著者
吉成 怜子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.105-113, 2007-03-01

テネシー・ウィリアムズ(Tennessee Williams,1911-83)の『欲望という名の電車』(Astreetcar Named Desire, 1947)では、様々なコントラストが散りばめられ、それが物語をより濃密に描きだす役割を果している。中でも、主要人物であるブランチ(Blanche)とスタンリー(Stanley)のコントラストはその代表である。二人のコントラストは象徴という手法が遺憾なく発揮され、より鮮明なものとなっている。本論文では、"stain"という語を取り上げ、その"stain"が象徴的な手法として、二人のコントラストをどのように描いているかを検証していく。その手法は、観客に対して鮮明に人物像を焼き付けていながら、作者ウィリアムズにとっては、観客個々人に判断を委ねるという、複雑な要素を交錯させているということが見て取れる。ブランチスタンリーコントラストstain

2 0 0 0 OA 江家次第

著者
大江匡房 著
出版者
日本古典全集刊行会
巻号頁・発行日
vol.自1巻至3巻, 1931
著者
土屋 萌 落合 和彦 鈴木 浩悦 神谷 新司 加藤 卓也 名切 幸枝 石井 奈穂美 近江 俊徳 羽山 伸一 中西 せつ子 今野 文治 川本 芳
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第33回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.37, 2017-07-01 (Released:2017-10-12)

2011年3月11日に起きた東日本大震災に伴い,東京電力福島第一原子力発電所(以下,原発)が爆発し,周辺に生息する野生ニホンザル(Macaca fuscata)は,ヒト以外の野生霊長類において世界で初めて原発災害によって放射線被ばくを受けた。放射線被ばくによる健康影響は数多く報告されており,ヒト胎仔の小頭化や成長遅滞もその1つとして知られている。本研究では,被ばくしたサルの次世代への影響を調べるため,震災前後における胎仔の脳容積の成長および,生後1年以内の幼獣の体重成長曲線を比較した。また,脳容積の推定のため,頭蓋骨の骨化度を考慮しCRL(頂臀長)が140㎜以上の個体21頭においてCT撮影により頭蓋内体積を計測した。震災後胎仔は震災前胎仔よりもCRLに対する頭蓋内体積が小さい傾向が見られ,胎仔に脳の発育遅滞が起こっていると考えられた。さらに,0歳の幼獣について捕獲日ごとに体重と体長との散布図を作成し,震災前個体と震災後個体の成長曲線を比較した。その結果,体長が250㎜に達するまでは震災前個体よりも震災後個体の方が体長に対する体重が軽い傾向が見られた。一方,成長が停滞する250~350㎜に達すると震災前個体も震災後個体も体重はほぼ変わらず,再び成長が見られる350㎜以上では大きな差は見られなくなった。以上より,震災後個体は生後も数か月間は成長が遅滞していることが示唆された。
著者
Hisashi Ogawa Yasuhiro Hamatani Kosuke Doi Yuji Tezuka Yoshimori An Mitsuru Ishii Moritake Iguchi Nobutoyo Masunaga Masahiro Esato Yeong-Hwa Chun Hikari Tsuji Hiromichi Wada Koji Hasegawa Mitsuru Abe Gregory YH Lip Masaharu Akao on behalf of the Fushimi AF Registry Investigators
出版者
日本循環器学会
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.1403-1410, 2017-09-25 (Released:2017-09-25)
参考文献数
33
被引用文献数
14

