著者
中村 英士 Musicki B. 岸 義人 Morse D. Hastings J. 下村 脩
出版者
天然有機化合物討論会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.30, pp.276-283, 1988-09

The bioluminescence of dinoflagellates involves air-oxidation of luciferin (enzyme substrate) by luciferase (enzyme). On the other hand, Euphausia krills utilize highly fluorescent substance F not only as the catalyst for air-oxidation of a protein but also as the light-emitter. Fluorescent substance F exhibits chemical properties similar to those of dinoflagellate luciferin. Using alumina and ion exchange chromatography at low temperature under inert atmosphere (Sheme 1), the substance F (1) was successfully isolated from Euphausia pacifica. The structure of F was elucidated on the basis of degradation reaction summarized in Fig. 1 as well as the spectroscopic data of F (1) and oxy-F (2). The ring D part of the proposed structure, including relative stereochemistry, was unambiguously established by chemical means; ozonolysis of F, followed by CH_2N_2 treatment, yielded the expected product 7, the structure of which was determined by chemical synthesis. Dinoflagellate luciferin could be isolated from the dinoflagellate Pyrocystis lunula (Scheme 2). The structures of luciferin 8, oxidized luciferin 9 and blue compound 10 were elucidated by comparing their spectroscopic data with those of fluorescent substance F and oxy-F. Dinoflagellate luciferin and krill fluorescent substance F are apparently a member of the bile pigments. To the best of our knowledge, however, these are the first naturally occurring bile pigments, which structurally relate to chlorophylls rather than to haems. Studies on the mechanism of dinoflagellate bioluminescence is in progress.
著者
中村 英仁
出版者
日本スポーツマネジメント学会
雑誌
スポーツマネジメント研究 (ISSN:18840094)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.21-35, 2019 (Released:2020-03-04)
参考文献数
27

This paper examines why firms abolish their company sport clubs by using a deinstitutionalization concept and statistical analyses. Although literature has suggested reasons for the abolishment, little research has empirically studied them. Therefore, this paper does research on the mechanism behind the abolishment by looking at the influence of economic and social factors on it and conducting an event history analysis among 95 Japanese companies with a long distance club between 1992 and 2012. The results show that, as an economic factor, the significance of an economic crisis in the company influenced on the abolishment. On the other hand, social factors such as the employee downsizing, the increases in foreign shareholders and the normative pressure from the other firms had an effect, though interaction terms between economic and social factors did not. Based on these findings, the contributions of this paper will be discussed.
著者
渡部 数樹 中村 英樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_889-I_901, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
18
被引用文献数
7

本論文では,交通事故削減に向けた効率的な安全対策実施を目標として,道路交通や社会環境条件と事故発生との関係について事故類型別に統計モデル分析を行った.分析にあたっては,事故データに道路交通状況等の各種情報をGIS上で付与したデータベースを構築し,事故発生頻度を被説明変数とした負の二項分布回帰分析より影響要因の特定を試みた.分析結果より,幹線道路の事故発生頻度と混雑時平均旅行速度や交差点間距離が密接な関係にあることや,非幹線道路では道路幅員や用途地域等の要因が事故類型間で異なることを示した.さらに,非幹線道路の事故は旅行速度の低い幹線道路に近い位置で多発する傾向を示唆した.分析結果をふまえ,幹線道路の円滑性向上や階層化された道路ネットワークの再構築による安全性向上について考察した.
著者
篠島 直樹 前中 あおい 牧野 敬史 中村 英夫 黒田 順一郎 上田 郁美 松田 智子 岩崎田 鶴子 三島 裕子 猪原 淑子 山田 和慶 小林 修 斎藤 義樹 三原 洋祐 倉津 純一 矢野 茂敏 武笠 晃丈
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.235-242, 2019 (Released:2019-11-15)
参考文献数
14

【背景・目的】当院では難治性てんかんの患児に「ケトン食」を40年以上提供してきた.その経験に基づきIRB承認の下,悪性脳腫瘍患者を対象にケトン食の安全性,実行可能性,抗腫瘍効果について検討を行った. 【対象・方法】2012年11月から2018年10月までの悪性脳腫瘍患者14例(成人10例,小児4例).栄養組成はエネルギー30~40kcal/kg/日,たんぱく質1.0g/kg/日,ケトン比3:1のケトン食を後療法中ないし緩和ケア中に開始し,自宅のほか転院先でもケトン食が継続できるよう支援を行った. 【結果】ケトン食摂取期間の平均値は222.5日(5‐498日),空腹時血糖値および血中脂質値はケトン食摂取前後で著変なかった.有害事象は導入初期にgrade1の下痢が2例,脳脊髄放射線照射に起因するgrade 4の単球減少が1例でみられた他,特に重篤なものはなかった.後療法中に開始した10例中9例が中断(3例は病期進行,6例は食思不振など),緩和ケア中に開始した4例中3例は継続し,うち2例は経管投与でケトン食開始後1年以上生存した. 【考察】後療法中にケトン食を併用しても重篤な有害事象はなく安全と考えられた.長期間ケトン食を継続できれば生存期間の延長が期待できる可能性が示唆された.中断の主な理由として味の問題が大きく,抗腫瘍効果の評価には長期間継続可能な美味しいケトン食の開発が必要と考えられた.
著者
馬淵 誠士 志村 宏太郎 松本 有里 梅本 雅彦 北田 文則 木村 正 藤江 建朗 中村 英夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.281-288, 2021-03-10

