding toward my role as an instructor or a visiting lecturer."[Conclusion] Through their experiences as instructors, participants realized a sense of pride and meaningfulness as a certified care worker ranked mid-level and above. Furthermore, an association was observed between worthwhileness and understanding among superiors and managers at workplaces.
著者
吉田 亮太 原 耕介 中澤 里沙 北村 夏輝 小保方 祐貴
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.112-120, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
31

【目的】複合性局所疼痛症候群を呈する症例に対し超音波療法を施行した結果,著明な疼痛消失を認めたため報告する。【症例紹介】外傷を契機に1年にわたる左足部痛と歩行障害を呈する50歳代の女性であった。理学療法評価結果より,疼痛は単なる侵害受容性疼痛とは考え難く,中枢神経系,末梢神経系,自律神経系における問題が複合的に生じた結果誘発されていると考えられた。【治療プログラムと経過】介入開始後3 週までは中枢,末梢,自律神経系に対する治療を施行したが,疼痛に変化はなかった。評価を再度行った結果,足部の循環障害が疼痛を誘発していると考えられた。そのため,循環障害に関与していると考えられた下腿前面筋群に対し,超音波療法を施行した。その結果,即座に歩行時の疼痛消失を認め,その後6ヵ月間,再発することはなかった。【結語】本症例を通し得られた知見はCRPS に対する循環障害の関与とそれに対する超音波療法の有用性を示唆するものである。
著者
榎本 哲士
出版者
日本教材学会
雑誌
教材学研究 (ISSN:0915857X)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.49-56, 2015 (Released:2016-07-20)
参考文献数
19

The aim of this study is to clarify characteristics of a functional view into the liner equation with two unknowns in textbook. For the aim of this study, we theoretically analyzed an activity that students must transform the view of the liner equation in textbook; from “equality” to a “functional relationship”. As a result, this paper identified two way of functional view into the liner equation. And a new hypothesis was caused from the result of analysis in this paper.
著者
小玉,健吉
出版者
大阪醸造學會
雑誌
醗酵工學雑誌
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, 1974-01-25

A taxonomic survey has been made of ascosporogenous yeasts found in exudates occurring on tree stumps of broad-leaved trees in Japan during the periods of April and July of 1967,1968,1972,and 1973. The samples were collected in test tubes by using cotton pieces. Usually within 2 to 7 days after collecting, a loopful of the sample was streaked directly on carrot juice-koji extract agar medium containing 100 ppm of chloramphenicol. At the same time, samples were enriched by 2 kinds of liquid media besides the koji extract, i.e., sodium acetate-peptone-yeast extract, and glucose-nitrate media, both supplemented with 100 ppm of chloramphenicol, for 3-7 days at 25℃ followed by streaking on the agar media mentioned above. The pure cultures were identified mainly by the procedures described in "The Yeasts" edited by Lodder (1970). Out of 334 strains identified, this paper deals with the species belonging to the genera Saccharomyces, Schizosaccharomyces, Pichia, and Debaryomyces.Among these a new species of Pichia naganishii is proposed beased on the reasons menitioned below.Pichia naganishii Kodama sp. n.The strain studied resembles Pichia angophorae Miller et Barker and Pichia bovis van Uden et do Carmo-Sousa, in both the shape of the ascopore and the assimilation pattern of the routine five sugars.However, in contrast to P. angophorae, this strain does not form pseudomycelium, nor does it ferment sucrose and maltose but assimilates _L-arabinose, _D-ribose, _L-rhamnose, glycerol and erythritol, and can grow at 37℃. Also, this strain is differentiated from P. bovis, in that it assimilates in addition to the above carbon compounds, ribitol and galactitol, and furthermore heterogamous conjugation preceds its ascus formation.Single strain (LKB-747) of this species was isolated from exudate of Camellia sp. in Nagasaki prefecture.
著者
細田 慶信
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.81-85, 2016 (Released:2016-04-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
佐藤 祐介 新宮 清志 杉浦 巌
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.696-701, 2000-10-15 (Released:2018-01-08)
参考文献数
10
被引用文献数
1

