著者
工藤 雄一郎 小林 謙一 山本 直人 吉田 淳 中村 俊夫
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.409-423, 2008-12-01 (Released:2012-03-26)
参考文献数
48

石川県御経塚遺跡から出土した縄文時代後・晩期の土器付着物と漆の14C年代,炭素・窒素安定同位体比,C/N比の測定を行い,土器で煮炊きされた内容物と各土器型式の年代学的位置づけについて検討した.その結果,後期の内面付着炭化物は,動物資源を煮炊きしたものが炭化して残ったものと考えられ,このうちのいくつかは海洋リザーバー効果の影響を受けている可能性を指摘した.晩期の土器付着物の14C年代は,周辺地域の研究成果と対比しても整合的であった.そこで,晩期の土器付着物の14C年代をIntCal04で較正し,晩期中葉の中屋式,晩期後葉の下野式および長竹式の較正年代を提示した.晩期最終末の長竹式の年代は,北陸地域における環状木柱列の形成時期とも関係することが明らかとなり,これは縄文時代から弥生時代への移行期の問題を検討する上で,きわめて重要な成果である.
著者
飯高 隆 中村 功 溝上 恵
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.37-50, 1989-06-30

関東地方においては,これまでに地震波速度構造の不均質性について様々な研究がなされてきた.これらの研究の結果,太平洋プレート,フィリピン海プレートの沈み込みが示された.このように複雑な構造をした地域において,沈み込むプレートの形状を求めることは,大変重要なことである.東京大学地震研究所の日立(HIT)の観測点の地震波記録で,P波とS波の間に立ち上がりのはっきりした後続波が見られた.この研究では,この後続波が,沈み込む太平洋プレート上面でPS変換された波であることを明らかにし,この変換波を用いて沈み込む太平洋プレート上面の深さを求めた.このように変換波を用いる方法は,プレート上面の深さを求めるのに有効であることが知られている.この研究において,関東地方下で求められた太平洋プレート上面は,日立の観測点下で約60kmの深さに求まり,その面は2重深発面の上面にほぼ一致した.また,この深さはS波の反射から求められた結果(小原,1987)と矛盾しない.
著者
石川 雅之 横山 威一郎 山口 洪樹 中村 貴子 鈴木 貴明 石井 伊都子
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.143-149, 2019-03-10 (Released:2020-03-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1

PreAVOID (“Prevent and avoid an adverse drug reaction”) is a pharmaceutical intervention that contributes to the improvement of drug safety and efficacy. It is considered important for pharmacists to spend time in the ward and carry out numerous PreAVOID interventions. At present, however, there have been no reports on the relationship between working hours of pharmacists in the ward and the number of PreAVOID interventions performed. Therefore, we investigated this relationship in Chiba University Hospital.The working hours of pharmacists in each ward gradually increased and were 13.5-38.3 h per week from April 2015 to March 2017. The number of PreAVOID interventions also increased from 630 in fiscal year 2015 to 1116 in fiscal year 2016. The number of interventions that prevented adverse drug reactions increased from 402 in fiscal year 2015 to 550 in fiscal year 2016. The number of interventions that improved drug efficacy increased from 188 in fiscal year 2015 to 508 in fiscal year 2016. The working hours of pharmacists in the ward showed a positive and statistically significant correlation with the number of PreAVOID interventions (r = 0.688, P < 0.001). Therefore, our findings indicate that longer working hours of pharmacists in the ward probably result in an improvement in the efficacy as well as safety of drug therapy in association with increased PreAVOID interventions. Thus, it is important to ensure that pharmacists spend sufficient time in the ward in order to contribute to the improvement of drug safety and efficacy through PreAVOID interventions.
著者
佐藤 秀昭 富岡 佳久 中村 哲也 小田 慎 大木 稔也 今井 博久
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.164-170, 2019-03-10 (Released:2020-03-11)
参考文献数
8

