著者
苅谷 嘉顕 本間 雅 鈴木 洋史
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.2, pp.89-94, 2016 (Released:2016-02-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

臨床現場における薬物副作用出現は,その症状に伴った臨機応変な対応が求められるのみならず,減量や休薬などにより治療効果を減弱させる場合があり,大きな問題となっている.そのため,治療効果を減弱させないマネージメント法の提案や,開発段階から副作用を回避する薬物を探索する手法構築は極めて重要な課題である.しかしながら,薬物副作用は,主作用と異なり起因分子が明確でないことが多いため,メカニズム解明やその出現予測は一般に困難である.本稿ではまず,副作用解析アプローチを,チロシンキナーゼ阻害薬erlotinibやsunitinibに対する副作用解析を具体例として紹介している.これらの薬物副作用解析において,生体を分子レベル,細胞レベル,組織レベル,個体レベルと階層性に基づき理解し,ベースと考えられる分子レベルでの薬物親和性に関する網羅的解析により,副作用を誘導する候補分子を同定し,システム生物学的手法により細胞レベルでの応答を理解することで,副作用メカニズムを同定することが可能となった.このアプローチを,より広範な薬物副作用解析に応用するためには,複雑なシステムである細胞内分子ネットワークの〝動的〟挙動解析に関する技術開発が今後の課題と考えられた.また,副作用予測に関しては,副作用発現に関わる細胞レベルでの網羅的で複雑な分子連関を解析することにより予測可能と期待されるが,このアプローチにおいても複雑システムの解析が重要となることが想定される.〝動的〟挙動解析は,副作用解析および予測のどちらにおいても強力なツールとなると考えられるが,これまでの解析技術では,シミュレーションモデルにおけるパラメータの信頼性や解析対象モデルの複雑性による解析困難といった課題がある.これらの克服が,副作用解析および副作用予測へのブレイクスルーになると考えられる.
著者
河村 優 中野 恵太 平松 綾子 中庭 明子 能勢 和夫
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第50回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.146, 2007 (Released:2008-12-11)

本研究では、オンラインショッピングにおける消費者行動分析を目的とする。オンラインショッピングの中で、最も普及している音楽配信サービスを取り上げ、既存の実店舗での消費者行動モデルを参考に、音楽配信サービスにおける消費者行動モデルを考案し、大学生および高校生を対象としたアンケートにより検証した。
著者
ネスポロ マッシモ
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.39-39, 2017-02-28 (Released:2017-03-07)
参考文献数
2
著者
那須 美行 野坂 嘉友 大塚 喜人 敦賀 俊彦 中島 道子 渡辺 泰宏 神 雅彦
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.844-848, 2003-10-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
11
被引用文献数
3 8

We report a case of Paenibacillus polymyxa bacteremia in a patient with cerebral infarction. The patient was a 93-year-old female who was admitted to our hospital. On the 4 day after admitted, she had a fever 38.2°C. The result of the blood culture showed a gram positive spore bacillus in the blood culture bottle. As a result of performing 16SrDNA sequence analysis (500bp), it was a close relationship most by 99.26% P. polymlxa of coincidence was found. With a result using api 20E and api 50CH, this bacillus turned out to be P. polymyxa.The patient had a habit of weeding around her house daily. So we had to take her habit into consideration. We thought she could to get her hands injured. We assumed probably her habit might put her into high risk state of infection of this bacillus. We have supposed this bacillus might be infected with her through her blood.
著者
兪 善昊 杉川 裕介 植田 利久
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.357-363, 2009-07-20 (Released:2009-07-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

ノンエレメントミキサーは,主流に,主流流路に垂直に同一間隔で接続された複数の支流から流体を注入させることにより,流体が引き伸ばしと折り畳みの効果を受け,混合を促進させるミキサーである.主流流路中心軸に垂直な断面の混合の様子をレーザ誘起蛍光法(LIF)を用いて可視化し,得られた断面像から界面の大きさの時間変化の様子を明らかにし,対流混合促進のメカニズムについて検討を加えた.支流本数n,支流押し出し周期Tpを変化させ,断面像観察,境界線長さLの測定を行った.その結果,以下の結論を得た.支流本数が増えるほど,すなわちnが大きくなるほど,混合のパターンは複雑になる.特に遅延座標系の位相空間でのLの形状より,nが大きくなるとカオス的挙動を示すことが示唆された.またLは時間的に変化し,その周期はTpと一致する.Lの時間平均値Lはnが大きくなるほど大きくなる.その増加は指数関数的な増加であり,このことは本ノンエレメントミキサーが,Kenicsタイプのスタティックミキサーと同様の混合促進特性を有していることを示している.
著者
Seiko Toyozawa Chikako Kaminaka Fukumi Furukawa Yasushi Nakamura Hiroshi Matsunaka Yuki Yamamoto
出版者
日本組織細胞化学会
雑誌
ACTA HISTOCHEMICA ET CYTOCHEMICA (ISSN:00445991)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.293-299, 2012 (Released:2012-10-31)
参考文献数
22
被引用文献数
11 19