Background:Female sex is considered a risk factor for thromboembolism in patients with atrial fibrillation (AF), and is included in the risk stratification scheme, CHA2DS2-VASc score. The purpose of the present study was to investigate the clinical outcomes of female Japanese AF patients.Methods and Results:The Fushimi AF Registry is a community-based prospective survey of the AF patients in Fushimi-ku, Kyoto. Follow-up data were available for 3,878 patients. Female AF patients (n=1,551, 40.0%) were older (77.0 vs. 71.4 years; P<0.001) than male patients (n=2,327, 60.0%). Female patients were more likely to have heart failure (31.1% vs. 23.7%; P<0.001). Previous stroke incidence (19.2% vs. 21.4%; P=0.083) was comparable between male and female patients. During the median follow-up period of 1,102 days, Cox regression analysis demonstrated that female sex was not independently associated with a risk of stroke or systemic embolism (adjusted hazard ratio [HR] 0.74; 95% confidence interval [CI]: 0.54–1.00, P=0.051). However, female sex showed an association with a lower risk of intracranial hemorrhage (adjusted HR 0.54; 95% CI: 0.30–0.95, P=0.032) and all-cause death (adjusted HR 0.56; 95% CI: 0.46–0.68, P<0.001).Conclusions:We demonstrated that female sex is not independently associated with an increased risk of thromboembolism, but is associated with a decreased risk of intracranial hemorrhage and all-cause death in Japanese AF patients enrolled in the Fushimi AF Registry.
著者
東樹 宏和
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

クリシギゾウムシは、ブナ科植物の種子(ドングリ類)に産卵を行う。しかし、ブナ科の植物の多くは、ゾウムシに食害されないために、タンニンという毒物質を高濃度で種子に蓄積するよう進化している。しかし、昆虫は一般に、タンニンを分解する酵素を生成できないと考えられており、なぜクリシギゾウムシがブナ科種子を食害できるのか、明らかになっていない。そこで、クリシギゾウムシ体内に共生する細菌類に着目して、この細菌類がドングリの毒を無害化する上で「助っ人」として働いているのか、検証を行った。タンニン分解酵素(タンナーゼ)の生成は、様々な細菌類で報告されおり、この細菌の潜在的な機能に焦点をあてた。ゾウムシ体内からクローニングした細菌の16S rRNA遺伝子の塩基配列を調べたところ、新奇な共生細菌がクリシギゾウムシと共生していることが明らかになった。この細菌(以下、一次共生細菌)の16S rRNA配列をターゲットとした蛍光in situハイブリダイゼーションの結果、この一次共生細菌がゾウムシ幼虫体内の中腸前部に付着する「菌細胞塊」に詰め込まれていることがわかった。さらに、雌成虫の体内では、卵巣小管への感染が認められ、卵への感染を通じて、ゾウムシの世代を越えてこの一次共生細菌が受け継がれていることが推測された。この一次共生細菌の塩基配列の組成から、ゾウムシとの長い共生関係を経てゾウムシの体内でしか生存できないような進化を遂げていることが示唆され、すでにゾウムシの「体の一部」としてゾウムシの生存や繁殖に有利な機能を提供していることが推測された。
著者
藤田 邦彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.745-753, 2017-03-15

自分自身の個人情報や所属する組織の秘密情報など,自身の管理する情報を不適切に開示する事例が増えつつある.不適切な開示を防止する対策の実施は,当該情報を管理する主体の行動に依存する部分が大きい.本研究では,開示する主体は,開示によって得られる利得と損失をそれぞれの量と確率を勘案して比較し,開示するか否かを意思決定すると仮定しモデル化を行う.このモデル化により,自身の管理する情報の不適切な開示の防止の対策実施に資する貢献が期待できる.本研究ではモデル化に際し,行動経済学において人がどのようにリスクをともなう決定を行うかを説明する理論であるプロスペクト理論を援用する.そして,本研究で提案するモデルを,電子商取引サイトの決済手段の選択の例と,組織の秘密情報を持ち出すか否かの意思決定の例に適用し,適用の結果と,他のアンケート調査の結果の整合性を検討することにより,提案モデルの有効性を評価する.The cases of inappropriate disclosure of information being managed by oneself such as personal information of one's own and secret information of organizations are increasing. Preventing inappropriate information disclosure depends on the behavior of the subject who manage the information. In this paper, I assume that the subject who discloses the information compares quantity and probability with respect to gains and losses by disclosing the information and makes a decision. This modeling can be expected to contribute preventing inappropriate information disclosure. In this paper, I apply the prospect theory, which models how people make decisions with monetary risk. I apply the proposed model to two case examples. One is to decide means of settlement in electric commerce cite, and the other is to to decide whether or not taking the secret information outside of the office. I evaluate the effectiveness of the proposed model by considering the consistency between the result of applying the model to two cases and the result of questionnaire surveys being conducted by other organizations.
著者
和田正美
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13455311)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.239-251, 2012-03-31