Pharmacists regularly use test values that are either provided by patients or that are recorded in out-patient prescriptions to identify potential adverse reactions to medications, to verify prescription accuracy (e.g., confirm the dose), and to provide patients with guidance on how to take their medications. However, there are no published evaluations of actual submissions from patients to pharmacies of test results that they received from their medical institutions. We administered a questionnaire and found a strong correlation between the submission of test results to pharmacies and test-result requests from both primary-care pharmacies (odds ratio: 2.4; 95% confidence interval: 1.5-3.5; P value < 0.001) and general pharmacies (odds ratio: 2.9; 95% confidence interval: 2.0-4.1; P value < 0.001). Primarycare and general pharmacy requests for test-result reports are useful measures for encouraging patient submission of test-result reports. In the future, non-hospital pharmacists should gain experience in explaining the significance of sharing test values with patients, verifying prescriptions, and helping patients avoid adverse reactions according to their test values, and pharmacists should work hard to change the existing preconceptions of their role in regional medicine. It is important for the patient community to understand that non-hospital pharmacists not only distribute their medicine, but they also play a beneficial role in guiding patientsʼ drug therapies.
著者
中村 美由紀
出版者
聖泉大学 看護学部
雑誌
聖泉看護学研究 (ISSN:21871981)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.29-34, 2018

目的 産褥早期に出産体験を傾聴するバースレビューは,出産の過程での喪失体験に伴う悲嘆の表出を助け,自己肯定感を高め,母親役割取得の一助となる.しかし,出産体験の評価は時間とともに変化するため,時期や方法をさらに検討する必要がある.育児期のバースレビューの研究の現状を明らかにし,今後の方向性を検討する.方法 過去16年間の原著論文を対象に検索し,研究テーマに合致した7 件を,目的および結果の類似性に基づき分類・分析した.結果 量的研究1 件,質的研究6 件であり,調査時期は産後1 か月までが3 件, 2 〜3 ヶ月が1 件, 1 〜3 年が3 件であった.分類した結果は「語りの実際」と「語りの意義」,「語りの効果」であった.特に産後1 〜3 年では,ネガティブな内容の語りが多く,否定的な体験は強く記憶に残っていた.考察 育児期のバースレビューも出産体験での悲嘆の表出を助ける効果があり,特にハイリスク妊娠・分娩の事例では,産褥早期から育児期にかけて複数回の援助が効果的である.
著者
島崎 博也 水野 圭祐 水谷 真康 中村 毅 前田 一範 出口 晃 川村 直人 鈴村 恵理 美和 千尋 森 康則
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.63-69, 2018-08-31 (Released:2018-09-26)
参考文献数
15

【背景と目的】温泉の効果の一つに温熱作用がある.この効果は体温を上昇させ,体温調節機能が作動し,血流量の増大を引き起こす.今回,これらの変化が,浴槽の大きさ,温泉の泉質によるものかを検討した.  【方法】成人健常男性10名(平均年齢25.2歳)を対象として10分間42℃の入浴を実施した.実施は,大浴槽(約1700L:アルカリ性単純温泉)と家庭浴槽(約300L:温水,0.1%人工塩化物泉)を用いた.測定項目は,深部体温「深部温モニターコアテンプ CM-210」と最高動脈血流速度「超音波血流計スマートドップ45」とし,それぞれの値を入浴中10分目,後安静10分目,20分目,30分目で比較し,さらに各条件で前安静値からの変化を求めた.  【結果】入浴10分目で深部体温と最高動脈血流速度の上昇値は,大浴槽の温泉が家庭浴槽での値に比べ,有意な高値を示した.また,大浴槽の温泉の深部体温は入浴3分目から有意に上昇した.後安静での深部体温は,大浴槽の温泉は15分間,家庭浴槽の人工塩化物泉は16分間,温水は13分間有意な上昇が維持された.  【考察】温泉大浴槽の方が家庭浴槽に比べて,深部体温上昇,最高動脈血流速度が大きかったのは,大浴槽では豊富な湯量により湯温の下降を妨げ,家庭用浴槽での深部体温上昇が継続されたのは,人工塩化物泉が体温上昇を維持させたと考える.
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.19-31, 2011-01

