著者
山田 純一 高柳 理早 横山 晴子 鈴木 康弘 篠原 智美 山田 安彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.134, no.12, pp.1331-1345, 2014 (Released:2014-12-01)
参考文献数
10

We evaluated the effectiveness of small group discussion (SGD) in association with a drug abuse prevention program for junior high school students. The students first received a lecture about drug abuse prevention, then participated in SGD. The discussion focused on how to take action when tempted to abuse drugs. We gave a questionnaire 3 times; before and after the lecture (before SGD), and after SGD. Seventy-seven students replied to these questionnaires. After the lecture, knowledge about drug abuse was improved and all students answered that they had never abused drugs. However, in answer to a different question, a few students noted that they might use drugs in some situations. We consider it necessary to give more consideration to this problem. After the lecture, 35.5% of the students felt that they had definitely acquired skills for drug abuse prevention, whereas after the SGD this was increased to 73.7%. In addition, more than 75% of the students answered that the SGD program was useful since the opinions of other students could be heard. These results suggest that more students acquired skills to prevent drug abuse by participation in SGD. Our findings showed that SGD was useful and that the students were able to more effectively understand important concepts related to drug abuse prevention.
著者
古川 博史
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.97-101, 2012-04-25 (Released:2012-04-26)
参考文献数
11

【目的】末梢血管外科手術におけるデンプン由来吸収性局所止血材アリスタAHの使用効果に関して,血液製剤由来フィブリン糊止血材の使用効果と比較検討したので報告する.【方法】症例は2008年1月~2009年12月までの当科における末梢血管外科手術症例25例を対象とした.アリスタAH使用群(A群)10例,血液製剤由来フィブリン糊止血材(ベリプラストP)使用群(B群)15例で,ASOに対する下肢血行再建術がA群6例,B群10例,人工血管シャント造設術がA群4例,B群5例であった.止血材の使用方法は,血管吻合後止血材を吻合部に適量散布し,数分間用手圧迫を行った.両群間で術中,術後成績,合併症に関して比較検討を行った.【結果】術中出血量はA群で平均30.5 ml,B群で平均83.0 mlとA群で少ない傾向にあった.術後の主な合併症はA群で創の発赤1例,滲出液の貯留1例,肝機能障害1例で,B群では誤嚥性肺炎1例,腎機能の悪化1例であった.創傷治癒遅延および創感染は両群で認めなかった.また発熱の遷延化や吻合部仮性瘤の形成,出血による再手術例は認めなかった.末梢血管病変に対する手術症例では,両群とも下肢造影CTにて全例人工血管の良好な開存を確認することができた.人工血管シャント造設症例でも両群ともに穿刺にて問題なく血液透析を行うことが可能であった.【結論】アリスタAHは末梢血管外科手術における血管吻合部への補助的な止血材として従来の血液製剤由来の止血材とほぼ同等の効果が得られ,さらに術後成績に影響を与えず,合併症の少ない十分な効果が期待できる止血材であると考えられた.
著者
大島 まり 石上 雄太 早川 基治
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.710-715, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
10

脳動脈瘤の発症, 成長, 破裂は, 血流によって引き起こされる力学的刺激が重要な役割を果たすことが指摘されている. 力学的刺激には, 圧刺激, 進展刺激, ずり刺激の3つが挙げられ, その中でも特に壁面せん断応力は内皮細胞に影響を与え, 脳動脈瘤を考える際に重要な力学的刺激といわれている. 本研究は, これらの力学的刺激を定量的に捉えるために, 医用画像や計測データから得られる患者の血管形状に対して数値解析を適用し, 患者個別の血行動態の情報を得るとともに予防や診断を生かすことのできる支援システムの構築を目指している. 本論文では, 血液の流体力学 (血行力学) や患者個別のシミュレーションの概説とともに, より生体に近い現象を再現するための末梢血管や血管壁の弾性の影響を考慮したマルチスケール血流—血管壁の数値解析について紹介する.
著者
猿渡 敏郎 望月 賢二
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.299-304, 1985-11-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
3