茶室は、その空間内部のあらゆる場に於いて、秩序と無秩序の混在が織りなす複雑な構成となっている。茶室の美は、その複雑さに起因しているのではないだろうか。本論文では、茶室空間に施されたデザインに内在する複雑さを定量的に示す方法として、フラクタル幾何学におけるフラクタル次元の利用を提案している。その際、まず始めにサンプルとして取り挙げたそれぞれの茶室空間に施されたデザインから、実際にフラクタル次元を測定する方法を示す。さらに、算出されたフラクタル次元による比較・考察を行い、茶室空間における美的考察の新しい観点として"リズム"の分析について言及すると共に、デザインを数学的に解析する際の道具としてのフラクタル次元の有効性を示す。本論におけるフラクタル次元の算出方法は、以下に示す手順を踏む。(1)対象となる形態のディテールをグリッド化する(2)グリッドを空間的変動曲線として表す(3)作成した空間的変動曲線から、スケール変換解析よりH指数を測定する(4)測定されたH指数から、フラクタル次元を求める
著者
河西 由美子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.514-520, 2017-10-01 (Released:2017-10-01)

「情報リテラシー」の原語であるinformation literacyという用語について,英語圏では,図書館に関係した概念・運動と認識されるのに対して,日本では,情報機器やデジタルデータの取り扱いなど「ITリテラシー」という狭義の概念として定着しているように思われる。本稿では,1980年代の米国において重要な教育概念となり,その後世界的な潮流となった情報リテラシーの意義と,日本の教育,ことに情報教育に及ぼした影響について歴史的経緯を解説し,日本の学校図書館における情報リテラシー教育の課題と展望を述べることとしたい。
著者
岡田 涼
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.194-204, 2018-03-01 (Released:2018-03-06)
参考文献数
30
被引用文献数
3

本研究の目的は,小学生の協同的な学習に対する動機づけの発達的変化を検討することであった。小学3年生から6年生まで4年間の縦断データを用いて,協同的な学習に対する動機づけの平均レベルの変化と時点間の安定性という点から発達的変化を検討した。成長曲線モデルによる分析の結果,内発的動機づけ,同一化的調整,取り入れ的調整については,学年が上がるにつれて低下する傾向がみられた。また,自己回帰モデルによる分析の結果,協同的な学習に対する動機づけについて時点間での関連がみられ,安定性が示された。以上の結果から,児童期においては,全体的に協同的な学習に対する動機づけが低下し,また学年を超えた安定性があることが示唆された。協同的な学習に対する動機づけの発達的特徴について論じた。
著者
樋口 靖
出版者
駒澤大学
雑誌
論集 (ISSN:03899837)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.17-31, 1976-03
著者
菊池 いづみ
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.179-191, 2018-06-11

<p> 本稿の目的は,近年の地域包括ケアの推進を高齢者保健福祉事業の再編過程に位置づけ,その責任主体であると同時に介護保険の保険者である基礎自治体の役割強化に着目し,家族介護に対する支援事業の現状と課題を明らかにすることである。その際,急速な高齢化の深刻な大都市圏に焦点をあてた。分析には東京都区市町村を対象としたアンケート調査の結果を用い,支援事業の区市町村別の実施状況を明らかにした。そのうえで①家族介護支援策の優先度,②地域包括支援センターの設置主体,③自助・互助・共助・公助の期待度との関連要因を分析し,地域包括ケア推進の観点から家族介護に対する支援事業の課題を検証した。東京都のように相対的に財政基盤に恵まれた大都市圏では,自助への期待度は高い。家族介護者の自立にも配慮し,直接支援対象とする事業導入の検討が求められる。先進諸国にならい,家族介護者を地域包括ケアシステムに統合する視点が重要である。</p>
著者
矢口 幸康
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.119-129, 2011-02-28 (Released:2011-06-28)
参考文献数
25
被引用文献数
4 1

