著者
杉戸 信彦 廣内 大助 塩野 敏昭
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.217-232, 2015-07-15 (Released:2015-08-04)
参考文献数
49

長野盆地西縁断層帯は,羽越褶曲断層帯の南端付近に位置する西側隆起の逆断層である.本断層帯は,盆地西縁部に断層変位地形や先行谷を発達させ,豊野層や南郷層とその分布・構造に深く関与してきた.1847年に発生した弘化善光寺地震は,この断層帯が引き起こしたM7.4の大地震である.明瞭な地表地震断層が出現し,多数の斜面崩壊が発生した点で,同じく羽越褶曲断層帯で発生した2004年新潟県中越地震などと共通点が多い.本巡検では,変動地形の分布と大地震に伴う地表変位,また関連する地質および地質構造の発達史について,災害という側面を意識しながら,地形・地質学的観点から議論する.
著者
島畑 斉
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 人文・社会科学 (ISSN:02872501)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.53-65, 1987-12-25

"Inventionen und Sinfonien"は,1717年から1723年にかけて作曲者のJ.S.Bach(1685−1750)自身によって編集された。その原型といえるものは,彼の"Klavierbuchlein fur Wilhelm Friedemann Bach"(1720)の中に見いだせる。そこには,音名,音部記号,装飾法などの音楽的基礎知識の説明が記され,"Das Wohltemperierte Klavier I"の Praeludium の原曲に相当する11曲の作品などとともに,"Inventionen und Sinfonien"の原曲に相当する30曲が Praeambulum や Fantasia として収められている。"Inventionen und Sinfonien"は,これらの30曲に推敲を加えてまとめられ,その序文には次のような事項が記された。 1)2声部,3声部を美しく正しく処理すること。 2)すぐれた楽想を修得して展開すること。 3)カンタービレ(歌うような)奏法を修得すること。 4)作曲に関する予備知識を修得すること。 これらは,初心者が一般に機械的な練習に陥りやすいことに対する喚起であり,音楽表現に関する基礎的な心構えともいえる。つまり,演奏者(学習者)が小手先だけによって,ただ単に表面的に演奏することに対する警告である。このような意義をもつことによって,"Inventionen und Sinfonien"は,今日まで,J.S.Bach の"Das Wohltemperierte Klavier"の準備段階における,高度の音楽性をそなえたピアノ教材として位置づけられている。 ところで,いわゆる西洋音楽のピアノ作品を演奏する場合,次のような過程をたどらなげれぼならない。まず,作曲者に関して,時代背景とともに,生涯や生き方,全作品を通しての作風などを考察をする。次に,個々の作品に関して,作曲年の時代的な位置づけとともに,作品様式の理解や構造の分析をする。ここでは,音,動機,主題などの楽曲の柱となる素材について,その意味を探求する必要がある。さらに,これらをとらえることによって,作曲者の意図を推察し,演奏における実際の選択をする。つまり,テンポ,フレージング,アーティキュレーション,強弱法,アゴーギク Agogik,音色,運指法,タッチ,自然な運動などの諸要素を選択する。そして,最終的に演奏という行為において,作曲者の意図と自己の意図とを融合し,最大限に表現するのである。 本稿では,「運指法」 という演奏におけるひとつの面に焦点を絞り,2声部からなる"Inventionen BWV772-786"のの個々の作品の中にその問題点を探る。なお,Inventionen の楽譜は現在にいたるまで幾種もの版が出版されているが,ここでは,比較的入手しやすい版を選択し,それらを参照しながら検討をすすめる.

2 0 0 0 OA 岩磐史料叢書

著者
岩磐史料刊行会 編
出版者
岩磐史料刊行会
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1916
著者
藤生 慎 沼田 宗純 高田 和幸 大原 美保 目黒 公郎
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.4_189-4_200, 2012

本稿は東北地方太平洋沖地震で被災した三陸鉄道の現地調査やヒアリング調査を通じて、三陸鉄道の復旧・復興のプロセスをまとめたものである。当初、三陸鉄道は被害の状況から復旧は絶望視されていたが、沿線住民の復旧の強い要望や岩手県、沿線自治体の要望により新たな復旧資金スキームを創設し復旧のプロセスに入ることが可能となった。その背景には、東北地方太平洋沖地震での三陸鉄道の防災施設としての役割や三陸地方特有の地形による移動の困難さ、気候、復旧資金スキーム創設の考え方の工夫などがあり復旧することが可能となったことが明らかとなった。
著者
山田 剛史 杉澤 武俊 村井 潤一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Suppl., pp.53-56, 2008-02-10 (Released:2016-08-04)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究では,心理統計のテスト項目データベースの開発を試みた.本システムはWebブラウザからアクセスでき,複数のキーによる項目検索が可能である.また,データベースに項目特性値の情報を持たせる場合の問題点として,これらの指標は集団依存性が非常に強い可能性が挙げられる.これを検討するため,複数の大学で共通のテストを実施し比較した.その結果,基礎的な問題については集団によらず類似した値を取るが,発展的な問題については受験者集団によりかなり異なる値となった.このことから,データベースに載せる情報として項目特性値のような量的な情報だけでなく,質的な情報についても検討すべきであることが示唆された.
著者
山田 恵理 田中 伸明 玉城 政和 YAMADA Eri TANAKA Nobuaki TAMASHIRO Masakazu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.395-402, 2018-01-04

これまでの統計教育は、生徒が統計的な知識を学んだ後、技能を身につけるために、データを含んだ課題の分析処理を行わせるものが主流であった。しかし今日、統計教育はより実践的な枠組みへと変革しつつある。すなわち、生徒が自らの身近な問題の解決を目指し、「計画立案、データ収集、分析、実践、総括」という段階を踏む中で、統計的な知識や技能を涵養する実践が注目を浴びているのである。このような統計教育では、その問題解決の中で、しばしばPDCAあるいはPPDACといった「改善サイクル」を周回させる手法が用いられる。しかし、例えば「学校の環境」等の大きな問題解決を扱い、「改善サイクル」を機能させるならば、どうしても、数学の枠組みを超えたものになってしまう。すなわち、「総合的な学習の時間」等との関連を図るなど、かなり「大掛かりなもの」にならざるを得ないのである。本研究は、あくまでも、数学Iの「データの分析」という1単元のなかで、統計的な知識や技能を学び、それを「改善サイクル」に活用することを試みたものである。かなりコンパクトな状況で、「改善サイクル」を3周回機能させるとともに、生徒自らが平均と分散が改善していく過程を見出していくことで、「改善サイクル」が機能したことを評価させ、「改善サイクル」の必要性や良さも実感させた実践例である。
著者
蓮生観善 著
出版者
藤井佐兵衛
巻号頁・発行日
1937
著者
村井 潤一郎 山田 剛史 杉澤 武俊
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.Suppl., pp.9-12, 2009-12-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
3

心理学関連学科において,心理統計教育は重要な意味を持っている.そこで,心理統計教育の現状把握のため,質問紙を用いた全国調査を行った.調査票を全国の担当教員に送付し,授業の担当教員,その授業を受ける学生,双方からデータを収集し分析した.基本統計量に基づき考察した結果,学生が力がつくと思っている授業,教員が実際に行っている授業それぞれの特徴が明らかになった.これらの結果の,心理学以外の統計教育への適用可能性も示唆された.