目本近海から得られた2個体の標本を基に新種ミノアンコウLophiodes fimbuatusを記載した.本種は体の背面と腹面両方から分枝した細長い皮弁が出ていること, illiciumに色素胞が点在していること, escaが痕跡的であること, 第三遊離背鰭鰭条に対をなす皮弁が複数存在していることから, 同属の他種から容易に区別することが出来る.
著者
張 穎奇 河村 善也 蔡 保全
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.81-92, 2008-04-01 (Released:2009-04-25)
参考文献数
25
被引用文献数
2 3

小長梁遺跡は前期更新世の人工遺物を出土する遺跡として重要であるが,その遺物包含層と同一層準から採取した大量の堆積物を細かい目の篩で水洗して,多くの小型哺乳類化石を得た.遺物包含層の年代は古地磁気測定により1.36 Maとされている.小型哺乳類は生層序の研究や古環境復元に重要であるが,この遺跡ではこれまで小型哺乳類化石はほとんど採集されてこなかった.今回は得られた化石をもとに,この遺跡の小型哺乳類の動物群の特徴を明らかにし,それを近隣の地域にあって古地磁気層序や放射年代が明確な4つの化石産地の動物群と比較した.それらにもとづいて,後期鮮新世とそれ以降の時期の地層における小型哺乳類の生層序と,それらの時期の小型哺乳類の動物相の変遷について論議した.変遷については,絶滅種が卓越する後期鮮新世から前期更新世にかけての中国北部の動物相が1.66 Maと1.36 Maの間に現生種(カヤネズミ)の出現により若干変化したあと,1.36 Maと0.6 Maの間には多くの絶滅種が見られなくなる一方で,現生種が数多く出現するという大きな変化があったと考えられる.さらに,この遺跡周辺の前期更新世の古環境については,温帯の気候で,湖の近くにまばらに灌木の生えた草原という環境が推定された.
著者
波江 元吉
出版者
日本細菌学会
雑誌
細菌學雜誌 (ISSN:18836925)
巻号頁・発行日
vol.1909, no.160, pp.119-137, 1909-03-10 (Released:2009-07-09)
著者
高田 靖司
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.123-134, 1985-02-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

愛知県三河湾の佐久島 (171ha) と本土 (春日井市・名古屋市) の間で、野生ハツカネズミの分布と密度 (捕獲率を尺度とする) を比較した。1981年から1984年までの調査により次の事がわかった。1) 島には本種の他に, ドブネズミとジネズミが見られ, その他の野生哺乳類を欠く。2) 本土では本種の他に, アカネズミ, カヤネズミ, ハタネズミ, ジネズミ及びヒミズが見られる。3) 島のハツカネズミは森林を除いて、調べた総ての生息環境, すなわちイネ科の一年生と多年生の草地, タバコ・クワ畑及びヨシ湿地に独占して見られる。4) 本土のハツカネズミはイネ科の一年生草地にだけ優占し, ここでも他のネズミと共存している.また, 多年生草地と森林にはアカネズミが, ヨシ湿地にはカヤネズミが優占している。5) 本土の各生息環境におけるネズミ類の総密度は, 島の同じ生息環境におけるそれに等しいか, あるいはより高い.6) 他の優占的な競争種を欠く島におけるハツカネズミの密度, 繁殖, 齢構造及び食性は生息環境間で異なることが示唆された。ハツカネズミの生息地拡大と好みの分析から, その分布を決定する上で重要な要因として, 1) ネズミ共同体, 特にアカネズミやカヤネズミのような優占的な競争者, 2) 環境, 特に植生に働く人為作用が考えられた。
著者
山下 裕作
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.847-852,a3, 2006-09-01 (Released:2011-08-11)

「水土文化」は農村現場にあり, 農村の暮らしの中にある。ここでは農村生活者の「暮らし」の側面からみた「水土文化」調査の方法について紹介する。文化は安易な「客観化」「数値化」といった「素朴な科学論」で把握することは不可能である。農村生活者との協働作業としての調査, すなわち「心で理解」するための調査を通じ,「コミュニケーショナルに正しい認識」を構築する必要がある。本講座ではそのための方法論を不完全ながら紹介する。
著者
飛谷 謙介 饗庭 絵里子 東 祐介 相田 恭平 長田 典子
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.J276-J284, 2014 (Released:2014-06-25)
参考文献数
26

