著者
清水 厳郎 長谷川 聡 本村 芳樹 梅原 潤 中村 雅俊 草野 拳 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】肩関節の運動において回旋筋腱板の担う役割は重要である。回旋筋腱板の中でも肩の拘縮や変形性肩関節症の症例においては,肩甲下筋の柔軟性が問題となると報告されている。肩甲下筋のストレッチ方法については下垂位での外旋や最大挙上位での外旋などが推奨されているが,これは運動学や解剖学的な知見を基にしたものである。Murakiらは唯一,肩甲下筋のストレッチについての定量的な検証を行い,肩甲下筋の下部線維は肩甲骨面挙上,屈曲,外転,水平外転位からの外旋によって有意に伸張されたと報告している。しかしこれは新鮮遺体を用いた研究であり,生体を用いて定量的に検証した報告はない。そこで本研究では,せん断波エラストグラフィー機能を用いて生体における効果的な肩甲下筋のストレッチ方法を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常成人男性20名(平均年齢25.2±4.3歳)とし,対象筋は非利き手側の肩甲下筋とした。肩甲下筋の伸張の程度を示す弾性率の計測は超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,肩甲下筋の停止部に設定した関心領域にて求めた。測定誤差を最小化できるように,測定箇所を小結節部に統一し,3回の計測の平均値を算出した(ICC[1,3]:0.97~0.99)。弾性率は伸張の程度を示す指標で,弾性率の変化は高値を示すほど筋が伸張されていることを意味する測定肢位は下垂位(rest),下垂位外旋位(1st-ER),伸展位(Ext),水平外転位(Hab),90°外転位からの外旋位(2nd-ER)の5肢位における最終域とした。さらに,ExtとHabに対しては肩甲骨固定と外旋の有無の影響を調べるために肩甲骨固定(固定)・固定最終域での固定解除(解除)と外旋の条件を追加した。統計学的検定は,restに対する1st-ER,Ext,Hab,2nd-ERにBonferroni法で補正したt検定を行い,有意差が出た肢位に対してBonferroniの多重比較検定を行った。さらに伸展,水平外転に対して最終域,固定,解除の3条件にBonferroniの多重比較検定を,外旋の有無にt検定を行い,有意水準は5%とした。【結果】5肢位それぞれの弾性率(平均±標準偏差,単位:kPa)はrestが64.7±9.1,1st-ERが84.9±21.4,Extが87.6±26.6,Habが95.0±35.6,2nd-ERが87.5±24.3であった。restに対し他の4肢位で弾性率が有意に高値を示し,多重比較の結果,それらの肢位間には有意な差は認めなかった。また,伸展,水平外転ともに固定は解除と比較して有意に高値を示したが,最終域と固定では有意な差を認めなかった。さらに,伸展・水平外転ともに外旋の有無で差を認めなかった。【結論】肩甲下筋のストレッチ方法としてこれまで報告されていた水平外転からの外旋や下垂位での外旋に加えて伸展や水平外転が効果的であり,さらに伸展と水平外転位においては肩甲骨を固定することでより小さい関節運動でストレッチ可能であることが示された。
著者
中村 翔 小林 一希 颯田 季央 工藤 慎太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0152, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】外側広筋(VL)は膝関節の主要な伸展筋であり,さらに内側広筋と共同して膝蓋骨の安定性に寄与している。しかし,臨床で遭遇するVLの過緊張は内側広筋とのアンバランスを引き起こし,膝蓋骨の正常な運動を阻害する。そして膝蓋大腿関節症といった膝周囲の疼痛を引き起こす原因となるため,膝蓋大腿関節の機能改善のためには,VLに対する治療が重要となる。我々は先行研究において超音波画像診断装置を用いて膝関節屈曲運動時のVLの動態を観察した結果,膝屈曲運動時にVLは後内側に変位することを報告した(中村2015)。そしてEly test陽性例に対して,VLの動態を考慮した運動療法を行った結果,VLの動態の改善や筋硬度の減少といった結果が得られたことを報告した(中村2015)。しかし,我々が考案した運動療法と従来から行われているストレッチングの効果について比較をしていない。そこで今回は両介入における即時効果の比較検討をしたので報告する。【方法】対象はEly testが陽性であった成人男性20名40肢とした。対象を無作為にVLの動態を考慮した運動療法を行う群(MT群)とストレッチングを施行する群(ST群)の2群に振り分けた。MT群は膝関節自動屈曲運動に伴い,VLを徒手的に後内側に誘導する運動療法を行った。回数は10回を1セットとし,3セット行った。ST群は他動的に最終域まで膝関節を屈曲するストレッチングを行った。回数は30秒を1セットとし,3セット行った。測定項目は膝関節屈曲運動時のVL変位量(VL変位量)と筋硬度を介入前後に測定した。VL変位量は超音波画像診断装置を用いて,Bモード,リニアプローブにて,膝関節自動屈曲運動時のVLの動態を撮影した。そして,得られた動画を静止画に分割し,膝関節伸展位と屈曲90度の画像を抜き出し,VLの移動した距離をImage-Jを使用して測定した。筋硬度は背臥位,膝伸展位で筋硬度計を用いて,大腿中央外側にて測定した。統計学的処理にはR2.8.1を使用し,介入前後の比較にはWilcoxonの符号付順位検定を行い,群間の比較にはMann-Whitney検定を行った。いずれも有意水準は5%未満とした。【結果】介入前の両群間の各変数に有意差は認めなかった。介入前のVL変位量は,MT群8.3mm(7.5-9.7),ST群8.7mm(8.1-10.2),介入後はMT群12.5mm(11.7-13.5),ST群11.9mm(11.1-13.4)であり,両群とも介入前後で有意差を認めた(p<0.05)。介入前の筋硬度は,MT群1.5N(1.5-1.6),ST群1.5N(1.4-1.5),介入後はMT群1.4N(1.4-1.5),ST群1.5N(1.4-1.5)であり,両群とも介入前後で有意差を認めた(p<0.05)。介入後の両群間の比較では,VL変位量,筋硬度ともに有意差を認めた(p<0.05)。【結論】筋の動態を考慮した運動療法はストレッチングと比較して,膝関節屈曲運動時の筋の動態および筋硬度が改善したことより,本法は短軸方向への筋の柔軟性改善に有効な手段であることが明らかとなった。
著者
藤岡 克則 中村 嗣郎
出版者
長崎外国語大学・長崎外国語短期大学
雑誌
長崎外大論叢 = The Journal of Nagasaki University of Foreign Studies (ISSN:13464981)
巻号頁・発行日
no.5, pp.33-46, 2003-06-30