現在の日本では、「スピリチュアルなものへのあこがれ」、いわゆるスピリチュアル・ブームが、若い世代の間にも広がっている。ここ1~2年の間に、社会学や心理学の領域で、この要因を考察した論考が多数出版された。 本稿で、著者はこれらの論考を6つのパターンに分類し、それらを仮説としてその妥当性を検討する量的調査(福岡県内の4大学を対象、有効票509)を実施した。具体的には、①自己責任が強調される風潮のに耐えられない個人化した自己が求める「癒し」への希求、②スピリチュアルな言説と既成宗教の言説との連続性への忘却、③土井隆義が言う「キャラ化」した自己の動機付に関連した議論、④「大きな物語」への依存と忌避を並列させようとの思い、⑤望ましい心理的影響のみを求めるプラグマティックな心理主義、⑥TVメディアの培養効果、の妥当性を計量した。 量的分析の結果、これらの仮説のほぼ全てが棄却された。分析を進めると、スピリチュアルなものへの関心が、女性のジェンダー・トラッキングに関係している可能性がむしろ示唆された。今後、ジェンダーの視点でスピリチュアル・ブームを研究することは、宗教社会学のみならず、ジェンダーに関する社会学的研究をも前進させる可能性がある。
著者
中村 朋世
出版者
愛知教育大学
巻号頁・発行日
2013-03-14

平成24年度 卒業研究 概要
著者
田村 洸希 中村 聡史
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2020-HCI-186, no.3, pp.1-8, 2020-01-08

日本では手書きは一般的に心がこもっていると考えるひとも多く,フォントで生成されたものより手書きされたものを好む人は多い.また,板書などにおいては手書きの方がタイピングより記憶に残りやすいことが分かっており,手書きには一定の価値がある.一方で,コンピュータを用いて手軽に作成,編集が可能な履歴書やレポートなどでも手書きが要求されることは珍しくない.そこで本研究では,受け取った人の満足度を高め,また書くひとの満足度も高める仕組みの実現を目指し,手書き文字の数式化と加重平均化によるゆらぎを導入と,手書き機械の実装を行った.ここでは,単純な加重平均化では問題があることに着目し,改良型の加重平均手法を導入した.また実験によりその可能性について検討を行い,改良型の加重平均化手法で騙しやすくなること,また機械による紙への手書きをひとが判断するのは難しいことなどを明らかにした.
著者
吉田 秀樹 中島 謙二郎 川野 泰広 江口 秀之 中村 義文 日向 博文
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.709-714, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

The Kyushu Regional Development Bureau, Ministry of Land, Infrastructure and Transport has placed four High-Frequency Oceanic Radar System (HF radar) at the Ariake Sea with the aim of regenerating environmental condition, and has observed the surface current and ocean wave situations since 2005.The paper presents (1) the result of study for precision of HF radar observation, (2) the real-time informing system by internet named “The Ariake Sea current and ocean waves information system”, and (3) the development of “The sea garbage movement prediction system” utilized the surface current observation information by the system with the aims of the improving the sea garbage collecting service by the Advanced Anti-Pollution Vessel “KAIKI” as well as the progress of the installing the system. As result of the development, the precision is verified appropriately, and the system has been operated since April, 2007.
著者
中村 博一
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.47-59, 2013-03-01