近年,コンピュータやセンサの発達に伴って,ユニークなフィードバックやインタフェースを利用したアート表現の一つとして,メディアアートが提案されている.その中でも,光や水をテーマとしたアート作品は現実世界において体験することの難しい独特な空間を作り出す.本研究は,水の流れ等の物理的な刺激によって発光する性質を持つ「夜光虫」に注目し,夜光虫をモチーフとしたメディアアート作品”バーチャル夜光虫”を提案する.夜光虫の大きな特徴として,物理的な刺激により発光する性質が挙げられる.また,海洋性のプランクトンであるため水の流れとともに光が減衰することで,独特な発光現象を見ることができる.このような体験を流体シミュレーションと3次元レンジデータ計測を組合わせることで実現し,CGを用いて仮想的に表現する.さらに,ユーザの操作によって変化する水の流れに合わせてサウンドエフェクトと発光色を変化させる.これにより,水の流れを媒介とした光と音のアート表現を実現する.また,コンジョイント分析による印象評価実験から,本システムにおける「夜光虫らしさ」および「美しさ」の要因を明らかにする.最後に,より直感的な体験を可能にするため,多層構造の布ディスプレイを映像提示装置として使用したバーチャル夜光虫システムを作成する.
著者
菊川 匡 阿部 善也 中村 彩奈 中井 泉
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.31-40, 2014-01-05 (Released:2014-01-31)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

古代銅赤ガラスには,他の色の古代ガラスには見られない不明な点が多く残されている.本研究では蛍光X線分析(XRF)による化学組成の特性化と,X線吸収端近傍構造(XANES)解析によるCuの化学状態分析により,古代エジプトの銅赤ガラスに関する考古化学的研究を行った.銅赤ガラス生産の最初期であるエジプト新王国時代の銅赤ガラスでは,金属CuコロイドではなくCu2O微結晶による銅赤着色が行われていた.一方,エジプトにおいて銅赤ガラス生産が一般化したプトレマイオス朝~ローマ期においては,発色要因として金属CuコロイドとCu2O微結晶の2種類が同定された.2種類の発色要因の違いは,着色剤であるCuの添加量や使用された融剤の種類とも対応していた.またいずれの銅赤ガラスにおいても,含まれるCuの大部分は発色に関係しないCu+イオンとして存在していた.さらに本研究により,銅赤ガラスの製法に関する興味深い知見が得られた.
著者
河合 隆志 牛田 享宏 井上 真輔 池本 竜則 新井 健一 西原 真理
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.181-189, 2014-08-30 (Released:2014-09-16)
参考文献数
20

