著者
直井 一博 大谷 尚
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.247-258, 2003-12-20
被引用文献数
1

本稿は,英語学習のための合宿における英語使用経験を対象とするエスノグラフィのための理論的枠組みの考察である.最近の第二言語学習(SLA)研究によれば,第二言語使用の経験とは,主体が置かれた状況,すなわち,他者ならびに場面との対話の中で,文化的に適切な行為を選択する一連の出来事と見なすことが可能である.そしてその学習を捉えるためには,場における言語使用とそれを行う主体との複雑な関係性の理解を目指す,エスノグラフィの考え方が有用である.本稿に関係の深い理論的立場としては,「言語による社会化」という考え方,並びに,「実践のコミュニティ」の考え方が有益である.以上を背景にしたエスノグラフィにより,英語学習のための合宿を一事例とする,人々が共同で第二言語を用いて達成する場の理解を深めることが可能となり,さらに,学習共同体がCSCL等でネットワーク化されつつある現在の教育環境における第二言語学習の理解を深めることが可能になる.
著者
八木 良広
出版者
日本オーラル・ヒストリー学会
雑誌
日本オーラル・ヒストリー研究 (ISSN:18823033)
巻号頁・発行日
no.8, pp.63-69, 2012-09-08

This article is my report on current A-bomb issues and the current social conditions of the hibakusha's life. It is made up of two sections. In the first section, I explain the current issues in the field by showing one recent movement of the hibakusha groups, the action of which I am concerned with. That is, recently it is becoming easier to undertake dialogue with hibakusha. Although it is necessary for us to foster activity that conveys hibakushas' experiences of the bombs to subsequent generations, and promote the construction of a "New Narrative" about them, there is an important problem we must consider. Next, in the second section, I describe my research experiences and future subjects. We need to take account of our research posture in order to have a dialogue with them. Recalling research experiences and considering interactions with subjects are the same task, and it is important to describe and look carefully at them. Furthermore, I refer in this essay to the social significance and meaning of academic research.
著者
大塚 祐輔 毛利 公美 白石 善明 岩田 彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LOIS, ライフインテリジェンスとオフィス情報システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.500, pp.1-6, 2015-02-26

地域限定クーポンなどのエリア限定コンテンツを受信するノードから構成される無線ネットワークでは,アクセスポイントに直接通信ができないノードはデータを受信することができない.また,同一のデータを取得するときに遠方のサーバにノードが独立にアクセスするとアクセスとトラフィックの重複が発生する.前者はデータの要求と応答の中継をするマルチホップ機能でノードは受信可能となり,後者は重複を削減するキャッシュ機能によりトラフィックを削減できる.本稿では,これら二つの機能を持つ無線マルチホップキャッシュネットワークを検討している.交通シミュレータと連携したシミュレーションによりトラフィックが削減されることを示している.
著者
永廣 顕
出版者
甲南大学
雑誌
甲南経済学論集 (ISSN:04524187)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-27, 2013-02
著者
戎谷 遵 二神 良太 岡 浩平
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.275-278, 2015
被引用文献数
1

摘要:本研究では瀬戸内海中部沿岸域における海浜植物の分布状況と地形との関係から,優先して保全すべき種と海浜を明らかにした。その結果,対象地に出現した21種類のうち,出現地点が少なかった9種を希少種として選定した。海浜植物の分布は香川県の有明浜に集中し,希少種も全種が分布していた。以上より有明浜の海浜植物を保全することが,瀬戸内海中部沿岸域の海浜植物を保全する上で有効であると考えられた。
著者
野村 晋一 茨木 弟介 白旗 総一郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.135-147, 1969-06-25