消防団は郷土愛護をかかげる義勇の組織とされ、地域防災の要となるボランティアリーダーと認識されている。本稿はある消防団の民族誌的報告であり、10年あまりにわたる参与観察をもとに断片的な語りや記憶をつなぐ試みである。消防団をめぐる4つの「間」から、現代の消防団の位相を浮かび上がらせようとする。地域の期待に応えられない制度的な矛盾や日本社会の変貌が団員の負担を増やす現状を描き出す。
著者
朝井 政治 神津 玲 俵 祐一 宮崎 哲哉 中村 美加栄 藤島 一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.424, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】 高齢者に対する呼吸管理を行う機会が増加する中,気管内挿管下に人工呼吸管理を行った症例のうち,抜管後新たに嚥下障害や排痰困難をきたすことを経験する。このような症例では,誤嚥や分泌物の自己喀出に難渋し,離床やADLの改善に支障をきたす場合が少なくなく,臨床上大きな問題となる。 今回,人工呼吸管理後に新たに嚥下障害を呈した症例の臨床的特徴について報告する。【対象・方法】 対象は1999年4月から2002年3月までに当院にて気管内挿管,人工呼吸管理となり,理学療法が処方された187症例のうち,脳血管障害,精神科疾患,重度の痴呆,神経筋疾患および頚髄損傷,一度も抜管に至らず気管切開となったもの,を除いて,抜管ができた55例(平均年齢72.2±12.3歳,男性43例,女性12例)とした。方法は,カルテから,嚥下障害の有無を調査し,嚥下障害を呈した症例の1)患者背景,2)人工呼吸管理,3)気道分泌物貯留,4)嚥下機能評価結果,について調査した。なお,嚥下障害の有無については,問診と身体所見,および主治医や担当看護婦からの情報,嚥下機能評価の結果より判定した。【結果】 嚥下障害を認めた症例は55例のうち4例(7%)であった。以下に各症例の臨床的特徴を示す。症例1:77歳,男性。肺炎,肺結核後遺症。挿管2日。予定外抜管あり,鎮静なし。分泌物貯留中等度。症例2:84歳,男性。急性肺水腫,心不全,肺炎,腎不全。挿管5日。予定外抜管なし,鎮静5日。分泌物貯留多量。症例3:84歳,男性。塵肺,COPD,喘息。挿管8日。予定外抜管あり,鎮静7日。分泌物貯留多量。症例4:73歳,男性。肺炎,間質性肺炎。挿管24日。予定外抜管あり,鎮静22日。分泌物貯留多量。 上記症例では,後期高齢者,予定外抜管の経験,鎮静が行われていた症例がそれぞれ3例で,いずれの症例でも分泌物の貯留を認め,抜管後の経口のみによる栄養摂取困難と診断された。残る51例の平均年齢は71.6歳,挿管期間平均6.9日,鎮静28例,予定外抜管5例であった。【考察】 今回,人工呼吸管理後に新たに生じた嚥下障害の頻度と臨床的特徴を調査した。その結果,中枢神経疾患や神経筋疾患,精神科疾患など嚥下障害のリスクを有さない症例で,抜管後に嚥下障害を呈した症例は7%と必ずしも多くなかった。しかし,嚥下障害を認めた4例はいずれも経口からの摂食は困難であった。人工呼吸管理に至るような重症の急性呼吸障害を呈した症例では,critical illness neuropathyやmyopathyを呈する場合があると報告されている。上記4症例を細かく比較してみても,一定の傾向は認められず,特に原因と考えられるものがなかったことから,この状態にあったことも予想された。これは回復に長い期間を必要とするため,人工呼吸器離脱直後だけでなく,継続的,かつ注意深いサポートが必要と考えられた。
著者
中村 壮大 勝平 純司 村木 孝行 松平 浩 黒澤 和生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.547-550, 2016 (Released:2016-08-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

〔目的〕本研究は,三次元動作分析装置を用いて,肩関節の外転運動における若年者と高齢者の肩甲上腕リズムを比較し,加齢による影響を明らかにすることである.〔対象と方法〕若年男性21名と高齢男性17名を対象とした.課題動作は,肩関節外転運動とし,三次元動作分析装置を用いて肩甲上腕リズムを分析した.〔結果〕肩関節外転運動における上腕骨と肩甲骨の関係性である肩甲上腕リズムは,若年者では3.5:1の割合となった.次に高齢者における肩甲上腕リズムは4.4:1の割合となった.〔結語〕本研究より,加齢に伴い肩甲上腕リズムが異なることが明らかとなった.本研究で得られた結果は,理学療法分野における重要な知見となる.

1 0 0 0 遊行経

著者
中村元著
出版者
大蔵出版
巻号頁・発行日
2003