Many patients have neck and back pain, and their standing posture (spinal alignment) is sometimes considered to be one of the factors that contributes to such pain. Thus, it would be useful to evaluate spinal loads in that posture. A method to evaluate individual spinal loads using link segment models made from body mass distributions using DXA (dual–energy X–ray absorptiometry) was developed.   An element was defined as 1.30 × 1.22 cm, and a detailed body mass distribution consisting of 7473 elements was constructed using DXA equipment (QDR4500). The subjects' bodies were divided into cervicofacial (vertex–C7 ⁄ T1), thoracic (C7 ⁄ T1 – T12 ⁄ L1), and lumbar (T12 ⁄ L1 – L4 ⁄ 5) segments. Each mass, M1, M2, and M3, and the center of the masses were calculated. With these parameters and DXA images, each torque, TC7/T1, TT12/L1, and TL4/5, was calculated from the following formulas: TC7/T1 = M1gr1cosθ1, TT12/L1 = M1g (l2cosθ2 + r1cosθ1) + M2gr2cosθ2, and TL4/5 = M1g (l3cosθ3 + l2cosθ2 + r1cosθ1) + M2g (l3cosθ3 + r2cosθ2) + M3gr3cosθ3 (r1, r2, and r3: lengths from the rotation center to each center of mass; l2 and l3: lengths of C7 ⁄ T1 – T12 ⁄ L1 and T12 ⁄ L1 – L4 ⁄ 5; θ1, θ2, and θ3: angles formed between a horizontal line and r1, r2, and r3). In order to reproduce the standing posture on DXA, the standing side was formed by a vacuum cushion for operative position in advance.   The parameters from DXA in the lateral view were as follows. In case 1 (38–year–old man, healthy, 164.0 cm and 55.5 kg), they were M1 = 4.50, M2 = 13.24, M3 = 6.92 kg, TC7/T1 = –0.28, TT12/L1 = –3.80, and TL4/5 = –6.42 Nm (facing right, clockwise: positive). In case 2 (76–year–old man, lumbar spondylosis, 156.9 cm and 59.6 kg), they were M1 = 4.83, M2 = 14.27, M3 = 10.34 kg, TC7/T1 = –1.69, TT12/L1 = –16.1, and TL4/5 = –44.3 Nm. In case 3 (71–year–old woman, lumbar spondylosis, scoliosis, 147.2 cm and 49.0 kg), they were M1 = 4.63, M2 = 11.42, M3 = 5.36 kg, TC7/T1 = –2.53, TT12/L1 = –16.0, and TL4/5 = –27.0 Nm. Torques at L4/5 were 6.9 and 4.2 times greater in cases 2 and 3 than in case 1. Total masses calculated from DXA were 54.5, 59.0, and 47.6 kg, and errors between these and actual weights were –1.8, –1.0, and –2.9%, respectively.   A method for evaluating spinal loads as torques was developed using DXA. In the future, it will be possible to use this method to evaluate factors such as pain and the effect of rehabilitation. The relationships between torques and various scales (such as pain, depression, ADL, and QOL) need to be examined, taking into account age, sex, muscular strength, etc.
著者
長谷川 共美 池本 竜則 井上 雅之 山口 節子 牛田 享宏 柴田 英治 小林 章雄
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-8, 2014-03-10 (Released:2014-03-29)
参考文献数
29

The aim of this study was to investigate the features of overweight or obese individuals with a BMI >25 kg/m2 who complained of low back pain, knee pain, and neck stiffness. The subjects comprised 88 overweight or obese individuals who were divided into a symptomatic group and an asymptomatic group prior to the weight–loss intervention in order to compare several parameters of each group. Symptomatic patients were divided into groups of subjects whose symptoms did or did not improve as a result of the 6–month weight–loss intervention. Changes in the test paramete­rs from before and after the intervention were compared between the two groups. The results revealed no differences in any parameters between the two groups (symptomatic and asymptomatic) at baseline in neck stiffness or low back pain. However, for knee pain, the maximal oxygen uptake (VO2max) was significantly lower in the symptomatic group than in the asymptomatic group (p<0.01). Furthermore, the weight–loss intervention revealed a significant increase in VO2max in the “improved” group compared to the “no change” group (p<0.05). The study results showed that both weight loss and the acquisition of aerobic capacity were important in relieving knee pain in overweight or obese individuals.
著者
黒田 英一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.443-458, 1996-03-30 (Released:2010-01-29)
参考文献数
11

ピオリ, セーブルは『第二の産業分水嶺』において, 大量生産システムにかわる生産方式として「柔軟な専門化」を提唱してきた。本稿は, 日本の有名な精密機器メーカーのひとつであるキャノンをとりあげ, 同社の生産ネットワークの事例調査により, 「柔軟な専門化」の日本への敷衍化を試みている。キャノンの生産ネットワークには2つのタイプがみられる。まず, 試作品の生産ネットワークでは, 専門技術を持つ協力企業が, 大田, 品川に立地し, 試作品専業の企業を中心にゆるやかに結びつき, 新製品開発という共通の目標に向かって, キャノンの製品開発を支えている。次が, 量産品の生産ネットワークである。量産品を支える企業は, 地方に立地し, 高品質, 廉価, 短納期の部品を製造している。今回の事例調査から, 試作品の生産ネットワークにおいて, 「柔軟な専門化」の特徴が見いだせる結果となっている。しかも, 試作品を担う企業は量産品も製造しており, 現実には複雑で多面的な生産ネットワークを構成しているといえる。