ニジマスの心電図と呼吸運動を無線的に記録し,魚類の生態研究に新しい技術を導入することを企図し,その基礎的な実験を行なった.成績の概要はつぎの通りである.1)脊髄穿刺により不動化した後,開胸し,心表面誘導による波形を記録した.穿刺による出血は,従来の記載に反し,極めて微量であった.静脈洞,心房,心室波の波形はBAKKER(1913),KIscH(1948),OETs(1950),NOSEDA(1963)らの記載とほぼ一致した.この成績に基づき,ラジオ・テレメーターの入力として用いる心電図の誘導方法を決定した.この誘導法は,一種の胸腔内誘導であるが,電極装着後,2ケ月以上を経過しても生存した.波形は唾乳類,鳥類などと同様であったが,まれにBAKKERのV波を確認した.2)水温と心拍数の相関々係はおよそ直線的であった.水温の上下に比例して,心拍数は増減したく水槽内).3)中禅寺湖で水温の垂直分布に従って,計測した心拍数は温度の下降に比例して減少したが,水温の上昇に追従できなかった.実験槽で行った実験結果から考えられる適応時間を与えても同様であった.4) 中禅寺湖に放流したニジマスにつき,水深50m,水温4.3°Cまでの心拍数をFM式ビート・メーターにより計測した.水温の変化による心拍数の変動は,実験室内でえた成績とほぼ同様であった.5)養鱒池に放流したニジマスにつき,心拍数の日周変化を計測した.心拍数は早朝に少なく,午後ないし夜間に増加した.因みに水温は9.5°Cを維持していた.
著者
寺原 昭 羽石 達生 新井 守 桑野 晴光
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.286-293, 1974

The antifungal metabolite, herbicidin A (C_<23>H_<29>O_<11>N_5) and herbicidin B (C_<18>H_<23>O_9N_5) obtained from Streptmyces saganonensis (Strain No 4075) have a plant growth inhibiting effects against to baryard glass, green panicum, tomato and radish ect., in a concentration 37-300ppm without effect to rice. Basic hydrolysis of herbicidin A affords an unsaturated acid 3 which has been confirmed to be 2-hydroxymethyl-2-butenoic acid, and herbicidin B acid 4. Methanolysis of herbicidin A and B with Amberlyst 15 in methanol affords adenine, and C_<19>H_<28>O_<12> 8 and C_<15>H_<24>O_<10> 5 respectively. On the bases of chemical and physico-chemical evidences of these derivatives, structures of herbicidin A and B have been determined to be nucleosides which consist of adenine and an unusual sugar moiety.
著者
山本 勉
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.91-108, 2015-03-01

本稿においては、渋江保の代表的な著作、万国戦史に焦点を当て、日清戦争時に出版された万国戦史の概要について触れると共に、全24巻の万国戦史の中で、渋江名義の10巻及び他筆者名義ではあるが、渋江が実質執筆者であることが確認された8巻についても取り上げ、渋江はどのように万国戦史を執筆したのか、万国戦史シリーズ執筆において渋江が果たした役割や万国戦史24冊の特徴について考察する。
著者
原田 妙子 長縄 さくら
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編 (ISSN:09153098)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.59-65, 2009-03

2004年から2006年にHQL(人間生活工学研究センター)によって「人間特性基盤整備事業」が実施され,取得したデータを基にして「日本人の人体寸法データブック 2004-2006」が2008年3月に出された.そこで,授業の一環として,毎年行ってきた体型写真撮影と身体計測の結果を用い,側面形状について,凹凸が少なくなり,特に下半身の前後とも扁平になっていると予測し検討することにした.身体計測値では, HQLの結果と同様の傾向であったが、本被験者の方が細身になっており,特に下半身が細身の傾向にあった.側面形状の出入りについては,近年になるにつれてBNPの入りの数値が減少し,FNPが増加してする傾向にあり,首の角度が真っ直ぐであるといえる.胴囲位では,前面が出なくなり幼児体型が少なくなっていると共に,厚径が薄くなっているとも考えられる.因子分析の結果では,ほとんどの年代で,第一因子は下半身の動きを,第二因子は首あるいは頭の動きを表す因子が抽出された.しかし,視覚面での形状では,近年ほど丸みが少なくなっていることが観察された.今後,体の丸みと姿勢についてさらに研究を進めたいと考える.
著者
高尾 哲也
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P2231-E3P2231, 2009