本稿は,大学での講義「西洋教育史」に使用する教科書を作ることを想定して作成したものである。教育思想を正しく深く理解するには,歴史,文化を十分理解していなければならない。大学は学問の場であるかぎり,幅広い領域の知識を統合化する教育が必要であることは言うまでもない。しかし現在,大学の講義内容に相応しい教科書は皆無といってよい。専門書は豊富にあるが,大学の講義を想定しては書かれていないのである。 ソクラテスの時代の倫理・教育思想は,決して突然に生まれ出たものではない。その背景となり,推進力となったものとして,自然哲学者たちの思想,ギリシア悲劇,自然中心主義から人間中心主義への転換をはかったソフィストたちの思想などを挙げることができる。 よって,本稿は,ギリシア神話,伝説などを扱うギリシア悲劇,自然哲学者たち,ソフィストたち,そして,ソクラテス,プラトン,アリストテレスの三大哲学者の倫理思想を考察することにより,古代ギリシアの倫理思想を概観する。
著者
河内 啓二
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

トンボのモーターニューロンを染色し、詳細に観察した。その結果、胸部ガングリオンからはばたき飛翔筋までの神経系は極めて複雑で、多くの神経情報を処理統合して、はばたき運動を行っていることが明らかになってきた。今後はセンサー系からの信号ループがどう連なっているかを調べる必要がある。一方、はばたき運動の外見の観察からは多くの事が明らかになってきている。トンボの翅は付け根において、胴体と一枚の翅につき2つの関節で結合されており、1つづつの関節に最低一対のはばたき飛翔筋が備わっている。左右前後の翅を合わせると、1匹のトンボで計8対(16本)以上のはばたき飛翔筋が見い出せ、それに加えて制御用と思われる筋肉が多数存在する。それぞれの筋肉が上記のモーターニューロンで制御されており、飛行に要する情報量は膨大なものとなっており、この情報処理の課程が、昆虫の知能を解くキ-ポイントである。トンボの翅は、はばたき運動で生ずる慣性力や空気力に比べて極めて剛く、殆ど弾性変形を利用しないではばたき運動を行なう。従って、打ちおろしと打ちあげの空気力の差は、殆どが翅の捩り制御によって行われ、この運動の1つ1つの筋肉によって正確かつ意図的にに行われていることが明らかになってきた。これに対して、蝶のような低アスペクト比の翅を使う昆虫は、翅の捩り制御が構造的に大きくできず、低速において捩り制御だけでは、必要なだけの制御を行なうことができない。その結果、胴体も翅と一緒にピッチング運動させ、大きな迎角の変化を実現させている。蝶が外から観察するとヒラヒラと飛んでいるように見えるのは、翼面荷重が極めて小さく加速度運動に優れていることに加えて、上記の制御方法をとっているからである。
著者
伊豆田 修祐 高橋 正樹
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.731-738, 2014

航空機のエンジン故障により,飛行に必要な推力が得られない場合に,近隣の空港へ速やかに緊急着陸する技術が求められている.緊急着陸時には,着陸点へ到達可能かつ安全な飛行経路を計画する手法が必要となる.そこで,本研究では着陸点での到達高度を考慮した最終進入距離の可変化,および最終進入でのスポイラーの使用による滑空性能の変化を考慮した経路計画手法を提案する.