▶要約 目的 : 子宮頸癌に対する広汎子宮全摘術が術者に与えるストレス・疲労を,術式別(ロボット支援下・腹腔鏡・開腹)に比較した. 方法 : 広汎子宮全摘出術の術中に,執刀医の心電図・筋電図を無線測定機器で持続モニタリングした. 結果 : ロボット支援下手術では,開腹手術や腹腔鏡手術に比して,脊柱起立筋の筋活動量が有意に軽微であった.ロボット支援下手術では心拍数が終始一定であったのに対し,開腹手術と腹腔鏡手術では心拍数は手術の進行とともに漸増し,ロボット支援下手術と比較して有意に高値となった.Tone-Entropy法による評価でも,ロボット支援下手術ではEntropyが終始一定であったのに対し,開腹手術と腹腔鏡手術では手術の進行とともにEntropyが低下し,ロボット支援下手術のストレスが少ないことを示す結果であった. 結論 : ロボット支援下広汎子宮全摘術は,開腹手術や腹腔鏡手術に比して執刀医へのストレス・疲労が少ない術式である可能性が示された.
著者
中村 英二郎 杉山 愛子
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

前立腺癌は、近年、本邦で罹患者数、死亡数がともに増加した癌腫の一つであり新規治療法開発が課題となっている。そこで、前立腺癌の病態解明、及び、治療標的分子の同定を目的として実験を行なった。アンドロゲン依存性増殖を示す前立腺癌細胞株であるLNCaP 細胞を同ホルモンを除去した培地 (csFBS: charcoal stripped FBS) で長期間培養を行うことにより新規細胞株 (AILNCaP細胞) の樹立に成功した。上記の新規樹立細胞株を用いて増殖抑制効果を示す分子の同定を目的としたスクリーニングを行い有望な治療標的分子を得ることができた。
著者
中村 英佑 森杉 雅史 井村 秀文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
環境システム研究論文集 (ISSN:13459597)
巻号頁・発行日
no.31, pp.395-403, 2003
被引用文献数
1

環境公平性を議論する上での1つの規範は, 「人間は全て平等であり, 人間1人当たりに許容される資源消費量と環境負荷発生量は等しくなければならない」というものである.しかし現実には, 1人当たりの資源消費量や環境負荷発生量は国によって大きく異なる. さらに, 経済のグローバル化によって, 世界各国は資源消費と環境負荷の相互依存性を強めており, 自国の環境負荷を他国に転嫁する動きもみられる. 本研究では, アジア太平洋地域を対象として, 産業連関分析により貿易を通じた資源消費と環境負荷の国際的相互依存状態を定量化し, それが環境問題をめぐる国同士の公平性にとって如何なる意味を持つかを検証した. その結果, この地域での資源消費と環境負荷の中心は米国と中国であり, 1人当たりの資源消費と環境負荷には米国と他国との間に格差が存在することが明らかとなった.
著者
黒沼 友恵 高橋 聖 中村 英夫 池田 岳雄 森 昌也 今村 覚
出版者
日本信頼性学会
雑誌
信頼性シンポジウム発表報文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.71-74, 2013

システム開発にはプロトタイピングという手法がある。この手法は、最低限の機能や操作画面を実装した試作品(プロトタイプ)の作成を繰り返し行い、ユーザに確認してもらう。これをシステム開発初期のシステム発注側と開発側で共に行う要件定義段階で行うことで、要件の漏れや食い違いを防げる。また、本来システムが完成した後でしか確認できないユーザインタフェースを初期に確認することもできる。この結果、最終段階での手戻りを防げるといった効果が認められている。これに対し本研究では、開発側に仕様を提案する前の仕様検討段階においてプロトタイピング手法を適用した場合の効果を検討した。
著者
山岸 益夫 中村 英生 鈴木 正治 長谷川 聡 中野 雄一
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.383-390, 1990-03-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