【初めに】車椅子を駆動している障害者(車椅子駆動者)にとって、バスやタクシーなどの輸送機関を利用して外出することは必ずしも容易なことではない.しかし、介助者の付き添いにより、輸送機関を利用しての外出が比較的、容易に行われる.また、外出が容易になるか否かは、車椅子駆動者の認識力のレベルにより左右される.今回、日常生活において標準型車椅子を利用し、両手駆動が可能である車椅子駆動者を対象に、障害者の生活状況評価法の1つであるFunctional Assessment Measure(FAM)を使用し、FAMの運動的側面(mFAM)の小項目の1つである輸送機関利用のレベルから、mFAMの小項目の1つである車椅子駆動およびFAMの認知的側面(cFAM)の大項目の1つである認識機能、という2項目のレベルを把握し、車椅子駆動者の外出、認識力について考察した.<BR>【対象】障害者施設に入所中の車椅子駆動者19名である.<BR>【方法】対象を輸送機関利用のレベルにより、最大介助や全介助を要する方々から構成される群(完全介助群)と、完全自立や修正自立の方々や監視、最小介助、中等度介助を要する方々から構成される群(非完全介助群)の、2群に分類し、各群の車椅子駆動と認識機能の各々の中央値を算出し、2群間での有意差の有無を検証した.尚、対象者に今回の調査目的および方法について説明を行い、対象者からの同意を得ている.<BR>【結果】輸送機関利用のレベルによる対象分類では、完全介助群は13名となり、非完全介助群は6名となった.車椅子駆動の中央値は、完全介助群で4点、非完全介助群で5点となったが、有意差は得られなかった.認識機能の中央値は、完全介助群で20点、非完全介助群で29点となり、有意差が得られた.<BR>【考察】mFAMの輸送機関利用とは、バスやタクシーなどを利用して外出する際、目的地までの道程、所要時間、運賃、安全性を認識することであり、車椅子駆動や輸送機関への移乗のレベルを問わない.cFAMの認識機能とは、問題解決、記憶、見当識、注意、安全確認から成り、輸送機関利用の際の基本的な認識力である.よって、車椅子駆動者が基本的な認識力を備えていれば、輸送機関利用は自立レベルに成り得る.車椅子駆動者の基本的な認識力が不十分であれば、介助者が車椅子駆動者に対し基本的な認識力を促し、共有することにより、輸送機関利用が部分介助レベルに成り得る.車椅子駆動者が基本的な認識力を備えていなければ、外出は介助者の完全管理下で行われるため、輸送機関利用は完全介助レベルになる.したがって、完全介助群と非完全介助群との比較で、認識機能で有意差が得られたと思われる.つまり、車椅子駆動技術に比べ、認識力は輸送機関を利用しての外出にとって重要なものである.今後、車椅子駆動者の外出を促していくために、車椅子駆動技術の習得のみならず、認識力に対する適切なアプローチも行っていく必要があると思われる.
著者
隅 優子 山下 小百合 後藤 剛 渡利 一生
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb0606-Eb0606, 2012