共感覚的表現とは異なる感覚に属する語を組み合わせた表現である.共感覚的表現の理解は感覚の組み合わせによって変化することが知られているが,共感覚の言葉であるとされるオノマトペを修飾語としてもちいて検討した例はない.そこで,本研究はオノマトペを修飾語とした共感覚的表現における理解可能な感覚の組み合わせを検討した.研究1では,参加者に47語のオノマトペの感覚関連性の評定を求めた.結果,39語のオノマトペが,視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の五感のいずれかと関連した.研究2では,195種類の共感覚的表現がどの程度理解可能であるか評定を求めた.評定の結果,原則として低次感覚から高次感覚への修飾が理解可能であることが示された.また,修飾構造内で聴覚が他の感覚から独立した.
著者
二瓶 さやか 増子 正
雑誌
十文字学園女子大学紀要 = Bulletin of Jumonji University (ISSN:24240591)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.167-176, 2018-03-24

超高齢社会を迎えるわが国において、介護保険制度が「地域包括ケアシステム」の実現を目指すことを目的とした法改正がなされる等、2025年の地域創成に向けて地域包括ケアシステムの推進・構築が、重要な課題となっている。本研究では、地域包括ケアシステムについて、関連する法律や地域包括ケア研究会の報告書から定義の変遷をまとめ概念整理を行い、地域包括ケアシステム推進にむけた課題を考察した。また、地域包括ケアシステムの構築の為には、現在多くの地域で取り組まれている地域福祉活動の更なる推進と活動を支える多様な担い手の確保が重要であり、共同募金は、地域福祉活動を支える重要な役割を担う一つとして示唆されていることから、共同募金の概要と実際の助成配分や使途について概観した。結果、共同募金を資源とした地域福祉活動の推進は、単に地域における課題を解決するだけでなく、地域住民に地域が抱える福祉課題の意識化や顕在化へと発展することが期待され、地域包括ケアシステム推進と共に、共同募金のあり方も転換が図られる必要があると考えられた。さらに、共同募金は、助成者が恩恵を受けるに留まらず、地域社会に対する住民の連帯や、相互扶助の意識を「主体化」させる役割も担うことも示唆された。
著者
海部 健三 竹野 遼馬 三田村 啓理 高木 淳一 市川 光太郎 脇谷 量子郎 板倉 光 石井 潤 荒井 修亮
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.73-82, 2019-07-28 (Released:2019-09-10)
参考文献数
28
被引用文献数
1

ニホンウナギは重要な水産資源だが,現在個体群は減少し,環境省および IUCN によって絶滅危惧種に区分されている.個体群を回復させるための対策が求められているが,その生育城である河川や沿岸域の環境をどのように回復すべきか,知見は限られている.本研究では成育場である河川や湖沼,沿岸域の環境の回復策に資することを目指し,福井県久々子湖において,超音波テレメトリー手法を利用して,ニホンウナギ 10 個体の行動を追跡した.超音波発信機を挿入した個体を放流した後,全ての個体が測位可能範囲内で測位された.明け方(4:00-6:00)および昼(6:00-18:00)に測位された個体は少なかったが,夕方(18:00-20:00)および夜(20:00-翌4:00)にはほぼ全ての個体が測位された.位置が確認された時間の長さは個体ごとに大きく異なり,最も短い個体で 0.3 時間,最も長い個体で 102.3 時間,平均は 16.5 時間であった.調査期間全体の湖岸エリア(水際から 50 m 以内)と沖エリア(水際から 50 m 以遠)の滞在時間比と面積比を個体ごとに比較した結果,6 個体で有意差が検出された.このうち 4 個体は湖岸エリアの滞在時間比が大きく,2 個体は沖エリアの滞在時間比が大きかった.湖岸エリアに滞在しなかった 1 個体を除き, 9 個体について湖岸を石積み護岸エリア,ヨシ帯エリア,コンクリート護岸エリアに分けて,各エリアの滞在時間 比と面積比を比較したところ,全ての個体で有意差が検出された.このうち 7 個体では石積み護岸エリアの滞在時間が最も長く,ヨシ帯エリアの滞在時間が最も長い個体と,コンクリート護岸エリアの滞在時間が最も長い個体が,それぞれ 1 個体ずつ見られた.湖岸を利用する個体については石積み護岸を選択する傾向が見られたが,沖および湖岸の利用は個体ごとにばらつきがあり,一定の傾向は確認されなかった.