Morphological and immunohistochemical examinations were performed on the olfactory mucosa of eight patients with olfactory disturbances caused by the common cold (viral infection). The results of olfactory testing and of follow-up examinations were analyzed.H. E. staining revealed three patterns of degeneration. In Group 1 (3 patients) the olfactory epithelium had adequate thickness and a basic arrangement of supporting cells, olfactory receptor cells, and basal cells, but slightly fewer than normal receptor cells. In Group 2 (3 patients) olfactory receptor cells were greatly decreased. Group 3 (2 patients) had olfactory epithelium which was thin and atrophic with no receptor cells or olfactory vesicles, and only the supporting and basal cells remained. Group 1 patients had Grade 2, Group 2 patients Grade 3, and Group 3 patients Grade 4 damage according to our classification of degeneration proposed in 1988.Immunohistochemically, neuron-specific enolase (NSE) immunoreactivity was found in a number of receptor cells in Group 1 with Grade 2 damage and in some in Group 2 with Grade 3 damage. In Group 3 with Grade 4 damage, there was no NSE-immunoreactivity in the epithelium. Glia-specific S-100 protein immunoreactivity was found in Bowman's glands and olfactory nerve bundles in the lamina propria of Group 1 and 2 patients with Grade 2 and 3 damage. Cytokeratin immunoreactivity was found in the basal cells on the basement membrane in all three groups.Seven patients were found to be anosmic with T & T olfactometry, but the three patients in Group 1 responded well to Alinamin- intravenous injection test, and two of them recovered.These results indicate that there is a strong relationship among the appearance of the olfactory epithelium, results of the Alinamin- test and the outcome of olfactory disturbance caused by the common cold. When an olfactory mucosall biopsy performed at the first visit of the patient shows enough functional receptor cells and the Alinamin- test is positive, it is possible that the olfactory disturbance may improve.
著者
中村 英夫
雑誌
小児感染免疫 (ISSN:09174931)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.67-73, 2010-04-01
参考文献数
8

1 0 0 0 OA RS3PE症候群

著者
折口 智樹 有馬 和彦 梅田 雅孝 川㞍 真也 古賀 智裕 岩本 直樹 一瀬 邦弘 玉井 慎美 中村 英樹 川上 純 塚田 敏昭 宮下 賜一郎 溝上 明成 岩永 希 古山 雅子 中島 好一 庄村 史子 荒武 弘一朗 荒牧 俊幸 植木 幸孝 江口 勝美 福田 孝昭
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.48-54, 2019-03-30 (Released:2019-07-03)
参考文献数
16

概念:1985年にMcCartyらは,高齢で急性発症の左右対称性の多発(腱鞘)滑膜炎と手足の背側の浮腫を認める,RS3PE症候群という疾患概念を提唱した.病因・病態:血清Vascular endothelial growth factor(VEGF)濃度の著明な増加が認められ,関節局所の血流増加に関与しているものと考えられる.検査所見:赤血球沈降速度の亢進,CRPの高値を認めるが,リウマトイド因子,抗CCP抗体は陰性である.血清MMP-3濃度が著明に増加する.特に悪性腫瘍を合併した症例の血清MMP-3濃度は高値を示す.手関節の造影MRI検査では,手関節,MCP関節,PIP関節の腱滑膜炎と血流増加を認める.関節超音波検査においても,MRI同様,腱鞘滑膜炎および皮下浮腫の所見が認められる.関節X線画像上変形がないことが,RAとの鑑別に有用である.悪性腫瘍の合併:本疾患は胃癌,大腸癌,肺癌,乳癌,前立腺癌などの腺癌の合併が多いことが明らかになっている.治療:通常プレドニゾロン10~15mg/日の内服で開始する.初期投与量を投与する.通常,ステロイド薬に対する反応は劇的で1~2週以内に寛解に至る.
著者
中村 英人
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.147, 2011

生物の進化にともない生合成経路も進化してきた。分類群ごとに特徴的な化合物組成は化石の形態形質同様に生物とその生合成経路の進化過程について重要な示唆を与える。生物由来の有機分子は生体の死後,生物分解や化石化過程を経て失われてゆくが,一部の脂質分子は地質学的時間を経てなお残存し,古生代や中生代など古い時代の堆積物からも検出される。特定の起源生物に由来することが明らかな化合物はバイオマーカー(分子化石)として,それらの生物の起源の探索や古環境復元などに応用されてきた。近年,分子生物学の発展に伴い,多様な生体化合物の代謝生理が急速に明らかになりつつある。化合物レベル,骨格レベルでの生合成経路と生理機能の解明は,テルペノイドバイオマーカーの起源分類群の化石形態には残らないような古生態学的特徴を復元する手がかりになり,起源分類群の進化過程についてもいっそうの理解をもたらす可能性がある。
著者
中村 英人 沢田 健
出版者
日本有機地球化学会
雑誌
Researches in Organic Geochemistry (ISSN:13449915)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.31-42, 2007
参考文献数
16