Despite the widely held view in school grammar that relative pronouns are omitted only when they are assigned the accusative case, there are instances in which they are omitted even when they are assigned the nominative case. The paper documents such examples collected from various sources and further discusses how (and whether) the omission of the nominative relative pronoun should be taught to English learners. Though we suggest how to get access to omitted elements, we will argue that fundamentally nothing new needs to be taught if English learners have knowledge of English grammar regarding the analysis of sentence structures, gaps relating to relative pronouns, usages of that and so on.
著者
吉川 弘道 大滝 健 前田 欣昌 中村 孝明
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.26-34, 2007 (Released:2013-04-26)
参考文献数
25
被引用文献数
4 4

地震リスク解析は地震被災度を定量的に評価するもので, 防災計画の重要な指標になるとともに, LCC (生涯レンジの価格評価), PML (予想最大損失), BCP (事業継続計画) に対して直接的なコア技術となる。本文はこのような地震リスク解析のうち, エンジニアが直接関わるフラジリティ曲線と地震損失関数について調査/報告するものである。本文では, まずリスクの工学的定義と地震リスク解析について述べ, そのなかでのフラジリティ曲線と地震損失関数の位置付けを示す。次に, コンクリート構造物を対象としたこれらの基本算定式および推定方法について述べる。さらには, 土木・建築構造物を対象としたこれらの評価事例を紹介する。
著者
吉田 昇平 中村 文彦 田中 伸治 有吉 亮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_765-I_772, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
7