【はじめに、目的】 当院では、他の診療機関にて筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)の確定診断を受けた長期療養患者を受け入れており、ALS患者の在宅生活を支援すべく、訪問看護ステーション、ヘルパーステーション、介護支援室を開設し、その一環として訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)を開始した。今回、訪問リハ開設から現在までの利用者の動向を調査した。また、現在利用中のALS患者の問題点と訪問リハの内容を、担当理学療法士(以下、担当PT)及び家族へアンケートにて調査し、各々に相違がみられるか比較検討した。【方法】 利用者の動向調査は、平成12年1月~平成23年10月の期間に当院の訪問リハを利用したALS患者21名(男性11名、女性10名)を対象とし、過去の診療録をもとに調査した。調査内容は、訪問リハ開設から現在までの利用者数、利用期間および訪問リハ開始時と終了時もしくは現在の寝たきり度、使用していた医療機器、福祉機器、利用していたサービスである。また、現在利用中のALS患者のアンケート調査は、平成23年10月現在の利用者8名(男性5名、女性3名、平均年齢69.3±13.8歳)を対象とし、担当PTに対しては「現在の問題点」と「リハビリの内容」、家族に対しては「家族が考える問題点」と「利用者に必要と思うリハビリの内容」を調査した。これらはあらかじめ各々10項目ずつ選択肢を挙げておき、優先順に5つ選択する形式をとった。「現在の問題点」及び「家族が考える問題点」の選択肢は、関節可動域(以下、ROM)制限、筋力低下、痛み、坐位・立位保持困難、移乗困難、移動困難、コミュニケーション困難、排痰困難、外出困難、日常生活動作(以下、ADL)困難の10項目を挙げ、「リハビリの内容」及び「利用者に必要と思うリハビリの内容」の選択肢は、ROM訓練、筋力訓練、疼痛に対する徒手療法、坐位・立位訓練、移動訓練、コミュニケーション訓練、排痰訓練、外出支援、ADL訓練の10項目を挙げた。【倫理的配慮、説明と同意】 第47回日本理学療法学術大会で発表するにあたり、ご家族の同意を得ており、個人情報の管理には十分配慮した。【結果】 平成12年1月に訪問リハのサービス提供を開始し、その年の利用者は3名、翌年は4名と徐々に増え、平成20年、21年、22年は11名と最も多かった。現在の利用者は8名で、これまでの利用者総数は21名である。平均利用期間は36.3±36.8カ月で、最も長い利用者は11年9カ月であった。訪問開始時の寝たきり度はA-1が1名、A-2が4名、B-1が7名、B-2が1名、C-1が2名、C-2が6名であったが、現在または終了時になるとB-2が2名、C-2が19名であった。使用している医療機器では、NIPPV使用が2名から0名、在宅酸素は4名から6名、気管カニューレは10名から18名、人工呼吸器は10名から16名、胃ろうによる栄養注入は9名から16名へと変化していた。福祉機器では、ベッドの使用が19名から20名、車いすの使用は開始時、終了時ともに16名、杖・歩行器は5名から0名、ポータブルトイレは5名から3名、移動用リフトは0名から2名、伝の心等のコミュニケーション機器は0名から1名へと変化していた。他のサービスでは、全員が開始時、終了時ともに訪問看護、ヘルパーを利用しており、過半数の方がレスパイト、訪問入浴を利用していた。現在、8名の訪問リハを行っており、寝たきり度は全員C-2で人工呼吸器を装着している。家族へのアンケート結果から利用者の問題点として「コミュニケーション困難」と答えた方が100%、「ROM制限」が87.5%、「ADL困難」が75.0%であった。担当PTでは「ROM制限」が100%、「筋力低下」が87.5%、「排痰困難」が75%であった。家族が利用者に必要と思うリハビリの内容は、「ROM訓練」が100%、「排痰訓練」が75%、「筋力訓練」が75%であった。担当PTでは「ROM訓練」が100%、「疼痛に対する徒手療法」が87.5%、「排痰訓練」が75%であった。【考察】 動向調査から、利用者は徐々に増加しているが、その中に占めるランクB・Cの割合も増え介護負担の大きい家族も多いのではないかと考える。アンケートでは、家族はROM制限以外にコミュニケーションやADLを問題と考えていたが、担当PTでは低い結果となった。また、ROM訓練や排痰訓練は家族・担当PTとも必要と考えていたが、筋力訓練に関しては担当PTでは低い結果となった。今後は家族が問題と感じている点を調査し、リハビリの内容だけでなく福祉用具の検討などアプローチに繋げると共に、家族に対し訪問リハの実施計画を十分説明し、お互いが共通認識を持ったうえでサービスを提供することが必要と考えた。【理学療法学研究としての意義】 ALS患者は進行に伴いADLや意思疎通が困難になるにつれ、家族の負担も大きくなる。その中で訪問リハの担当PTと家族の意見を一致させることは重要であり、今回の取り組みは意義があったと考える。