The chemical compositions of woody fossil fragments collected by picking manually and density centrifugation from sandstones of the Lower Cretaceous Yezo Group in Oyubari, central Hokkaido, Japan were analyzed by KOH/methanol hydrolysis (saponification) after solvent extraction. Organic compounds bound in macromolecules of the woody fragments with ester bonds, obtained by saponification, were mainly composed of short-chain (C<sub>14</sub> to C<sub>18</sub>) fatty acids and series of <i>n</i>-alkanols ranging from C<sub>12</sub> to C<sub>28</sub> homologues. These ester bound constituents are attributed to moieties of polyester parts of selectively preserved resistant macromolecule like cutin or suberin. Even carbon-number predominance was observed in both compounds, which indicated that biological components were well preserved. The bound fatty acids showed similar distribution patterns among all samples, indicating that these moieties might have been altered by strong diagenetic processes. On the other hand, the distribution patterns of <i>n</i>-alkanols significantly varied. In particular, those of long-chain (>C<sub>20</sub>) <i>n</i>-alkanols varied possibly depending on plant taxonomy. Thus, we suggest that these parameters are strongly useful as molecular paleobiological indicators for chemotaxonomic analyses. Also, the distributions of short-chain <i>n</i>-alkanols and the ratios of short to long-chain homologues are presumably useful indicators for diagenesis, taphonomy and environment.
著者
中村 英昭
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.310-320, 2017 (Released:2018-03-27)
参考文献数
5

平成19年,統計法が60年ぶりに改正され,改正後の統計法(平成19年法律第53号.以下「新統計法」という.)では,統計データの利用促進と秘密の保護に関する諸々の規定が盛り込まれた.政府は,おおむね5年ごとの法定計画である「公的統計の整備に関する基本的な計画」(以下「基本計画」という.)に統計データの有効活用の推進に関する事項を具体的な施策として盛り込み,統計データの二次的利用の促進に努めてきたところである.その後約10年が経ち,平成28年末に経済財政諮問会議が決定した「統計改革の基本方針」に基づき,平成29年1月に統計改革推進会議が設置され,5月には改革の大きな方向性が取りまとめられた.本稿では,新統計法施行後の統計データの二次的利用の状況や課題の検討状況,統計改革の動向や基本計画見直しの議論,今後の方向性等について紹介する.
著者
平本 匡寛 望月 寛 高橋 聖 中村 英夫 Hiramoto Tadahiro Mochizuki Hiroshi Takahashi Sei Nakamura Hideo
雑誌
【全国大会】平成19年電気学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
pp.264, 2007-03-15

鉄道システムの保安装置の多くに使用されている変周式ATS の地上子の状態監視技術について提案する。ATS地上子のQ値管理は、安全性確保のためには必須の要件である。このため、沿線に配置されたATS地上子を定期保全によりQ値測定装置で計測している。一方、省力化を目的として車上からATS地上子のQ値を検測することもおこなわれているが、レベル管理が主体であり正確なQ値計測と対応性の点で問題がある。提案する手法は車上子の電流値検測によりQ値を算出するもので、地上子対アンテナ間の距離や相互誘導係数値によらない安定した計測ができる。
著者
向野 晃弘 樋口 理 中根 俊成 寶來 吉朗 中村 英樹 松尾 秀徳 川上 純
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.379a, 2013

【目的】シェーグレン症候群(SS)ではヒトムスカリン性アセチルコリン受容体M3(AChRM3)に対する自己抗体の関与が指摘されている.抗AChRM3抗体の検出は,細胞外領域に相当する合成ペプチドを用いたELISA法等が既に報告されている.今回,我々は複数貫通膜分子に対する抗体の検出に効果的であるカイアシルシフェラーゼ免疫沈降法(GLIP法)による抗AChRM3抗体測定系を評価した.【対象・方法】SS 37例,健常者39例を対象とし,GLIP法による測定を行った.全長ヒトAChRM3とカイアシルシフェラーゼ(GL)の融合組換えタンパク質をリポーターとしヒト血清(あるいは既製抗体)を反応させた後,プロテインGセファロースを用いて反応溶液中のIgGを回収した.免疫沈降物中のルシフェラーゼ活性の測定で,抗AChRM3抗体の有無を評価した.【結果】1.アミノ末端およびカルボキシル末端領域を標的とする2種類の既製抗AChRM3抗体でGLIP法を実施した結果,本法の抗AChRM3抗体検出における有効性を確認した.2.健常群血清を対象にGLIP法を実施し,カットオフをmean+3SDに設定した.3.SS 3例を抗体陽性と判定した.【結論】全長のヒトAChRM3を抗原に用いた新たな抗AChRM3抗体検出系を確立した.今後は各測定法によるvalidationを行うことを計画している.<br>