近年導入が盛んなコミュニティバスについて,住宅地区内の狭隘な道路において大型車両は通行するべきでないとする問題点が存在することによって,一部の地域ではコミュニティバスの運行ルートの設定に難航している事例が存在している.本研究は,コミュニティバスの運行ルート計画において,幅員基準を満たす運行ルートを設定することが最も困難であることを示し,また一方で幅員基準に満たない場合でも運行ルートとして登録された道路も少なからず存在していることを明らかにした.幅員基準を満たさない道路においても登録された要因について,待避所などの整備状況や自動車交通量が影響していると考えられることを示した上で,幅員のみによって判断されないコミュニティバスの運行ルートに考慮できる道路の新たな指標の考え方について提案している.
著者
小澤 寿子 中野 雅子 中村 治郎
出版者
日本臨床歯内療法学会
雑誌
日本臨床歯内療法学会雑誌 (ISSN:13406248)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-4, 1998 (Released:2019-04-30)
参考文献数
20

Abstract : Recently, the use of electrolyzed water has become widespread in a variety of fields. Although electrolyzed water have antimicrobial effects, they cause little harm to human being or the environment. We investigated antimicrobial effects of various electrolyzed water when used for root canal irrigation. The irrigants examined were two kinds of strong acid electrolyzed waters (SAW A and B), weak acid electrolyzed water (WAW), neutral electrolyzed water (NW), alkaline electrolyzed water (AW), 3%NaOCl and sterilized distilled water (DW). The root canals of extracted human teeth and artificial canals (epoxy resin) that had a working length of 10 mm and a size of #70 were used. Enterococcus faecalis was injected into the canal and then irrigated with 1, 3, 6, and 12 ml of each irrigant. After irrigation, the paper points used for sampling were incubated in tryptic soy broth at 37°C for 48 hours, and assessed for antimicrobial effects. All samples irrigated with NaOCl were negative growth (−). All DW samples were positive growth (+). For SAW, WAW and NW, some antimicrobial effects were seen on the artificial canals. However, there was a little effect on the extracted teeth. Antimicrobial effects of AW were not shown in artificial canal and extracted teeth.
著者
針山 隆史 星 勝芳 中村 茂 戸田 伸一 中沢 洋介 高原 英明
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.118, no.9, pp.1081-1088, 1998-09-01 (Released:2008-12-19)
参考文献数
15
被引用文献数
3 7

Induction motor drive with PWM inverter control, which can reduce the weight of the driving devices, is used for Shinkansen trains in order to achieve high speed transportation.This paper describes the experimental results for controlling wheel slip and re-adhesion at high speed running with the type 953 Shinkansen test train. The induction motor for each axle of this train is individually controlled by an independent PWM inverter. By introducing the vector control for the induction motor drive system, quick response for the motor torque can be achieved when wheels are going to slip. The control scheme for the wheel slip and re-adhesion is that the motor torque is gradually reduced by increasing of wheel slip speed.The results show, it is possible to recover to adhesive condition against wheel slip, without excessive motor torque reduction, when the reducing torque value and control time constant are properly selected.By these tests, re-adhesion characteristics improvement by induction motor vector control are obtained. To the next step, the parallel motor control system with a vector controlled inverter will be investigated.
著者
雲財 寛 山根 悠平 西内 舞 中村 大輝
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.545-556, 2020-03-30 (Released:2020-04-15)
参考文献数
23

本研究は,理科における批判的思考が知的好奇心に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。公立小学校の児童346名,公立中学校の生徒971名を対象に,五件法の質問紙調査を実施した。調査の結果,下記に示す3点を示唆する結果となった。熟慮的な思考を促すことによって,知的好奇心が高まること。熟慮的な思考を促すことによる知的好奇心への影響の大きさは,校種間で違いはないこと。中学生の場合,健全な懐疑を促すことで,知的好奇心が高まること。
著者
中村 麻子 楠見 ひとみ 遠藤 英子
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.355-360, 2013 (Released:2014-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