The CXCR4/CXCL12 pathway has recently been reported to be involved in stimulating the metastasis of many different neoplasms, in which CXCR4 activates various phenomena such as chemotaxis, invasion, angiogenesis and proliferation. The purpose of this study was to analyze a possible association between the expression of chemokine receptors CXCR4, CCR6 and CCR7 with the clinicopathological features of cutaneous malignant melanoma, and to assess the usefulness of these chemokine receptors for diagnosis and prognosis. In our study, a percentage of immunoexpression of both CXCR4 and its ligands CXCL12 was associated with high clinical risk. In contrast, the patients with a low immunoexpression of CXCR4 and CXCL12 had low clinical risk. CCR6 and CCR7 immunoexpressions were also correlated with some clinical parameters, but seemed no more useful than CXCR4. These data suggest that the assessment of CXCR4 immunoexpression is a novel tool for predicting tumor aggressiveness in malignant melanomas, and in particular, a high immunoexpression percentage of CXCR4 and CXCL12 might be a sign of a poor prognosis.
著者
錦織 宏 西城 卓也 田川 まさみ
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.79-86, 2014-04-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
15

カリキュラム/プログラム評価とは,「学生や研修医を対象にした事後アンケート」に留まるものではなく,一定の目的をもって,計画された教育活動を多角的に評価する営みである. 以下の問いについて考えながら,評価を計画する. ・ なぜ評価を行うのか? ・ 誰に向けての評価なのか? ・ 何を評価するのか? ・ どのように評価するのか? ・ 誰が評価するのか? ・ 誰から情報を得るのか? ・ いつ評価するのか? ・ 評価結果をどのように用いるのか? カリキュラム/プログラム評価の目的は教育活動の改革にある.
著者
圓田 浩二
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.75-92,152, 2000-02-29 (Released:2016-11-02)

In this paper, the author discusses the social meaning of eating disorders, especially binge eating and vomiting with bulimia nervosa, from a sociological perspective. First, he identifies from his interviews (thirty cases) two types within the main factors of eating disorders. One type is named "skinny wish type" which indicates those who developed eating disorders to avoid obesity. The other is named "social maladjustment type" to identify those who have eating disorders caused by stresses in their lives. The social maladjustment type has rarely been discussed in sociological literature on disorders. Secondly, the author represents a new perspective by means of critiquing the feminist approach to eating disorders. It is a concept of "de-sociality" through an analysis of the "social maladjustment type". De-sociality is temporarily de-embedding the self from an existing social relationship. For eating disorder patients, the de-social space-time creates a healing space for them to recover their sociality.
著者
李 菁菁 石村 眞一 近藤 加代子 菊澤 育代
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.3_47-3_54, 2016-09-30 (Released:2016-12-21)
参考文献数
24

本論文は、映画シーンにおける電気炊飯器に関する使用実態の分析を通して、製品の機能進化、使用方法、生活との関連性を明らかにすることを目的とする。1945 年から2009 年までに制作された映画で映し出される家庭生活場面の調査より、以下の内容を明らかにした。1)ダイニングキッチン1室に台所・食堂の機能が統合され、またジャー機能付き電気炊飯器が使用されるに従って、炊飯の後に、運んだり保存したりする作業の必要がなくなった。2)電気炊飯器および保存器具の使用方法には、住宅空間、経済状況、家族構成の他、便利さを求めるか、食文化の作法を守るかという文化的な志向性も影響する。3)電気炊飯器およびジャー炊飯器などは、上流階級というよりも、LDK 型の住宅にすむサラリーマンの家庭生活から普及する傾向が見られ、他の電気製品とは違う傾向があった。
著者
瀬木 俊輔 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_353-I_371, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
39

本研究は,マクロな社会資本投資政策の便益の世代別帰着分布を評価可能な動学的応用一般均衡(DCGE)モデルを構築した.その上で,構築したモデルを我が国に適用し,社会資本投資政策と長寿命化政策について分析を行い以下のような知見を得た.社会資本投資には,その水準を増やすと将来世代の厚生が増加する一方で現在世代の厚生が減少するという世代間厚生のトレードオフの問題が生じる.起債による世代間所得移転はこの問題を効率的に緩和できるが,これは公債残高を一時的に増加させる.長寿命化政策は,現在世代を含む幅広い世代に対して便益をもたらし,損失を受ける世代への補償は現在世代の中だけで行うことが可能である.
著者
東 佳那子 中山 二郎
出版者
公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.135-144, 2015 (Released:2015-08-01)
参考文献数
16

次世代シーケンサー(NGS)が登場し,自然界の複雑な微生物コミュニティーのプロファイリングが実現可能となった.100兆個100種を超える細菌がひしめく腸内フローラの研究にも今やNGSは必須のアイテムとなった.しかし,NGSは進化を続け世代交代の時期を迎えている.それにともないNGSを用いる菌叢解析のプラットフォームも変更の必要性が生じる.ここでは,これまで腸内細菌叢研究に最も多く用いられてきたロシュ社454ピロシーケンサーと,近年発展の目覚しいイルミナ社MiSeqのデータを比較検討した.また,シーケンスする16S rRNAの可変領域の検討もin silicoと実際のサンプルデータの両者を用いて行った.その結果,系統解析にはV3-V4が最も良好な結果を与えた.定量性はV6-V8が全体的に良好な結果を示したが,ユニバーサルプライマーによる一部の細菌グループに対する増幅効率のバイアスがどの領域でも見られた.しかし,UniFrac-PCoA解析にて示される菌叢の全体的な傾向はどのデータでも同様に観察され,NGSによる腸内細菌叢解析の堅牢性が示された.数あるNGSの中において,MiSeqはランニングコストや操作性という観点からも腸内細菌叢解析に適しており,今後本分野の研究に頻用されていくであろう.