本研究は,助産所における分娩時の血液・体液曝露の実態と個人防護具(PPE)の着用状況,および着用に関する意識と関連要因を明らかにすることを目的とした.   全国の分娩を取り扱う助産所342施設の助産所開設者を対象に,2009年に郵送法による無記名の自記式質問紙調査を行い,139名から有効回答が得られた(回収率42.1%).血液・体液の曝露経験者は125名(90.0%)であった.曝露部位は,顔面がもっとも多く(77.6%),ついで上肢(75.2%),手指(67.2%),大腿部,胸部,頭部の順であった.また最近1年間に素手による分娩介助を経験した助産師は25名(18.0%)であり,このうちの5名は素手による分娩介助を常態としていた.分娩介助時に手袋とガウンを着用する助産師は80名(57.6%)と最も多く,手袋のみが42名(30.2%)であった.52名(40.3%)の助産師はPPEの必要性が理解できないと回答した.分娩介助時に手袋とガウンを併用する群と手袋のみを着用する群を比較したところ,助産師の年齢,助産師経験年数,施設の開業年数と従業員数,および年間分娩取扱い件数は,PPE着用状況とは関連性が認められなかった.   本調査より,助産所における分娩時の血液・体液曝露予防対策は標準予防策としては十分とは言い難い状況であることが明らかになった.
著者
中村 光利 山田 修一 松田 良介 杉本 正 中瀬 裕之
出版者
Kinki Brain Tumor Pathology Conference
雑誌
Neuro-Oncologyの進歩 (ISSN:18800742)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.12-18, 2010-12-01 (Released:2014-04-28)
参考文献数
25

The current practice of relying solely on microscopic examinations for histological classification of gliomas and, consequentially, determination of optimal treatment, appears to be insufficient. As a result of the increasing use of molecular markers in tumor classification, there is an emerging emphasis in the genetic profiles of distinct subtypes of glioma. These subtypes of glioma constitute distinct disease entities that evolve through different genetic pathways, and are likely to differ in prognosis and response to therapy. Status of O6-methylguaninemethyltransferase(O6-MGMT) gene is associated with the resistance to temozolomide(TMZ). We have previously found methylation or expression mosaicism of O6-MGMT in gliomas, resulting in problems on tumor sampling and respose to TMZ. An assessment of O6-MGMT methylation mosaicism in heterogeneous glioma may provide a more accurate assessment for the response to TMZ. Oligodendroglioma is recognized as a particular subtype of gliomas that shows remarkable response to chemotherapy(procarbazine + CCNU + vincristine(PCV), making their correct diagnosis important. Loss of heterozygosity(LOH) on chromosomes 1p and 19q is correlated with sensitivity to PCV chemotherapy with increased survival in anaplastic oligodendroglioma cases(WHO grade III). This article reviews biological and molecular approaches to glioma classification that have the potential to increase the efficacy of treatments for these tumors.
著者
中村 泰之
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.444-455, 2018-09-25 (Released:2018-09-25)
参考文献数
56
被引用文献数
1

ラジカル重合の停止反応機構の解明は高分子合成において重要であるが,いまだ結論が出ていない課題でもある.さらに,停止反応機構の制御は新しい高分子合成法・制御法へ発展する期待があるが,その試みは非常に限られていた.本報ではリビングラジカル重合法を利用し,構造制御されたポリマー末端ラジカルの精密な反応を行うことによる停止反応の機構解明と,停止反応の制御による合成利用に関する筆者らの研究をまとめた.停止反応の機構解明においては明確な不均化・結合選択性の決定方法の開発を行い,代表的なモノマー種の選択性や,温度・分子量・粘度が選択性に与える影響を定量的に明らかにした.さらに,選択的な結合反応(ラジカルカップリング反応)による高分子合成法の開発を行った.
著者
中村 公英
出版者
大道学館出版部
雑誌
臨牀と研究 (ISSN:00214965)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.11-14, 2006-02